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福田和也
「響くものと流れるもの」

amazon副題「小説と批評の対話」。
批評家福田和也と純文学者柳美里の対談。どちらの激しさもそれなりに認識していたボクなので、このふたりの対談というだけで即買い。激しい言い合いと深い理解と豊かな結論がそこにあるのでは、と期待した。
結果的には、なんか「お隣同士の主婦が高級レストランでお互いを妙に褒め合っている図」みたいな印象。
彼らがもともとその文学的見地から大喧嘩していたという事実から、編集者はこのふたりの和合対談自体を「事件」としているようであるが、そんなことあずかり知らぬ読者にはその辺の劇的さが伝わらず、妙な内輪受けしか感じない。そう、事情がいまひとつ読めてこないのがまず不親切。昔の大喧嘩コラムは再録されてはいるのだが、その辺の消化具合は本対談では触れられず、いったい何を目的に何をふたりで解き明かしたいのかボンヤリしたまま最後まで行ってしまう。
いったい何が響くもので何が流れるものなのか、福田が怒り柳が猛った昔の感情はどう解決されたのか、読みが足りないのかもしれないが、ボクにはボンヤリとしか見えてこない。当代一流のふたりの対談にしてはそこそこの面白さしかない残念な作品。
2002年08月01日(木) 12:00:00・リンク用URL
「オバはん編集長でもわかる世界のオキテ」

amazon「新潮45」で「オバはんでも45分でわかるニッポン」という題名で連載していたときから愛読していたものが一冊にまとまった。
362円でこれだけ現代世界をシンプルに理解できる本も珍しい。
テロやアフガン攻撃や日本国憲法や不審船騒ぎや……とにかくオバはんが先入観と感情と狭い理解のみで質問していき、著者はそれに根気よく丁寧に答えていく。
もともと著者はやさしくわかりやすく解説することに長けてはいるが、「新潮45」の新編集長(オバはん)のものの知らなさは抜群なので、それに対してサルにもムカデにもわかるように根気強く説明していく様は、さながら北京原人に車の運転を教えるが如し。ちょっと感動的ですらある。いや、サルよりたち悪いかも。サルはオバはんみたいなコテコテの先入観に毒されてないもん。世の中の深い部分を見ようとしないタイプの代表としてオバはんは完璧な配役なのだ。
説明する側は実にたいへんだろうが、読む側は実におもしろい。バイプレーヤーとして出てくる編集者たちも(描き方がいいのだろうが)とても面白い。読み飛ばすだけでも世界がかなりわかる。オススメである。
※ちなみにオバはんみたいなタイプの人こそ本当の意味で頭がいいと思っていたりもする。
2002年04月01日(月) 12:00:00・リンク用URL
「新・世界地図」

amazon副題は「直面する危機の正体」。
つまり、別に地図のお話ではなく、世界のパワーバランスがこれからどうなっていくか、そうなると世界地図はどう塗り替えられるのか、を、著者特有の懇切丁寧さ&本質を捉える視点で解き明かしてくれる本である。
9.11やアフガン爆撃後のパワーバランスをかなりのリアリティで説いてくれるので、影響されやすいボクなど、目から鱗が何枚も落ち、「えー、あのアフガン爆撃強行の裏には石油と麻薬の影が!」とか「中国ってこうなっているのかー、あやや、こりゃ怖い!」とか、素直に感嘆することが多かった。そしてこの本がいいのは、世界を分析しつつ、では日本はパワーポリティクス的にどうすればいいのか、をちゃんと提言しているところである。世界を分析して日本のやり方に苦情を述べ立ててお終いという本が数多くあるなか、きちんと自分の旗色を明確にしているのが気持ちよい。
なんか印象に残ったのは、細部の話であるが、「国連」という翻訳はおかしいというところ。
正確に訳すと「連合国」というのだ。そう言われればそうだ。ユナイテッド・ネイションズだもん。連合国の利益のためにある機関なのだ。それを「国連」と呼んだ時点で、なにか「世界的に良いことをする機関」というニュアンスが出てしまい、国連幻想まで起こる。連合国と考えれば、ずいぶん見方が変わるよね。急に世界的パワーバランスまで見えてくるではないか。つまりはこういう目鱗がいろいろ散りばめてある本なのである。ちなみに中国はちゃんと「連合国」と訳しているらしい。
2002年03月01日(金) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:時事・政治・国際
「贅沢入門」

amazon著者がWebマガジン「JUSTICE」に連載していた「福田和也の『目』」というコラムをまとめたもの。
食・遊・知・旅といった分野での著者のいろんな贅沢趣味を少々の嫌味を顧みず書いたもので、ウェブ上のコラムということもあり、かなり気楽にプライベートに書いている印象を受けた。独善的にすら感じられるコラムもあるが、実用的な贅沢に役に立つことはもちろん、ある種精神的ハイソに毎日を送る術がしっかり書いてあって面白い。
しかし、かなり「贅沢」ではある。読んでいて鼻白む部分もずいぶんある。きっとくだらないことには徹底してお金を使わないのだろうが、ある意味お金の使い方として迫力を感じた。そしてそういう「贅沢」が自らを刺激し、自らのクオリティも高めてくれることを著者はしっかり自覚している。自らを高めるためにちゃんと贅沢しなさいよ、と読者に語りかけている本でもあるのだ。
2002年02月01日(金) 12:00:00・リンク用URL
「余は如何にしてナショナリストとなりし乎」

amazonナショナリズムというのは誤解を受けやすい言葉である。本書はまずそこらへんから易しく説きはじめ、ナショナリズムとはなにか、それは「良識」なのだ「治者たること」なのだ「強者の徳」なのだというところまで丁寧に論を進めていく。そしてエセ右翼、エセ左翼、エセナショナリストに対して(名指しを含め)厳しい言葉を発していく。
国家主義や民族主義と別の次元にナショナリズムを置き、自己肯定と自己愛に満ちたいままでのエセ活動家たちをなじり、自らを(恥じ入りながらも)強者と設定し、ナショナリズムを滔々と語っていく気概は読んでいて気持ちがいい。迷いのない発信は人になにかを伝えるものだ。結果的に中学生の道徳の時間みたいな青臭さが匂い立っているし、後半の半生記は照れくさくて読めたものではないが、全体的主張にはしっかり共感できた。いや共感というより、自分の寄って立つ場所を確認できた、と言うべきか。難しく危険な論題ではあるが、論説にちょっと酔っている気がするのを除けば、一度読んでご自分の旗色を明確にする作業のきっかけにすることをオススメしたい。
2001年02月01日(木) 12:00:00・リンク用URL
「作家の値打ちの使い方」

amazon前著「作家の値打ち」はいい本だった。
画期的だしきちんと文壇大手術用のメスが機能していた。だから、あの手の実験書としては画期的に売れたのだろう。この本はその二匹目のドジョウという感じかも。飛鳥新社は出さなくてもよい後日談的本を出版してしまった。それがこの本。出さなくても良かった気がする。
「作家の値打ち」についての評論や評判、座談を中心に、かろうじて「絶版・品切れ版作家の値打ち」を載せてはいるが、ほぼ内容がない内容。いかに前著が波紋を投げかけたか、などということは一冊の本にする必要もなく、あえて言うならネットにサイトを作ってその後日談を掲載しておいた方がまだ良かったわけで、1300円はいかにも高い。福田和也自体の「作家の値打ち」を下げる行為である。こんな本を買うなら著者が高得点つけた本を買えよ!と、著者自身心のそこでは思っているのではないかなぁ。残念。
2001年01月01日(月) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:評論
「作家の値うち」

amazonこれは上司が「ある意味、本のジバランだよ」と教えてくれた本。
ミステリー、エンターテイメント、純文学の各分野に渡って、日本の作家の主要作品574点を100点満点で超辛口に批評してある本なのである。実に厳しく、実に平明にその作品群を批評し採点していくその意思力は相当なもので、舌を巻く。「作家の価値は人の記憶に残る作品をどれだけ書けるかで決まる」という切り口は確かにちょっとジバラン的。共感するなぁ。
それにしても厳しい。
船戸与一や鈴木光司などボロクソである。大江健三郎の「同時代ゲーム」ですら26点(100点満点)。
誉めるだけの書評が(新聞・雑誌を中心に)はびこるなか、こういう書評の存在は至極意味がある。作家や編集者が緊張を強いられるだけでも大きな意味があるのである。作家は作家という地位に安住し、ゲームやテレビ難を言えば「審査基準が明解でない」ことが惜しい。26点はなぜ21点でも31点でもなく26点なのか、がわからない。気分で付けていると言われても仕方ないだろう。ちなみに要所で入るコラムもよい。
文壇(?)に勇気を持って石を投げ込んだことを大きく評価したい一冊。
2000年06月01日(木) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:評論




