トップ > おもしろ本 > 著者別一覧 > >

LV3「ダナエ」

藤原伊織著/文藝春秋/1238円

ダナエ
amazon
藤原伊織の本を読むのはこれが初めて。彼が以前いた広告業界に身を置く分、ちょっと身近すぎて逆に避けてきたところはある。今回も3つの短編のうち、2つが広告業界まわりの話。やっぱり身近すぎて居心地は悪かった。

ま、そんなことはともかく、硬質さと叙情性を合わせ持つ文体はなかなか。
だが、表題作は途中の推理が鮮やかすぎて少し白けたのと、主人公や脇役に思い入れしにくいのが厳しかった。また、「まぼろしの虹」は狙いだとは思うがやはり不完全燃焼感があり、「水母」も人物像の書き込みが足らないので思い入れがしにくい。周辺をもっと書き込んで読者を彼の世界へ濃く深く連れて行ってほしいと思った。

広告業界ネタの他の本も少し読んでみようかな。微妙に肌合いが合わない作家かなぁとは思うけど。

2007年03月04日(日) 13:19:51・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV3「オネーギン」

プーシキン著/池田健太郎訳/岩波文庫/500円

オネーギン
amazon
ロシアに旅行に行くと急に決めたので、ドストエフスキーやトルストイやチェーホフを読み返したかったが時間がなく、一番薄い本だけどロシアでは一番重要視されている作家プーシキンの代表作「エフゲニー・オネーギン」を読み返すことにした(金城の「対話篇」でも出てくるしね)。

中学以来の再読。昔買った本が見つからなかったので新しいのを買って読んだ(岩波文庫を20年ぶりに買ったよ)。
日本ではそう人気のある本ではないが、ロシアでは古典中の古典である。ちなみに映画もDVDで出てたので観た。99年東京国際映画祭最優秀監督賞を受賞したもの。この本と映画とでロシアを身近にし、ペテルブルグの雰囲気を随分掴んで出かけたわけだ。

時間がとても早く過ぎる現代に暮らしていると、プーシキンの描く19世紀初頭のロシアはとても悠長かつ冗長に感じられる。特にこの本は文明批評や風刺を盛り込んであるのでわからない名詞も多く、興味ない人には少しつらい本かもしれない。でも圧倒的に美しい。現代ではオーバーすぎる言い回しが多いが、ここまでリズムよく美文を振り回されると許せてしまう。

「ルージン」とか「青年時代」とか「桜の園」とか「罪と罰」とか読み返したくなってきた。いや、一番好きだったロシア文学が他にあったはず…。思い出せない。なにしろいまから30年弱前に読んだんだもんなぁ。
でも中学高校でロシア文学他の古典に触れ、その後まったくそういうのを読まなくなる日本人の生き方もどこかいびつだね。古典は中年以降の心によく効くはず。そろそろゆっくり再読しだす年齢かも。

2003年10月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(海外)

LV1「ニッポン全国マヨネーズ中毒」

伏木亨著/講談社/1600円

ニッポン全国マヨネーズ中毒
amazon
食について興味あるヒトはネット上のMSNジャーナルで連載されている筆者の「ニッポン食事情咄」はご存じだろう(※追記:残念ながら連載終了)。その鋭い視点と展開は毎回実に見事だった。だからファンだった。だもんで、それが本になったと聞いたときは即買い。これがその本である。ある連載回を取り上げて表題にしたもの。でも個人的には「ニッポン食事情咄」のままでよかったかなと思う。なんかこの表題にして読者層が狭くなってしまった気がする。というか、なんだかありがちな感じになってしまった。
それにしても…ファンとしては残念だが、連載時はあんなに面白かったのに、が感想。やっぱり時事モノってまとめてしまうと薄い感じになってしまうのかな。もしくはハードカバーが似合わないということであろうか。ソフトカバーでもっと軽い感じで出版した方が良かったかも。もともと「咄」なのだから、その方が読者もうれしい。1600円はちと高い。

2003年06月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒

LV1「ブッシュ妄言録」

FUGAFUGA Lab.編/ぺんぎん書房/900円

ブッシュ妄言録
amazon
ブッシュ現大統領の、失言というにはあまりにつたない語録の数々を集めた本。
もうね、ホントに呆然とします。いくつか例を上げようと思ったが、どれを選んでいいかわからない。笑える本、として興味本位で買ったが、真ん中あたりまで読んで気分は暗黒。このアホが「世界の実質的トップ」である不幸をどう受け取ればいいかわからなくなる。もちろん1日24時間マスコミに監視されていて、失言しないわけにはいかないが、これはもう失言のレベルを超え、アホが滲み出ている。アホの坂田なら芸ですむが、アホのブッシュは洒落にならん。

が、最後まで読み通すと、逆に「これはこれで逆にオオモノなのかもしれない」と思い始める自分もいる。いわゆる大愚な人はある意味人格者でもあるしな。ただ、このアホさ加減は平和な時代ならまだしも、戦争や人殺しが絡むとやっぱりヤバイ。ヤバすぎる。ま、なんつうか、思ったより笑えない。暗い気分になる本だ。悲しーくなる。そういう意味でボクのLOVE度合いは低い。

2003年03月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際

LV1「まだまだまともな日本」

フロリアン・クルマス著/山下公子訳/文藝春秋/1714円

まだまだまともな日本
amazon
日本って全然ダメ〜!って新聞や本ばかり読んでいるので、たまには「日本も捨てたもんではない」というニュアンスを読みたくて購入。最初に言っておきたいが、256ページの小版本で1714円は暴利と感じる。質的にも量的にも内容的にも新書で700円くらいで出すべき本だ。

ま、それはともかくとして。著者は日本に12年住みドイツに帰ったドイツ人教授。
1999年に「制御不能の日本」という日本を憂う本を出しドイツに帰ったのだが、ドイツに帰ってみたら「日本ってこんなに住みよい国だったのか!」と驚くほどドイツがひどかったのよこれが奥さん! という、要するにそういう本だ。
まえがきにこうある。「日本社会がうまく機能しなくなっており、伝統的美徳も失われかけていると感じていらっしゃる方は、一度ドイツにおいでになるか、あるいは少なくとも本書を読んで、ドイツではどんな有様なのかをごらんになってみていただきたい」。んー、著者が「どこに住んでも文句を言うタイプ」という可能性もあるが、まぁ読んでみるとドイツ社会も確かにかなりひどいな。でも悪い国同士比べあってもどこにも行けないという気も。だいたい「まだまだまともな」って、日本はひどいけどもっと下がいるよってニュアンスでかなり自虐的。原題は全然違うので、訳者と編集者がつけたのだろうが、ヤな題名だ。

日本のイイトコロとして取り上げられている例が、それぞれ検証が薄く、反論がいくらでも出来るのも難点。
そして訳者の問題もあろうが、文章がかなり読みにくいのも難点。それでも我慢して読んでいくと最後に「訳者あとがき」が来るのだが、これがまた著者に冷たい。読後感をとても悪くする訳者あとがきだ。つか、買って損した気にさせるあとがきを訳者が書くのはどうだろう。
日本のイイトコロはもちろんたくさんある。いろいろ自信を失っている我々には一服の玉露的効果を与える本だろう。だが、いろんな意味で1714円の価値はないかも。新書だったらまた違う印象だったかもしれないが。

2003年01月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際

LV0「響くものと流れるもの」

福田和也、柳美里著/PHP研究所/1400円

響くものと流れるもの
amazon
副題「小説と批評の対話」。
批評家福田和也と純文学者柳美里の対談。どちらの激しさもそれなりに認識していたボクなので、このふたりの対談というだけで即買い。激しい言い合いと深い理解と豊かな結論がそこにあるのでは、と期待した。

結果的には、なんか「お隣同士の主婦が高級レストランでお互いを妙に褒め合っている図」みたいな印象。
彼らがもともとその文学的見地から大喧嘩していたという事実から、編集者はこのふたりの和合対談自体を「事件」としているようであるが、そんなことあずかり知らぬ読者にはその辺の劇的さが伝わらず、妙な内輪受けしか感じない。そう、事情がいまひとつ読めてこないのがまず不親切。昔の大喧嘩コラムは再録されてはいるのだが、その辺の消化具合は本対談では触れられず、いったい何を目的に何をふたりで解き明かしたいのかボンヤリしたまま最後まで行ってしまう。

いったい何が響くもので何が流れるものなのか、福田が怒り柳が猛った昔の感情はどう解決されたのか、読みが足りないのかもしれないが、ボクにはボンヤリとしか見えてこない。当代一流のふたりの対談にしてはそこそこの面白さしかない残念な作品。

2002年08月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:対談 , 評論

LV2「¥999」

フレデリック・ベグベデ著/中村佳子訳/角川書店BOOK PLUS/999円

¥999 BOOK PLUS
amazon
フランスでの大ベストセラーの邦訳。
原題は「99F」。99フランですね。そのニュアンスを999円という邦題にしている。この本もこの世界も広告業界のモラルもすべて999円で買える程度のシロモノさ、みたいな意味の題名。
そう、舞台は広告業界。著者も広告業界出身で、赤裸々に内部を描いた、という評価もあるようだ。同じ業界に身を置いているものとして「んなことあるわけない」描写だらけなのだが、フランスではそういうこともあるのかなとも思わされたり。なんつうか、業界っぽい人たちの描写とそれに対する虚無感はわりと的を射ているかも。ま、人生なんて虚飾とクズと無意味で詰まっているわいな、みたいな虚無感に襲われやすい業界ではある。

若い広告クリエーターが主人公で、人称が次々変わる構成や独特の文体がユニーク。青臭く独白しただけのぬるい作品と取ることも、現代の「ライ麦畑でつかまえて」的作品と取ることも可能だが、ボク自身は、リアルな部分と荒唐無稽に筋を展開させた部分の整合性の気持ち悪さが大いに気に入らない他はわりと気に入った。独善的な毒舌が広告業界嫌いの広告業界人であるボクにわりと心地よかった、というだけのことかもしれないけど。

2002年08月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(海外)

LV5「ファッキン ブルー フィルム」

藤森直子著/ヒヨコ舎/1800円

ファッキンブルーフィルム
amazon
著者の個人サイトで毎日つけられていた日記を元に構成された本。
元の日記にはなかった描写も出てくるが(そして元の日記にあった描写が削除されているところもあるが)、基本的には日記そのままのノンフィクション。田口ランディの「アンテナ」はこの著者をモデルにしている。で、この日記の一部を無断使用して盗作判決を出されてた。様々なすれ違いがあったようだが、この本のあとがきは田口ランディが書いておりベタ褒め。発売段階(01年4月)では問題はまだ顕在化してなかったらしい。映画化も進行中でありいろいろ話題の本である。

著者はバイセクシャルでSMの女王様(つまりS)を仕事としている。
読み始めてすぐ、SMクラブに来るノーマルでない客たちの描写に驚愕し引き込まれる。そして著者の彼女や彼氏とのエロい日常を楽しみ、キワモノ的日常を売りにした本と自分の中で位置づける。が、読み進むに従ってそんな低いレベルの本ではないことに気づいていく。そのへんの進行が自然で見事。そのうえ、日記なのにせつなくも美しい結末まで待っている。脚色的に構成したのではないとはいえ、一編のよくできた小説を読み終わった気分。ただものではない。

なにより著者の人間に対する視点が近来になく心地よい。それを意識して演出してないところに震える。素の言葉でここまでやられてしまうと小説家は立場がないだろうな。読後、ちょっとした人間愛に包まれつつ、なんというか「いつ死んでも一緒だな」的刹那感におそわれた。ヒトという個がソコニアルカタマリとして見えてくる。オススメだ。

2002年05月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション , 自伝・評伝

LV5「オバはん編集長でもわかる世界のオキテ」

福田和也著/新潮文庫/362円

オバはん編集長でもわかる世界のオキテ―福田和也緊急講義
amazon
「新潮45」で「オバはんでも45分でわかるニッポン」という題名で連載していたときから愛読していたものが一冊にまとまった。

362円でこれだけ現代世界をシンプルに理解できる本も珍しい。
テロやアフガン攻撃や日本国憲法や不審船騒ぎや……とにかくオバはんが先入観と感情と狭い理解のみで質問していき、著者はそれに根気よく丁寧に答えていく。
もともと著者はやさしくわかりやすく解説することに長けてはいるが、「新潮45」の新編集長(オバはん)のものの知らなさは抜群なので、それに対してサルにもムカデにもわかるように根気強く説明していく様は、さながら北京原人に車の運転を教えるが如し。ちょっと感動的ですらある。いや、サルよりたち悪いかも。サルはオバはんみたいなコテコテの先入観に毒されてないもん。世の中の深い部分を見ようとしないタイプの代表としてオバはんは完璧な配役なのだ。

説明する側は実にたいへんだろうが、読む側は実におもしろい。バイプレーヤーとして出てくる編集者たちも(描き方がいいのだろうが)とても面白い。読み飛ばすだけでも世界がかなりわかる。オススメである。
※ちなみにオバはんみたいなタイプの人こそ本当の意味で頭がいいと思っていたりもする。

2002年04月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際 , 対談

LV5「新・世界地図」

福田和也著/光文社/1200円

新・世界地図―直面する危機の正体
amazon
副題は「直面する危機の正体」。
つまり、別に地図のお話ではなく、世界のパワーバランスがこれからどうなっていくか、そうなると世界地図はどう塗り替えられるのか、を、著者特有の懇切丁寧さ&本質を捉える視点で解き明かしてくれる本である。
9.11やアフガン爆撃後のパワーバランスをかなりのリアリティで説いてくれるので、影響されやすいボクなど、目から鱗が何枚も落ち、「えー、あのアフガン爆撃強行の裏には石油と麻薬の影が!」とか「中国ってこうなっているのかー、あやや、こりゃ怖い!」とか、素直に感嘆することが多かった。そしてこの本がいいのは、世界を分析しつつ、では日本はパワーポリティクス的にどうすればいいのか、をちゃんと提言しているところである。世界を分析して日本のやり方に苦情を述べ立ててお終いという本が数多くあるなか、きちんと自分の旗色を明確にしているのが気持ちよい。

なんか印象に残ったのは、細部の話であるが、「国連」という翻訳はおかしいというところ。
正確に訳すと「連合国」というのだ。そう言われればそうだ。ユナイテッド・ネイションズだもん。連合国の利益のためにある機関なのだ。それを「国連」と呼んだ時点で、なにか「世界的に良いことをする機関」というニュアンスが出てしまい、国連幻想まで起こる。連合国と考えれば、ずいぶん見方が変わるよね。急に世界的パワーバランスまで見えてくるではないか。つまりはこういう目鱗がいろいろ散りばめてある本なのである。ちなみに中国はちゃんと「連合国」と訳しているらしい。

2002年03月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際

LV3「たのしい不便」

福岡賢正著/南方新社/1800円

たのしい不便―大量消費社会を超える
amazon
副題は「大量消費社会を超える」。
毎日新聞西部版での人気連載を一冊にしたものらしい。簡単に言うと「不便を実践してみた」という連載だ。具体的には「電車や車を使わず自転車で通勤する」「自動販売機で物を買わない」「外食をしない(弁当を自分で作る)」「エレベーターを使わない」「野菜や米は自給自足する」などなど。んでもって、そこに見えてきた生活の楽しさ・充実さを語っている。

・・・と紹介すると、ストイックな「べき論」的本かと思われがちだが、そうではない。
著者は連載の早い時点で「楽しめなければ長続きしない」と気づき、ストイックさから離れていく。そこらへんの等身大な感じがいい方に働き、とても良い本になった。後半は「消費社会を超えて」と題し、野田知佑を初めとしたナチュラリスト系(と一括りにするのは大変失礼な面子だが)との対談。いろんな考え方に触れられ、タメになるし、視野が広がる。

この本で展開している論を一言で言うと「現実感とは何か」ということかもしれない。現実感が日々なくなっていっているこの日本で、いかにして現実感を持って生きるか。言葉が固く見出しも固く新聞記者ぽくなりすぎている文章が難と言えば難だが、身の回りの現実感を再度見直し発見してみたくなる良書である。

2002年03月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ , 時事・政治・国際 , 教育・環境・福祉

LV3「贅沢入門」

福田和也著/PHP研究所/1250円

贅沢入門
amazon
著者がWebマガジン「JUSTICE」に連載していた「福田和也の『目』」というコラムをまとめたもの。
食・遊・知・旅といった分野での著者のいろんな贅沢趣味を少々の嫌味を顧みず書いたもので、ウェブ上のコラムということもあり、かなり気楽にプライベートに書いている印象を受けた。独善的にすら感じられるコラムもあるが、実用的な贅沢に役に立つことはもちろん、ある種精神的ハイソに毎日を送る術がしっかり書いてあって面白い。

しかし、かなり「贅沢」ではある。読んでいて鼻白む部分もずいぶんある。きっとくだらないことには徹底してお金を使わないのだろうが、ある意味お金の使い方として迫力を感じた。そしてそういう「贅沢」が自らを刺激し、自らのクオリティも高めてくれることを著者はしっかり自覚している。自らを高めるためにちゃんと贅沢しなさいよ、と読者に語りかけている本でもあるのだ。

2002年02月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒 , , エッセイ

LV5「世界でいちばん受けたい授業」

藤原和博著/小学館/1600円

世界でいちばん受けたい授業―足立十一中『よのなか』科
amazon
副題に「足立十一中[よのなか]科」とある。足立区の中学校で行われた「よのなか」科の授業がこの本の中で細部に渡るまで再現されているのだ。
よのなか科といっても、旧来の教育の枠の中で「よのなかの知識」を教えているわけではない。身近な題材と工夫されたカリキュラムと一般社会人の協力を得て、21世紀を生き抜くために必要な5つのチカラ、「ロジック」「コミュニケーション」「シミュレーション」「ロールプレイング」そして「プレゼンテーション」、を身につけさせることを目的とした授業なのである。

最初の授業が特に面白い。「一個のハンバーガーから世界が見える」と題して、生徒それぞれマクドナルドの店長になって出店計画を考えるというロールプレイング。地域性を考え、集客とは何かを理解し、経済の本質を肌で感じながら出店場所をそれぞれが導き出していく。そして、実際に貿易ロールプレイングゲームをしてみることで為替を肌で理解させていく授業がそれに続く。ハンバーガーが一個65円になっていく仕組みが世界経済の中でわかりやすく解きほぐされていくのだ。そして最後には実際にマクドナルドの店長を招いての質疑応答まで…。ね、面白そうでしょ?

まだまだ教育も工夫する余地がいっぱいある、と感じさせられる名授業。生産性を上げる創意工夫には朝も夜もなくがんばる我々だが、教育はなんとなく国の方針に任せきりにしてきた。その受け身な態度を反省させられると同時に、こういう風にすればいいのか、なんとかまだ間に合うのではないか、とも思わせられる希望の書でもある。

2001年12月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:教育・環境・福祉

LV1「『タンポポの国』の中の私」

フローラン・ダバディー著/祥伝社/1600円

「タンポポの国」の中の私 ― 新・国際社会人をめざして
amazon
副題は「新・国際社会人をめざして」。
いつもサッカー日本代表監督トルシエの横にいる背の高い謎の外国人が、著者である。題名は、彼が伊丹十三の映画「タンポポ」を愛するあまり来日したことに由来する。日本への愛が、そのあまりの憎も含めてよく書かれている本である。訳者がついてないのを見てもわかるとおり、ちゃんと日本語で彼自身が書いているようだ。すばらしい。

内容的にはイイコトは言っている。でもどの命題についてもちょっと表面的な言及になっているので欲求不満は残る。数年の日本滞在&日本語勉強でここまで言及できれば充分というのはわかっているが、本として読むとやっぱり説得力が足りない。もう少し自分のなかで醸成させてから出版した方がよくはなかったか。
サッカーやラグビーへの想いはよく伝わってくる。でもここらへんについても、もう少し深い話が聞きたかったなぁ。

2001年11月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ , スポーツ , 評論

LV4「余は如何にしてナショナリストとなりし乎」

福田和也著/光文社/1200円

余は如何にしてナショナリストとなりし乎
amazon
ナショナリズムというのは誤解を受けやすい言葉である。本書はまずそこらへんから易しく説きはじめ、ナショナリズムとはなにか、それは「良識」なのだ「治者たること」なのだ「強者の徳」なのだというところまで丁寧に論を進めていく。そしてエセ右翼、エセ左翼、エセナショナリストに対して(名指しを含め)厳しい言葉を発していく。

国家主義や民族主義と別の次元にナショナリズムを置き、自己肯定と自己愛に満ちたいままでのエセ活動家たちをなじり、自らを(恥じ入りながらも)強者と設定し、ナショナリズムを滔々と語っていく気概は読んでいて気持ちがいい。迷いのない発信は人になにかを伝えるものだ。結果的に中学生の道徳の時間みたいな青臭さが匂い立っているし、後半の半生記は照れくさくて読めたものではないが、全体的主張にはしっかり共感できた。いや共感というより、自分の寄って立つ場所を確認できた、と言うべきか。難しく危険な論題ではあるが、論説にちょっと酔っている気がするのを除けば、一度読んでご自分の旗色を明確にする作業のきっかけにすることをオススメしたい。

2001年02月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際 , 評論

LV0「作家の値打ちの使い方」

福田和也著/飛鳥新社/1300円

『作家の値うち』の使い方
amazon
前著「作家の値打ち」はいい本だった。
画期的だしきちんと文壇大手術用のメスが機能していた。だから、あの手の実験書としては画期的に売れたのだろう。この本はその二匹目のドジョウという感じかも。飛鳥新社は出さなくてもよい後日談的本を出版してしまった。それがこの本。出さなくても良かった気がする。

「作家の値打ち」についての評論や評判、座談を中心に、かろうじて「絶版・品切れ版作家の値打ち」を載せてはいるが、ほぼ内容がない内容。いかに前著が波紋を投げかけたか、などということは一冊の本にする必要もなく、あえて言うならネットにサイトを作ってその後日談を掲載しておいた方がまだ良かったわけで、1300円はいかにも高い。福田和也自体の「作家の値打ち」を下げる行為である。こんな本を買うなら著者が高得点つけた本を買えよ!と、著者自身心のそこでは思っているのではないかなぁ。残念。

2001年01月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:評論

LV5「作家の値うち」

福田和也著/飛鳥新社/1300円

作家の値うち
amazon
これは上司が「ある意味、本のジバランだよ」と教えてくれた本。
ミステリー、エンターテイメント、純文学の各分野に渡って、日本の作家の主要作品574点を100点満点で超辛口に批評してある本なのである。実に厳しく、実に平明にその作品群を批評し採点していくその意思力は相当なもので、舌を巻く。「作家の価値は人の記憶に残る作品をどれだけ書けるかで決まる」という切り口は確かにちょっとジバラン的。共感するなぁ。

それにしても厳しい。
船戸与一や鈴木光司などボロクソである。大江健三郎の「同時代ゲーム」ですら26点(100点満点)。
誉めるだけの書評が(新聞・雑誌を中心に)はびこるなか、こういう書評の存在は至極意味がある。作家や編集者が緊張を強いられるだけでも大きな意味があるのである。作家は作家という地位に安住し、ゲームやテレビ難を言えば「審査基準が明解でない」ことが惜しい。26点はなぜ21点でも31点でもなく26点なのか、がわからない。気分で付けていると言われても仕方ないだろう。ちなみに要所で入るコラムもよい。

文壇(?)に勇気を持って石を投げ込んだことを大きく評価したい一冊。

2000年06月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:評論

LV5「女盗賊プーラン」

プーラン・デヴィ著/武者圭子訳/草思社/上1600円下1648円

女盗賊プーラン〈上巻〉
amazon
インドのカースト制度の現実が肌に迫って感じられる、有名な女盗賊の自伝。

村八分、白昼のレイプ、犬以下の扱い、そして復讐のため盗賊へ…。プーランの半生が淡々と綴られていく。実際にあった話とはいえ彼我の人生の差をいろいろ考えさせられる一冊。文体的にも展開的にも特に際だった物はないからオススメかどうかと言われれば、うーん、だが、その事実自体の衝撃度はなかなかボクの中に重く残った。ただ、インドの投降制度がよくわからなくて最後の方はわりと冷めてしまったかも。
ノンフィクション好きで自分と全然遠い人生を読んでみたい方にはわりとおすすめ、かな。

1999年07月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:自伝・評伝

LV5「ブエノスアイレス午前零時」

藤沢周著/河出書房新社/1000円

ブエノスアイレス午前零時
amazon
芥川賞受賞作。
あまり期待せずに読んだのだが、歯の浮かないハードボイルド調で始まり、イマジネーションとリアリティを上手に紡いで展開していく様はなかなか見事。映像で言うならインサート画像の入り方が長さ・タイミングともにとても効果的で、作品を締めているのだ。

表題作「ブエノスアイレス午前零時」のリリシズムも好きだが、もう一編の「屋上」もとてもいい。
結末の付け方がちょっと陳腐な感じがしたが、読んでいて脳裏に広がるリアリティが生半可ではない。説明描写は最低限なのに、きっちりそこに場を展開させる筆力はさすがである。敢えて言えば、会話がいまいち。それともうちょっと長ければ、と思う。また、アルゼンチンの空気感がもう少し出ていればカタルシスが余計に感じられたと思う。

1999年06月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV0「マサチューセッツ工科大学」

フレッド・ハプグッド著/鶴岡雄二訳/新潮文庫/552円

マサチューセッツ工科大学
amazon
世に名高いMIT。
明治維新前にボストンでたった15人の生徒で発足していつしか世界の頂点に立ったこの専門学校をオタク生徒たちのエピソードや内部レポートでつづっていった本なのだが、つまらなかった。
エピソードにしてもファインマン先生ほどのものは望まないものの、もうちょっといろいろ読みたいし、内部レポートみたいなものも散漫で一向にMITの姿が浮かび上がってこない。中途半端な本だ。スコット・トゥローの「ハーバード・ロー・スクール」や「ファインマン・シリーズ」みたいなものを期待すると痛い目にあうかも。

1999年01月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション , 教育・環境・福祉

LV3「腸は考える」

藤田恒夫著/岩波新書/550円

腸は考える
amazon
今月「人間ドック」に行って直腸の検査などを受け、にわかに腸に対する興味がわいて読んだ本。
91年初版だからわりと古い。単なる管のように思われている腸だが、その能力たるや脳に匹敵する自主運営器官だったとは…知らなかったのである。
そのような内容をこれまた非常に平易に書いている。比喩もわかりやすく研究過程も臨場感ある紀行文的な趣で好感が持てる。そして研究者たちのいわば青春記にもなっていてなかなか楽しく読み終えた。こういう平明さは岩波新書をはじめとする新書の真骨頂であろう。とにかく気楽に楽しめる腸能力本である。

1998年04月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:健康 , 科学

LV4「心は孤独な数学者」

藤原正彦著/新潮社/1300円

心は孤独な数学者
amazon
わかりやすい文体とワクワクさせる切り口でいつも楽しませてくれる著者(本職は数学者)が3人の天才数学者の生涯をたどる紀行エッセイ。

取り上げたのはニュートンとハミルトンとラマヌジャン。
ニュートン、ハミルトンはともかく、インドの大天才ラマヌジャンについては初めて知った。それを知っただけでも収穫だ。残念ながらボクは数学の美しさを知らないまま数学を諦めた口であるが(しかも早くも中学生のときに)、こういう本をあの頃読んでいたらまた数学に対する見方が変わっていただろうなぁと残念に思う。ただ、惜しむらくは、紀行文としても数学エッセイとしてもそれぞれ突っ込みが中途半端だ。惜しい。

表題もちょっと疑問。数学者の孤独はわかるのだが、それを表題にするのは違うと思う。著者も数学者だけにちょっとナルシスト的な嫌らしさが匂ってしまう。内容がいいだけに残念。

1998年01月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル: , 科学 , 自伝・評伝

LV3「父の威厳 数学者の意地」

藤原正彦著/新潮文庫/476円

父の威厳 数学者の意地
amazon
新田次郎の息子であり有名な数学者の著者のエッセイはほとんど読んでいる。これで6冊目。どれも非常に面白い。ウィットに富み、切り口もなかなかに新鮮。年を追うごとに達意の文章になってきて快適だ。
頭の整理が出来ている人の本は時間の密度があがったような感覚があっていいねぇ。旧作を読み返したくなる。まだ藤原正彦を読んだことない人はこの本でもいいが「数学者の休憩時間」あたりから入ったらどうだろうか。

1997年09月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

ページの先頭に戻る

メニュー

Follow satonao310 on Twitter @satonao310

satonao [at] satonao.com
スパム対策を強化しているので、メールが戻ってきちゃう場合があります。その場合は、satonao310 [at] gmail.com へ。

ページの先頭に戻る

Google Sitemaps用XML自動生成ツール