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東野圭吾

LV3「容疑者Xの献身」

東野圭吾著/文藝春秋/1600円

容疑者Xの献身
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直木賞受賞作である。著者には出来れば「白夜行」で直木賞を取って欲しかったな。この本は、よくできてはいるが、代表作になるにはちょっと足りないという印象。他にもっといい本をいっぱい書いている。

巷でも言われていることだが、容疑者Xの「献身」の動機がやはり弱いのが最後まで気になった。いっそのこと「救済&恋」ではなく「刑務所で誰にも邪魔されず数式と向き合いたい」という動機の方が共感できたのではないかとすら思った。もしくは、その動機に至る容疑者Xの心理描写をもう数ページ深く書き込んで欲しいと思った。

ミステリーとしてはなかなかよく出来ていて、ストーリーの追い込み方も見事なだけに、根本の動機に共感がもてないというのが最後まで惜しい。「最終的に露見してほしい愛の発露」という持てない男の心理まで踏み込んでこういうストーリーにしたのかともちょっと思ったが、そうであるとしてももう少し容疑者の周辺描写が欲しいところ。なんとなく不完全燃焼感が残った読後だった。

2006年09月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV3「私が彼を殺した」

東野圭吾著/講談社文庫/695円

私が彼を殺した
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物語の結末をわざと伏せて読者の推理にまかせる小説をリドルストーリーと呼ぶらしい。
この本はまさにそれ。なにしろ最後に「犯人はあなたです」と刑事(「嘘をもうひとつだけ」の加賀刑事登場)が言って、犯人の名前をあかさずに本は終わってしまうのだ。
なにー!?である。容疑者は3人。構成上、エピローグがない作りなので、容疑者以外の意外な人物が犯人ということはあり得ない。動機のある3人のうちの誰かが犯人なのだが、これがなかなか良くできていて難しいのである。全員「私が彼を殺した」と思っていたりする。うーむ。しかもそれぞれの容疑者の一人称で各章が書かれているという凝った構成。さすがに頭のいい作家である。キレイにできている。

さて、ボクの推理だが・・・でもここで書くとネタバレになるので書けないなぁ。
ポイントはみっつ。ケースは複数あった。ケースのすり替えがあった。すり替え可能なタイミングは数回あるが、すり替え可能な人はひとりしかいない。ってところでしょうか。ま、正解があかされていないので、たぶん、ということしか言えないのだけれども。

2002年04月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV1「サンタのおばさん」

東野圭吾著/杉田比呂美絵/文藝春秋/1333円

サンタのおばさん
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先月読んだ東野圭吾の「片想い」の中に出てくる逸話がそのまま本(童話)になっている。
性差別的な主題に沿った劇中劇だったので、サンタのおじさんならぬ「おばさん」なのである。テーマとしても題名としても面白いのでかなり期待したのだが、なんだか童話として昇華しきれてない印象。理屈が勝ってしまったようで惜しい感じ。悪く言えば説明的なのだ。説明もなく、エンターテイメントで引っ張ったあげくに、読み終わってから性別とは何かを深く考えさせてくれるような、そんな贅沢な希望を勝手に思っていたのだが…。
「片想い」の中で描かれていた劇団の劇の方がずっと面白そうであった。ちょっとがっかり。

2002年04月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:絵本 , 児童・ティーンズ

LV4「片想い」

東野圭吾著/文藝春秋/1714円

片想い
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久しぶりの東野圭吾である。傑作「白夜行」以来かな。別に他意はなく、この本も前から気になっていた。

こういう隠された過去的なものを書かせるとさすがにうまいね、東野圭吾。
特に女性、そして中性(?)の描写が今回は実にうまかった気がする。どうもボクは東野と真保裕一を比べてしまう癖があるのだが、真保のに出てくる女性は読んでいて照れてしまうが東野の女性は体臭まで感じられるくらいリアル。そしてその造形力・描写力こそ、この作品ではkeyとなっている。男と女、そしてその間に来る存在を、きちんと描き分けられないと、この物語は成立すらしない。上辺的な薄っぺらい描写をすること自体がテーマを裏切るので、著者はそこを注意深く描き、リアリティを紡ぎ出している。

著者が男性なこともあろう、逆に「男」の描き方がステロタイプになってしまった気がする。一番理解できると思いこんでいる存在だからかな。それが少し残念なのと、主人公である哲朗のお節介さが中盤鼻につく。何の意味があって引っかき回しているのか全く理解できないのだ。著者としては「男性的」熱い友情っぽさの象徴としてオーバーに書いたのかもしれない。でも読んでいてイライラはする。そういう誇張が、著者が女性や男女の中間的存在の人々に対して見せた繊細さに比べて、あまりに無神経に見える。男性著者だからこその、男性をよく分かっているという油断が、ここをはじめとしてわりと感じられる。

ストーリーの収め方もちょっと納得は行かない。ミステリーとして、どうなのだろう。でも、個人的にはこの本で、男性と女性の中間的な存在に対する心情的な想像力を開かされた思いである。実に細やかにその辺の心情に寄り添って描いてくれてアリガトウ。そんな感じ。
なお、劇中劇(?)的に出てくる「サンタのおばさん」は絵本になっているらしい。取り寄せ中である。

2002年03月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV4「分身」

東野圭吾著/集英社文庫/695円

分身
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1993年発行の著者初期小説。1年前にヒトからもらってそのまま本棚に置いていたが、ちょっと思いだして読んでみた。というか、わりと気になってはいたのであるが。

実は期待していなかった。著者特有の(「秘密」に通じる)甘ったるさが色濃く出ていそうな小説だったから。なんとなく北村薫の「スキップ」とかに通じる甘ったるさ。しかし、期待はいい方に裏切られた。章分けを細かくしたのも勝因。テンポよく筋が進み、リズムよく謎が氷解していく。読み出すと止まらず、一気に読んだ。

ただ、こういうミステリーに出てきがちの「政府黒幕」だの「それを指揮する黒ずくめの謎の男」だの「顔色の悪い研究者」だののステロタイプ・キャラの出現が物語を多少つまらなくしている。初期作品だから仕方ないが、ちょっと居心地が悪くなる。それと題名自体がネタばれなのが気になるかも。いい題名なのだが、読者は最初から展開が読めてしまう。そこらへんが惜しい本。

2000年11月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV4「嘘をもうひとつだけ」

東野圭吾著/講談社/1600円

嘘をもうひとつだけ
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この著者の頭の良さは「白夜行」で証明済みだけど、今回もなかなか頭がいいのである。
短編集なのだが、すべて犯人側の視点で描かれていて、犯人なのに犯人ではないような心理描写をしつつ、どの短編にもひとりの敏腕刑事加賀が関わってくる構造(一部、被害者視点もある)。この構造自体がなかなかに新しい。その刑事も、客観描写のみでキャラがしっかり立ち上がっており、上手である。

難を言えば、どの登場人物にもカタルシスを感じられないまま終わるところ。
つまり陰の主人公である加賀刑事は客観描写のみなので入り込めない。それぞれの短編の主人公にも、その心理描写のトリックもあって入り込めない。それがこの短編集を少し薄いものにしているのは確か。たぶん、加賀刑事をもうちょっと個性的に描いたりすることで解決されるのだろう。例えばフロスト警部とかコロンボ警部みたいに。でも、著者はわざとどこにでもいるような刑事にしたのだろう。ありそうな日常、も演出のうちだろうから。

2000年05月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV5「白夜行」

東野圭吾著/集英社/1900円

白夜行
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ボディブローのように効いてくる作品だ。
ミステリーとしてもよく出来ているし登場人物の造形は見事だし土地の体臭みたいなものまでしっかり描かれていて感心させられるが、なにより主人公の二人の本当の関係をわざと描かず外堀から浮かび上がらせたその筆力が素晴らしい。

読後しばらくしてから彼らの苦しみみたいなものがじわじわ心の中に溢れ出す。読み終わった瞬間はちょっと物足りなさを感じるが、読者の読後の想像までへも著者はしっかり伏線を張っているのに後で気がつく。わざと答えを書いていない伏線などが読後に効きだすのだ。こういう頭の良さにボク弱いです。

前作「秘密」は映画化されたりして相変わらず評判だが、ボクはそんなに好きではない。でもこの「白夜行」はいいなぁ。辛気くさい題名だがこれも読後に納得が行く。手を取り合って白夜を行くふたりの姿が瞼の裏から離れない。削ぎきった文体も見事。そのうえすごいのは筋自体も削ぎきっているところ。うーん。こりゃ大化けする作家かも。直木賞も行けるのでは?

1999年09月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV1「秘密」

東野圭吾著/文藝春秋/1905円

秘密
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絶賛する人も多いこの話題の本がこの評価とは厳しすぎる、とおっしゃる方もおられようが、ボクにはつまらなかった。まるで極私的意見ですのでご勘弁を。

ちょっと期待が大きかった分だけがっかりも大きかった。これなら北村薫の「ターン」の方が好きかも(題材はちょこっと違うけど)。
なんというか、砂糖菓子のように甘いのだ。いや、テーマが甘いのは悪くないのだけど、テーマに引きずられて人物造形や文体もお菓子のようになってしまった気がする。そのせいでちょっと昼メロチックになった。近頃の浅田次郎のような甘ったるさ。例えばケン・グリムウッドの「リプレイ」のような冷徹さを見習って欲しいなと思うのだけど。

ちなみに、表紙カバーをはずすと本体に絵が描いてある。こっちの装丁の方が好き。カバーデザインは思わせぶりすぎな気がする。

1999年02月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

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