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LV5「『エンタメ』の夜明け」

馬場康夫著/講談社/1400円

「エンタメ」の夜明け ディズニーランドが日本に来た!
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副題が「ディズニーランドが日本に来た!」。
ホイチョイ・プロダクションズのリーダー馬場康夫の書き下ろし。日本のエンタテインメント・ビジネスを「始めた人」へのオマージュであり、日本のエンタテインメント草創期の記録でもある。

まず文章がいい。事実との距離のとり方が絶妙。客観的で独白的でハードボイルドだ。たぶん(たぶんだけど)森山周一郎の声を意識して書いたんじゃないかな(笑)。彼が読むとびったりハマル感じ。そんな文章である。変に熱いドキュメンタリーにせず、ちょっと上から硬派かつ冷めた目で俯瞰している。これはたぶん著者自身がこの題材に惚れ込んでいるからこそ、なのだろう。いくらでも熱く書けるからこそ、逆にきっちり客観的に距離を置いた感じ。そしてその手法は成功している。

内容は、小谷正一と堀貞一郎という2人のプロデューサーを軸にしたノンフィクション。
ふたりとも広告会社の電通にいて大阪万博、そしてディズニーランドの立ち上げに関わった。その半生と仕事を丹念に追った上で著者はこう言い切っている。「ディズニーランドの出現ほど、日本の行方を変えたできごとはなかった」と。このちょっと鼻白む結論もこの本を読んだあとだとすとんと胃の腑に落ちる。そして一般的には「無名」であるこのふたりが日本にボディーブロー的に与えた影響の大きさに感動するのである。

あえて言えば、盛り上げたあげくのディズニー誘致顛末を多少端折ったのが残念。そこがこの本の骨ではないとはいえ、ちょっとだけはぐらかされた感も残る。また、小谷正一の記述ももう少し読みたい。特に引退前後からの記述が(資料が少ないとはいえ)もう少し欲しいのも事実だ。

ホイチョイでの活躍を含めて、著者は「時代の空気とそれを作っている人々」が本当に好きなんだろうな。時代の観察者として馬場康夫という逸材を持っている我々はとても幸せなんだろうと改めて思う。
これからエンタメを目指す若手は特に必読。現在普通に享受しているエンタメの裏にある歴史を知りたい人もぜひ読んで欲しい本。

2007年04月10日(火) 19:28:11・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション , 自伝・評伝

LV4「しゃばけ」

畠中恵著/新潮文庫/540円

しゃばけ (新潮文庫)
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江戸時代の江戸を舞台にした妖怪推理時代小説。
妖怪がたくさん出てくるので荒唐無稽ファンタジーかと思いきや、読み進むうちに違和感も消え、わりと普通の時代小説に読めてくるから不思議。著者の筆力だろう。

廻船問屋と薬種問屋を営む大店の一人息子・一太郎は幼い頃からずっと周りに妖怪をはべらせる特殊体質。とはいえ身体は弱く、妖怪に守られているといった風情。そこに事件が持ち上がって…。といった導入なのだが、推理小説としては弱いものの(なんたって特殊能力がある妖怪たちが活躍するから)どこか落語人情話を思わせるような文章リズムも心地よく、最後まで飽きずに読ませる。多少、妖怪の気持ちが見えないところがあり(特に味方妖怪)その辺にカタルシスがあればより良くなったとも思うが、そこもまたミステリアスでいい、と取ることも出来る。また、もうちょっと妖怪の特殊能力に頼ったストーリー展開をすればエンタメとして強くなるのに、それを敢えてしていないところも好感持てる。

これを第一作として、続編がいくつか出ている。ゆっくり読んでいきたい世界観だ。

2007年03月24日(土) 9:08:20・リンク用URL

ジャンル:ファンタジー , 歴史小説 , ミステリー

LV3「リンボウ先生のオペラ講談」

林望著/光文社新書/850円

リンボウ先生のオペラ講談
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オペラの本数々あれど、代表的なオペラについて微に入り細を穿ちその「あらすじ」を書き込み、解説してくれた本は他にはないだろう。なんだかんだいっても異国の異文化であるオペラはやっぱり理解しにくい。音楽だけでなく、まず筋自体が理解しにくい。それを林望が著者特有の親切さでしっかり頭から追いつつ理解させてくれるのである。あらすじを追うだけでなく、解説や感想をいいタイミングで入れてくれているのがいい。

取り上げられているのは「フィガロの結婚」「セヴィリアの理髪師」「愛の妙薬」「ラ・トラヴィアータ」「カルメン」「トスカ」の6作品。オペラを観る前にこの本で筋と見所を予習しておけば、あとは心おきなくすばらしい音楽に浸れるのだ。
こういう本が欲しかったし、意外となかった。こういう目の付け所が著者っぽいな。巻末に著者お勧めの音源一覧もついている。アリア別なのがちょっと煩雑だけど。

2004年01月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:アート・舞台 , 音楽

LV3「旅路のはてまで男と女」

林真理子著/文藝春秋/1190円

旅路のはてまで男と女
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週刊文春で著者が長く連載している「今夜も思い出し笑い」2001年10月〜2002年12月分を集めたもの。
思えばこの時期の週刊文春はわりと読んでいたので、既読なものが多かった。特に田中真紀子批判の強烈な回は印象深かったのでとてもよく覚えている。同感同感!と膝をうったものだ。
改めてこうしてまとめたものを読み返すと、やっぱり林真理子はうまいなぁと思う。俗悪の一歩手前で上手に立ち止まる技、自慢と謙虚をバランスよくやりくりする術、急な怒り、たまに入れる泣かせ、全体に平易な読み易さ、すべてに手練れな感じ。刺激的なものは何もないが、寝床でダラダラ読むには最適の本。

2003年04月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

LV4「現代史の対決」

秦郁彦著/文藝春秋/1810円

現代史の対決
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現代日本史の諸問題をもう一度客観的に考え直すにはうってつけの本である。

南京事件、従軍慰安婦問題、教科書論争、靖国参拝問題、夫婦別姓問題、嫌煙権問題、など、それぞれ明解な視点をわかりやすく与えてくれ、ひとつひとつ考え直させられる。
帯に「歴史を書き手の政治的信条や倫理観を裏付けるために利用したり、人を裁く行為と混同する露骨な風潮はいっこうに変わっていない。とくに歴史専門家とみなされ、教育界でも影響力を持つ人たちによるこの種の所業を、歴史家として放置できないと私は考えている」という意味のことが書いてあるが、著者のスタンスはまさにこの通り。バイアスのかからない現代史の見方を丁寧にそして勇気を持って論じてくれている。南京事件みたいに風当たりの強そうな問題でもまるで怯まず対処している。

微妙な問題が多いせいもあってか、少々展開がわかりにくい章があるのが残念(たんにボクの理解力不足ということもあるとは思うけど)。あと、客観論旨と主観印象が混じるのも、人によっては読みにくいと感じるかもしれない。でもある種の現代史テキストとして、ボクはしばらく手元において参照したいと思っている。

2003年02月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際

LV1「東京広尾アロマフレスカの厨房から」

原田慎次・浅妻千映子著/光文社新書/700円

東京広尾アロマフレスカの厨房から
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ゴマンとある東京のイタリアンレストランの中で、ボク的にトップな一軒と思っている「アロマフレスカ」。そのシェフと食ライターとの対談(というかかなり独白に近い構成)を一冊にしたもの。シェフの修業時代の話や、料理、マナー、ワインの話の合間に要所要所で彼のレシピが挿入され、いいテンポで話は進む。レシピもエッセイ風に書かれておりいい感じ。

ただ、帯に書かれているような「いま最も予約のとりにくいイタリアン--人気の秘密がここにあります」というような内容ではない。秘密はわからない。食ライターのツッコミが足りないのかもしれない。単に人気シェフの四方山話に終わってしまっているのが残念。東京というある意味先端な大都市で大人気を博しているリストランテである。もっとその秘密に迫れば、ニューヨークやローマの先端シェフも読みたくなるような本に仕上がる可能性もあったはず。そういう意味では非常に中途半端な本になってしまった。いい素材を使ったのに料理の仕方をミスした感じ。

個人的に「へー」と思ったのは、肉は骨付きでないと熟成が進まないというところと、スパゲティはフォークを反時計回りに回した方がはねなくて食べやすいというところ。些末な部分だけどね。

2001年11月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒

LV3「思い通りの家を造る」

林望著/光文社新書/700円

思い通りの家を造る
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客観的な視点と独自の主観を常に維持している著者による「我が家建築論」である。
例によってイギリスの家についての言及から始まるが、独自の主観的意見が要所要所できっちり入ってくるのでやっぱりオモシロイ。外国の状況だけを語って誉めあげる本が多い中、外国の状況を踏み台に自分の土俵に勝負を持ち込んできて展開させる技量はさすがなものだ。というか、そういう当たり前のことが出来ていない本が多すぎると言うべきか。

実は、彼の家論はボクのそれとかなり似通っている。おととし、ボクはボクなりの思想を持って家を建てたが、この本を読んで「あぁすればよかった、こうすればよかった」という後悔に迫られることは少なかった。敢えて言えば、妻が嫌がったためにやめたドラム式洗濯機にすれば良かったかなということと、ソーラー発電に最初からすれば良かったか、というあたり。今は、おんぼろすぎるクルマを新しくするのをやめて、ソーラー発電にその分のお金をつぎこもうかと相談しはじめたところである。うん、この本は実用にもとてもいい。これから家を建てる人には必読の一冊でもあろう。

2001年11月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:実用・ホビー , エッセイ

LV5「アルケミスト」

パウロ・コエーリョ著/山川紘矢+山川亜希子訳/角川文庫/520円

アルケミスト―夢を旅した少年
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「星の王子さま」と「かもめのジョナサン」と「リトル・トリー」を一緒にしてゆっくり煮込んで濾したような本。
途中から砂漠が舞台になるので特に「星の王子さま」チックだな。先月読んだ「ベロニカは死ぬことにした」が(イヤラシイながらも)わりと印象的だったので取り寄せて読んでみた。コエーリョでは一番売れた代表作らしいし。

簡単に言うと、ある羊飼いの少年がピラミッドに向けて夢を求めて旅をする、という物語。
その中で様々な人生の知恵を得ていくということ。ありがちではある。でも文章は清冽で目線も温かい(かつ、甘すぎない)。様々な警句が手を替え品を替え登場する。一見「珠玉の言葉」と表現したくなる言葉群だが、中にはウソクサイ言葉もある。批判精神を持たずに読むと(ジョナサンとかがそうなりがちだったように)ちょっと新興宗教的一途な気持ちになってしまうかもしれない。そのくらいは(中途半端でなく)よく出来た言葉の洪水だ。

ファンタジーとは「子どもが大人になる物語」だと思う。そういう意味ではまさしくこれはファンタジー。何かを学ぶ気なら学べるし、時間つぶしに読み飛ばすならそれもいい。薄いし、南の海に持って行くには最適かも。
ボク自身は、実はこの手の本にちょっと食傷気味ではある。こういうのばかり読んでいた時期が長かったからかな。ちなみにある雑誌の特集によると、著者は「世界で一番読まれている作家50人」のうちのひとりだそうだ。なるほどー。

2001年04月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(海外) , ファンタジー

LV5「ベロニカは死ぬことにした」

パウロ・コエーリョ著/江口研一訳/角川書店/1600円

ベロニカは死ぬことにした
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生きる意欲をなくして自殺しようとした若い女性が、助けられた病院で「薬の飲み過ぎで心臓が弱っているからあと1週間しか生きられない」と宣告される。そしていろいろあって「生への意欲」「生きる喜び」を理解しだす…

みたいな、なんつうかありがちな物語なんだけど、中後半に見逃せない美しさが漂っていてとても印象が強かった。
その病院は精神病院なのだけど、そこに出てくる患者たち数人の人生模様描写が、主人公の描写を上回る勢いでよく描けていたりする。オチは「ああ、やっぱりね」的すぎるのだが、オチとか筋に関係ないところに主題があるのであまり気にならない。つうか小説というよりは研究書的記述もいろいろあったりして、なんだかそこらへんの境界があまりない感じの本でもある。

パウロ・コエーリョは初読だが、なかなか味がある。ちょっと「精神世界の本」的あやしさがありすぎる気もするが、他の本も読んでみたくなる感じ。

2001年03月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(海外) , 哲学・精神世界

LV4「ぼくは静かに揺れ動く」

ハニフ・クレイシ著/中川五郎訳/アーティストハウス/1000円

ぼくは静かに揺れ動く
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イギリスで記録的ロングセラーになっている本らしい。
結婚して6年になる妻と子供を置いて出ていこうとする男のたった一日の出来事・回想を書いた本だが、その意識の流れに忠実な構成、ビビッドな文章、共感を呼ぶ正直さが素晴らしい。特に前半。こりゃ名作にぶち当たったのかも、と襟を正し座り直して読み始めたくらいである。

ただ中盤が、その意識の流れを追うという構成上仕方ないことでもあるのだが、かなり冗長。
一行一行繊細な感情が詰まりすぎていて息も出来ない。繊細さの大安売り!という感じがしてくるくらいである。でも結局それを貫いた分、この本は成功しているのだろう。大人版「ライ麦畑でつかまえて」的に。

「馬鹿でよかった」の書評でも書いたが、説明しすぎているのがちょっとうざいかも。何度も何度も気持ちを説明しにかかる。もっと読者を信用してほしいぞ。ちゃんと伝わっているのだから。

原題は「Intimacy」。親密とか情交とかそんな意味。邦題は内容を受けた労訳だと思うが(こういう一文が中にもあるし)、これも説明しすぎの感がちょっとある。

2000年12月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(海外)

LV2「駅弁学講座」

林順信・小林しのぶ著/集英社新書/695円

駅弁学講座
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日本独自の食文化「駅弁」についての考察本。
JTBの月刊誌「旅」で16年間駅弁行脚をした名コンビが書き下ろした駅弁雑学集でもある。駅弁にどんなものがあるかといった初心者系ではなく、駅弁こぼれ話的マニア話が多く読んでいて面白い。中途半端に妥協してないし。

ただ、その分、総花的な資料部分と講義的お話部分が混在してしまい、全体にごちゃごちゃしてしまったのが残念。
知りたい情報を後から探そうとしてもなかなかたどり着けなかったりする。構成をもうちょっとすっきりさせたらより良くなったと思う。イイタイコトが多い時になりがちなパターンなんだけど。

個人的には「幕の内弁当の条件」がわかってスッキリした。正しい幕の内弁当とは「ご飯は小さな俵型に握ってあること」「おかずに煮物がしっかりついていること」が必要条件らしい。うーむ。俵型が必要条件とは知らなかったー。

2000年10月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒 ,

LV2「シメール」

服部まゆみ著/文藝春秋/2286円

シメール
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直木賞候補にもなった前作「この闇と光」が非常に面白かったので、かなりの期待と共に読んだ新作。

前作同様、独特のゴシック・ロマン的作風で、一度中に入り込むとひんやりと薄暗く気持ちいいのだが、前作ほどのインパクトも発見もなく、ずいぶん拍子抜けしてしまった。出だし良し。中盤もなかなかいい。が、服部まゆみならここからもうひとつひねってくるだろう、とワクワクしつつ読む進めると、エンディングは「は?」の拍子抜け。ああいうラストにする意味はアタマではわかるものの、心は承知しないなぁ。例えば昭和初期にこの小説が発表されていたらあのラストでもいいのだけど、これだけ不可解なことが日常的に起きる平成の世にこれを読むと、やっぱりちょっと拍子抜けなのだ。

結果として、全体に冗長に感じられてしまったのも残念。ちゃんと削いで書いてあるのに、読み終わってみると薄く伸ばして書いてあるような印象が残る。うーむ。あと、重要な伏線であるテレヴィゲームとの関連も中途半端。きれいに納まると期待したのに。

2000年07月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV3「書斎の造りかた」

林望著/光文社カッパブックス/838円

書斎の造りかた―知のための空間・時間・道具
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パソコンという超便利道具が出来て以降、書斎のあり方は確実に変わった。とはいえ、ハイテク城を書斎にするような極論ばかりが跋扈してもいまいちときめかない。そういう意味で、一番バランスが取れていて、かつ、実用的合理的な書斎論がやっと現れたと言える。しかもこういうことをウンチク込みで嫌味にならない程度の自慢を混ぜつつ語らせたら著者は日本一である。

書斎の造り方は、もちろん、生き方にも関係してくる。だから、この本ではさりげなく人生論が散りばめられていて、それがとてもクリアで面白い。人生論は文章論、教育論までも波及していき(もとが書斎論だからこそ)熱くならずにドライに語られている分だけ逆に説得力が増してもいる。

書斎の造り方に限って言えば、だいたい考え方は似ていた。まぁ掘り炬燵にすることとオフィス用コピー機を置くスペースを考えなかったのが、この本を読む前に家の設計が終わってしまった悔しさかな。

2000年04月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ , 実用・ホビー

LV5「江戸前ずしの悦楽」

早川光著/晶文社出版/2400円

江戸前ずしの悦楽―「次郎よこはま店」の十二カ月
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副題が「次郎よこはま店の十二ヶ月」。
つまり銀座の名店「すきやばし次郎」から分かれた店を、著者が3年以上毎月一度通い続けて食べ続け、寿司の本質に迫っている本なのだ。面白い。

以前「すきやばし次郎 旬を握る」(里見真三著/文藝春秋)という本を読んだが、ああいう「取材本」よりもやっぱり個人の視点・味覚・感想が入った本の方が面白いよね。そういう好例ではないだろうか。特に味覚表現がとてもいい。素直で実感がこもっている。寿司が食べたくなる。あー、また個人的寿司ブームがきそうだよー。

水谷八郎という職人の素晴らしさもこの本の魅力。ただところどころに彼がタバコを吸うらしき記述が出てきているのが気になるな、個人的には。タバコを吸う人が握る寿司はなんとなく生理的に受け付けないから。

著者の本は「ミネラル・ウォーターで生まれ変わる」「東京名物」に続き三冊目だが、どの本も実に誠実。ただ、きちんと「自分」を出してきているのはこの本が初めてかもしれない。これからの動静が楽しみなひとり。ちなみに著者の本業は映画監督。

1999年12月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒

LV2「服部幸應流うまい料理の方程式」

服部幸應著/KAWADE夢新書/667円

服部幸応流うまい料理の方程式―達人だけが知っている“味覚の黄金律”を初めて明かす!
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野崎洋光著の名作「美味しい方程式」の題名に似すぎていてちょっとイヤだったけど、内容的にはわりと興味深い項目もあった。

「塩梅の方程式」「旬の食材の方程式」「調理・味付けの方程式」「絶対味覚の方程式」「うまい店の方程式」の各項目別に、著者の秘中の秘を公開しているカタチになっているのだが、良くできている項目とそうでない項目の差が激しいとはいえ、面白い項目もちゃんと存在する。ある程度料理や食べ歩きの経験があった方が面白いが、それなりにわかりやすくまとめてあるので興味がある向きにはいいだろう。

ただ、ショルダーコピーの「達人だけが知っている味覚の黄金律を初めて明かす!」や、帯の「あなたの食の常識がガラリと変わる!」はずいぶんオーバー。ちょっと誇大。

1999年11月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒

LV5「ムツゴロウの動物交際術」

畑正憲著/文藝春秋/1524円

ムツゴロウの動物交際術
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以前畑さんの家で「そのマジックみたいな動物の手なづけ方をそのうち公開してください」とお願いしたら「いま書いているんですよー」とおっしゃった。あれから3年。そんな本が出たらすごいものだ、と思っていたらついに出た。

「この本では僕の企業秘密をすべて公開している」と書いているだけあってまさに秘伝の技がそこかしこ。動物とつき合うのと人間とつき合うのとはそう違いはないのだなという不思議な実感も最後にはあってなかなかに深いのであった。最後の方が少しダレルが、全体に動物とのつきあいのノウハウは世界一盛り込まれていると思う。

いま著者はテレビとかからちょっとキワモノ的に扱われているところがあるが、動物関係学においては世界でもトップクラスの知識&現場のノウハウを持っている天才。もうちょっと評価されてしかるべきである。

1999年10月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:雑学・その他 , エッセイ , 実用・ホビー

LV5「この闇と光」

服部まゆみ著/角川書店/1500円

この闇と光
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掘り出し物。

服部とくるとまず「服部真澄」となってしまうが、「まゆみ」もかなりいい。実に芳醇な空気を持った上質なミステリーだ。とっても上手に文章を刈り込んでいるのが特に気に入った。簡潔にして明瞭。それでいてこれだけ豊かな表現をしているあたりがただものではなさそう。ミステリーとしての展開も見事で、思わせぶりなラストがまた好きである。

比べて悪いが、服部真澄は映画的。それに対して服部まゆみの本作は小説でなければ出来ない闇の濃さがある。映像化はまず不可能。そこが面白い。他の本も読んでみようっと。
なお、装丁は思わせぶりすぎて嫌い。内容に比べて俗っぽすぎる。

1999年01月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV2「リンボウ先生ディープ・イングランドを行く」

林望著/文藝春秋/1762円

リンボウ先生ディープ・イングランドを行く
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ボクたち夫婦は新婚旅行でイギリスを24日間に渡ってレンタカーで旅した。

そういうこともあって、かなりイギリスびいきである。
だから、ということもあろうが、かなりこの本は楽しめた。著者自身の手による写真も素晴らしく、ディープ・イングランドが存分に楽しめる。ただ、意外とすぐ読めてしまうことと(こういうエッセイはだらだら長く楽しみたい)、イギリスにほとんど興味がない人を惹きつけるようなインパクトにはかける気がするのが残念。

でも次にイギリスに行くとき行ってみたいところが出来たのがうれしいな。個人的には。

1999年01月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル: , エッセイ

LV3「ムツゴロウのどこ吹く風」

畑正憲著/潮出版社/1200円

ムツゴロウのどこ吹く風
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日本という狭い世間からは過小評価され続けている天才、畑正憲。彼のエッセイ集だ。

何が天才ってその「生き方」「面白がり方」「科学的分析力」「真理を掴む力」などが常人とはかけ離れているし、それこそ動物に対しての理解・問題意識はもっともっと評価されるべきだろう。どうも日本人はああいう「特別な人」を認めないばかりかバカにしてしまう。失ってから気付くなよ。もうすぐ死んじゃうぞ(かなり失礼)。

あ、この本の話の話ですね。ええと、いつものエッセイです(←なんじゃそりゃ!)。
いや、だから、動物王国をめぐって起こる事件を著者の視線で解剖して快調に読ませるのだ。ただ、読みやすい分、なんというか残りにくいところがある。もっとゴリゴリ重く書いてほしいなぁ、彼には。

1998年12月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

LV5「不夜城」

馳星周著/角川書店/1500円

不夜城
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初版が96年。ずっと評判であり続け、映画化もされ、いまだに売れている新宿を舞台にしたハードボイルド。

いまさらだなぁ、と思いながら、やっと読んだ。一読面白い。特にラストなど甘さのヒトカケラもなくショッキングだが、こうでなくっちゃという想いも強い。まぁ全体に好きだな。でもなぁ、なぜか続編を読む気にならない。もうお腹一杯だ。
なぜなんだろうと考えるんだけどよくわからん。「生き残る」という強い欲望を物語の縦軸に感じるのだが、その動機付けが全く見えてこないからかな。本能だよ、と言われればそれまでなんだけど、もう少しそこにカタルシスがあったら(たとえば主人公の過去設定とかで)もっと感動があったかもしれない。

1998年11月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV2「ミネラルウォーターで生まれ変わる」

早川光著/マガジンハウス/1300円

ミネラルウォーターで生まれ変わる
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ボクが水に凝る原因となった本。
おかげで家ではヴィッテル、外ではエビアンが必需品になってしまいました。「単なる水」としか思っていなかったミネラルウォーターだけど、成分を見ていくとこんなに効果の違いがあり、カルシウムを取るにしてもマグネシウムとのバランスだと牛乳よりも優れた飲料なんだねぇ(もちろん商品による)。しかも煮沸殺菌やフィルター濾過をしていないヨーロッパのものがこれだけ優れているとは。

実はミネラルウォーターを効果的に飲んで8キロやせたという人を知っていて、それもあって買ったんだけど、かなり佐藤家の生活に影響を及ぼしましたね、この本。コントラックスにしようかなぁ…。でもアレちょっと飲みにくいんだよなぁ。カルシウム多すぎて。

1998年11月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒

LV3「オードリー・ヘップバーン」

バリー・パリス著/永井淳訳/集英社/上下各1900円

オードリー・ヘップバーン〈上〉
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副題に「永遠の妖精。その真実の人生を知る伝記決定版!」とある。

ヘップバーン・ファンなら誰しも知りたがる彼女のプライベートが書いてあり、各出演映画でのエピソードも満載。それなりに労作であろうが、残念ながら上下巻を通して読んでも彼女の生身の姿は浮かび上がってこなかった。

エピソードを充実させようとするあまりか、出てくる名前が膨大な数に上り、読んでいる方としてはかなり混乱がある。
ファーストネームとラストネームが混在していたりするのもつらいところだ。また、これは「オフィシャルな(遺族が認める)伝記ではない」らしいが、それならもう少し自由に突っ込めるのではないか、と思われる箇所が多々ある。なんかちょっと中途半端な印象だ。

ボクは周辺情報をかなり掴んでいる方なのでわりと楽しめたが、そうでない人にはちょっとつらいかもしれない。

1998年07月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:自伝・評伝 , 映画・映像

LV3「くりやのくりごと」

林望著/小学館/1365円

くりやのくりごと―リンボウ先生家事を論ず
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こういうことを自慢させたらこの人にかなうものはいない。普通の人なら嫌味に聞こえることもこの人が語るとそうでもなくなるのだ。
副題は「リンボウ先生家事を論ず」。つまりくりや(台所)を中心とした家事全般についての教育的指導エッセイだ。

ド頭から「ステンレスの無水鍋なんてものを、私は調理道具として喜ばしいものとは認めない」と始まる。
ステンレスの無水鍋を愛用しているボクはまず最初からギャフン(死語)なのだが、著者の語りにかかるとなんとなく納得してしまうから参る。それが偏見であってもここまで堂々と自論を開示されると押し切られてしまうのだ。

一事が万事この調子。もちろんその論旨は明解で理屈もあっており、そこらのハウトゥーものの数倍役に立つのだが。ただ、前半の快調さに比べて後半が少し「繰り言」めいたのが残念かな。

1998年06月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

LV4「人生上達の術」

畑正憲著/マガジンハウス/1500円

ムツゴロウの人生上達の術
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ボクは著者の「術」が好きである。「ムツゴロウの青春記」を読んだ中学時代から彼の物事上達法に心酔し学んできたところがある。本質をつかみそこに到達する術を実にオリジナルに生み出す名人なのだ。

この本はそんな著者のノウハウ集と言ってもいい。アウトドア、スキューバ、釣り、乗馬、海外旅行、語学、競馬、麻雀、グルメ、ペット、ゴルフ、囲碁と、それぞれについて他人より充実した経験を誇る著者がオリジナルな「上達の術」を書いているのだから役に立たないわけがない。

が、残念なのは「紙数が少ない」ので手短すぎること。
これらすべてを語って317ページではとても足りない。ボクは彼の手短でない経験をきちんと読みたい。ここまでいろんな経験が豊富な超人はなかなかいないので、もう少し詳細に書いてほしいと(贅沢ながら)望んでしまうのだ。

1998年06月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

LV3「リンボウ先生遠めがね」

林望著/小学館/1600円

リンボウ先生遠めがね
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高尾慶子著の「イギリス人はおかしい」という「本当はイギリス好きだけど今のイギリスやっぱり嫌いよ」という内容の本(ちょっと違うか…)を読んだらなんとなくイギリス好きの大家の本を読みたくなり、続けてリンボウ先生の新刊を読んだ。

ここにはイギリスの話題はほんの少ししか出てこないが、彼が愛するイギリスは「古いイギリス」なのである。そういう意味では上記著者も同じなんだな。
この新刊は著者のいろんな好奇心を気軽な文体で表明しているもの。特に旅における食べ歩きの様が非常にボクの気分に近く面白かった。ただ、全体的にちょっと新鮮味が薄れているのも確かで、好奇心が細かいところ・わかりやすいところに入っていきすぎている気がする。もうちょっと大きな題材、独自の題材に取り組んで欲しいし、それを読みたい。贅沢だろうか。

1998年04月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル: , エッセイ

LV1「シャンパンの教え」

葉山孝太郎著/日経BP社/1200円

シャンパンの教え
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前著「ワイン道」はスノッブでくだらない日本のワイン文化を逆手にとった傑作であった。ワインを思いっきりスノッブな位置に祭り上げて的確な効果を出していたのである。

この本は同じ著者がシャンパンについて書いたものだけにかなり期待してしまったが、もともとシャンパン自体ワインよりかなりスノッブであるせいか、前作で使った疑似スノッブ化の効果があまり出ず、ちょっと苦しかったかも。
難しいことではあるが、シャンパンについてはド初心者の読み手(ボク)でも笑えて楽しめる内容までは行き着けなかったようだ。惜しい感じ。

1998年01月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒

LV5「ホーソンの樹の下で」

林望著/文藝春秋/1524円

ホーソンの樹の下で
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久しぶりに抑えた筆致で書き込んでくれた林望の本格随筆。
著者はこのところわりと軽くエッセイすることが多かったのだが、これをボクはとても残念に思っていた。背筋ののびたしっかりした随筆を書ける数少ない作家だと思っていたからである。
が、今回は題材も文体も切り口も著者ならではのもので、随所で読者をうならせ刺激を与えてくれる。これでエッチでお笑いな題材についても抑えた筆致のまま書いてくれていたらかなりの名作だったのになぁ。そういう題材のときだけ、照れてしまうのか、なんだか急に筆が軽くなるのだ。惜しい! 

1997年11月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

LV4「時間旅行者は緑の海に漂う」

パトリック・オリアリー著/中原尚哉訳/ハヤカワ文庫/820円

時間旅行者は緑の海に漂う
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カート・ボネガット・ジュニアばりの展開と文体で不思議な世界に誘導してくれるSF異色作。

前半が特に見事。純文学といっても通用するような無駄のない文章、そして荒唐無稽な語り口。が、後半その緊張が途切れてしまい凡作になってしまったのが非常に残念。でもまぁ楽しませてもらったけど。
通読してみて思うのだけど、こういうタイムトラベルものは変にリアリティがないほうが面白かったりする。その点このSFはリアリティがぶっ飛んでしまっているので印象は強い。破綻がいっぱいあるのだが、妙に印象に残る一作だ。

原題は「Door Number Three」。
この邦題は、内容からするとわかるんだけど、あんまりだ。著者は「第3のドア」という言葉に他の意味をちゃんと含ませている。なぜ素直に邦題にしないのだろう。こういう邦題にしたからといって売り上げが増えるとは思わないしなぁ…。

1997年11月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:SF

LV5「鷲の驕り」

服部真澄著/祥伝社/1800円

鷲の驕り
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勢いで書いたせいかちょっとシンドイところもあった前作「龍の契り」に比べて格段の出来。じっくり自信を持って書いているのがうかがえる。2作目のプレッシャーを見事に跳ね返す快作である。

複雑に交錯するストーリーを見事に紡ぎあげていてただただ感心するしかないが、物語の前の方で起きた事件の謎のいくつかが最後の方まで謎のまま残っていて読む側はすっかりそのことを忘れている、なんてことがいくつか起こっている。書き手側は鳥瞰できるからそこらへんは「上手に紡いだ、ウフフ」と思っているかもしれないけど、読み手側は読み返したりしつつ読まなければよく理解できない。そのくらいかな、文句は。

それにしても……僕と同じ1961年生まれだって。なんだかいろいろ反省してしまうボクなのでした。龍(中国)、鷲(アメリカ)ときて、次は熊(ロシア)かな。

1997年07月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV5「ええ音やないか」

橋本文雄・上野昂志著/リトル・モア/4500円

ええ音やないか―橋本文雄・録音技師一代
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副題が「橋本文雄・録音技師一代」。帯に「“耳”で映画を観る」とある。

戦後すぐの大映(溝口健二!)から日活黄金期、角川映画、最近の森田芳光、阪本順司監督作品に至るまでの長きにわたり録音技師として第一線で働き続けている橋本氏のインタビュー集である。
橋本文雄の一代記であるのみならず、貴重な戦後日本映画史の資料であり、技術録・録音ノウハウ集であり、撮影現場のエピソード集でもある。分厚い。645ページ。が、それだけのことはある。

読了するのに3ヵ月かかってしまったが、その濃い内容に圧倒された。
はっきり言って映画の見方が変わる。そして邦画をいろいろ見たくなる。川島雄三、斎藤耕一、中平康、澤井信一郎…それらでの橋本文雄の仕事を目の当たりにしてみたくなる。ハリウッドのカラフルな録音に比べてどうしてもモノクロチックな邦画の録音がいままで嫌いだったが、それが偏見なのではないかと根本から考え直される思いである。

よくぞ現役バリバリのうちにインタビューしてくれたと感謝したくなるような本だ。
敢えて言えば巻末に索引を作って欲しかった。なにしろ資料としても第一級であるのだから。

1997年06月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:映画・映像 , ノンフィクション

LV5「龍の契り」

服部真澄著/祥伝社/1800円

龍の契り
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確かにすごい力作である。日本人が書いたとはとても思えない国際謀略サスペンスで、大部を飽きさせずに読ませる筆力は並のものではない。しかもデビュー作。これを褒めずして…と言いたいところだが、スゴクいいところまで来ているだけに惜しくてたまらない。

まず描写にムラがある。オーバーに書きすぎるときがあってしらける。キャラの立ち方にメリハリがない。だから読み終わってからの印象が薄い。設定も都合が良すぎる。こんなにうまく行くかよ、とぼやいてしまう。全体に「薄い」のである(本自体は厚い)。上記「ホワイトアウト」と比べるとよくわかる。細部の書き込みが「薄い」分ストーリーだけの本に終わっているのだ。

でも三ツ星だろうなぁ。これを褒めずして…だ。さっそく次作「鷲の驕り」を読もう。龍(中国)の次は鷲。アメリカですね。ってことは3作目は熊(ロシア)か?

1997年06月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV3「一人の男が飛行機から飛び降りる」

バリー・ユアグロー著/柴田元幸訳/新潮社/2200円

一人の男が飛行機から飛び降りる
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寝る前のお楽しみに毎日2~3編ずつ読むこと約2ヵ月。311ページの中に149編の短編が入っている超短編集だ。

その内容を一言で表現するなら、夢(悪夢)をそのまま文章にした、という感じか。寝る前に現実と非現実の境をなくすには最適。アメリカの出版社の宣伝文句に曰く「フランツ・カフカとモーリス・センダックとモンティ・パイソンが一緒になって夢を見ているような」と。
ちなみに柴田元幸訳の本はなるべく読むようにしている。ハズレがないから。

1997年04月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(海外)

LV1「食べる」

服部幸應・山本益博著/講談社/1600円

食べる―店の流儀、客の心得
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副題は「店の流儀、客の心得」。食の両巨頭といってもいいふたりによる食談義である。

たとえば太田和彦の「ニッポン居酒屋放浪記」などに比べると、食べることから透けて見える人生みたいなものが描かれていない浅さがどうしても気になってしまう。本の構成がそうなっているので一概に比べられはしないし、そういう狙いでもないだろうから仕方ないのだが、こういう食の体験談の切り売りってそんなに読者の共感を呼ばないのだなぁとあらためて思った。ふたりの味に対するこだわりとセンスはわかるのだが、その後ろにある深みが見えてこない。食の本ブームでもあるが、もう少しじっくり書き物をしてほしいおふたりではある。

1997年04月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒

LV4「魔の島漂流記―ガラパゴス諸島を行く」

畑正憲&ジェルミ・エンジェル著/フジテレビ出版

ムツさん ジェルミ 魔の島漂流記―ガラパゴス諸島を行く
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御存知ムツゴロウさんの新作。
TVでの姿しか知らない人がほとんどなのであろうが、ボクは彼の著作とともに青春を過ごした。ムツゴロウをバカにする人は彼の「青春記」「結婚記」などを読んでからいって欲しい。と、力みつつ、今回は去年の10月にこの欄で取り上げたこともあるジェルミとの共作である。短編が交互に出てくる体裁でガラパゴスをレポートしている。

文体が全く違うだけに最初は読みにくいが途中から文章が心を通わせ合いだすのが醍醐味。テンションが双方同時に上っていく感じ。共著的な甘さもあるが、ボクは好き。

1996年09月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル: , エッセイ

LV3「書誌学の回廊」

林望著/日本経済新聞社/1631円

書誌学の回廊
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書誌学なんて普通の人にはあまり縁がない学問なのだが、その面白さをわかりやすく説いてくれ、入口までスムーズに連れて行ってくれる。しかも別に書誌学の解説本に終わっているわけでもなく、そこからいろんな世界へ広げていってくれ、知識を得ることの楽しさまで教えてくれる。うん、たいへん面白い。

博物館に置いてあるあのデザインの悪い日本特有の出版物「古書」。あれって何なんだろ、って思ってる人に新しい世界を開いてくれる本。博物館に行くのが楽しくなること請け合い。

1995年10月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ , 教育・環境・福祉

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