と
「ポルトガル夢ホテル紀行」

amazonポルトガルの素晴らしいホテルの紹介を目的とした紀行文。臨場感溢れる軽快な文章と美しい写真で、普通のガイドブックとは一線を画している。
ポルトガルにはポウサーダ(Pousada:ポサーダ、ポウサダと読むガイドブックもある)という国営のホテルがある。スペインにあるパラドールと一緒で、古城や古い修道院などを改装して泊まれるようにしたもので、大都市から地方の小都市まで国内隅々まで広がっている。この本はそのポウサーダを中心に紹介している。
2007年3月末にボクたち家族はポルトガル旅行をした。そのときにずいぶんお世話になった本である。この中に紹介されているホテルのほんの数軒行けただけであるが、おかげで満喫できた。ポルトガルの日本語ガイドブックは少ないし、内容もいいので、ポルトガルを旅行する人にはオススメしたい。地方の小都市のポウサーダに泊まらずしてポルトガル旅行をしたとは言えない。いや、マジで。
2007年03月20日(火) 19:07:39・リンク用URL
ジャンル:旅
「報道は欠陥商品と疑え」

amazon題名が内容のほとんどすべて表している。
報道はもともと完成された商品ではないのだ。欠陥がありがちな商品なのだ。そこに気づかせてくれただけで、この本の存在意義がある。そういう視点を与えてくれてありがとう、という気分。
そう、マスコミ報道の多くは「欠陥商品」なのだ。人件費の安い国が粗製濫造している、3日持てばまぁいいや製品なのだ。そりゃそうだ。毎日新しい素材が納入されて、素材研究する間もなくそれを加工し出荷しないといけない。とにかく紙面・電波を埋めないといけない。クオリティ管理など無理である。そんな工場で作られた商品に文句を言う方がバカだ。バカではあるが、工場側も謙虚さが足りない。欠陥商品が混じっているのに謝りもせず、いや「国民が望んでいるのだ」と逆に威張り、商品を出し続ける傲慢さ。これがメーカーだったらとっくにつぶされている。
マスコミの煽動が戦争を導くことも過去にあった。国民もこの欠陥商品に心を奪われやすい。常に「欠陥商品かも」と疑ってマスコミ報道に接しないとヤバイのだ。もちろん、志の高い報道もちゃんとある。有用な情報もたくさん流れている。でもそれらを見分けるのは相当鍛えられた人でも難しいのが現状だ。我々はまず無批判に報道に接するのをやめることから始めよう・・・
と、いろいろ考えさせられる本なのだが、実は内容はそんなに濃くはない。でも、表題の言葉をしっかり理解するために、読んで損はないだろう。
2002年11月01日(金) 12:00:00・リンク用URL
「『極み』のホテル」

amazon2001年3月の時点で日本全国に8220軒のホテルが営業しているそうだ。この中で(ってすべてを回ったわけではもちろんないだろうが)著者が厳選した113軒が静かなエッセイとともにここに載っている。
「超高層を極める」「リゾートを極める」「高士を極める」など、テーマ別になっているのもわかりやすく、地方別ホテル別に構成するのとまた違った味が出てとてもいい。
意外なホテルが取り上げられていたり、近くにそんなホテルがあるのかと驚いたり、いろいろ発見しながら楽しんだ。
日本には日本旅館という別の形態があり、高級ホテルと高級日本旅館のどっちを選べと言われたら後者かなぁと思うボクではあるが、この本を読むと日本のホテル文化もずいぶん成熟してきたようである。ちょっとホテルに泊まるための旅に、出かけてみようかな。
2002年07月01日(月) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:旅
「舌づくし」

amazon季刊誌「四季の味」での著者のコラムを集めたもの。
すべてのコラムが料理や味の思い出に収束しているから一見食べ物が主役の本のように思えるがさにあらず。テーマは確かに「味」ではあるが、ある時はメインディッシュになり、ある時は付け合わせになり、ある時は調味料になり、著者の半生というお皿を様々に彩る役目しか得ていない。であるから、味エッセイと括ってしまうと的を射ないことになる。というか、そう括ってしまいたくない魅力に溢れた名エッセイ集だ。
フルブライトで留学し、毎日新聞社を経てサンデー毎日の編集委員などを歴任した著者は、とにかく経験豊富。世の中の見方も一元的ではなく、たいへん「大人」である。そしてまたそれを静かで味わい深い文章に託せる筆力を持つ。菊池寛賞や日本推理作家協会賞、新潮学芸賞などを受賞しているのもうなずける文章力。一読魅了されてしまった。
ほとんど半生記に近い構成である。このエッセイを読むことで著者の半生は浮き彫りにされてくる。淡々とした名文で綴られたそれは季節と味と様々な人生が交錯して飽きさせない。決して派手ではないが、着飾らない素朴で滋味溢れる食事をしたあとに感じるような深い満足感。折に触れ読み返したい本になった。
2002年02月01日(金) 12:00:00・リンク用URL
「斧」

amazon原題である「THE AX」を訳すと「斧」となるが、転じて「クビにする」という意味にもなるという。
この本は、不況で会社を解雇されたある技術者が、再就職するために、再就職面接のライバルとなりそうな同じような状況の(つまり解雇された)技術者たちを次々に殺していき、再就職をものにしようとする、というユニークなミステリーである。
こう書いちゃうとなんだかコミカル・サスペンスっぽいし、荒唐無稽だし、テーマがしょぼい感じがするだろうが、さにあらず。一人称で語られるその物語はリアリティばりばりであり、主人公がリストラで追いつめられた心情も、そこから殺人に至る心理も、殺しの場面のドキドキ感も、すべて迫真に満ちている。独特の語り口も魅力的で、非常に出来の良いミステリーに仕上がっているのだ。「2001年度このミステリーがすごい!」の第4位になったのも納得なのである。
このミステリーの質の高さを支えているのはもうひとつある。主人公の独白の要所要所に出てくる人生に対する分析が実に魅力的なのだ。ちょっとした箴言が活きているのだ。
全体に佳作っぽい作品なのだが、ボクはとっても好きである。トンプソンと比べられることが多いらしいが、確かにトンプソンっぽい。名作「ポップ1280」をどことなく彷彿とさせる。
2002年01月01日(火) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:ミステリー
「トンデモ本の世界R」

amazonトンデモ本シリーズの最新作である。相変わらず痛快であるし、情報を鵜呑みにせず何事も疑ってみるという「知性の第一歩」をあらためて認識させてくれる本である。
UFO本や宇宙人本、超能力本が特に取り上げられがちのトンデモ本の世界であるが(もちろんそれらは定番として取り上げられているが)、この本では、小林よしのりの「戦争論」や週刊金曜日の「買ってはいけない」をはじめ、大藪晴彦や落合信彦、果ては三島由紀夫までトンデモ本として取り上げられている。
論旨は明快。活字や映像を信じがちな自分たちの意識に猛省を迫られる。と同時に、このトンデモ本解釈自体がトンデモである可能性もちゃんと持たないといけないことにも気付かされる。つまり「自分の知性でちゃんと調べ、信じたこと以外、ぜ~んぶ疑ってかかれ」ということだ。情報に溢れているこの世の中を生き抜いていくに必要な最低限のリテラシーなのかもしれない。大変だけどねー。
2001年12月01日(土) 12:00:00・リンク用URL
「セブン・イヤーズ・イン・ジャパン」

amazon副題は「僕が日本を愛した理由」。
名古屋グランパスで大活躍し、日本人に忘れ得ぬ思い出を与えてくれたストイコビッチ(愛称:ピクシー)の自伝である。活字が大きく文章量も少ないので1時間もあれば読めてしまう本だが、ピクシー・ファンなら充分楽しめる本であろう。ボク自身そんなに頻繁にJリーグを観る方ではないが、ピクシーはなぜか好きで彼のプレーはわりと追っていた。そういう意味ではボクにはわりと楽しめた本である。
子供の頃の話や、日本に来てからの様々な出来事への感想も親近感を持って読めた。ただ、彼しか書けないことはきっともっとあったはずだし、日本に対する言及も表面的でありがちな内容だし、読み終わっての残尿感がかなりあったことも事実。サッカーの本質、Jリーグへの提言、W杯の彼なりの捉え方、などなど、もっと腰を据えてしっかり書いてもらいたかった。
2001年12月01日(土) 12:00:00・リンク用URL
「旨いメシには理由がある」

amazon副題は「味覚に関する科学的検証」。
著者は九大のシステム情報科学研究員教授で「味覚センサー」を開発(びっくりするほど原始的な機械だが、非常によく出来ている)。それにより、人間がおいしいと思う感情は食品のどこで起こるのか、がしっかり分析されていて面白い。うん、面白いのだ。かなり面白い。特に要所要所で出てくる具体例は目から鱗がたくさん。豚骨とかビールとか牛乳とかの分析や「プリンに醤油でウニ味」とかの例示も興味深いものがある。なるほどー、味ってこういうことなのか、がよくわかる。
でも、でもでも、ちょいと専門用語多すぎ!
専門用語(化学用語)が多いからこそ価値がある、とも言えるが(同じ主題で専門用語なしだったらなんともいい加減チックなものになるだろうし)、読んでいて苦痛になるほど多いとちょっと考えもの。内容的にはとっても面白いのに、再読したくないのはこういうところ。専門用語が苦痛じゃない人には三ツ星な本であろう。きっと。
2001年05月01日(火) 12:00:00・リンク用URL
「食べる--七通の手紙」

amazon七人に宛てた手紙型エッセイ。叫ぶ詩人の会のドリアン助川が、食べ物に触発されて書いた手紙エッセイなのだ。
宮沢賢治、川崎のぼる、ポル・ポト、兼高かおる、青島幸男、チャールズ・ダーウィン、そして無名のギンズバーグに似た釣り人…。
語りかけ文体と独白文体が混ざり合って不思議な手紙になっているのだが、体温の高いその文章は読者にある種の昂揚感をもたらす。著者の個人的体験と読者の個人的体験が重なったときは特に強いカタルシスを感じさせる力がある(ボクにとっては川崎のぼるの項)。おもしろい。
でも、リズムに乗り切れないときもあって、そういうときは著者は平気で読者を置き去りにする。残念といえばそこらへんが残念。リズムにだけは乗せてほしかったな、と思うのだ。
2000年03月01日(水) 12:00:00・リンク用URL
「夢果つる街」

amazon再読。
初読はいつだったかな。ホームページを始めるずっと以前。10年ほど前。当時はこの本の著者、トレヴェニアンに凝っていた。この頃新作出てないよね? どなたか知っていたら教えてください。
正月ころ、ちょっと自己憐憫に浸りたい気分に陥っていて、新作よりもなにか懐かしいのが読みたいな、と、本棚前をうろうろしていて久しぶりに手に取った本。
まさに気分ぴったり。ラポワント警部補と一緒に自己憐憫の嵐に一緒に浸ってみたい…。読み返してよかった。やっぱり大名作ミステリーだ。いや、ミステリー的ストーリーよりも、この小説は細部がいい。ラポワント警部補と一緒に「ザ・メイン」の裏通りを歩くだけでなんか人生のどうしようもなさみたいな気分が襲ってきて、自己憐憫希望者には最適なのだ。あ、もちろん普通の気分で読んでも大名作ですよ。好きだなぁ、この本。この頃あまり著者の名前を聞かないから、絶版になっていたりして…。
まだ読んだことがない人は、ぜひどうぞ。失望させません。絶版になっていないことを願います。
2000年02月01日(火) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:ミステリー
「ニューヨーク遥かに」

amazon小説。
この人はニューヨークに思い入れが強すぎるのだろう。いままで何冊もマンハッタンについてエッセイを書いている。
それはそれぞれ味があるものだ。でも今回のように小説となると途端に味と勢いをなくしてしまい凡庸になってしまう。マンハッタンを作家の視点でもっと消化してから書いて欲しい。ガイドブックがわりになって楽しいし、ニューヨークをよく知っている人にとっては絵も浮かんでうれしいが、小説としてはちょっと弱い一作。
1997年05月01日(木) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:小説(日本)




