2007年02月
「木を植えよ!」

amazon名著「魂の森を行け」で半生と生き方とその活動を丹念に描かれた宮脇昭が書いた本である。
その破格な人生、そして切実なる森への想い、鎮守の森を守る活動など、実は「魂の森を行け」を読んだ方がよくわかる(感想はこちら)。まだ読んでない方はそちらを先に読んだ方がよい。で、「魂の森を行け」を読んだ人は100人が100人、宮脇昭自身の言葉に触れたくなるであろう。そういう意味ではTOO MUCHなほど触れられるこの本は貴重だし、欲望を心底満たしてくれる。
過激な題名を持つこの本は、哲学や提言というより実践的プロモーションな本である。
とにかく四の五の言わず木を植えよ。理由と背景はこれこれだ。木の選び方はこれこれだ。やり方はこれこれだ。「そんなこと自分では難しい」と思っている人にはこういう方法もある。とにかく植えよ。すぐ植えよ。と、畳みかけてくる。その畳みかけの激しさはちょっとウットリくるほどだ(文章が激しいというわけではない)。
「ヒトは『森の寄生者』の立場でしか、持続的には生きていけないのです。これは、人類が地球上で生き延びる限り永遠に続く冷徹な事実なのです」
……この言葉に少しでも引っかかる人は必読だ。
2007年02月08日(木) 19:24:12・リンク用URL
「真鶴」

amazon文学を読む楽しさを心ゆくまで味わわせてくれる名作。美しく、そして怖く、なんとも不思議な物語なのだが、この小説世界から離れがたい気持ちを起こさせてくれる。
川上弘美は新鉱脈を掘り当てたのかも。
「蛇を踏む」のころのちょっとおどろおどろしい異化の表現と、「センセイの鞄」にあるような性善説的ホンワカ感とが見事に融合してきて、なんというか、川上弘美にしか書けない地平が目の前にぐわーーっと広がっている感じを受ける。マジで舌を巻いた。
言葉の選び方や会話の描き分けの鮮やかさ、ひらがなと漢字の使い分け、浮遊感と現実感の出し入れなど、細かいところまで計算しつくされ、前半と後半では手触りまで違い、うわぁと圧倒された感じ。ルビの出し入れにまで技を感じる。でも技がわざとらしくなる寸前で止めている。この辺の微妙なセンス。素晴らしいなぁ。
2007年02月15日(木) 23:47:24・リンク用URL
ジャンル:小説(日本)
「ひとり日和」

amazon芥川賞受賞作。著者24歳の作品である。
芥川賞選考会では、珍しく石原慎太郎と村上龍の意見が合い、同時に激賞したらしい。そりゃ読まざるをえないでしょう。
なんだろう、「イマの気分」についていろんな発見を与えてくれる小説だった。時事小説という意味ではなく、ふんわり捉えがたい「今の若者の意識の流れ」みたいなものを見事に紙の上に定着させてくれた感じ。全体に漂うのはイマが持っている微妙な「薄さ」なんだけど、文章自体は「濃い」のである。薄いものを薄く書いたり、繊細なものを繊細に書いたりするのは意外と難しくない技だと思うのだけど、薄いものを濃く表現したり、繊細なものを乱暴に表現したりするのって、かなりハイブロウな技だと思う。その辺が素晴らしいと思った。あ、この場合の「濃い」は、濃厚な表現という意味ではなくて「感覚に逃げていない」みたいな感じなんだけど。
主人公の「できるだけ皮膚を厚くしていっぱしの人生を生きてみたい」という「うっすらとした望み」が、様々な要素に背中を押されて、ゆっくりとカタチになっていく過程がとってもリアルだ。そして妙に読者を安心させてくれる。この安心感が得難い。また、表現や場面演出の上手さも素晴らしい。情景や季節の描写をここまで好ましく読んだ小説も近来にない。好きかも。
2007年02月23日(金) 23:59:30・リンク用URL
ジャンル:小説(日本)
「いつかパラソルの下で」

amazon児童小説の第一人者である著者のターニングポイントになったと言われる長編。もちろん児童用ではない。
病的なまでに厳格な父と、その影響を理由にひねくれて(?)生きている兄姉妹。父の突然の死をきっかけにバラバラになった家族が集いだし、ひょんなことから父の人生を探しに佐渡へ渡る…。
わかりやすい設定と典型的な「SEEK & FIND」展開に強い既視感がある。あぁこう展開してこうなるんだろうなぁと途中で読める感じ。ただ、細部の表現や会話が上手なのと、絶妙な脇役の存在、主人公のイマっぽいのほほんさなどがそれを救い、結果としてとてもいい佳品となっている。わりと好ましかった。
ラストの方で主題みたいなことをわかりやすく言い過ぎなのが難かな。あと、一番最後の「手紙」はちょっと蛇足かも。これだけわかりやすい「SEEK & FIND」なら、あまり説明はしなくても読者はわかる気がする。
2007年02月21日(水) 23:28:55・リンク用URL
ジャンル:小説(日本)




