トップ > おもしろ本 > 月別一覧 >

2007年01月

LV5「ざらざら」

川上弘美著/マガジンハウス/1300円

ざらざら
amazon
出す本ごとに充実を感じさせる川上弘美の短編小説集。8ページ前後の超短編が23編収録されている。

読みはじめて著者の世界に浸りきるまでは「なんだか物足りない」「なんてたよりない」「さらりとしすぎてる」という印象だが、4,5編読んだあたりからだんだん気持ちよくなりだし、最後の方では「あぁこのままずぅっと読み終わらないと良いなぁ」とか思った。なんてやわらかくさらさらと言葉をつむぐ人だろう。表面はさらさらなのに、その少し奥にきちんとざらざらを隠している(表題の「ざらざら」はそういう意味ではないけれど)。ちゃんと描き込んでいるのに肩に力が全く入ってないように見える技も素晴らしい。

女性が読むとより強い共感を覚えるのだろうなと、少し嫉妬しながら読んだ。気楽にさらっと読めるが、じっくり再読味読してみたくなる逸品。ボクは好き。

2007年01月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV5「一瞬の風になれ」

佐藤多佳子著/講談社/第一部1470円, 第二部1470円, 第三部1575円

一瞬の風になれ 第一部  --イチニツイテ--
amazon
三巻に渡る、ものすごく真っ直ぐでイノセントな陸上短距離一人称小説。
ちょっと前に買ってあったのだが、直木賞候補になったと知って慌ててこの連休に読んだ。直木賞とれるかな。どうなんだろう。シンプルすぎる気もする。

「走る」実感をここまで感じさせてくれる本もめったにない。ベッドで読んでいる間、何度もカラダが無意識に動いた。一緒に走っているような共有感。登場人物と同じトラックに立っているようなリアリティ。そして最後は少し泣かされてしまった。仕方ないな、この展開では(笑)

登場人物がみんな魅力的。よく書き分けられている。軽すぎるくらいの文体。凝った表現は出てこない。でもそれが不思議にマッチしている。だから混乱もなくあっという間に三巻読めてしまう。若い読者には向いているかも。
ただ、出てくる人がみんな良い人すぎるのがちょっと…。大人が考える理想的な高校生すぎ。健全すぎるんだよなぁ。でも(たぶん)あえてそれを狙って書いているのだろう。この時代、このように真っ直ぐ性善説的に夢を見られる小説は必要だ。あと、どうせここまで真っ直ぐに書くなら、ラストの観客席に健ちゃんは来て欲しかったと思う。予定調和でもいいから。

ちなみに、副産物的にだが、この本を読むと陸上(特に短距離)にくわしくなり、とても見たくなる。陸上競技の魅力が余すところなく描かれているのだ。スラムダンクを読んだ後に「高校バスケ冬の選抜」を見に行ってしまったみたいに、陸上のインターハイとか見に行きたくなる読後感。家族に読ませて一度一緒に見に行こう。

2007年01月03日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本) , スポーツ

LV5「カラスヤサトシ」

カラスヤサトシ著/講談社/590円

カラスヤサトシ
amazon
コミック「月刊アフタヌーン」誌の読者コーナーに地味ぃに不定期連載している著者の四コマ漫画を集めて本にしたもの。
とはいえ、ひとつひとつの中身が濃いので読むのにとても時間がかかる。これだけ時間かけて楽しんで(しかも細かい技を本のいろんなところに仕込んであって)590円というのは大層お得である。

実に切り口が独特。
マニアでフェチで孤独で引きこもり的な独自の世界が広がっているのだが、ある程度独り遊びができる男達にとっては「わかるわかる〜」の世界なのだ。この世界を深堀りした本って初めてじゃないだろうか。いとおしくなるような場面が丁寧に描かれ、なんだか微笑ましくも懐かしい気分になる。

意外とこういうのを「豊か」と呼ぶのかも、とちょっと洗脳されそうになった自分が少し怖い。

2007年01月26日(金) 9:16:20・リンク用URL

ジャンル:漫画

LV5「魂の森を行け」

一志治夫著/新潮文庫/438円

魂の森を行け―3000万本の木を植えた男
amazon
副題は「3000万本の木を植えた男」。森を作るために植樹を続ける超人・宮脇昭の人生と主張を丹念に描いた傑作である。必読。

どこかの雑誌で「人類は植物に寄生する動物にすぎない」という主張を読んだのがボクにとっての宮脇昭との出会いである。目ウロコだった。確かに人類は植物(もしくは森)を最大限利用して発展してきた。守られもしてきた。なのに植物や森を上から見て蔑んでいる。守ってやる、という不遜な態度すらとっている。このスタンス自体が大きく違っていたのである。寄生する立場なのだ。

その後、数々の植樹活動も知り、急いでこの本を買った。そしてその考え方と実行力に感動したのである。宮脇昭自身、単なる活動家でなく、日本を代表する植物生態学者なのだが、彼の「宮脇方式」による森の増やし方のなんと理にかなっていることか。その土地のもともとの植生に沿った森作り。だから最初の3年ほど手入れしてやればあとは永遠にメンテナンスフリーなのである。日本だけでなく中国やアマゾン、アフリカでも宮脇方式が広まっている。日本では「鎮守の森」にその土地の植生がそのまま残っている。ものすごい勢いで減りつつある鎮守の森を再び増やす活動も彼の目標のひとつである。

信念と行動と狂気の人・宮脇昭の破格な人生をなぞるだけでも刺激になる一冊だが、その発言、実行、そして成果を知るためにも是非読むべき本である。読後、「人間が森と共生することで、結果として地球環境が守られるのだ」というシンプルな構図が見えてくるだろう。木を植える。森を作る(宮脇方式だと5メートル幅あれば森が出来る)。そういったゴールがクリアに見えてくるノンフィクション。

なお、宮脇昭自身「木を植えよ!」という本を書いているが、それよりも先にこの評伝を読んだ方がわかりやすいと思う。

2007年01月30日(火) 12:42:51・リンク用URL

ジャンル:自伝・評伝 , 教育・環境・福祉 , ノンフィクション

LV3「ぬるい生活」

群ようこ著/朝日新聞社/1260円

ぬるい生活
amazon
エッセイの名手である著者による「女性もこの歳になるといろいろつらいぜ」的エッセイ。更年期のつらさ、ダイエット、広がる毛穴の問題、ホメオパシーの効き目、悪霊とりつき系、などなど。カラダの不調とココロの不調がわりと静かな筆致で書かれていく。章ごとにバラバラに進むのかと思ったら、意外と連続性もあり、まとまりはよい。

たぶんこのエッセイに一番共感するのは、更年期前後を迎えた女性たちだろう。
ボクは男だし、もうちょっとだけ若いので、その点でいうと共感しにくい部分は出てくるのだが、読者に身近な部分から離れずに上手に書いてくれているので飽きずに読める。でもまぁ、ボクは読者ターゲットではないなぁ(笑)。ターゲットの人にはわりといい本だと思う。きっと共感がいっぱいある。

2007年01月26日(金) 9:00:13・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

LV2「迷いと決断」

出井伸之著/新潮社/735円

迷いと決断
amazon
ソニー元会長兼CEOの出井氏の本。
副題に「ソニーと格闘した10年の記録」とあるように、社長就任前の仕事歴から就任時の顛末、就任後の様々な苦難・格闘を自伝的に描いている。

世界トップブランド&世界的コングリマットの社長である、という希有な経験をした数少ない日本人であるので、彼の「とはいえ社長ってこんなに大変なんだよぉ」「意外と迷うんだよぉ」「決断も大変なんだよぉ」という経験談はやはり面白い。成功談も多く、優れた経営者であることもよくわかるし、あぁ大変だったんだろうなぁと素直に思う。でも逆に言うと内容がほぼそれだけなのが残念だった。

やはり、ある時期日本が誇った経営者であるだけに、その希有な経験を活かした新しい視点、強い覚悟、世界的な鳥瞰などを明確に我々に与えて欲しかった気がする。まぁそれは他の本で書くのかもしれないが。

2007年01月29日(月) 9:13:31・リンク用URL

ジャンル:経済・ビジネス , 自伝・評伝

ページの先頭に戻る

メニュー

Follow satonao310 on Twitter @satonao310

satonao [at] satonao.com
スパム対策を強化しているので、メールが戻ってきちゃう場合があります。その場合は、satonao310 [at] gmail.com へ。

ページの先頭に戻る

Google Sitemaps用XML自動生成ツール