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2003年08月

LV5「環境危機をあおってはいけない〜地球環境のホントの実態」

ビョルン・ロンボルグ著/山形浩生訳/文藝春秋/4500円

環境危機をあおってはいけない 地球環境のホントの実態
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出る前からわりと鳴り物入りではあったが、出てすぐ読んでみて「おお!」と感嘆。4500円(たかっ!)払う価値があった。
というか、6月に「ダイオキシン〜神話の終焉」を読んで以来、情報が一方的な論説をまず疑ってかかるように癖をつけてはいるのだが、まさか環境問題までがこうもスキャンダラスな操作にさらされていたとは知らなかった。あーあ。世の中、結局自分で調べないと真実などわからないのね。いまから統計学者でも目指すかなー。

とにかく、いたずらな環境危機論を千蹴してあまりある。ブッシュやブレアが根拠の薄いデータに頼って都合のいい論&戦争を展開したように、環境問題系論者もかな〜りご都合のいいデータの使い方をしていることが一目瞭然。ちょっと驚きである。というか、ここ数年の常識(熱帯雨林激的減少とか地球温暖化とか飢餓増大とか石油枯渇とか)はほとんど「ウソ」なのだ。驚くよね?

もちろん情報ソース(各種有名団体発表の統計)を読み込むチカラはボクにはない。だから正確にどちらが正しいと言及はできない。
とはいえ、まったく同じソースから、環境問題系論者と著者が導き出した結論がここまで違ってくることにはただただ驚くばかり。統計の怖さについてはいろんな本を読んだが、環境問題よお前もか!と思わず叫ばされる。うーむ。

もちろん、環境の危機が最大限叫ばれたからこそ、ここまで人民の意識が高まったのは確か。その役割は偉大だったが、いつまでもあおっているとそこにまた違う歪みが生じるだろう。賛否両論あるのかもしれないが、必読の問題作である。

2003年08月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:教育・環境・福祉

LV5「一九七二」

坪内祐三著/文藝春秋/1800円

一九七二―「はじまりのおわり」と「おわりのはじまり」
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著者に指摘されるまで意識もしなかったが、確かに1972年というのは時代の変わり目だ。前書きにも書いてあるが「はじまりのおわり、であり、おわりのはじまり」なのだ。ここまで顕著に時代の境目ってあるのね、とまずそれにビックリした本である。

1972年に何があったか、例をいくつか上げよう。
札幌オリンピック。連合赤軍浅間山荘事件。横井庄一グアム島で発見。沖縄返還。佐藤栄作引退。田中角栄「日本列島改造論」発表。「四畳半襖の下張」発表。日本プロレス中継終了。「ぴあ」創刊。日中国交回復。カンカン・ランラン到着。ローリングストーンズ幻の初来日。森昌子新人賞……まぁ詳しくは本書をお読みいただくとして、これらひとつひとつの事件がすべていろんな事象の境目になっているのである、という分析を細かく緻密に著者は書いていく。
それらがこじつけに感じられないのは著者の筆力のおかげでもあるのだが、実際そうなのだろうと納得が行くもの。1972年あたりに中学高校大学を過ごした人たちには実感をもって「あぁ、あそこが曲がり角だったのか」と肌感覚でわかることだろう。個人的には浅間山荘前後の記述の掘り下げ方が少々くどいもののいろいろ発見があって面白かった。

ちなみに坪内祐三の本は読後感がいつも尻切れトンボである。
彼自身三部作と言っている「靖国」「慶応三年生まれ七人の旋毛曲り」そしてこの「一九七二」もその感があり、厚さを倍にしてもいいからキレイに満足させてほしいと読後に思った(この本も400ページ超でいい加減長いのだが)。きっと著者としても収拾つかなくなっちゃうのだろう。テーマも素材も膨大ゆえに。

2003年08月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション , 評論

LV5「魂の自由人」

曽野綾子著/光文社/1500円

魂の自由人
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たまに曽野綾子が読みたくなる。
真面目で平明で敬虔で、そしてあくまでも自由なその言説を、たまらなく読みたくなる。そう、彼女の魅力は何ものにもとらわれまいとするその自由な精神なのだ。などと思っていただけに、その魅力をひと言で言い切った題名の本を書店で見つけたらそりゃあ買うのである。この本は「魂の自由人」であるために、どう生きていけばいいかを著者が丁寧に説いた平明かつ有益な本である。

いわゆる「生き方を書いた本」についてはボクはわりと眉に唾つけて読むタイプなのだが、どうも曽野綾子とは相性がいいらしく、とっても共感する部分が多い。特に今回の本は、目新しい言説はないのだが、自分の不自由さに窒息しつつあった状況にもはまり、とても感じるものがあった。短いエッセイだが、熟読玩味していかにして自由を獲得するかをしっかり考えたい一冊。

2003年08月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ , 評論

LV4「黒と茶の幻想」

恩田陸著/講談社/2000円

黒と茶の幻想
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600ページ超の大作である。
著者の本は何冊か読んで感想を書いているが、ある日「あなたはまだ恩田陸の代表作を読んでいない」というメールが見知らぬ方から届き、この本を薦められた。で、すぐ買ったのだが分厚かったので長く積ん読状態だった。でも読み始めたらあっという間だった。

おもしろかった。おもしろかったのだが、これが代表作?という感じは残る。会話は相変わらずちょっとずつ甘いし、ストーリーもここまで長編にする意味を感じないもの。ただ、人物の周辺描写やこの年代の微妙な感じ、昔の恋愛へのせつない心情描写などはさすがに著者ならではで、ストーリーと関係ないところで何度も立ち止まって味読した。
4人の主人公それぞれに謎と奥深さがある構成と、屋久島の大自然がそれに重なってくる感じはとても心地よい。ただ、題名が少し遠い。なんでこの題名?という感じ。恩田陸っていつも題名に少し疑問が残るなぁ。

2003年08月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV3「グロテスク」

桐野夏生著/文藝春秋/1905円

グロテスク
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「OUT」を超えた!という書評があったくらいなので、ホントにそうなら読まざるを得ないのだが、結果的にはボクは「OUT」「柔らかな頬」の方が断然好き。

というか、ひょっとしたら女性が読んだら印象違うのかもしれない。そのくらい今回は女性生理がストーリーに絡んでいる。
実際、何人かの女性友達が読んで「とても良かった」と言っていた。でも、オトコであるボクは最後まで「ふーん。でもさぁ…」という感じで乗り切れず、グロテスク&モンスター的視点から見ても、オトコのモンスターは(他の著者が作りだしたものを含めて)現実にも山ほどいるわけで、なんだか最後まで「それがどうした感」がつきまとってしまった。

全編、ある意味女性のグロな部分をこれでもかと描写している。それもそれぞれの登場女性の主観で描写しているので、つじつまが合ってなかったりハテナがあったりするのだが、それは演出のうち。そこらへんはとてもよく出来ているし、特に女学生時代の描写など迫真。ただし、後半の和枝の日記が主観ではなく、妙に小説になってしまってたのが惜しい。周辺描写など彼女がするわけないだろう。そこらへんにリアリティがあったらまた少し印象違ったかもしれない。

筆力はさすがなもの。会話や人物描写も実に自然。だが、下敷きにしたという東電OL殺人事件の詳細を読むと(たとえばココで)ほとんど後半のストーリーはまんまなのだなとわかる。著者なりに違う持って行き方はなかったのだろうか。

2003年08月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV3「美麗島まで」

与那原恵著/文藝春秋/1600円

美麗島まで
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著者が、亡くなった母親、そして家族の歴史を、沖縄〜台湾(美麗島)までゆっくり静かに追ったノンフィクション。
と書くと硬派っぽいが、ちょっと須賀敦子のような静かな筆致と地道なルーツ探しや地味だが豊かな旅などが重なり合ってとても味わい深く優しい一編に仕上がっている。母親を追っていく過程でさまざまな出会いをし、偶然としか思えない巡り合わせもあり、著者はこの本の中でゆっくり成長しているようである。
読み進むうちに、沖縄と台湾の歴史も副産物的に理解される。家族を追いその周辺を描写しながら、結果的に戦前戦後を日本と台湾に挟まれながら生きた沖縄人たちの姿まで浮き彫りになってくる。著者は東京で生まれ育った沖縄二世。沖縄人でも大和人でもない視点からこの本を書くことで自分の精神的ルーツを確立したい気持ちもあったのだろうと思う。美麗島までの旅は、著者にとって自分への旅でもあったのだ。

2003年08月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション

LV3「9990個のチーズ」

ヴィレム・エルスホット著/金原瑞人・谷垣暁美訳/ウェッジ/1200円

9990個のチーズ
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妻がチーズ関係の仕事をしているせいか、題名を見てなんとなく買ってしまった本(帯に「柴田元幸さん推薦!」とあったのも影響しているが)。実はベルギーの古典として知られる本らしく(現代は「チーズ」)、1933年出版という古いもの。それがなぜ今出版されたのかはしらないが、なにやら妙に味わい深い本だった。

物語は、地道なサラリーマン生活をしていたラールマンスがひょんなことから大量のチーズの輸入代理責任者になり、大金持ちになる夢を見て奮闘するというもの。結末は「幸せは足元に転がっている」的な、いかにもな教訓なのだが、古い作品のせいか、非常にのんびりのほほんとしていて、逆に楽しい。そうそう人生の本質って実はそうだよね、とにっこり本を閉じたくなるような、そんな本。ちょっと仕事に疲れた人なんかにはなかなかいいんじゃないかな。薄い本だし。

2003年08月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(海外)

LV3「落語と江戸風俗」

つだかつみ・中沢正人著/教育出版/1700円

競作かわら版 落語と江戸風俗
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ムック本。
江戸のかわら版みたいな構成にしてあり、代表的な落語の解説を江戸風俗解説にからめながら豊富なイラストとわかりやすい文章で実に事細かに教えてくれる親切な本。

有名な落語の筋はわかるわ、背景はわかるわ、当時の道具やファッションもわかるわ、遊郭や髪結床の仕組みも絵付きでわかるわ、土地勘までつくわ、名人たちのくせまでわかるわ、まぁなんつうか、おせっかいなくらい親切な本だ。
イラストがアイデア豊富にまとめてあるので、たとえば当時の吉原の地図と現代の地図が比べてあったり、落語に興味ある人にはとっても役立つ本。帯で林家たい平が「師匠のこん平はこんなに優しくていねいには教えてくれなかった。皆さんにはそっと教えます。私の本当の師匠はこの一冊です」と書いているが、確かにそんな感じの本である。落語好きはわりと必携かも(ただし初級者中級者)。

2003年08月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:アート・舞台 , 雑学・その他

LV1「フラッシュ・バック」

高樹のぶ子著/文春文庫/533円

フラッシュバック―私の真昼
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「私の真昼」という副題をもつ著者のエッセイ集。
前半は長めのエッセイ。後半は1ページ程度のエッセイ。出典が明記されていないのでどういう雑誌に載ったエッセイかわからないが、単行本自体が1991年に出たものらしいので、エッセイが書かれた時代はもうちょっと古いのだろう。時事的ネタなどさすがに古さを感じるものもある。
それなりに面白くいい時間を過ごせるエッセイで、心に残る描写や言葉もいくつかある。でも、全体に玉石混淆すぎる部分があり少し残念。ファッションの話、ライアンの娘の話など、実にいい文章がいくつかあるので、記憶にとどめたい本ではある。

2003年08月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

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