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2003年07月

LV5「ビデオで世界を変えよう」

津野敬子著/平野共余子構成/草思社/1700円

ビデオで世界を変えよう
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ポップアートに憧れて渡米したひとりの日本人女性(著者)が、当時ソニーから出たばっかりだったビデオに偶然出会い、ビデオ・ドキュメンタリーを世界でほぼ初めて手がけ、キューバやベトナムへもビデオかついでアメリカ初取材を単独敢行し、テレビ報道の世界にも多大な影響を与え、夫のジョン・アルバートとともに今日のビデオ・ジャーナリズムを創始し繁栄させたってことを知ってた人〜?と、誰彼なく聞いてみたくなる。
そうか、ビデオジャーナリズムって日本人が始めたんだ〜!と誇らしくなること間違いなしの、彼らの半生の活動記録が本書。つか、へぇ〜の連続。知らなかったなぁ。

誇らしい部分はいろいろあるが、彼らが自分たちだけで開発し取得したビデオ技術や機材を独占せず無料で多くのアメリカの若者たちにワークショップで教えることを長年続けてきたことや、キューバやベトナムといういわゆるアメリカの敵たちの素顔をビデオならではの視点で描き平和に貢献しつづけたことなどは特に感動的。というか、「世界を変えよう」という意志が感動を呼ぶ。ビデオに限らず、どんな手段でも可能なはずだ。そのさりげない意志に感嘆する。

半生記っぽい本なので、エンターテイメント性は特になく淡々としているのだが、これからの人生を考えるに当たってとても刺激になるいい本だった。少なくともボク個人にとって。

2003年07月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:自伝・評伝 , 映画・映像

LV5「ヤスケンの海」

村松友視著/幻冬舎/1600円

ヤスケンの海
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2003年1月20日他界したスーパーエディター安原顯(あきら)、通称ヤスケンの評伝。

彼の葬式で幻冬舎社長見城徹が村松友視に「書くしかないでしょ」と言ったのが始まりで、同年5月のスピード出版になった。
著者は中央公論の文芸誌「海」編集部当時ヤスケンの同僚だった間柄で、いわゆる親友。他界後まもなくという動揺や親友であったという心情、そしてスピード執筆という悪環境を感じさせない落ち着いた筆致で読者をヤスケンの世界に連れて行ってくれる。

個人的にはまゆみ夫人や娘さんの描写がもっと読みたかったし、ヤスケンの体臭に近い部分の記述が少ないとも思った。著者との仕事関係を中心とした内容になっているので、ヤスケンの表面的な部分しか浮かび上がってこない評伝になってしまっている。しかも死後評伝一番ノリを目指した出来の荒さもちょっとある。ただ、著者はヤスケンが中央公論にいた頃のエピソードを誰よりも知っているので、その辺の話は実におもしろい。

ヤスケンの人生を追った評伝にしないで、ヤスケン-ムラマツの編集魂血風録みたいな感じにテーマを絞って書いていたら傑作になったかもとちょっと思う。
まぁでも、そういうことを除いても十分な質と量かもなぁ。いろいろ条件を考えると。

ヤスケンの書評は、個人的にもっとも信頼していた。本書の中にヤスケンの言葉としても書かれているが「こと文学・芸術に関しては送り手(編集者)の偏愛以外、頼れるものはない」と考えているヤスケンの書評はまさに偏愛に満ち、ダメな物は心底ダメと切り捨てる刀の切れ味も素晴らしく、その激しさに戸惑いつつも参考にせざるを得ない説得力に満ちていた。あぁあの書評がもう読めないのだなぁと悲しみつつ、彼の一貫性のある半生に感動する。ヤスケンの生き方も、著者の書き方にも、拍手を送りたい。

2003年07月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション , 自伝・評伝

LV5「毎月新聞」

佐藤雅彦著/毎日新聞社/1300円

毎月新聞
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まぁなんつうか、サスガですね。
毎日新聞で連載しているときから読んではいたが、こうしてまとめるとまた面白い。新聞という形式を借りたエッセイ集なのだが、形式が新聞(ニュース媒体)であることをちゃんと計算に入れた構成で飽きさせない。相変わらずの知能犯ぶり。社会に対する視点の新しさや理系的実験(三角形の内角の和とか)の楽しさはこの著者独自のものだなぁ。
そのうえ最近は知能犯的部分だけでなくブンガク的な部分も出てきて、なかなか泣ける回(「真夏の葬儀」)もある。「ねっとのおやつ」や「日本のスイッチ」みたいな別企画の発想が生まれる様も見えたりして、いろいろ面白いのである。

マジでうまいなぁと思うのは「こういう発想だったらボクでも出来るかも♪」と読者がギリギリ競えるバランスで止めておいているところ。この人の本質はこういうバランス感覚なのだろうと思う。

2003年07月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ , 時事・政治・国際

LV5「あなた自身の社会〜スウェーデンの中学教科書」

アーネ・リンドクウィスト、ヤン・ウェステル著/川上邦夫訳/新評論/2200円

あなた自身の社会―スウェーデンの中学教科書
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副題通り、スウェーデンの中学教科書である。
スウェーデンの社会の教科書の題名が「あなた自身の社会」。そう、スウェーデンの中学の社会の教科書をそのまま訳しただけのものなのだ。なのに感動できる。日本の社会や教育の問題点が浮き彫りになる。それほど良くできている。心底焦燥する。やばいよ日本。なんとかしなくちゃ。

この題名がすべてを語っている。誰の社会でもなく、あなた自身の社会にあなた自身が積極的にどうコミットするべきか、が具体的に書かれているのだ。
そのために何一つ隠すことなくありのままのスウェーデン社会が中学生のための教科書に提示されている。いろんな立場といろんな意見があることもそれぞれ提示されている。そして中学生に自分自身の意見を持たせることを主に考えられている。この社会はキミたちこそが変えていくんだよと教えている。他人事のように客観的に社会のありようを教える日本の教科書と比べるとそのコミット感・当事者感に呆然とするほどである。いやー、社会に参加する意識やヒトというものの捉え方が根本から違うわ。

詰め込み式でなく、とにかく考えさせることが主目的においているのが素晴らしい。社会は学ぶモノではなく考えてコミットしていくモノなのだ。当たり前といえば当たり前。でも彼我の差は大きい。この差はいつか埋まるのかな。埋まらない気がするな。悲観的かもしれないけど。そんな印象。

2003年07月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:教育・環境・福祉

LV3「二列目の人生 隠れた異才たち」

池内紀著/晶文社/2200円

二列目の人生 隠れた異才たち
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一列目の人生が超有名人の人生だとすれば、この本は二列目、つまり歴史に埋もれた無名の異才・天才の人生を16人取り上げて、短くまとめたものである。

たとえば南方熊楠や牧野富太郎の陰でまるで忘れ去られた市井の植物学者大上宇市をはじめ、島成園、モラエス、中谷巳次郎、西川義方、高頭式、秦豊吉などなど16人。地元でも忘れ去られた彼らに光をあて、丹念に淡々と書いてある労作だ。

もともと無名な素材ゆえ、ドラマにも事件にも乏しいので物語にしにくい部分があったのだろう。かなり淡々。だから、面白いかと言われると「うーむ」である。ただ、妙にせつなくなるし、妙に奮い立ちたくもなる。ある意味「プロジェクトX」を観た後のような感じに近いか。二列目の人生とはつまり「地上の星」なのだ。日本人のありがちな心情から考えると、ウソでも感動物語を作って浪花節的に泣かせて欲しいところであるが、それをあくまでも淡々淡々と書いたところがこの本の魅力でもあり欠点でもある。

2003年07月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:自伝・評伝

LV3「至福のナポリピッツァ」

渡辺陽一著/NHK出版/680円

至福のナポリピッツァ
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東京では数年前からナポリピッツァが流行っていて、このごろずいぶん市民権を得てきた。
ピザといえばアメリカから伝わったタイプ(シェーキーズ系とか宅配ビザ)の味と食感、と思っていたヒトがずいぶん「へー、ピザってナポリが発祥の地で、そこではこんな味と食感なんだぁ」とわかってきた感じ。まぁ実際別物と言っても良いくらい違うもんな。あのモチモチ感はいままでのピザと同じとは思えない快感だ。また、ピザという言葉もだんだんピッツァという言葉にとって変わられてきた気がする。ピッツェリアも普通の用語になってきた。

この本は広尾の「パルテノペ」の料理長が書いたオールアバウト・ピッツァの本。
ピッツァの歴史から食べ方、ナポリピッツァの条件や料理法、こぼれ話まで、これ一冊読み終われば即ピッツァ通な本なのである。すげー内容が濃い、というわけではないが、知りたいことは短く簡潔にわかりやすく書かれているし、発見も多いので、ピッツァ好きな方にとっては必読書かもしれない。

個人的に「ピッツァのナイフ・フォークでの食べ方」がめっちゃ参考になった。いっつもどうやって食べればいいか迷うのだ。なるほどなるほどこうやって食べるのが本場ではスマートなのね♪ 教えて下さってどうもありがとう。

2003年07月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒

LV3「沖縄発、山野草のおいしい話」

伊芸秀信・伊芸敬子著/ふきのとう書房/1500円

沖縄発、山野草のおいしい話―旬をいただく宿ファームハウスの四季
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沖縄で野草?と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれないが、実に豊かに野草が生え、それをおいしく食べる技も発達しているお土地柄。リゾートと海だけではない豊かな沖縄がそこにある。

著者は沖縄本島の本部半島、今帰仁(なきじん)で「ファームハウス」という宿を経営しており、そこの売りは山野草料理。四季それぞれの野草をおいしく料理して食べさせてくれる。そんな野草の話や、レシピ、沖縄エッセイ、そしてファームハウスを作るに至るこぼれ話などを収めたのが本書。イラストも豊富で、手作り感溢れた親密な本に仕上がっている。

実はファームハウスにはボクも泊まったことがある。
「胃袋で感じた沖縄」(のちに「沖縄やぎ地獄」と改題して文庫化)を出版する前、本部半島の野草料理の取材と称して家族で遊びに行ったのだ(もちろん自腹旅行)。1章わりふるほどの取材量にならなかったので結局本には書けなかったが、その晩は実に楽しい晩だった。おいしい料理と自家製リキュールと楽しい会話。素朴な宿ではあるが忘れられない思い出だ。そんな楽しい晩を思い出させるに十分な親密さを持った本書。出てくる食材などはなかなかマニアックだが、経営する著者夫婦の本音や人生観が行間から滲み出ていて味わい深い。

2003年07月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒

LV2「自然をつかむ7話」

木村龍治著/岩波ジュニア新書/740円

自然をつかむ7話
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以前ムツゴロウさんが「佐藤さん、私このごろ、いろんなものがどんどん結びついてきましてね」と語ったことがある。日常の些細なことと生物学者的研究と動物の行動と経済と政治と犯罪と教育と……世界で起こる様々な事象がすべてつながって感じられるようになった、というのである。

海洋研究所所長を経て初代気象予報士会会長でもある著者が書いたこの本をひと言でいうとそういうことかなぁと思う。
著者の学者的視点が、趣味や日常の些細な出来事・疑問に結びついて1話をなしている。そういうのが7話入っている本なのだ。著者は「日常のなにげない事件から話を始めて、ふつうの人には思いつかないような点に目をつけ、話を大きくふくらます」寺田寅彦の手法をまねた、と本の中で書いているが、まさにそれ。そういう本が面白くないわけがない。わけがない。わけがないのだが、ちょっと平易さと魅力に欠けるんだよなぁ(がくっ)。雑談レベルの日常の出来事の描写が魅力的じゃないのだ、残念ながら。惜しいなぁ。岩波ジュニア新書なので、そこらへんは特に大事なはず。惜しいのだ。

2003年07月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:科学 , エッセイ

LV2「ASAKUSA STYLE」

曽木幹太撮影・文/文藝春秋/1900円

ASAKUSA STYLE 浅草ホームレスたちの不思議な居住空間
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副題が「浅草ホームレスたちの不思議な居住空間」。ホームレスたちが工夫を凝らして住んでいる様を取材したフォトドキュメントなのである。

ソーラーシステムがある家、リアカーで移動する家、哲学書が並ぶ家、芸術的ペイントが施された家、ちゃんと主婦がいる家……基本的に定住者(つまり普通に家を持っている人)のゴミで構成されているのだが、その生活は驚くほどバリエーション豊かで工夫に満ち、そしてモノに溢れている。食事もそれなりに豊かだし、なんだか国の基礎体力を感じるなぁ。やっぱり日本は豊かなのだ。

著者はホームレスたちの意外な生活を発見し、情熱を持って我々に紹介してくれている。個人的には写真以外の突っ込んだ描写(つまり文章)が物足りなかった。素材がとてもいいからこそ、もっと突っ込んだことを知りたくなる。あと、これはプライバシー上仕方ないのかもしれないが、人物をもっともっと写して欲しかった。もしくは、人物の個性が匂い立ってくるようなモノのアップが欲しかった。全体的に客観的な写真で、事実を伝えてくれてはいるが、その裏にあるものが乏しい。惜しい感じ。

2003年07月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:写真集・イラスト集 , 時事・政治・国際

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