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2003年06月

LV5ゲド戦記シリーズ「影との戦い」「こわれた腕輪」「さいはての島へ」「帰還」「アースシーの風」

ル=グウィン著/清水真砂子訳/ 岩波書店/順に1550円、1450円、1650円、1850円、1800円

ゲド戦記 全6冊セット
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もうとっくに完結したと思っていたゲド戦記シリーズに、続編&最終完結編が出るらしいと聞いたのは今年のいつだったか。

そう言われてみると確かに未完な謎がいくつもあり、最終話があって当たり前とは思うのだが、なんといってもシリーズ4作目の「帰還」の副題が「ゲド戦記最後の書」なんだもん。あれが最後なんだな、と、不思議に思わず満足していたよ。なんとその「帰還」から11年後の今年、5作目「アースシーの風」が突然出るなんて!!! うれしくて鼻血出そう。

まぁなんというか、人生がすべて詰まったようなシリーズだ。
とっくに筋の細かいところは忘れていたので、また一巻目から読み始めたのだが、あらためて舌巻いた。すごい。特にドラマチックな筋ではないのだが、味わい深いことと言ったら「十二国記」も「指輪物語」も越えるだろう。

好きなのはやっぱり「さいはての島へ」かな。
一巻目も好き。「こわれた腕輪」も味わい深い。ストーリーを追う若い読者にとっては、「帰還」以降のゲドが情けなさ過ぎて不満かもしれない。でもまぁ、ある程度歳とってくると理解できると思う。あそこからのゲドの深みが。ただ……そう言うボクも、最後の最後でゲドがもうひと活躍するのかと思っていたなぁ(ネタばれになるのでこれ以上書かないけど)。

でもシリーズの積もり積もった謎のほとんどが氷解する快感はあった。正直いうと、まだ謎がいくつか残されているんだけど、でもいいの。もともとなかったはずの一冊なんだから。
この「ゲド戦記」と「指輪物語」に、いまのすべてのRPGゲームの要素が入っているといっても過言ではない(あ、あと「ナルニア国物語」も入れたいところ)。ゲーム好きで本を読まない方々にも読んで欲しい傑作シリーズである。
※amazonへのリンクは「外伝」も入れたセットにしています。

2003年06月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ファンタジー

LV5「岡本太郎の沖縄」

岡本太郎撮影/岡本敏子編/NHK出版/2400円

岡本太郎の沖縄
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岡本太郎が1959年と1966年に撮った写真をまとめた名作写真集。
ずっと手に入らなかったのだけど、復刻されたのか、普通に手に入るようになった。沖縄ブームのおかげかも。

鮮烈。衝動。慄然。とにかくどの写真も芸術家岡本太郎の目がそのまま生きている名作だ。
写真とは技術ではないと思い知らされる。トリミングもなにもしてないのに、そこにある時間・不可思議さ・愛・年輪などを余すところなく切り取っている。すごいなぁ。有名なイザイホーの神事を写してスキャンダルになった写真群(彼の行動に対しては虚実いろいろ言われているが、結局神域には入らなかったというのが今の定説らしい)で語られることの多い写真集であるが、1960年前後の沖縄の人々の生活を知るにはこれ以上ない文献となっている。少なくともボクは何時間も飽きずに眺め続けられる。第一級史料にして、歴史的名作。

2003年06月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:写真集・イラスト集 ,

LV5「ニライカナイ 神の住む楽園・沖縄」

三好和義著/小学館/2500円

ニライカナイ 神の住む楽園・沖縄
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上記「岡本太郎の沖縄」が昔の名作だとすると、この三好和義の撮った沖縄は現代の名作かなと思う。

彼の写真集を買ったのは3冊目。例によってリゾート系の彼の写真はきれいすぎるほどきれいで毎回見とれてしまうのだが、この写真集にはきれいだけではない迫力みたいなものがある。深みと言っても良いかもしれない。ボクはもう数十回沖縄に出かけているが、三好和義の目で切り取った沖縄は、ボクの目では見えてなかった沖縄だ。さすがである。

著者13歳〜16歳(1972〜75)のときに沖縄を写した写真も巻末に載っているのもよい。これがあることでとてもプライベートな魅力が出た。彼の中で成長した沖縄が見られる。なかなかオススメな写真集かも。

2003年06月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:写真集・イラスト集 ,

LV5「夏化粧」

池上永一著/文藝春秋/1524円

夏化粧
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石垣島を舞台にしたSFファンタジー風純文学とでも言おうか。
著者の本は短編集を読んだことがあるが、ちょっと期待はずれだった。でもこの長編はとても良かった。読後もとても強い印象。いろんな場面が瑞々しく思い出される。

物語はRPG的である。
ある島の井戸の奥に「陽」の世界であるこの世と反対の「陰」の世界がある。光と闇が逆転するその世界で7つの他人の「願い」を集めて、息子をこの世に取り戻そうとするシングルマザーの闘いの物語なのだ。7つの願いを陰の世界で集める旅……こう書くとジュブナイル小説か?と敬遠する向きもあるだろうが、筆致も展開も大人っぽいので杞憂。他人の願いを集める、というのがミソで、様々な人生がそこに絡んでき、なかなかせつないのだ。そしてラストもかなりせつない。満足して読み終えられるだろう。

敢えて言うなら題名がイマイチかなぁ。題名をここまでウェットにしてしまうと、ファンタジー好き読者が手に取らない気がする。また、内容を正確に言い当てていない。題名だけ純文学している。もうちょっと違う題名にしたらヒット作になったのではないだろうか。

2003年06月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ファンタジー

LV4「ナイーヴ・スーパー」

アーレン・ロー著/駒沢敏器訳/NHK出版/1200円

ナイーヴ・スーパー
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帯に「北欧から発信されたベストセラー小説が、ヨーロッパ中で若者たちの絶大なる支持を得た。新ジャンル"ナイーヴ文学"誕生」とある。帯の背表紙には「ブローティガンの再来」ともある。ブローティガンの再来とは思わないが、とても新しい文学だとは感じた。

なんというか、ある「哲学的思考」を生活表層的に描きながら、実は何も語っていない、みたいな匂いが新しい。
また、読みながらとても映像的だと思った。それもビデオ映像的。生活を薄ーく切り取っていき、その薄さに意味を持たせていない感じがとってもビデオっぽい。そしてその刹那な感じがイマの気分をよく捉えていると思う。象徴的なのは「リスト作り」の場面。この淡々としたリストの延長上に人生があるのは、インターネット、ビデオ、ケータイなどの「薄いもの」に囲まれたボクたちの実感にとても近いのではないだろうか。これらの薄さ、ナイーヴさと、文学がきっちりリンクした感じ。

この本は筋というよりは文体を読むべきものだろう。とはいえ、小難しいわけではまるでなく、とっても読みやすくとっつきやすい。そういう意味で訳もとてもいい。
なにも起こらないしなにも結論は出ないが、この小説が描き出すイマの気分に共感を持つ人は多いと思う。日本より先にノルウェイで書かれてしまったのが残念な小説。現代日本こそこんな気分の小説を書くに相応しいとは思うのだが(もしかしたら探せばあるのかも)。

2003年06月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(海外)

LV4「ダイオキシン〜神話の終焉」

渡辺正+林俊郎著/日本評論社/1600円

ダイオキシン―神話の終焉
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ダイオキシンよ、お前もか! という感じである。
乱暴にひと言でまとめるなら「ダイオキシンって危険は危険だけど騒ぐほどじゃないよ。海外の研究者はもうほとんど誰も取り上げてないよ。ダイオキシン法なんて亡国法だよ。ゴミ焼却だってよくよく調べてみれば問題がすり替えられているよ。ダイオキシンはマスメディアが作り上げた恐怖なんだよ」である。驚くでしょ? 無批判にダイオキシンを怖がっていたボクらも悪いが、それにしてもダイオキシンだけは本当の悪者だと思っていたよ(笑)

わかりやすい例を上げれば、ダイオキシンは30万日分の含有食物を一気に食べない限り致死量には至らないらしい。
30万日分ってつまり820年分だ。それだけ分の食事をしてようやく致死量(60万pg/kg)に達するのだ。つまり「ダイオキシンでは死ねない」わけ。それに比べてアルコールはワイン4本分、コーヒーは1日50杯でほぼ致死量らしい。ダイオキシンの一般摂取量を抜きにして「ダイオキシンの毒性はサリンの2倍」と騒いでも意味がない。また、一度に大量のダイオキシンを摂取する事故についても騒ぐほどではないことは本書を読めばよくわかる。死に至るもっと大きな毒害は他にやまほどあるのである。

というか、ダイオキシンの恐怖をここまで取り上げているのは日本だけらしい。
ううむ。これから環境問題は眉に唾つけてかからないといけないかも。たとえば2002年、オゾンホールは過去14年間で一番小さくなったらしい。そんなこと誰も知らず、みんなでひたすら怖がっている。環境問題告発本をもう少し読んでみよう。

2003年06月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:教育・環境・福祉

LV2「生ける屍の死」

山口雅也著/創元推理文庫/980円

生ける屍の死
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山口雅也は読まないとな、と思ってはいた。
特にこの本は「このミステリーがすごい!'98」の「過去10年のベスト20(国内編)」でベスト1に選ばれているのだ。そんなに話題になったっけ?と思いつつ、やっと読んだ。

舞台はニューイングランドの片田舎。日本じゃないのね、登場人物も外人ばかりなのね、と鼻白みつつ読み進むが、「過去10年のベスト1」という期待が大きすぎるせいか、なんだか違和感や欠点ばかり目について集中できない感じ。展開も手に汗握るものではないし、読後もなんというか「創元推理文庫の海外モノの佳作を読んだ感じ」程度の印象しか残らなかった。というか、「生ける屍」の謎がさぁ!(あとはネタバレになるので書かない)。

まぁ「死なない屍」にとって殺人とはなんなのか、という命題は提示しているのかな。よくわからないけど。あと、98年当時ではかなり実験的で常識覆し系だったのかなとは思う。「けたぐり」としてはとてもよく出来ているし、文章も博識具合もたいしたものだし。

2003年06月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV1「ニッポン全国マヨネーズ中毒」

伏木亨著/講談社/1600円

ニッポン全国マヨネーズ中毒
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食について興味あるヒトはネット上のMSNジャーナルで連載されている筆者の「ニッポン食事情咄」はご存じだろう(※追記:残念ながら連載終了)。その鋭い視点と展開は毎回実に見事だった。だからファンだった。だもんで、それが本になったと聞いたときは即買い。これがその本である。ある連載回を取り上げて表題にしたもの。でも個人的には「ニッポン食事情咄」のままでよかったかなと思う。なんかこの表題にして読者層が狭くなってしまった気がする。というか、なんだかありがちな感じになってしまった。
それにしても…ファンとしては残念だが、連載時はあんなに面白かったのに、が感想。やっぱり時事モノってまとめてしまうと薄い感じになってしまうのかな。もしくはハードカバーが似合わないということであろうか。ソフトカバーでもっと軽い感じで出版した方が良かったかも。もともと「咄」なのだから、その方が読者もうれしい。1600円はちと高い。

2003年06月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒

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