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2003年04月

LV5「都立水商!」

室積光著/小学館/1300円

都立水商(おみずしょう)!
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おもしろい。もっと早く読めば良かった。
不満は題名のみ。ルビっぽく「おみずしょう」と振ってあるのだが、「おみずしよう」とも読める上に、「都立水商!」とどっちが題名でなんなのかがよくわからない。題名としては不利かな。装丁も内容とあっていない感じ。キワモノとして売るより本格小説として売って欲しかった内容。

ま、そんなことはどうでもいいやと思うくらいはおもしろかった。
工業高校、商業高校などの一環で水商売専門高等学校が出来ちゃう話。ホステス課、ソープ課、ホスト課など7学科。読む前はもっともっと荒唐無稽でハチャメチャかと思っていたが、実は細部でつじつまや理屈があっていて、リアリティがあったりする。
で、そこで展開されるお話もこちらが想像するようなおバカなものではなく、わりと感動的で感涙ものだったりもするのだ。「ちゃんとプロを目指して入学してきた、目的意識がしっかりした生徒たち」の存在がそれらのエピソードを可能にしていく。読んでいるうちに、現在の教育の問題点まで鮮やかに浮かび上がってしまうのもすばらしい。

著者は俳優から劇作家を経て、小説はこれが初めてだと聞くが、現代受けしそうなテーマ設定や問題設定、筋の持って行き方などなかなかただもんではない感じ。次回作も読もう。おすすめ。

2003年04月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV4「模倣犯」

宮部みゆき著/小学館/上下各1900円

模倣犯〈上〉
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2001年4月発行の大ベストセラー。
ハードカバーですぐ買って、ほぼ2年間も積ん読になっていた。なんつうか宮部みゆきってもちろんスゴイとは思うのだけど、安定してる分「まぁそのうち歳とってからゆっくりはまればいいか」みたいな心情になるのだよなぁ。そのうち鬼平、とか、そのうち藤沢、とか、それに近い感じがボクの中にはあるかも。ということで、ずっと読まなかったのだが、戦争突入の無力感から逃れたくて、圧倒的筆力&読み易さを求めて本棚から光臨。

二段組みで上下あわせて約1400ページ 。
大作だ。なのにダレずにグングン引っ張ってくれるし細部もしっかりしているし平易で読み易いし、さすが。「このミス2002年第1位」を始め、どの賞でもめちゃ評価が高いのもわかる。でもまぁ個人的には「それほどでもなかった」というのが素直な感想。著者に対していっつも感じる「ぬるさ」みたいなのが今回もぬぐえず残念。ある種の「いい性格」というか「お育ち」みたいのが行間に滲み出てしまい、冷たくなりきっていない感じ。今回はそれでもかなり冷たく書いたのだとは思うけど、個人的にはどうしても違和感と物足りなさが出てしまう。

登場人物の中では前畑滋子に共感できないまま最後まで行ってしまったのが不満。だから結末にも違和感がある。殺人事件の加害者の親族の異様な行動についてはとてもリアリティがあった。この手の本では出色のリアリティかも。

2003年04月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV4「最後の波の音」

山本夏彦著/文藝春秋/1600円

最後の波の音
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しつこくイジワルに(でも目は笑って)世の中とは人間とはをボクたちに教えてくれていた昭和のおじいさん、山本夏彦が2002年10月23日に87歳で死去した。著者の本は近年のものは結局ほとんど読んでいるのかな。これはその最終作。癌と闘いながらの執筆であった。

近年の作品をだいたい読んでいるヒトには「はいはい、そのお話もすでに伺いました」 が多い本。
それはここ数年の出版作には常につきまとっていたお約束みたいなものなので特に不満はない。それを承知で買っているし、しつこいジジイというスタンスを楽しんでもいたから。と、思っていたら巻末にそういうしつこさは「寄せては返す波の音と思え」とあった。そうか……でも、しつこく寄せる波の音は、もう二度と聞こえない。こんなに淋しいことはめったにない。淋しさのあまり彼が通ったという銀座の「Jolly」に行って酒を何度か飲んだ。でも波の音は聞こえない。

最後に、著者から学んだことの最大は「ふまじめ」ということだとボクは思っている。誤解を恐れず、自分の中だけでのまとめを言えば、著者の言説はこのひと言に集約されるとさえ思う。これからも精一杯ふまじめに生きようと思います、先生。

2003年04月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ , 評論

LV3「旅路のはてまで男と女」

林真理子著/文藝春秋/1190円

旅路のはてまで男と女
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週刊文春で著者が長く連載している「今夜も思い出し笑い」2001年10月〜2002年12月分を集めたもの。
思えばこの時期の週刊文春はわりと読んでいたので、既読なものが多かった。特に田中真紀子批判の強烈な回は印象深かったのでとてもよく覚えている。同感同感!と膝をうったものだ。
改めてこうしてまとめたものを読み返すと、やっぱり林真理子はうまいなぁと思う。俗悪の一歩手前で上手に立ち止まる技、自慢と謙虚をバランスよくやりくりする術、急な怒り、たまに入れる泣かせ、全体に平易な読み易さ、すべてに手練れな感じ。刺激的なものは何もないが、寝床でダラダラ読むには最適の本。

2003年04月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

LV2「どこか古典派」

中村紘子著/中公文庫/552円

どこか古典派(クラシック)
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「ピアニストという蛮族がいる」以来、エッセイには定評がある著者であるが、本業のピアニストと通底するリズム感みたいなのが気持ちいいのかな、読んでいて苦にならず、短い中にひとつふたつ上手にサビを入れ、終わり方もピシッと決まる。なかなか堂々たるエッセイストぶりに拍手を送りたくなる章多し。
ただ、なんとなくイメージ的に米原万里と通底する匂いがあり、ボクの中ではどこかバッティングしてしまうので、著者にとってはちょっと不利かも。さすがに米原万里と比べられるとエッセイ的には物足りないんだもの。もうちょっと刺激的なナニカを求めてしまうし、それが書ける人ではあると思う。

2003年04月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

LV1「坂崎幸之助のJ-POPスクール」

坂崎幸之助著/岩波アクティブ新書/740円

坂崎幸之助のJ‐POPスクール
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THE ALFEEの坂崎の、フォークや歌謡曲に対する並々ならぬ知識と情熱を知ったのはボクがまだ高校時代(25年近く前)、吉田拓郎のラジオ(「ヤンタン」)とか聞いていてたまにゲストで出てきて拓郎のマネをしつつその周辺をパロったりしていたあたりから「こいつ何者?」という感じであった。背景に深いものを持ったオタクしか出来ない技と話題を持っていた。

そんな著者が書いた「自分の半生記とそれにシンクロするJ-POPの流れ」がおもしろくないはずがない。はずがない。はずがないのだが、異様に期待した分、ちょっとはずしたかも。
もっともっともっとオタクに書いてよかったのだよ坂崎ぃ〜!という叫びが読後に出てしまった感じ。読者に日和らなくてもいいのだ。もっとオタクに書けばいいのだ。誰もついてこれなくてもいいのだ。ものすごく美味しい味噌汁なのに、わざわざうすーく薄めて減塩にしてしまった感じ。ちょっと惜しいなぁ。新書ではなく、単行本で濃ゆ〜〜いのを読ませて欲しいと切望する次第。

2003年04月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ , 音楽

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