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2002年11月

LV5「麦ふみクーツェ」

いしいしんじ著/理論社/1800円

麦ふみクーツェ
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前作「トリツカレ男」でとんでもないストーリーテリング能力を発揮した著者が出した名作。
彼にしか書けない分野を創出したとも言えるかも。「いしいしんじものがたり」というひとつの分野。物語というより「ものがたり」。現代の寓話としていろいろと警句・隠喩・置き換え・教訓を探し分析することも出来るだろうが、ボクはこれを純粋にものがたりとして読みたい。そしてものがたり世界に浸りたい。

音楽家をめざしたでくのぼうのような少年の半生を、地球のどこかの架空港町を舞台に魅力的すぎる登場人物たちを散りばめて描いたものがたり。出だしはわりと退屈で、おやおやと思っていたけど、中盤から断然面白くなりラストまで一直線。淡々としたペースを最後まできっちり守り抑制もよく効いている。なのに何度も涙する。寓話的な部分で村上春樹をちょっと思い出させるが、必要以上に思わせぶりではないところが著者のイイトコロ。そして要所要所に出てくる音楽の本質に迫る言葉の数々もすばらしい。ものがたりというのはこういう細部の出来如何にかかっているのだなぁとしみじみ。

441ページの長編で、かなり浮世離れしている内容に、ちょっととっつきにくいと感じる読者もいるかもしれない。でも、きっと読んで後悔しない。オススメ。

2002年11月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV5「戦争中毒」

ジョエル・アンドレアス著/きくちゆみ監訳/グローバルピースキャンペーン有志訳/合同出版/1300円

戦争中毒―アメリカが軍国主義を脱け出せない本当の理由
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副題は「アメリカが軍国主義を抜け出せない本当の理由」。
60ページちょっとの短いマンガである。でも本当に大切なことは短く表現できるものだ。アメリカ人が書いたこの短いマンガの中にアメリカの醜い側面が余すところなく描かれている。すべてが真実かどうか判断する材料がないが、無批判にアメリカの善を信じてきた(信じている)多くの人々に、平らかに比較検討するチャンスを提供する意味で「必読」の一冊だろう。

驚くべきことにこの本の初版は1993年の湾岸戦争直後である。初版は7000部。すぐ絶版となり埋もれていたが、有志の手により発見、私立探偵を雇って著者を捜し出し説得して、2001年の911後、最新情報を盛り込んだ改訂版を緊急出版したという。著者の先見性&平明な視点に脱帽する。

その有志の中心人物は「アメリカの問題は、政府や米軍が海外でしていることを、アメリカ市民のほとんどが何も知らされていないことに尽きる」と語っている。
まさにその通り。というか、過去の戦争中、どの国もそういう状態で暗黒に突き進んでいったのだ。そういう意味でこれはアメリカ国民自身に読まれるべき本である。「『戦争中毒』を認知させる会」という活動があり「アメリカの若者が軍隊に志願する前に『戦争中毒』を読めるように、アメリカの学校と図書館に『戦争中毒』を寄贈する」活動をおこなっているという。この本の内容が絶対的に正しいとは言い切れないが、中立な視点を与える意味でとてもいい活動だと思う。ひと口乗ろうっと。(この本のサイトにくわしく載っている)

いままた冷静に読み直してみて、この本の内容はアメリカを無視できない現代社会を生きるのに「知っておかないといけないある側面」であることは確かだと思う。「今」と正面切ってつきあっていこうという人々には「必読」だろう。そこまで真剣でもない人々にも、マンガだし、読んで損はないと思うよ。

2002年11月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:漫画 , 時事・政治・国際

LV5「コンピュータのきもち」

山形浩生著/アスキー/1500円

新教養としてのパソコン入門 コンピュータのきもち
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副題「新教養としてのパソコン入門」。
帯には「なぜパソコンはこんなに世話がやけるのか? コンピュータには使い方の知識だけでは片付かないもっと大事な考え方があります。それがコンピュータのきもちです」。うしし。コンピュータのきもちだって…‥おたく臭っ。だいたい入門書なんていまさら読むかいな。などと思いつつ、なぜか本屋で手にとり、ちょっと立ち読みし、すっとレジに持っていってしまったボク。

実は名著です、これ。
エッセイっぽいやさしい語り口調につられてすぅっと読みすすんでいくと、普通人でも自然とコンピュータおたくの発想法に近づけるようになっている。いや、そう、あなたはおたく発想などしたくないだろう。でも本の冒頭で「コンピュータはおたくによって作られた」という衝撃的な事実が明かされていることでわかるように、おたく発想が出来ないとコンピュータが何を考えているかがわからないのだ。永遠にコンピュータを使いこなせない。使いこなしたいなら、おたくたちがどう発想してコンピュータを作ったか、そしてどう育ってきたかを知らないといけない。知っておきさえすれば、かなりの疑問が氷解する。なかなか画期的な本なのだ。

なんつうか「アメリカ人はこういうときこういう発想をします」とかよく聞くじゃん? ボクたちはアメリカ人とつきあうとき、彼らの言語法と発想法を頭の中で整理して彼らにわかるようにコミュニケートする。そうしないと永遠にわかりあえない。それと同じような発想整理をコンピュータに対してもしてやろうということ。よりコンピュータとのコミュニケーションがスムーズになってくる。トラブル・シューティングの時にも、きっと威力を発揮する。

ええ、ボクはコンピュータ入門者ではありません。それでも、読んでいろんなことが頭の中で整理された。初心者にはもっと有用だろう。特に「コンピュータってわけわからない!」とコミュニケーションを投げてしまっているアナタ! とってもお気軽な本なので、一読をオススメします。

2002年11月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:実用・ホビー , 評論

LV5「読み聞かせる戦争」

日本ペンクラブ編・加賀美幸子選/光文社/1800円

読み聞かせる戦争
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戦争の悲惨さ無意味さを伝える数多くの文献・小説・日記・詩などの中から、特に印象的で読み聞かせるに効果的(?)なものを27篇選んで収録したもの。
題名からわかるように子どもたちに読んで聞かせる形式になっているため、少々説明的なものもあるし、ちょっと教科書的ラインナップでもあるのだが、目を背けたくなる戦争の現実を子どもに実感をもって伝えられるいい本に仕上がっていると思う。

収録されているのは「ヒロシマの空」「きけわだつみの声」「レイテ戦記」「私のひめゆり戦記」「今夜、死ぬ」「夏の花」など。特に「ヒロシマの空」は涙なしでは読めない。これを子どもに読み聞かせるだけでも買う価値があるかもしれない。戦争体験者がどんどん少なくなっていっている今、こういう正面切った企画が出版されるのはとてもいいことだと思う。必要以上に教訓的にならず、子どもに淡々と伝えていきたい。

加賀美幸子が朗読した付属CDにはその中から9篇が収録されているが、映像世代である今の子どもに本当に伝えようと志すなら、映像付きDVDの方が良かったかもしれない。それと、加賀美幸子の朗読はちょっと情緒的すぎる気がする。もう少し淡々としている方が好み。

2002年11月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際 , 教育・環境・福祉 , 児童・ティーンズ

LV5「もっとおおまかに生まれた女」

いのうえさきこ著/ソフトバンクパブリッシング/1000円

もっと大まかに生まれた女。
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ある方に「とっても面白いから読んで!」とすすめてもらったマンガ。著者のサイトはこちら。サイトも面白いが、本はもっと面白い。実際とっっっても楽しみました。大笑い。何度も読み返しては笑い、腰を痛めましたわ。

全体に西原理恵子系なのだが、西原より芸風が丁寧で細かく楽しめる。言葉のセンス、絵(線)のセンス、字のセンスのバランスがとてもいい。身近な人物を切る切れ味が特にすばらしい。そして、ネタのデフォルメ具合がちょうどいい。これ以上ふくらますと白けるぎりぎりを上手に渡っている。ふーん、いのうえさきこ、、、西原と比べられがちな芸風で損しているかもしれないが、西原みたいに突っ走らず、いまみたいに上手に抑えていけば、大化けするかも。いままで知らなくてスイマセン。他の本も買ってみよう。

2002年11月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:漫画

LV5「HARRY POTTER and the Goblet of Fire」

J.K.ROWLING著/BLOOMSBURY/£6.99

Harry Potter and the Goblet of Fire (UK) (Paper) (4)
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原書読み。
これを原書で読み終わったときは充実感あったなぁ。なにしろ796ページ。英語的にもわりと難しく(ボクにとっては)、筋も知らない状態で読んだので、苦労が多かった。時間もかかった(1ヶ月半)。でも、日本語版が出版される前に読み終えたのはうれしかったぞ。なんだボクもわりと根気あんじゃんと自覚できた意味で、思い出深い一冊になった模様。

内容的にはかなり高度で 子ども向きっぽさもほとんどなく、大人でも楽しめる。ラストなどとっても怖く、子どもによっては読み進められないのではないかな。シリーズ最高作といわれるのもわかる。とはいえ、クディッチのワールドカップや三校対抗戦がそれほど面白い物なのかという根本的な疑問が最後までつきまとったのが残念。日本語版もそのうち買って、ちゃんと読んでみようとは思うが…なんというか再読欲は起こらない本だな。

2002年11月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(海外) , ファンタジー , 児童・ティーンズ

LV4「にんげん住所録」

高峰秀子著/文藝春秋/1238円

にんげん住所録
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名人高峰秀子の最新作。
相変わらず読んでいて気持ちよく、自然と「足るを知る」気持ちにさせるエッセイ。そろそろ著者の本も読めなくなるだろうという気もしており(知り合いの担当編集者が「これが最後かもしれません」と言ってたし)、読み終わるのが惜しかった。

正直言うと、いままでの著者が書いた名エッセイ群に比べるとちょっと切れ味が落ちる。でも彼女のエッセイを楽しみにしている常連読者たち(ボクを含む)にはそんなこと気にもならない。だって、ちょっと低調とはいえ、そこらのエッセイの数倍は面白いから。そして、今この歳になったから書けるいろいろな総まとめが哀しくも美しいから。ファンとの交友を綴った「住所録」、黒澤明のことを書いた「クロさんのこと」、木下監督のことを語った「私だけの弔辞」など、淡々としながら、読んでいる側が思わず背筋を伸ばしてしまうような名エッセイの数々。ぜひゆっくり味わって欲しい。

高峰秀子の本を読むたびに、持ち物少なく思い出も少なくきれいに老いたい、という気持ちに満たされる。そして現在の身の回りの複雑さ・煩雑さを顧みて、自分の至らなさにがっくりくる。ボクは彼女のようにきれいに老えるだろうか。5年ごとに再読して確かめたいエッセイ群である。

2002年11月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

LV3「報道は欠陥商品と疑え」

鳥越俊太郎著/ウェイツ/750円

報道は欠陥商品と疑え
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題名が内容のほとんどすべて表している。
報道はもともと完成された商品ではないのだ。欠陥がありがちな商品なのだ。そこに気づかせてくれただけで、この本の存在意義がある。そういう視点を与えてくれてありがとう、という気分。

そう、マスコミ報道の多くは「欠陥商品」なのだ。人件費の安い国が粗製濫造している、3日持てばまぁいいや製品なのだ。そりゃそうだ。毎日新しい素材が納入されて、素材研究する間もなくそれを加工し出荷しないといけない。とにかく紙面・電波を埋めないといけない。クオリティ管理など無理である。そんな工場で作られた商品に文句を言う方がバカだ。バカではあるが、工場側も謙虚さが足りない。欠陥商品が混じっているのに謝りもせず、いや「国民が望んでいるのだ」と逆に威張り、商品を出し続ける傲慢さ。これがメーカーだったらとっくにつぶされている。

マスコミの煽動が戦争を導くことも過去にあった。国民もこの欠陥商品に心を奪われやすい。常に「欠陥商品かも」と疑ってマスコミ報道に接しないとヤバイのだ。もちろん、志の高い報道もちゃんとある。有用な情報もたくさん流れている。でもそれらを見分けるのは相当鍛えられた人でも難しいのが現状だ。我々はまず無批判に報道に接するのをやめることから始めよう・・・
と、いろいろ考えさせられる本なのだが、実は内容はそんなに濃くはない。でも、表題の言葉をしっかり理解するために、読んで損はないだろう。

2002年11月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際 , 評論

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