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2002年08月

LV5「からくり民主主義」

高橋秀実著/草思社/1800円

からくり民主主義
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おもしろい。
別に民主主義のウソについて語っている堅苦しい本ではない。
著者曰く「からくり_民主主義」ではなく「からくり民主_主義」なのだそうだ。民主とは国民が主役ということ。国民みんなが主役なら主役はいないのと同じではないか…というところから、著者は「みんなというカラクリ」に迫っていく。それは細かいことを「国民の声」として声高にクレームする新聞投書欄から、小さな親切運動、統一協会の若いカップル、諫早湾干拓問題などまで及ぶ。ホントにそれは「国民の声」であり「みんなの思い」なのか? だいたい「みんなの思い」って何なのだ? 全員が同じことを思うならオウムや統一協会とどこが違う? 何かおかしくないか? と、じっくり悩みながらまだるっこしく追っていくのだ。
そう、そのまだるっこしさが著者の特性でもありおかしみでもある。大まじめに取材してまだるっこしく悩むあたりがとってもおかしい本なのである。

はっきり言うとつまらない章もある。でもおもしろい章は抜群。マスコミが作り上げたわかりやすい構図(悪者vsいい者)のからくりも見えてくる。諫早湾のことなど、まったくマスコミに洗脳されていたよ。最後のほうの章がテーマずれを感じるが、全体としてとても印象深い本だった。

2002年08月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際 , 評論

LV5「コミック韓国 コリア驚いた!」

李元馥著/朝日出版社/1500円

コミック韓国
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韓国で通算500万部売れている教養マンガの邦訳にして最新刊で、世界の国々を韓国人のためにわかりやすく解いていったシリーズの最終巻。

いよいよ著者の母国、韓国を取り上げている。相変わらずこの題名で通すんかい!とぼやいてしまうのだが、前作「コリア驚いた! 韓国から見たニッポン」に続き、今作も非常に楽しく非常に頭がクリアになる出来だ。母国の分析ということでかなり肩に力が入っている部分はあるが、半島国韓国の地政学的特質と歴史から国民性を明らかにし、イイトコロとワルイトコロをしっかり描き、将来への展望を説いている内容はかなりハイブロウ。とはいえマンガだから、それがスラスラ頭に入ってくる。今回はマンガ本来の大きな版形で出してくれたのでより読みやすくなった。

W杯共催で近しくなったようでいて、あの独特の熱狂具合に「やっぱり根本から違う国なんだぁ」と思わされた遠い国、韓国。そのトコトン熱狂する国民性の秘密が実にクリアに説明されている。韓国について「同じような顔しているのになんでこういろいろ違うのだろう」と不思議に思っていた部分がほとんど解きほぐされると言ってもいい。W杯共催後の今だからこそ、ぜひともお薦めしたい韓国理解本である。

2002年08月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際 , 漫画

LV5「占星術殺人事件」

島田荘司著/講談社文庫/714円

占星術殺人事件
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まったくもって何をいまさら!と推理小説ファンから怒られそうだが、ボクだって本意ではないのだ。古くは日本の推理小説を変えた本とまで言われ、近くは金田一少年の映画の中で同じトリックが使われて問題になったことが話題となったこの本、単行本の初版は昭和56年という古さである。ボクはいろんな評論でこれが「伝説的名作」と謳われるたびに読んでみたいと思い、本屋を探し回った。が、出会えなかった。今考えればネットで注文しておけば良かった、とも思うのだが、そういう時に限ってこの本の存在を忘れていたりする。今年の6月のある日に本屋で見つけたとき、小躍りしたのは言うまでもない。

内容的には既読の人には説明不要なほど印象的な本だろうし、未読の人にはただ「読め」としか言えない。
手法的にはその後いろいろマネされたのか、古い感じは否めないのだが、伝説的、という意味はとってもよくわかるのである。手に入れるまでの長い時間も含めて、ボクは十二分に楽しんだ、ということで最高点。一種の教養として知っておいて損はない作品である。

2002年08月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV4「フランス田舎めぐり」

大島順子著/JTB/1500円

フランス田舎めぐり 単行本
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フランスの田舎を旅行するための適切なガイド、なのだけど、同時によく出来たエッセイ集にもなっていて、読み終わると実用的知識プラス「フランスの田舎で数日過ごしたような満足感」に浸れる。
こういうサービス精神満点の本にもともとボクは滅法弱い。書いている人のメンタリティまで想像できて「うー惚れそう」くらいまで行ってしまう。うはは。ちゅーことで、LOVE!なのである。

いや、でもボクのそういう趣味は置いておいてもいい本である。フランス好きや旅行好き、田舎旅のエッセイなどが好きな人はもれなく満足するであろう。文章もいいし構成もなかなか良い。ボクはプロバンスのリュベロン地方を回って帰ってきた後これを読んだのだが、先に読んでおけば良かったとずいぶん悔やんだ。普通のガイドでは教えてくれない、コアでエンスーな旅がこれを読めば体験できるであろう。

2002年08月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル: , エッセイ

LV3「47歳の音大生日記」

池田理代子著/中公文庫/629円

47歳の音大生日記
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1999年に「ぶってよ、マゼット」という題で出された単行本の改題文庫化。
同じ内容だとしたら文庫の題名の方が数倍わかりやすく内容を言い当てている。つまりは、あの「ベルサイユのばら」「オルフェウスの窓」の池田理代子が47歳にして一念発起し、東京音大の声楽を受験し、受かり、4年間の学生生活を送る顛末が書かれている本なのだが、その間、彼女は結婚もし旅もしライブもし病気もする。かなりハードな4年間である。その4年を主観的すぎず客観的すぎず、威張りすぎず謙虚すぎず、とても上手に描写している。

読者的には「47歳から始めて人生を変えた大御所漫画家の熱意と勇気の物語」的に期待しちゃったりする人が多いかもしれない。実際はもっと気楽な本だ。
冒頭のあたりにこんな文章がある。「『自由であるっていうことはね、何も一切期待しないということよ。期待するから、人間は捉われてしまうの』 この言葉で私は、捨て身になって人事を尽くしきる勇気を与えられた」 この本の芯はここにあると思う。著者は「自分が47歳にして何かを成した」ということから自由だ。何にも捉われていない。だから教訓くさくなく、読んでいて気楽なのだ。この辺の「読者に教訓・説教と思わせない筆致」って実は高等な技だと、ボクは思う。

2002年08月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:音楽 , エッセイ

LV2「¥999」

フレデリック・ベグベデ著/中村佳子訳/角川書店BOOK PLUS/999円

¥999 BOOK PLUS
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フランスでの大ベストセラーの邦訳。
原題は「99F」。99フランですね。そのニュアンスを999円という邦題にしている。この本もこの世界も広告業界のモラルもすべて999円で買える程度のシロモノさ、みたいな意味の題名。
そう、舞台は広告業界。著者も広告業界出身で、赤裸々に内部を描いた、という評価もあるようだ。同じ業界に身を置いているものとして「んなことあるわけない」描写だらけなのだが、フランスではそういうこともあるのかなとも思わされたり。なんつうか、業界っぽい人たちの描写とそれに対する虚無感はわりと的を射ているかも。ま、人生なんて虚飾とクズと無意味で詰まっているわいな、みたいな虚無感に襲われやすい業界ではある。

若い広告クリエーターが主人公で、人称が次々変わる構成や独特の文体がユニーク。青臭く独白しただけのぬるい作品と取ることも、現代の「ライ麦畑でつかまえて」的作品と取ることも可能だが、ボク自身は、リアルな部分と荒唐無稽に筋を展開させた部分の整合性の気持ち悪さが大いに気に入らない他はわりと気に入った。独善的な毒舌が広告業界嫌いの広告業界人であるボクにわりと心地よかった、というだけのことかもしれないけど。

2002年08月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(海外)

LV2「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」

江國香織著/集英社/1365円

泳ぐのに、安全でも適切でもありません
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第15回山本周五郎賞受賞作品。直木賞の候補にもなったが、取っちゃったらどうしようかと思ったよ。

って、別に著者がきらいなのではない。時間の切り取り方が見事だし、そのかけがえのなさ、他の誰でもなく自分こそにそういう時間が流れているのだという誇らしさと切なさ、みたいなものを書かせたら当代一流だとは思っている。
本作でも、表題作や「うんとお腹をすかせてきてね」「サマーブランケット」など、彼女にしか書けない時への愛おしさに溢れており、思わず本を閉じてぼんやり中空に目を漂わすようないい時間を過ごせた。

でも、なんだろう、透明すぎる。ボクには。
この透明感から、敢えて言うならば「イマではない」という印象を受ける。ある時期の村上春樹やわたせせいぞう、そしてトレンディドラマで使われた手法にスパイス振って上手に調理しなおした印象が抜けないのだ。そしてボクは(40代という年齢もあるのかもだが)そこに実在(リアリティ)を感じられなくなっている。このごろのTVドラマにもそれは言える。頭で考えて構築したことの限界、みたいな手触り。読んでいて、どうしてもそこが引っかかった。

2002年08月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV2「ダライ・ラマ自伝」

ダライ・ラマ著/山際素男訳/文春文庫/552円

ダライ・ラマ自伝
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さて、ダライ・ラマが書いたものに対して、ボクが好き嫌いを言うことが許されるのかどうか。彼の深遠も深淵も神園もなにも理解していない(であろう)このボクが。 これって例えば聖書に好き嫌いを言うようなことなのかも、ってちょっと思ったり。

でもまぁ正直に言おう。
彼の半生を彼とともに追っていく旅は面白かった。チベットの姿にも触れられたし彼がどう世界を見ていたかもよくわかる。が、ボクは「自伝」という題名からもっと深い思想みたいなものに触れられると期待していた。それはこの本からは見つけられなかった。そういうことだ。淡々と半生を語っていくその淡々さこそ彼の深遠さかもしれないが、そのわりには精神論や祈りもたまに語る。そこらへんはちょっと中途半端な感じなのだ。
ダライ・ラマ関係の書物は3冊くらいしか読んでないが、外から語る彼の実際の方が、読み物としては面白い。史実・史料としてはもちろん貴重。

2002年08月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:自伝・評伝 , 哲学・精神世界

LV0「響くものと流れるもの」

福田和也、柳美里著/PHP研究所/1400円

響くものと流れるもの
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副題「小説と批評の対話」。
批評家福田和也と純文学者柳美里の対談。どちらの激しさもそれなりに認識していたボクなので、このふたりの対談というだけで即買い。激しい言い合いと深い理解と豊かな結論がそこにあるのでは、と期待した。

結果的には、なんか「お隣同士の主婦が高級レストランでお互いを妙に褒め合っている図」みたいな印象。
彼らがもともとその文学的見地から大喧嘩していたという事実から、編集者はこのふたりの和合対談自体を「事件」としているようであるが、そんなことあずかり知らぬ読者にはその辺の劇的さが伝わらず、妙な内輪受けしか感じない。そう、事情がいまひとつ読めてこないのがまず不親切。昔の大喧嘩コラムは再録されてはいるのだが、その辺の消化具合は本対談では触れられず、いったい何を目的に何をふたりで解き明かしたいのかボンヤリしたまま最後まで行ってしまう。

いったい何が響くもので何が流れるものなのか、福田が怒り柳が猛った昔の感情はどう解決されたのか、読みが足りないのかもしれないが、ボクにはボンヤリとしか見えてこない。当代一流のふたりの対談にしてはそこそこの面白さしかない残念な作品。

2002年08月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:対談 , 評論

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