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2002年05月

LV5「ファッキン ブルー フィルム」

藤森直子著/ヒヨコ舎/1800円

ファッキンブルーフィルム
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著者の個人サイトで毎日つけられていた日記を元に構成された本。
元の日記にはなかった描写も出てくるが(そして元の日記にあった描写が削除されているところもあるが)、基本的には日記そのままのノンフィクション。田口ランディの「アンテナ」はこの著者をモデルにしている。で、この日記の一部を無断使用して盗作判決を出されてた。様々なすれ違いがあったようだが、この本のあとがきは田口ランディが書いておりベタ褒め。発売段階(01年4月)では問題はまだ顕在化してなかったらしい。映画化も進行中でありいろいろ話題の本である。

著者はバイセクシャルでSMの女王様(つまりS)を仕事としている。
読み始めてすぐ、SMクラブに来るノーマルでない客たちの描写に驚愕し引き込まれる。そして著者の彼女や彼氏とのエロい日常を楽しみ、キワモノ的日常を売りにした本と自分の中で位置づける。が、読み進むに従ってそんな低いレベルの本ではないことに気づいていく。そのへんの進行が自然で見事。そのうえ、日記なのにせつなくも美しい結末まで待っている。脚色的に構成したのではないとはいえ、一編のよくできた小説を読み終わった気分。ただものではない。

なにより著者の人間に対する視点が近来になく心地よい。それを意識して演出してないところに震える。素の言葉でここまでやられてしまうと小説家は立場がないだろうな。読後、ちょっとした人間愛に包まれつつ、なんというか「いつ死んでも一緒だな」的刹那感におそわれた。ヒトという個がソコニアルカタマリとして見えてくる。オススメだ。

2002年05月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション , 自伝・評伝

LV5「田中康夫が訊く」

田中康夫著/光文社/1500円

田中康夫が訊く―どう食べるかどう楽しむか
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副題が「どう食べるか どう楽しむか」。
雑誌「BRIO」に99年5月〜01年6月まで連載したレストラン見栄講座的連載を再構成した本。連載中も意識して読んでいたが、著者のイイトコロが出たいい連載だった。

著者に「ソムリエに訊け」という田崎真也をインタビューした本があるが、構成はほぼ同じ。著者が初心者のボクたちに成り代わっていろんな質問をプロにしていくというインタビューものだ。その質問が、素人すぎず玄人すぎず、非常にバランスがいいのである。そうそうソコが知りたかったのよー的ポイントをしっかり突いてくれる。著者独特の向上心がいい方に作用した「格好いい客になるためのマニュアル集」とも言えるかも。

青柳から始まって、寿司幸、楽亭、味満ん、燕楽、ふじおか、アカーチェ、タイユバン、バーラジオ、福臨門、スタミナ苑、俵屋旅館など、取材という立場を最大限利用していい思いしやがったなぁとうらやましくなるようなラインナップに細かくインタビューしていく。
注文上手になるためにはどうすればいいか、なにからどう食べるのが正解か、粋な食べ方とは何か、何が本当においしいのか、など、読者に成り代わって丁寧に質問してくれている。初心者よりある程度知っている人の方が「目から鱗」が体験できるかもしれない。

個人的には中華ととんかつに目鱗。中華は知っているようで知らなかった分野。ほーこういうことになっているのかーと素直に感動した。こうやって楽しむべしというマニュアルに使うより、行間をちゃんと読んで、より食べ巧者になるために活用したい。そんな本である。

2002年05月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒 , 対談

LV5「トリツカレ男」

いしいしんじ著/ビリケン出版/1300円

トリツカレ男
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以前、町田康とこの著者の共著「人生を救え!」を読んだのだが、いしいしんじについてはまるで知らなかったし、彼が書いた部分は面白く感じなかったと書いた。ら、著者の兄の友達という方から「トリツカレ男」は面白いらしいですというメールが来た。んでもってbk1に注文して買ったのである。結果的には買って良かった。ええ、面白かったです。

なんか原田宗典の名作「スメル男」を思い出させる題名で、似たような展開を想像していたのだがずいぶん違った。
なんというか童話的であった。ジュゼッペとしゃべるハツカネズミとペチカという女の子が主な登場人物だったりするのだ。いろんなものにどうしようもなくとりつかれてしまう男ジュゼッペ。一度とりつかれたら世界記録が出るくらいそればかりやり続ける。そんな彼がはじめて女の子にとりつかれた(つまり、恋)。彼女にとりつかれたジュゼッペは、どうするか。え?ストーカー? いやいや、そんなありがちなことではない。本当にヒトにとりつかれる(恋する)とはどういうことか。それが後半のストーリーである。

あっという間に読める童話的小説だが、設定も結末もなかなかよく、気に入った。ちょいと温かい気持ちになりたい夜にオススメ。

2002年05月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ファンタジー

LV5「クレイジーな人たちへ アップル宣言」

三五館/1000円

アップル宣言―クレイジーな人たちへ
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ま、読むだけなら1分で読める本だな。アップル(Macintosh)の「Think different」のCMを再構成して写真とともに言葉を並べただけの本なのである。
写真は世界のクレイジーな人たちのスナップ。アインシュタインに始まり、エジソン、レノン、フラー、アリ、ピカソまで17名。それらの肖像に実際のCMのコピーがつけられているだけの本なのだ。98年発売の古い本。友達に教えられるまでこの本の存在を知らなかったボクだが、いまではボクの座右に置かれることになった。

「クレイジーな人たちを讃えよう」という言葉で始まる20ページにも満たないこの本は、前向きな刺激に満ちている。
世界は変えられると信じているクレイジーな人たちの仲間になぜボクは入ろうとしないのか。おさまりがちな日常におさまって、志半ばで諦めてしまったいろいろな関心事を、自分の身近に再度呼び寄せる力がこの本にはある。それだけでも買いである。1000円は決して高くない。

2002年05月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:写真集・イラスト集 , 哲学・精神世界

LV3「泥棒はライ麦畑で追いかける」

ローレンス・ブロック著/田口俊樹訳/早川書房/1200円

泥棒はライ麦畑で追いかける
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「泥棒バーニイ・シリーズ」の9作目らしい。ボクは初読。泥棒のバーニイが推理に活躍するシリーズで、その大半が実際の著名人にまつわる事件になっている。

この本は、題名からわかるとおりサリンジャーをモデルにしており、ジョイス・メイナード(「ライ麦畑の迷路を抜けて」)がサリンジャーからもらったラブレターをサザビーズのオークションにかけたという実際の事件を下敷きにしているようだ。

とっつきは悪いがなかなか楽しめる推理小説。古い推理小説文法をしっかり守った感じが逆にいい味になっている。
サリンジャーをモデルにした本としては「シューレス・ジョー」(映画「フィールド・オブ・ドリームズ」の原作)がまず浮かぶが、サリンジャーの描き方自体は遜色がない感じ。彼がいかにアメリカで愛されているかがよくわかるなぁ。ただ、そこらへんの興味をさっ引くと、この小説はいきなり魅力を失うかもしれない。原題は「THE BURGLAR IN THE RYE」。

2002年05月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV3「暗号解読」

サイモン・シン著/新潮社/2600円

暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで
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「フェルマーの最終定理」を書いたサイモン・シンが、今度は暗号に取り組んだ……というだけで「フェルマー…」を読んだ人にとっては是非とも読みたい一冊になるだろう。
そのくらい「フェルマー…」は面白かったし、著者の取材力と再構成力は信頼がおけるのである。ただ、前回と違うのは、「暗号」というメソッドの複雑さがボクの理解をかなり超えるということだ。「暗号理論を学びながらその歴史と現状を理解し最前線を知る」ということが、数学得意でないボクにはどうにも苦痛になってしまうのである。

「16歳のセアラが挑んだ世界最強の暗号」も暗号を扱っていたが、これは非常に簡略化して素人でもわかるように書いてあり、ボクは「暗号の現状ってこうなんだぜ」と知ったかぶりしてヒトに話したくらいである。が、サイモン・シンのこれは、確かにわかりやすく咀嚼して書かれてはあるものの、玄人の領域まで突っ込んだ記述になっていて途中で混乱してしまう。つまり詳しすぎてわからなくなっちゃうのだ。うーむ。

こういう題材が好きな人には大オススメ。相変わらずの構成力と筆力で粘り強く語られているそれは感動的ですらある。暗号のことが(具体的数式を除いて)すべてわかると言っても過言ではない。が、ご自分の数学的素養に疑問を抱いているヒトにはあまり薦めない。分厚いし、苦痛なだけだと思う。

2002年05月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション , 科学

LV3「印刷に恋して」

松田哲夫著/内澤旬子イラスト/晶文社/2600円

印刷に恋して
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印刷の現場をルポルタージュした本。
詳細かつわかりやすいイラスト(内澤旬子)が効いている。「本とコンピュータ」という、興味あるヒトはみんな知っている季刊誌に連載していたコラムをまとめたもので、消えゆく運命にある(?)活字・写植の世界を中心に、変わりゆく印刷業界への哀惜を込めた名ルポになっている。

印刷所は新入社員のときコピーライターをしていた関係でボク自身何度も出入りした。あの頃はまだ活版だった。魔法のように刷り上がってくるのを見ていちいち興奮したのを覚えている。色校正の現場も職人ぽくて格好よく見えたものだ。
そんなこともあってボクは普通の人よりは印刷的な知識があると言ってもいい。惜しいのは、そういうボクにとっても、ちょっと難解な本になっていたことだ。専門用語をいちいち説明してはいられないだろうが、著者は読者を置いてきぼりにしてどんどん深く印刷の世界に入っていってしまう。印刷にちょっと興味がある程度の読者にはかなり辛いのではないだろうか。

印刷技術の歴史と現状はなんとなく理解できる。未来はこうなっていくのだろう、という展望も見える。これをもうちょっとだけ素人にもわかりやすく書いてくれたら……。本好きな素人層は意外と印刷に興味を持っているものだ。そこらへんを取り込むいいテーマであっただけにちょっと惜しい。

2002年05月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション , エッセイ

LV2「ギグラーがやってきた!」

ロディー・ドイル著/ブライアン・アジャール絵/伊藤菜摘子訳/偕成社/1000円

ギグラーがやってきた!
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愛読している書評サイト「なまもの!」(←ダジャレたれ流しギャグ系裏日記がまた抜群)でガンガンに薦められていた童話。
その薦められ方がガンガンだったせいもあり、期待に胸膨らましすぎてしまったというのが実際のところかも。充分愉快で奇想天外で印象的な本だが、おかしみの方向性や、読者(子供)イジリの仕方がボクの好みと少しずつズレている感じ。ハマる人にはハマるかもしれない。

英国でもっとも権威のある文学賞ブッカー賞を受賞した作家ロディー・ドイルのはじめての童話らしい。
破天荒な章構成と「子供にひどいことをした大人は、ギグラーという生き物によって犬のうんちを踏ませられる」というテーマが秀逸なのだが、読んでいる子供たちへのサービスの仕方がちょとくどい。はしゃぎすぎ。同じ英国の子供向けでも、ハリー・ポッターのはしゃがなさの方がボクは好きである。ま、対象年齢が少し違うのだろうけど。

2002年05月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:児童・ティーンズ , ファンタジー

LV2「石垣島スクーター遊々記」

青井志津著/四谷ラウンド/1400円

石垣島スクーター遊々記
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4月に石垣島へ行って来た。
ボクは現地限定的出版物に非常に弱いので行けば必ず何冊か購入する。そのうちの一冊がこれ。重度の皮膚病を患い、治療法として日光浴が必要な著者が、51歳のときに東京から沖縄は石垣島へ移り住み、スクーターを移動手段としつつ南の島の生活を楽しんでいる様子を描いたエッセイである。琉球新報や八重山毎日新聞に書いたコラムをまとめたものらしい。

なんというか、ゆったりと著者の日常に浸れるいい本だ。ただ、ゆったりさ加減もおもしろさ加減もさすがにちょっとプライベートすぎて読んでいてつらいところはある。でも決して嫌いな本ではない。というか好きである。遠き石垣に著者が毎日暮らしていることが感じられるだけで、心にほのかな灯りが点る。嗚呼、石垣島、また行きたいなぁ。

2002年05月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ ,

LV1「ぬるーい地獄の歩き方」

松尾スズキ著/文春文庫/514円

ぬるーい地獄の歩き方
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面白い。世の中にある「公然とつらがれない地獄」、つまり「ぬるい地獄」に焦点を当てて、ぬるい地獄のまっただ中にいる人(もしくは経験者)と対談しながら、そこでの地獄のぬるぬる具合を楽しむ、という企画自体がまず面白い。

たとえば「子役」の世界。
どうやら地獄らしいが、公然とした地獄ではない。いったいどういう世界なのだ?みんなどこに消えた?そして消える前になぜ太る? そんな疑問を胸に著者は子役出身の訳者にインタビューしていく。「ぬるい地獄ってなんだ?」と読者は思って読み始めるが、読み始めてさえしまえばその意味はすぐわかる。そんな説明しがたい環境に、著者ははじめて焦点を当てた……。

そう、企画は面白いのだ。だが、出てくるテーマがどれも突っ込み不足でもうひとつなのがこの本の難点。惜しい。企画は最高なのに…。痔や若ハゲや付き人はわかる。ぬるい地獄だ。が、メディカルアートってなんだ? いじめや失恋は本当にぬるいのか? もっと他にテーマはないのか?
とても好きなタイプの本なだけに惜しいなぁ。いくらでも突っ込める題材なのに。倍くらい厚くして、テーマもより吟味して、改訂版を出して欲しいと切に望むボクなのである。

2002年05月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ , 雑学・その他

LV1「"全身漫画"家」

江川達也著/光文社新書/700円

“全身漫画”家
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人気漫画家江川達也が、その半生とどうやって作品を生みだしているかを自らが語った本である。

「BE FREE」「まじかる☆タルるートくん」「東京大学物語」「ラストマン」など、ヒットを連発する漫画家が自らその創作の目的ややり方を明らかにしたいう意味では、ファンにはたまらない本かもしれない。ボクもファンの端っこにいるので、それなりに楽しんだ。

ただ、帯にあるような「超人気漫画家の発想はわれわれとどこがどう違うのか」とか「彼の創造の源泉はどこにあるのか」とか「江川流売れる漫画の極意満載」とかみたいなのを期待すると裏切られるだろう。
取材・執筆・構成は別の人(鈴木隆祐氏)がやっていることもあって、きっちりそこら辺まで詰められた本にはなっていない。江川達也自身が一人称で自分のアピールを書くのと、誰かが三人称で評伝・評論として書くのの中間を選んでしまったことがちょっと中途半端に終わってしまった要因かな。これではインタビュー記事以下にしかならない。インタビューにおけるインプロビゼーションすら起こらない。ちょい残念。

2002年05月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:自伝・評伝 , 漫画

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