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2002年01月

LV5「コリア驚いた! 韓国から見たニッポン」

李元馥著/松田和夫・申明浩訳/朝日出版社/1500円

コリア驚いた!韓国から見たニッポン
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韓国の大ベストセラー漫画シリーズ「遠い国・近い国」の第7巻である。
あとの6巻は未邦訳。著者のイ・ウォンボクは漫画家でもあるが大学教授でもあり、また有名なデザイナーでもあり、韓国を代表する知性とも言われている異色の人。このシリーズは、外国の事情を鋭くも易しく漫画で読み解いたもので、待望された「近い国・日本」解読である第7巻も2001年4月の時点で60万部出ているらしい。

一読、目からウロコが数十枚落ちた。
韓国民用に書かれているだけあって、韓国民の愛憎入りまざった対日本意識に気を使いつつの展開であるが、平明な知性で語られるその日本論は西欧から見た日本論しか読んでいないボク(もしくは大半の日本人)には新鮮で妙に納得が行くことばかり。そして日本との比較として取り上げられる韓国の現状や歴史、国民性なども、とっても新鮮でわかりやすい。日本を解きながらの韓国論でもあるので、我々にも異様にわかりやすいのである。

島国論から説き明かす日本論はわりとありがちだが、それが「日本の7つの成功の理由」にきちんとつながっていき、その7つの理由がそのまま「現在の苦悩の理由」につながるその展開は見事。細部もとてもよく思考されていて、この著者の半端ではない日本理解の深さ(もしくは直感力の鋭さ)をうかがわせる。オタク論とかも実にしっかりしていて、いろいろ教えられちゃったり。

ギャグの質は日本的にはちょっと古いが、啓蒙系の漫画としてはバランスのいいもの。訳者がつけた(であろう)邦題がキワモノっぽいのが玉に瑕だが、オススメ本である。著者としては1巻〜6巻の西欧編の方が自信があるらしいが、それらを書くことで培った広い視野がこの日本論を深くしているのだと思う。このシリーズすべてを是非邦訳して欲しいと願ってやまない。マジで読みたい。

2002年01月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:漫画 , 時事・政治・国際

LV5「9.11 アメリカに報復する資格はない!」

ノーム・チョムスキー著/山崎淳訳/文藝春秋/1143円

9.11
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テロリズムという言葉をアメリカの正式文書は以下のように定義している。
「政治的、宗教的、あるいはイデオロギー的な目的を達成するため、暴力あるいは暴力の威嚇を、計算して使用すること。これは、脅迫、強制、恐怖を染みこませることによって行われる」…

この本の内容を簡単に言うと「この公式定義を当てはめればアメリカこそが世界最大最悪のテロ国家である、ということを歴史的事実を元に平明かつ精緻に論証し、今回の同時多発テロをめぐる一方的な見方に決定的な視点を提供するもの」となる。
天才言語学者として知られる著者が精緻に分析したその論証は、事実を元に平明かつ知性的に展開され、目からウロコが数百枚落ちる勢いである。著者は別に「反アメリカ」なわけではない。あくまでも平等な知性でアメリカを批判している。あのテロの直後にこうした冷静な論の展開が出来る知性がちゃんと存在し、欧州を中心としたメディアがそれをちゃんと取り上げていたということに安堵する。

読んでいて気分が悪くなるほど酷いテロをアメリカは世界各地で何度も繰り返してきている。9月11日の同時多発テロに関して「人類に対する犯罪」「自由に対する挑戦」などと言う資格すらアメリカは持っていないことは明白である。どう考えてもアメリカが世界各地で行ってきた行為はテロとしか呼びようがない。

戦慄する例がいくらも出てくるが、特に酷いのは98年にクリントンがスーダンのアル・シーファ工場に対して行った爆撃テロ。その攻撃が、貧困と病気に喘ぐスーダン国民の命綱であった安価な薬を作り続けた製薬工場に対して行われたという事実で、すでに9.11テロを上回る極悪非道犯罪である。薬を手に入れられずに一般人がどんどん死に続けていくということを計算した爆撃テロ……クリントンはビンラディンを軽く上回る冷酷な大量殺戮首謀者である。

また、1980年代のニカラグアに対するアメリカのテロ攻撃も許し難い。この攻撃でニカラグアは壊滅状態に陥ったのだが、彼らは今回アメリカがやったような報復に出ず、国際司法裁判所に訴えた。裁判所はアメリカを有罪とし賠償金を払うように命じたが、アメリカはこれを冷笑と共に退け(!)、攻撃をさらにエスカレートさせた。ニカラグアは国際法の遵守を求めて安全保障理事会に提訴し議会は「すべての国家は国際法を遵守すべし」という決議を行おうとしたが、アメリカ一国が拒否権を発動したのである……すなわち、「国際司法裁判所が国際的テロで有罪を宣告した唯一の国がアメリカであり、アメリカだけが国際法の遵守を求める決議案を拒否した」というまぎれもない事実。こんな例がぼろぼろこの本には出てきて、胸くそ悪くなるのである。

もちろん一方でアメリカはイイコトもたくさんしているだろう。過去にこういうことをした国だからテロを受けて当然だよ、などという気も全くない。また、日本はアメリカの庇護下にあり、アメリカを中心とした文化圏にどっぷり浸かっている。だから基本的に日本人がアメリカ側に立った認識を持ちがちなことにも文句はない。
ただ真の知性は平等・客観を立脚点にすべきである、とは心底思う。アメリカを中心とした世界に生きるからこそ、その世界が何たるかをきっちり知るべきであり、その世界を批判すべき目も曇らせてはいけないと思うのだ。そういう意味でこの本はアメリカ的世界に生きるすべての人にとっての必読の本と言ってもいい。同時多発テロ関連で多数出版された本の決定版としてオススメしたい。

2002年01月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際

LV5「斧」

D・E・ウェストレイク著/木村二郎訳/文春文庫/667円

斧
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原題である「THE AX」を訳すと「斧」となるが、転じて「クビにする」という意味にもなるという。
この本は、不況で会社を解雇されたある技術者が、再就職するために、再就職面接のライバルとなりそうな同じような状況の(つまり解雇された)技術者たちを次々に殺していき、再就職をものにしようとする、というユニークなミステリーである。

こう書いちゃうとなんだかコミカル・サスペンスっぽいし、荒唐無稽だし、テーマがしょぼい感じがするだろうが、さにあらず。一人称で語られるその物語はリアリティばりばりであり、主人公がリストラで追いつめられた心情も、そこから殺人に至る心理も、殺しの場面のドキドキ感も、すべて迫真に満ちている。独特の語り口も魅力的で、非常に出来の良いミステリーに仕上がっているのだ。「2001年度このミステリーがすごい!」の第4位になったのも納得なのである。

このミステリーの質の高さを支えているのはもうひとつある。主人公の独白の要所要所に出てくる人生に対する分析が実に魅力的なのだ。ちょっとした箴言が活きているのだ。

全体に佳作っぽい作品なのだが、ボクはとっても好きである。トンプソンと比べられることが多いらしいが、確かにトンプソンっぽい。名作「ポップ1280」をどことなく彷彿とさせる。

2002年01月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV5「コンセント」

田口ランディ著/幻冬舎/1500円

コンセント
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田口ランディは初読。
あれだけ話題になっていたのに手に取らなかったのは、なんというか、「エロス的な異化」や「ネット的な異化」や「引きこもり的な異化」で作品に思わせぶりな奥深さを与えようとする類の作家なのかな、と勝手に思っていたという理由が大きい。
でも今回読んでみて、それは単なる先入観であったことがわかった。著者はそれらを思わせぶりに異化してはいない。それどころか全く逆である。ただそれはいい面ばかりではなく、例えばエロスという「官能」を論旨が明快な「感応」に収束してしまった点をとっても、ちょいと全体に理屈が勝ってしまったきらいがある。破綻なく隅々まで理屈のあった、よく出来たお話になりすぎた感じ。その妙に収まりがいい感じがボクにはわりと快感であったが、それがこの物語を狭くもしていると思う。感心はするが感動はしない。そんな印象。

でも、感心する描写や感心するストーリーテリングは随所にある。それだけでも処女作としてはすごすぎる。
冒頭からしばらくはちょっと自意識過剰的表現で居心地悪いのだが、中盤から素晴らしい展開を見せていく。結末に向けてのシャーマニズムのとらえ方に既視感があり(吉本ばなな的)、そこに新しいシャーマニズムが展開されていればもっと面白かったと個人的には思う。

ずっとこんな感じで頭のいい小説を書いていっちゃうのかなぁと不安にはなるが、処女作としては傑作。もうちょっと頭の良さが前面から引っ込むとグンと良くなる気がするが、いい部分も失われてしまうのかな。ドロドロした話なのに、読後感が精緻な建築物を見た感じに近いのが、長所でもあり欠点でもある、そんな印象。

2002年01月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV3「自転車生活の愉しみ」

疋田智著/東京書籍/1700円

自転車生活の愉しみ
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自転車通勤を夏以来続けているボクはもちろん著者のサイトを何度か見ている。自転車通勤の世界では有名な人である。で、この著者、TBS「ブロードキャスター」のディレクターらしいが、国会私的諮問機関である「自転車活用推進研究会」(←京都議定書に対応したもの)の唯一の民間人メンバーだったりもするのである。

だからだろう、この本には個人的自転車普及視点と公人的自転車普及視点とが混在している。まだまだ低い自転車の社会的地位を向上するためにも自転車普及的な発言は必要だし有効だ。ただ「本」としての魅力だけを考えると、スタンスがちょっとお上的な分、どうしても少し魅力が落ちてしまう。ヨーロッパの自転車生活と比較して大上段に振りかぶられた途端に、ひそやかな愉しみ的に読み進んできた気持ちが妙に萎える。たぶん、自転車仲間の目をかなり意識した主張になっているのだとは思うが(オピニオン・リーダー的に)、自転車初心者に向けての啓蒙書とすると、そこに矛盾が生まれてくる。自転車生活を愛する個人の視点で貫いてくれた方が結果的に読者に届くものが多くなった気がする。

出だしが素晴らしい。自転車の絵の描き方から始まり、「この本の目的は、一言で言うと、この絵をソラで描けるようになることにある」と続く。うーむと唸って喜々として読み進んでいったのだが、結果から言うとこの目的は中途半端に終わってしまった。もちろん得たものはいっぱいある。自転車のメンテはもちろん、ヨーロッパの自転車事情についてもモグラの目を開かれた。が、至極親密に始まった著者との自転車行の楽しみは読むに従って消え、自転車をソラで描けるようになる、という素敵な目的(自転車との恋愛の始まり)は達せられなかった。惜しい。題名も普通すぎるのが惜しい。全体に惜しいなぁと何度も感じた本である。

2002年01月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ , スポーツ

LV3「怒りのブレイクスルー」

中村修二著/ホーム社/1600円

怒りのブレイクスルー―常識に背を向けたとき「青い光」が見えてきた
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不可能と言われた青色発光ダイオードの画期的発明で、いまノーベル賞に最も近い技術者として著名な著者が書いた半生記と日本告発の書。

彼はいま日本を捨ててカリフォルニアに住んでいる。胸が圧迫されるような閉鎖感に満ち満ちた日本で、その状況を疑いもせずサラリーマンとして働き続けた半生、徳島の片田舎の小さな会社でたった一人で成し遂げた数々の研究開発のブレイクスルー(現状打破的飛躍)、会社とのケンカ、報酬の少なさ、そして、日本への絶望と海外雄飛……ノーベル賞に最も近い男と言われるにはちょっと記述が幼く、構成もスッキリしてなく、イイタイコトも分散してしまってはいるが(編集者の責任だと思う)、彼の心の奥からの怒りは真っ直ぐに伝わってくる。

彼ははっきり書いている。「外から眺めてわかったこと。それは、日本がむしろちっぽけで、くだらない国だという事実でした。社会の価値観も画一的。しかもそれを無理矢理に押しつけてきます。人を見かけで判断し、肩書きが幅をきかせています。民主主義が機能せず、真の意味の自由はありません……」 そしていま著者は会社を相手に20億円の賠償訴訟を起こしているらしい。
確かに例えばイチローの技術に対する対価に比べて世界的発明の対価はお話にならないくらい低すぎる(特許料2万円のみ!)。企業は技術者を優遇すると言いながら搾取しかしていない現状。著者はむしろ温厚な家畜的サラリーマンであった。その著者をここまで怒らせてしまった日本というシステム。

著者も、そして例えばイチローも、日本というシステムを憎んでいる。もう日本には帰ってこないだろう。同じ時期に読んだ「コリア驚いた! 韓国から見たニッポン」と共に、かなり落ち込まされた。が、著者の本意は「もっと怒れ!もっとキレろ!」である。諦めてしまうことこそ、一番愚かな結論なのだろう。

2002年01月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:自伝・評伝 , 科学 , 評論

LV2「本屋はサイコー!」

安藤哲也著/新潮OH!文庫/486円

本屋はサイコー!
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副題は「本を売る仕事はこんなに面白い」。
題名はタモリの懐かしい番組「今夜はサイコー!」のもじりかな。うーん、別にもじらなくても良かった気はするが…(つか、いまではネタ元がわからない人も多数いよう)。

佐野眞一の「だれが『本』を殺すのか」を読んで以来、往来堂書店の安藤店長(現在はbk1の店長)はかなり気になっていた。個人的に「本屋という商売」にすごく興味があることもあるが、旧来システムに対するブレイクスルー例としても興味があった。その著者による本屋奮闘記であるこの本は、そんなボクの興味を満たしてくれた点においては満足のいくものであった。

著者が本屋商売にはまっていく過程はおもしろい。書棚工夫やキャンペーンの張り方も、素人にわかりやすく、成功例としておもしろかった。読後、本屋に入るたびに書棚の並びをチェックしてしまう自分がいたりする。が、(贅沢かもしれないが)内容がそれだけなのが寂しい。著者の体温が伝わってくるような記述がもっとあったら、もっと共感は増えた。奮闘記というものは奮闘する人の体温が感じられないと単なるハウツーものに終わってしまいがちなのだ。その辺が残念。

2002年01月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ , 経済・ビジネス

LV2「eメールの達人になる」

村上龍著/集英社新書/660円

eメールの達人になる
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メールというメディアにいち早く注目していた著者が書いたeメールの実践的使い方講座。
メールは手紙や電話とは根本的に性格が違うということをなんとなくわかっている人はいても、きちんと正確に理解している人は少ない、ということを前提に論は進む。日々多量なメールとともに暮らしているボクにも新鮮な記述はそれなりにあり、再確認された部分もいろいろあったが、やはりこれはメール初級・中級者に向けたものだろう。数をこなせば自然とわかってくるノウハウを、文章のプロとして一度丁寧に説いてあげよう、という感じ。特に仕事でメールを多用せざるを得ない人(で、かつ、文章にあまり意識を持ったことない方)には有効な本だ。

というか、この本でイイタイコトは、「コミュニケーションでもっとも重要なのは、相手に正確に伝わったかどうかだ。つまりそのためには、どう伝えれば相手に理解してもらえるかを考えなければならない」という一文にある。例えば件名に「重要」と書いてしまう人。「この人はコミュニケーションで何がもっとも重要なのかわかっていないと思う」と著者は断ずる。これの何が悪いか、わからない人は、読むべし。
eメールの特質は関係性の排除であるとボクは思っている。電話や手紙におけるナァナァがない。理解してくれるだろうという日本人特有の甘えが通用しない。だからメールは同じ文化の土壌を持たない人との国際的コミュニケーションの訓練の場としてかなり有効だと感じている。そういう意識を再構築する意味でも有効な本である。

2002年01月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:実用・ホビー , 経済・ビジネス , IT・ネット

LV1「イチローUSA語録」

デイヴィッド・シールズ編/永井淳・戸田裕之訳/集英社新書/660円

イチローUSA語録
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帯に「全米が感動! 日米二カ国語同時収録」とある。対訳付なのだ。英語の勉強にもいいかもね、と思って買った。アメリカのメディアに載った彼のコメントを、シアトル在住の作家が丹念に拾い集めた本である。

2001年のイチローは、大リーグ初挑戦にして、首位打者、MVP、新人王、盗塁王など、輝かしい戦歴を残した。アメリカでは、そこまで成功した彼の寡黙な一言一言を「サムライ・プレイヤーの深遠なる言葉」として受け取っている人が多いらしい。まぁあぁいう謙虚さはアメリカでは新鮮なのだろう。いや、もっともっと自己主張すべきところで全くそれをしない彼の言動は、新鮮を越えて理解不能なのかもしれない。

わりとガッカリさせられるのは、2001年の6月頃までのイチローの言葉しか載っていないことだ。2001年のシーズンを通しての語録じゃないと意味ないじゃん。6月頃までの語録でもアメリカでは十分面白いのだろうが、やっぱ首位打者とか取った後どういうことを言っているか、もないとねぇ。アメリカ版でなかったのなら、出版が12月であったこの日本版では付録にでも「その後のイチロー語録」として載せるべきである。付録には「2001年イチロー全打席データ」がついているが、それより語録でしょう、この本を買った読者が期待するのは。

2002年01月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:スポーツ , ノンフィクション

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