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2001年12月

LV5「夜の姉妹団」

柴田元幸編訳/朝日文庫/720円

夜の姉妹団―とびきりの現代英米小説14篇
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副題が「とびきりの現代英米小説14編」。
お馴染みのミルハウザーやレベッカ・ブラウンをはじめとして、あまり知られていない短編作家たちまで、編者が趣味で集めたオムニバス短編集。雑誌「エスクァイア」への連載をまとめたものだが、連載条件は「編訳者の好きなもの」ということだけだったらしく、編訳者は非常に乗って訳している。柴田元幸訳にハズレなし、というボクの信頼に応えてくれる名短編集である。

表題の「夜の姉妹団」そして続く「結婚の悦び」の二編を読んでまず圧倒される。
この後はもう編者の思うつぼ。それぞれ構成に凝った確信犯的短編がこれでもかと登場し読者を唖然とさせ感動させる。ラストの「北ロンドン死者の書」まで息もつかせない(中には相当変なのもあって少々困る場合もあるが)。こういう完成度が高く想像力も高く仕掛けレベルも高い短編群を読むと、日本の、ただ日常の小さな気持ちを書きつづっただけの短編たちがいかに「なんとなく書かれているか」がよくわかる。エッセイ的小説と本当の小説の違いをまざまざと見せつけられた思いである。

短編をひとつ読み終わるたびに、日常が異化され、違って見えてくる…そんな小説に年いくつ出会えることだろう。そういう小説をまとめて提供してくれた柴田元幸に拍手である。いや、面白かった。

2001年12月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(海外)

LV5「13階段」

高野和明著/講談社/1600円

13階段
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今年の江戸川乱歩賞受賞作であるミステリー。
読み出したら止まらない。一気に読んだ。死刑の是非から冤罪、罪と罰の命題まで踏み込んで書いてあり、主題はかなり重い。が、ストーリーはエンターテイメントに満ちており、二重三重のどんでんがえしもよく出来ている。どんでんがえしの演出もわりとさりげなく劇的にしていないところも上手。重い主題に快調な演出テンポ。なかなかだ。

無実と思われる死刑囚を救い出す、報酬は1000万円、乗り出すのは死刑執行経験のある刑務官と仮釈放中の青年、という設定。仮釈放の青年が妙に優秀だったりする違和感も気になるし、たまたま彼が選ばれてしまうご都合主義もアララと思うし、時限型サスペンスなのに時限(死刑)がいつ来るのかわからない弱点があったり、と、欠点はいろいろある。ただ、読んでいてストーリーとは別にふと立ち止まり、死刑とはどういうことなのか、被害者家族のやりきれなさとはこういうことなのか、などと読者をしっかり考えこませるチカラをこの小説は持っている。死刑の描写や刑務官の懊悩が特によく書けているからかもしれない。

冤罪の死刑囚視点の描写がもう少し物語に絡まればよりそこらへんが分厚くなったと思うが、そうなると快調なテンポが損なわれてしまうのかな…。いずれにしろ、オススメのミステリーである。

2001年12月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV5「6月の軌跡」

増島みどり著/文春文庫/514円

6月の軌跡―’98フランスW杯日本代表39人全証言
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副題「'98フランスW杯日本代表39人全証言」。
アジア予選を劇的に突破してW杯初出場し、3戦全敗で敗退したサッカー日本代表。その本戦のためのヨーロッパでの合宿、22人枠のために現地でカズや北澤がはずされた経緯、本戦での選手の気持ち、戦い終わっての岡田監督の辞任……98年6月に起こった様々な出来事を、著者が選手・監督・コック・コーチ・ドクター・サプライヤーなど全39人に詳細にインタビューし、時系列で構成しなおした労作。
スタッフはもちろん、言葉少ない選手達にまで、しっかり話を聞き、きちんと記録に残したことは最大限に評価されてもいいと思う。著者による日頃のコツコツとした信頼の積み重ねを感じる。信頼を勝ち得た著者にしか出来なかった仕事である。

ボクはもともとラグビー派なのでサッカーにはいまいち思い入れがないが、この本は2002年W杯前に読んでおいて良かったなぁと実感している。ピッチでなにが行われているか、どういう心理で選手・監督たちが戦っているか、どういうスタッフがそれに関わっているか、が非常によく理解でき、ちょっと感動すらした。
39人のインタビューの中では、相馬、中田、名波、そしてコックの人のものが印象に残っている。2002年本戦前に、もう一度再読したい本でもある。

2001年12月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:スポーツ

LV5「毒猿 新宿鮫2」

大沢在昌著/光文社文庫/667円

毒猿―新宿鮫〈2〉
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前作「新宿鮫」をちょっと残念と評したら、「いや、新宿鮫は第二作の毒猿の方が面白いんだよ」と先輩が教えてくれ、それならと読んだ本。なるほどこれは傑作である。前作ではぎこちなかった登場人物達がいきなり生き生きと動き始める。ストーリーも秀逸。息もつかせない。

完璧なる殺し屋「毒猿」vs 新宿鮫。この構図に中国出身の女性や台湾から来た強烈なキャラクターの刑事が絡むストーリーはキャラの立ち具合からアクションの濃さ具合、映画的なカメラワークまでとてもよく出来ている。台湾の刑事との心理的絡みが意外と少ないのと、あまりにアクション映画的すぎるラストと、そして毒猿の唯一の死角が○○であることあたりがちょっと弱い気がするが、全体のテンポを考えるとたいしたアラではない。
98年初版の本であるが、まるで古くない。なかなか感動的。続編も読んでみよう。

2001年12月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV5「世界でいちばん受けたい授業」

藤原和博著/小学館/1600円

世界でいちばん受けたい授業―足立十一中『よのなか』科
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副題に「足立十一中[よのなか]科」とある。足立区の中学校で行われた「よのなか」科の授業がこの本の中で細部に渡るまで再現されているのだ。
よのなか科といっても、旧来の教育の枠の中で「よのなかの知識」を教えているわけではない。身近な題材と工夫されたカリキュラムと一般社会人の協力を得て、21世紀を生き抜くために必要な5つのチカラ、「ロジック」「コミュニケーション」「シミュレーション」「ロールプレイング」そして「プレゼンテーション」、を身につけさせることを目的とした授業なのである。

最初の授業が特に面白い。「一個のハンバーガーから世界が見える」と題して、生徒それぞれマクドナルドの店長になって出店計画を考えるというロールプレイング。地域性を考え、集客とは何かを理解し、経済の本質を肌で感じながら出店場所をそれぞれが導き出していく。そして、実際に貿易ロールプレイングゲームをしてみることで為替を肌で理解させていく授業がそれに続く。ハンバーガーが一個65円になっていく仕組みが世界経済の中でわかりやすく解きほぐされていくのだ。そして最後には実際にマクドナルドの店長を招いての質疑応答まで…。ね、面白そうでしょ?

まだまだ教育も工夫する余地がいっぱいある、と感じさせられる名授業。生産性を上げる創意工夫には朝も夜もなくがんばる我々だが、教育はなんとなく国の方針に任せきりにしてきた。その受け身な態度を反省させられると同時に、こういう風にすればいいのか、なんとかまだ間に合うのではないか、とも思わせられる希望の書でもある。

2001年12月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:教育・環境・福祉

LV4「トンデモ本の世界R」

と学会著/太田出版/1480円

トンデモ本の世界R
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トンデモ本シリーズの最新作である。相変わらず痛快であるし、情報を鵜呑みにせず何事も疑ってみるという「知性の第一歩」をあらためて認識させてくれる本である。

UFO本や宇宙人本、超能力本が特に取り上げられがちのトンデモ本の世界であるが(もちろんそれらは定番として取り上げられているが)、この本では、小林よしのりの「戦争論」や週刊金曜日の「買ってはいけない」をはじめ、大藪晴彦や落合信彦、果ては三島由紀夫までトンデモ本として取り上げられている。

論旨は明快。活字や映像を信じがちな自分たちの意識に猛省を迫られる。と同時に、このトンデモ本解釈自体がトンデモである可能性もちゃんと持たないといけないことにも気付かされる。つまり「自分の知性でちゃんと調べ、信じたこと以外、ぜ~んぶ疑ってかかれ」ということだ。情報に溢れているこの世の中を生き抜いていくに必要な最低限のリテラシーなのかもしれない。大変だけどねー。

2001年12月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:評論 , 科学 , 雑学・その他

LV4「アフガニスタンの診療所から」

中村哲著/筑摩書房/1200円

アフガニスタンの診療所から
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ちょっと有名になってきた中村哲医師。
らい(ハンセン氏病)根絶治療にたずさわり、難民援助のためにアフガニスタンに診療所を開設し、他のNPOがどんどん引き上げる中もひとり踏ん張り、現地スタッフを育成して農村医療・らい治療にチカラを尽くす日本人医師である。そんな著者の現地からの肉声がまとめられている(93年初版なので今回のテロにはもちろん言及されていない)。

過度に謙虚になったりもせず、過度に自己顕示になったりもせず、ちょうどいい距離感でまとめられた良書だと思う。
ただ、どうしても「本人はわかりすぎるくらいわかっていること」の説明が略されてしまっていたり「どうせこの悲惨な現状は文章では伝わらない」と諦めていたりする部分があって、読んでいる側としては歯がゆい思いをするところも多い。援助を始めたキッカケや志なども、もうちょっと読ませて欲しかった。変な国際交流ボランティアが来ないように予防線を張っているのかもしれないけど…。

真の国際協力とはいったいなんなのか…。
これはこの本を読んでボクの中に宿題みたいに残った命題であるが、実は混乱している。
真の協力をするためには人生を捧げる必要があることはよくわかった。異文化を身体ごと受けいれなければ真の協力はない。でもそれって文化を個人的に理解した部分で閉じていないか? この「開いているようでいて閉じている」感じがどうにも突破できない。個人的体験の量的な積み重ねが国際協力とは思えないし。うーむ。まだしばらく考え悩むべき命題なのだろう。中村哲医師を第三者が書いた本もあるらしいので買って読んでみたい。

2001年12月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際 , 評論 , 健康

LV3「ファストフードが世界を食いつくす」

エリック・シュローサー著/楡井浩一訳/草思社/1600円

ファストフードが世界を食いつくす
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アメリカでベストセラーになった本である。
マクドナルドに代表されるアメリカの巨大ファストフードチェーン産業が目指す「世界中同じ味」「安価であるための効率至上主義」の経営方針が、伝統的な食文化や多用な農業形態を壊し、食の工業化を招き、産業構造自体を破壊し、他国の文化をも破壊していく過程をじっくりと描いて、読者に戦慄を与える本だ。

マクドナルドやケンタッキーがいかに生まれいかに大きくなったかの伝記的部分はわりと面白い。
そしてそれが目指す効率主義のため、食が工業化されていく実態、食肉処理場の劣悪かつ不衛生な現状、人間の労働環境を根底から変えるシステムの是非、フライドポテトに使われる天然香料のウソなどが、どんどん白日の下に晒されていく。そして、ファストフードが安価であることのカラクリも見えてくる。見た目は安価だが(だって65円だもん)、肥満解消にかかる費用や医療費、廃棄物が川や海を汚し牧場が森林をなくしていくことによる環境破壊による負の費用など、社会が負担するコストの高さも明らかにしてくれる。

問題意識を喚起するという意味においてこの本は素晴らしい。ただ、後半、問題点が分散してしまい、印象が散漫になってしまった。導入はいいのに詰めが甘い。題材はいいのに収束点がぼやけている。話題性十分なのにイイタイコトが伝えきれていない。せっかくいい本なのに~と地団駄踏みたくなる。また、巨大ファストフード産業がやったイイトコロももっときっちり評価して、そのうえで冷静に結論を導いて欲しかった。と、いろいろ惜しい本だけど、興味がある方にはとっても面白いと思う。

2001年12月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション , 食・酒 , 時事・政治・国際 , 健康

LV3「『テロリスト』がアメリカを憎む理由」

芝生瑞和著/毎日新聞社/1334円

「テロリスト」がアメリカを憎む理由
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表題のテロリストに「」をつけた理由についての説明から本が始まる。つまりは彼らをテロリストと位置づけることの不公平さを言っているのである。
それはロイター通信社の国際ニュース責任者の言葉に端的に表されている。「ある人にとっての『テロリスト』は、他の人にとっては『自由の戦士』だ、ということをわれわれはみな知っており、ロイターでは、テロリストという言葉を使わないという原則を崩さないことにした」。素晴らしい言葉だ。こういうことを言うジャーナリストがいるということ自体が救いになる。そして、著者のスタンスもここにある。この本でも便宜上テロリストという言葉は使うが、彼らをそう定義したわけではなく「」付き引用である、ということである。

このスタンスと表題とでこの本の内容はだいたいわかるだろう。アフガン側に偏向することなく、なるべく公平な立場からアフガンや「テロリストたち」の立場を書いてみようという本だ。その過程でイスラエル建国に端を発するパレスチナ問題もわかりやすく総括してあり、西側の(特にアメリカの)すさまじいエゴが目の前に明らかにされていく。つうか、やっぱ西側の人々は心の底ではアラブ・アジア人を「人間」と認めていないな。

アメリカがいままで世界各地で行ってきた行為は間違いなく「テロ」である。
アメリカは世界最大のテロ国家なのだ。その辺の言及が個人的にはいささか物足りないが、アメリカ偏重の報道が多い中、こういう本は知のコレステロール・バランスを保たせてくれる美味しいサラダみたいなもの。興味ある方にはおすすめだ。

2001年12月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際

LV3「アフガン褐色の日々」

松浪健四郎著/中公文庫/743円

アフガン褐色の日々
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ある掲示板で薦められた本。著者が1975年から3年間、アフガンで生きていた頃のノンフィクション・エッセイである。83年初版の少々古い本で本屋には置いてないだろうが取り寄せて読むことは出来た。

松浪健四郎~?と最初は懐疑的であったが、読み終わって、アフガンも著者自身も身近に感じている自分に気付く。アメリカ同時多発テロ事件の時節柄、他にもアフガン関係の書物はいっぱい出ており(この辺が日本人の好奇心の健全さを表しており頼もしい)、それらのきちんと突っ込んだアフガン分析に比べると本書はかなりお粗末に感じられるのも確かだが、ここには著者が肌で感じたアフガンの空気がある。シズルがある。平和の美しさがある。
著者自身、文庫版あと書きで「当時の情感のまま筆をとどめておくべきだと考え」直さなかったと書いていることでもわかるように、文章的には若く稚拙で、分析も甘い。でもその良さがいい方に出て、臨場感たっぷりの好著となった。

それにしても松浪健四郎が日本人初の国立カブール大学講師とは知らなかった。そしてこれだけ(まさに)肌でアフガンに接してきたとは…。時節柄、アフガン先駆者としての著者の「いまの」意見を聞きたいと思うのだが、マスコミに何故かほとんど彼の露出はない。マロムセイ、もっと発言を!

2001年12月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション , エッセイ , 時事・政治・国際

LV3「面目ないが」

寒川猫持著/新潮文庫/438円

面目ないが
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毎日新聞に連載していたコラムを中心に編まれたエッセイ集。
毎日新聞のはリアルタイムで読んでおり、また、著者の短歌自体は折に触れ目にしていたので、どことなく懐かしい気持ちで読んだ。山本夏彦のエッセイで彼のこの本(単行本当時)が取り上げられベタ褒めされたりしていたのが個人的には印象的であるが、これを読むと、公私ともに山本に師事していたようではある。そう思って読むと、確かに文体が非常に似ており(特に連載初期などあからさまに似ており)、ちょっと微笑ましかったりする。

著者独特の自己憐憫と自己悪口が鼻につく読者もいるかもしれない。自分の情けなさをネタにして歌を詠む著者の視線はエッセイでも同じように働いており、結果として常に自分しか見ていない独特のエッセイ世界が出来上がっている。そこが売りでも味でもあるので仕方がないのである。
と、こう書くと批判しているように読めるかもしれないが、さにあらず。なぜか大変気持ちよく読めたので喜んでいるのである。悪意を持たれぬ筆の運びは、突然出てきてすでに名人の域である。さすがなものだ。
ちなみに著者のエッセイより著者の短歌の方がボクは好きである。

2001年12月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

LV3「東京の窓から日本を」

石原慎太郎著/文春ネスコ/1800円

東京の窓から日本を
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TOKYO MX TVの人気対談番組「東京の窓から」の単行本化。
石原慎太郎をホストにした対談を活字にしてあり、脚注なども充実しており、とっても明快な「東京論」そして「日本論」になっている。単に「東京の窓から」という表題にせず、もう一歩踏み込んで「日本を」というひと言をつけた意味がよくわかる内容だ(続編は「変える」というひと言が入るのかにゃ?)

対談相手は、唐津一、佐々淳行、グレゴリー・クラーク、孫正義、米長邦雄、金美齢、志方俊之、はかま満緒、ビル・トッテン、竹村健一、徳間康快、ベマ・ギャルポ、中曽根康弘の13人。それぞれに頭脳明快な対談相手であるが、なにより全員「自分の分野から見た自分独自の意見」をしっかり持った対談相手だけに、ホストである石原慎太郎(独自の意見という意味では負けない)と意見が絡み合い出すとちょっと鳥肌ものの明快さに発展するところがあり、面白い。石原は各専門家たちに対してわからないところは率直に伺う姿勢を見せており、伺った意見を自分の中で整理する過程も透けて見えたりしてそれも興味深かった。

読んでいて「日本ってやっぱりヤバイよな」と危機感にさらされる本でもある。問題意識を持たないとヤバイことが次々に出てくる。どの対談も刺激的だったが、個人的に、唐津、徳間、竹村、クラーク、米長、孫あたりの対談が面白かった。

2001年12月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:対談 , 時事・政治・国際

LV2「鳥頭対談」

群ようこ/西原理恵子著/朝日文庫/460円

鳥頭対談―何を言っても三歩で忘れる
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群(むれ)ようこと西原(さいばら)理恵子の対談が面白くないわけがないだろう。
近そうでいて方向性的接点がなさそうなふたりが、それぞれのファンを吸い上げる狙いを明快に表面に出しつつ、凄まじい内容の対談をしている。特にそれぞれの超浪費家母親に対する愚痴というか呪詛というかは秀逸で、稼いでも稼いでもサルのように使っていく母親たちへの報復ツッコミはまさに抱腹。またそれぞれの異なる青春時代へのツッコミもなかなか笑える。西原のマンガも、西原得意の「ちょっと上の権威を叩けるポジショニング」を得て、非常に冴えている。

この対談をした雑誌「uno」が早々につぶれたため、対談の数が足りず、薄っぺらい本になってしまったのが惜しい。
また、群自身、どちらかというと年上のほんわりしたボケにツッコんでいく方が向いていると思われる節もあり、西原のような年下からきついツッコミをされるポジショニングがそんなに得意でないように思われるのがちょいと可哀想。
要するに「ツッコミ×ツッコミ」のコンビになってしまったのが残念だ。群のポジショニングが中途半端になり、彼女の面白さが十二分に活かされなかったのが惜しいのだ。

2001年12月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:対談

LV1「いやでも楽しめる算数」

清水義範著/西原理恵子絵/講談社/1600円

いやでも楽しめる算数
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このふたりが組んで5冊目、かな? 理科エッセイ2冊、社会科エッセイ2冊と来て、ついに算数エッセイである。

先生役の清水とサル役の西原が非常にうまく絡み合うこのシリーズをボクはたぶん2冊読んだことあるが、この「算数篇」はちょっと中途半端な印象を持った。ある意味このシリーズで一番熱心に説明はなされているものの、算数に関するおもしろ本は世界的に数多くあり、レベルも高く、しかもそれらをわりとボクは読んでいるので、比較しちゃうとどうにも辛い。清水がとうとうと述べている面白い算数の命題とかも、他の本で読んだものがほとんどだった。うぅ、こりゃアンフェアかも。そういうのに触れたことのない人が読んだらもっともっと面白いのかもしれない。

西原は今回、別の勝負をしている感もあり、ほぼ算数に関しては清水の独壇場。
ボクはもともと算数大嫌い派なのでイイタイコトとかよくわかるのだが、「算数を嫌っている人にも楽しく読めるように書くからね、ゴメンね」という引き気味のスタンスが表面に出過ぎて、小さくまとまってしまった感があるのがやっぱり惜しいな。そんなの無視して「算数ってこんなに楽しいの!」と自信たっぷり書いてくれれば良かったのに。そこに西原が暴力的にツッコんできた方がよっぽど面白かったと思うのに。

2001年12月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:教育・環境・福祉 , 科学 , 漫画

LV1「セブン・イヤーズ・イン・ジャパン」

D・ストイコビッチ著/祥伝社黄金文庫/580円

セブン・イヤーズ・イン・ジャパン 祥伝社黄金文庫
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副題は「僕が日本を愛した理由」。
名古屋グランパスで大活躍し、日本人に忘れ得ぬ思い出を与えてくれたストイコビッチ(愛称:ピクシー)の自伝である。活字が大きく文章量も少ないので1時間もあれば読めてしまう本だが、ピクシー・ファンなら充分楽しめる本であろう。ボク自身そんなに頻繁にJリーグを観る方ではないが、ピクシーはなぜか好きで彼のプレーはわりと追っていた。そういう意味ではボクにはわりと楽しめた本である。

子供の頃の話や、日本に来てからの様々な出来事への感想も親近感を持って読めた。ただ、彼しか書けないことはきっともっとあったはずだし、日本に対する言及も表面的でありがちな内容だし、読み終わっての残尿感がかなりあったことも事実。サッカーの本質、Jリーグへの提言、W杯の彼なりの捉え方、などなど、もっと腰を据えてしっかり書いてもらいたかった。

2001年12月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:自伝・評伝 , スポーツ

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