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2001年11月

LV5「国家なる幻影~わが政治への反回想」

石原慎太郎著/文春文庫/上590円 下552円

国家なる幻影
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雑誌「諸君!」に1996~1998まで連載し、1999年1月に文藝春秋から単行本になった本の文庫化。
1968年に参院選に出馬して以降1995年に辞職するまでの政界での活動や政治への思いを回想した本。芥川賞を取った作家でもある著者が書く政治の裏側は実にわかりやすく、そして面白い。読み始めたら止まらなくなった。特に要所要所で出てくる人物評価には笑わされたり暗澹たる気持ちになったり…。もちろん政治には裏も表もあり、ここに書かれているのは著者から見た政治の一側面ということもわかっているが、いまの日本の政治を知るには格好の一冊であろう。これを読んだあと新聞などを熟読するといままで見えなかったものが見えてくる(気がする)。

これを読んでよくわかったが、著者はナショナリストというよりもゲームメイカーなのだ。ナショナリストっぽい言動も、ヨットという高等ゲームで学んだ駆け引きという側面から捉えれば実に納得がいく。NOというのも駆け引き上当然のこと。彼にとってあらゆる政治的言動はゲームのカードなのである。だから臆面なく脅しや暴力まで使用する。そして国際政治の場ではそれが全く常識なのである。そういう国際的駆け引きが出来る政治家が日本にどれだけいるだろう。

この本は文筆家の作品であるが政治家の作品でもある。
だからこの本自体が「政治的ゲーム」の1カードである。著者が1カードとして出した本を鵜呑みにするのは危険だが、こういうカードが出せる著者のゲームメイクにそのまま乗ってみたい気もしてくる。そんな本である。

2001年11月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際 , 評論

LV5「新・トンデモ超常現象56の真相」

皆神龍太郎・志水一夫・加門正一著/太田出版/1480円

新・トンデモ超常現象56の真相
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正式には「と学会」の出版物ではないのかな。まぁ著者のうちふたりが「と学会」であるし、題名もトンデモが入っているからそう取ってもいいだろう。トンデモ本のファンであるボクとしては不覚であるが、この本の前に「トンデモ超常現象99の真相」という本が出ていたらしい。その続編にあたる本書だが、続編でもこんなにオモシロイ。

「と学会」のイイタイコトはひとつである。「メディアを信じるな!」である。活字もTVも絶対信じるな、である。それらは我々を愚弄している。その証拠上げがこの本のようなシリーズなのだ。
なにしろTVのバラエティ番組のウソのつきかたは尋常ではない。視聴者をバカにしているどころの騒ぎではない。「ここまでウソついて何のおとがめもないの?ウソでしょ?」の連続だ。超有名な霊能者(クロワゼットやカスタネダら)の経歴の真っ赤なウソさ加減も絶句もの。どうしてこうぬけぬけとウソがつけるのだろう? UFOや宜保愛子の大ウソ、涙を流すマリア像や新しいところでは岐阜県富加町のポルターガイスト事件への疑問まで非常にクリアに晒してくれる。

ある意味大変な労作であるが(資料の裏取りとか)、この本が言うように活字を信じるなであれば、この本の内容も疑ってかかるべきであり、一概にすべてを信じるわけにはいかない。ただ、何事も疑ってかかる、という知性的な習慣をつけるいいキッカケになるという意味では大オススメである。

2001年11月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:雑学・その他 , 科学 , 哲学・精神世界

LV5「痴漢犯人生産システム」

鈴木健夫著/太田出版/1500円

痴漢犯人生産システム
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ある朝、いつもの通勤満員電車の中で突然「痴漢よ!」とえん罪を着せられた著者によるノンフィクション。
えん罪はどうやって起こるか、警察による一方的な決めつけ、失礼な取り調べ、留置場での生活、裁判の過程、会社の理不尽で冷たい対応……いやはや、背筋がゾゾゾと冷たくなる本である。怖すぎる。実に怖い。(秀逸なる)表題通り、痴漢犯人生産システムに乗ってしまったら、もう起訴有罪まで一直線である。

著者は逆転無罪を勝ち取るまで戦ったが、それは全くのラッキーでありいろんな状況証拠が有利に働いただけのこと。現実にはもっとえん罪がはびこっていると想像させられる。一部上場の会社をクビになりいまでは日雇労働者であるという著者。全くのえん罪で人生がすっかり変わってしまった例である。会社はなんにも守ってくれない。しかも国からのえん罪賠償金はすべて合わせても75万円程度。こわ~。

著者の体験記が前半、それを弁護した弁護士による述懐と対処方法が後半である。
ま、ボクはもう「満員電車に乗ったら両手をつり革、もしくは上の手すりに」と決意したが、それでも疑われた場合、「とにかく駅長室に行くな!」ということだけは守りたい。駅長も警察もすべて女性側の味方なので、駅長室に行った時点で有罪確定である。真面目な男ほど「警察に行って話せば誤解とわかるはず」と思って率先して駅長室や警察に行くらしいが、警察は絶対わかってくれないことがこの本を読むと怖いほどよくわかる。

決して痴漢を受けた側の女性の気持ちを無視するわけではない。ただえん罪だった場合、人生はそこで終わる。やりきれないではないか。男女ともに注意すべき事柄だろう。読むべし。

2001年11月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション , 時事・政治・国際

LV4「16歳のセアラが挑んだ世界最強の暗号」

セアラ・フラナリー/デイヴィッド・フラナリー著/亀井よし子訳/NHK出版/1900円

16歳のセアラが挑んだ世界最強の暗号
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EU青年科学者大賞を暗号の研究でとった16歳のレディの顛末記というか自伝というか(数学的説明の一部は父親と一緒に書いたようであるが)。
彼女が純粋なる数学的興味のもとに開発してしまった暗号は世界最強の暗号と言われているものを凌ぐ可能性すらあり、暗号専門家の度肝を抜いた。数学との出会いから、その暗号を提出課題にし研究するまで、達意の文章でやわらかく読者を導いていってくれる。文章はとても良い。

特に数学との出会いの辺りは素晴らしい出来。例に上げられているクイズも興味深く、知的興奮に満ちている。ただ「mod」に言及する辺りからかなーり難しくなってくるので、数学音痴としては辛かった。でもそこらの章は読み飛ばしてもなんら大筋に影響ないので、音痴さんでも大丈夫。

原題は「In Code : A Mathematical Journey」。
邦題、オーバー過ぎないか? なんというか邦題イメージほど「挑んだ系ド根性の物語」ではなく、ずっとスマートな物語なので、読者は(邦題のせいで)少し肩透かしを食わせられるところがあるかもしれない。もっとなにげなく成功しちゃうのだ。しかも成功かどうかもまだ判断保留だったりするのだ。

行間から感じられるアイルランドののびのびした教育環境がかなりうらやましい。移行年やアルバイト制度など学ぶべき点はいっぱいある気がした。

2001年11月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:自伝・評伝 , 科学 , 教育・環境・福祉

LV3「思い通りの家を造る」

林望著/光文社新書/700円

思い通りの家を造る
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客観的な視点と独自の主観を常に維持している著者による「我が家建築論」である。
例によってイギリスの家についての言及から始まるが、独自の主観的意見が要所要所できっちり入ってくるのでやっぱりオモシロイ。外国の状況だけを語って誉めあげる本が多い中、外国の状況を踏み台に自分の土俵に勝負を持ち込んできて展開させる技量はさすがなものだ。というか、そういう当たり前のことが出来ていない本が多すぎると言うべきか。

実は、彼の家論はボクのそれとかなり似通っている。おととし、ボクはボクなりの思想を持って家を建てたが、この本を読んで「あぁすればよかった、こうすればよかった」という後悔に迫られることは少なかった。敢えて言えば、妻が嫌がったためにやめたドラム式洗濯機にすれば良かったかなということと、ソーラー発電に最初からすれば良かったか、というあたり。今は、おんぼろすぎるクルマを新しくするのをやめて、ソーラー発電にその分のお金をつぎこもうかと相談しはじめたところである。うん、この本は実用にもとてもいい。これから家を建てる人には必読の一冊でもあろう。

2001年11月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:実用・ホビー , エッセイ

LV3「ケーキの世界」

村山なおこ著/集英社新書/720円

ケーキの世界
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テレビ東京系「TVチャンピオン」で準優勝した後、大手乳業メーカーの製菓担当を辞め、フリーの菓子愛好家/菓子コーディネーターになった著者によるALL ABOUTケーキな本。
ティラミスーなどのブーム菓子の裏事情や洋菓子発展記、各国ケーキ図鑑など、内容は果物がぎっしり詰まったタルトのように濃い。もっとメレンゲのようなフワフワさを予想していたボクはちょっとビックリ。だってこの手の本って表面をさっと撫でただけの本が多いんだもの。

そういう意味ではなかなかいい本だ。菓子ブームの裏事情はオモシロイし、ケーキの歴史も一度さらっておくにはいいし、各国ケーキ図鑑もフレンチでデザートに目覚めたボクにはとっても参考になった。オススメのケーキ屋さんが載っているのもうれしい。ただ、全体的に資料集的な雰囲気を醸し出してしまったのが興味本位の読者にはつらいかもしれない。ケーキ好きの人には読み応えがあるだろうが。

2001年11月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒

LV3「同じ年に生まれて」

小澤征爾/大江健三郎著/中央公論新社/1400円

同じ年に生まれて―音楽、文学が僕らをつくった
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1935年に生まれたふたりの巨人、小澤征爾と大江健三郎の対談集である。副題は「音楽、文学が僕らをつくった」。

小澤と武満徹や、小澤と広中平祐の対談のおもしろさに比べると、ちょいと落ちる印象。大江健三郎という人はいまひとつアドリブが利かず、話し出すと論文調になってしまい(校正の段階でいっぱい赤を入れたからそうなったのかもしれないが)、巨人ふたりのセッションというよりは、かわりばんこに独奏しているという印象。それではつまらない。なんかふたりの話が盛り上がっている感じがあまり伝わってこなかったのが残念。

もちろん上手にセッションになっているところもあって、そこは面白かった。
闊達な小澤が特に良く、大江も素直な部分を見せていたりして良い。小澤が音楽の本質を語るあたりが特に印象的。大江もなにかを発見したような感嘆を見せる。でも、全体に触発されるといったところが少ない本であった。大江のペースでたんたんとした謙虚な対話が進むだけ。含羞があって気持ちは良いが、刺激と触発を望んでいる読者には物足りないだろう。

2001年11月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:対談 , 音楽 , 評論

LV2「超ジャズ入門」

中山康樹著/集英社新書/740円

超ジャズ入門
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元「スイングジャーナル」編集長の著者の本を読むのはこれで3冊目かな。
ビーチボーイズを再発見できたのは著者のおかげである。マイルスを真剣に聞き始めたのも著者のおかげである。そういう意味である種の信頼関係が読者であるボクと著者の間で出来上がっているので、読む方は楽である。

ジャズは怖くない的論から本ははじまるが、この辺はやっぱりジャズが詳しい人の書き方になっていることは否めない。ジャズをこれから聴いてみようという人にはいまいち空気感がわからないだろう。超入門としてはそこが残念。ジャズ=怖い、となるのは中級者の前である。初級者の後半。そしてそれはスイングジャーナルを読もうと思うようなコアな入門者である。普通はもっと気軽に聴き始めるものだ。著者はロックに限界を感じてジャズに入ったという理論派なのだが、そういう理論派はごく少数なのだ。

とかいう細かいことは置いておいても、結局マイルスを聴けと持っていくあたり(いい意味で)笑ってしまった。これはもう「芸」である。そんでもって、最終的にはお勉強みたいに100枚ほど聴かないといけない。うーむ。これを読み終わった読者は結局「ジャズって怖い~、難しそう~」と思うのではないだろうか。疑問。個人的にはオモシロイ本であったが、超入門として考えるとハテナもいろいろある本だった。

2001年11月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:音楽

LV1「東京広尾アロマフレスカの厨房から」

原田慎次・浅妻千映子著/光文社新書/700円

東京広尾アロマフレスカの厨房から
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ゴマンとある東京のイタリアンレストランの中で、ボク的にトップな一軒と思っている「アロマフレスカ」。そのシェフと食ライターとの対談(というかかなり独白に近い構成)を一冊にしたもの。シェフの修業時代の話や、料理、マナー、ワインの話の合間に要所要所で彼のレシピが挿入され、いいテンポで話は進む。レシピもエッセイ風に書かれておりいい感じ。

ただ、帯に書かれているような「いま最も予約のとりにくいイタリアン--人気の秘密がここにあります」というような内容ではない。秘密はわからない。食ライターのツッコミが足りないのかもしれない。単に人気シェフの四方山話に終わってしまっているのが残念。東京というある意味先端な大都市で大人気を博しているリストランテである。もっとその秘密に迫れば、ニューヨークやローマの先端シェフも読みたくなるような本に仕上がる可能性もあったはず。そういう意味では非常に中途半端な本になってしまった。いい素材を使ったのに料理の仕方をミスした感じ。

個人的に「へー」と思ったのは、肉は骨付きでないと熟成が進まないというところと、スパゲティはフォークを反時計回りに回した方がはねなくて食べやすいというところ。些末な部分だけどね。

2001年11月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒

LV1「『タンポポの国』の中の私」

フローラン・ダバディー著/祥伝社/1600円

「タンポポの国」の中の私 ― 新・国際社会人をめざして
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副題は「新・国際社会人をめざして」。
いつもサッカー日本代表監督トルシエの横にいる背の高い謎の外国人が、著者である。題名は、彼が伊丹十三の映画「タンポポ」を愛するあまり来日したことに由来する。日本への愛が、そのあまりの憎も含めてよく書かれている本である。訳者がついてないのを見てもわかるとおり、ちゃんと日本語で彼自身が書いているようだ。すばらしい。

内容的にはイイコトは言っている。でもどの命題についてもちょっと表面的な言及になっているので欲求不満は残る。数年の日本滞在&日本語勉強でここまで言及できれば充分というのはわかっているが、本として読むとやっぱり説得力が足りない。もう少し自分のなかで醸成させてから出版した方がよくはなかったか。
サッカーやラグビーへの想いはよく伝わってくる。でもここらへんについても、もう少し深い話が聞きたかったなぁ。

2001年11月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ , スポーツ , 評論

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