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2001年09月

LV5「王妃の離婚」

佐藤賢一著/集英社/1995円

王妃の離婚
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やっと読んだ話題作。
以前読んだ「双頭の鷲」的歴史ロマンかと思ったら、予想を覆す中世法廷もの(まぁ中世ヨーロッパが舞台という点では変わらないが)。しかもジェフリー・アーチャー的大逆転物語なので、ま、手に汗握り徹夜するというハメになる。

とても面白い。「双頭の鷲」は、いまいちカタルシスがなくノリきれなかったが、この本は見事なカタルシスとストーリーテリングでぐいぐい読者を引っ張ってくれる。主人公や王妃の細やかな描き込みも素晴らしく、中世の民衆の描写もリアリティがある。この本で99年直木賞を取ったのもうなずける。うーむ、佐藤賢一、ただものではない。

ま、そういうわけで、話題作だし、とっくに読んでおられる方も多いだろう。いまさらながらの紹介で申し訳ないが、この本はオススメ。未読の人はぜひ。

2001年09月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:歴史小説

LV5「星をつかむ料理人」

吉野建・源孝志著/新潮社/1600円

星をつかむ料理人
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フレンチレストランファンなら一度は聞いたことがあるだろう、小田原の幻の名店「ステラマリス」のシェフだった吉野氏の半生と日本人初のミシュラン一つ星への挑戦(正確に言えば中村勝宏シェフが取っているが)を、本人とテレビディレクター(星が取れるかどうかの取材番組を作った)が、主観と客観で書きつづった本。
章ごとに料理名を配した構成、素直な主観でつづったシェフの文章、短くも簡潔な源氏のフォロー、それぞれがきちんと絡み合い、とてもいい本に仕上がっている。

料理人の想い、完成された料理、レストラン業界の表と裏、挫折、雌伏、そして常に上を見つづける視線・・・すごく盛り上がりのある本というわけではないが、志の高い静かな料理を食べたような、そんな読後感。料理やレストランが好きな人ならかなり楽しめる本だと思う。

2001年09月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒 ,

LV5「クリント・イーストウッド」

中条省平著/朝日新聞社/1800円

クリント・イーストウッド―アメリカ映画史を再生する男
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副題は「アメリカ映画史を再生する男」。
親しくさせていただいている芦屋のワイン店「リブ・ゴーシュ」の細谷店長がメールをくれて「私は以前よりイーストウッドを全米No.1(もちろん現役の中で)映画監督と考えていましたが、この本を読んでその思いをより強くしました」と薦めてくれた本。

うーむ。実はイーストウッドをちゃんと追っかけていないヘボ映画ファンなボクなのだが、この本を読んでとにかくイーストウッド作品が観たくなった。つうか、この本を読んでイーストウッドの出演作品・監督作品をすべて見返したくならない人がいるだろうか。実に良くできたイーストウッド評論であると同時に、ハリウッド映画の総括にもなっている名著。

なるほど、読めば読むほどハリウッド映画の「由緒正しき後継者」としてイーストウッドを認めたくなる。逆に、それほどのもんだったっけ?という想いもあるのだが、最近の作品は確かに名演出だし、ドン・シーゲルの流れを汲むB級具合もバランスいい。映画の魅力とはそのB級度合いだと(いい意味で、ね)、肌でわかっている数少ない人なのだろう。

2001年09月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:自伝・評伝 , 映画・映像

LV4「オールド・ルーキー」

ジム・モリス、ジョエル・エンゲル著/松本剛史訳/文藝春秋/2000円

オールド・ルーキー―先生は大リーガーになった
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副題は「先生は大リーガーになった」。
アメリカの田舎の35歳の高校教師が大リーグの最年長ルーキーになった、という実話を、本人であるモリスともうひとりの著者エンゲルが組んで書いた本。ディズニーによる映画化も決定しているらしい。いかにも映画になりそうなストーリーだからねー。

ま、先生、というところがわりと強調されている分、学園感動ものかと思われるが別にそうでもなく、実は先生であるというよりは「いままですべてに中途半端だった主人公の、野球をめぐる半生記」みたいな趣。学校がからんでくるのは最後の頃だけである(大リーガーになったあと、思ったより生徒たちが登場しない。なぜだろう?登場させたらより感動的なのに…。映画ではもっと絡むことであろう)。

淡々と正直な著者の記述も好感もてるし、いたずらにお涙演出していないところも心地よい。まぁまぁなのだ。でもまぁまぁ止まり。ノンフィクションとしてはいい話しだし、全米でも話題になったトゥルーストーリーらしいが、なんか物足りないなぁ。

2001年09月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション , 自伝・評伝 , スポーツ

LV3「天才アラーキー写真ノ方法」

荒木経惟著/集英社新書/740円

天才アラーキー 写真ノ方法
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アラーキー本人の写真論については、いろんなところで著者自身書き散らしているので目新しくはない。でもこの本はそれらの中でもわりと本音が出ているなと感じるところが多かった。

写真は現実に触発された何か……、被写体と写真を撮る時間を共有する……、写真っつーのはさ生きることなんだよね……、、、たまに出てくるそのような言葉が妙に説得力をもって立ち上がってくる。
ボクは別に写真の専門家でもないので写真技術について読みたいわけではない。写真というものを通して、アラーキーの人生観を、ものの見方を、人への迫り方を、知りたいのである。著者は「写真=人生」と言っているわけで、これはアラーキーの「人生ノ方法」でもある。その点ボクの需要を完璧に満たしてくれる本であった。満足満足。

2001年09月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:アート・舞台 , 評論

LV3「至福の味」

ミュリエル・バルベリ著/高橋利絵子訳/早川書房/1500円

至福の味
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フランス最優秀料理小説賞受賞作、らしい。さすがフランス、毎年最優秀を選べるほど料理小説が出ているということか(ホントか?)。

美食の限りを尽くしてきた高名かつ尊大な料理評論家が主人公。彼が死の床で、生涯最高の味を思い出しながら、彼にとって究極の味とはいったいなんだったのかを探す物語。
彼が味わった過去の素晴らしい食事が次々に思い出されていくのだが、その美食の表現が美しくもおいしく、なかなかうならせる。この表現だけで賞をもらったのかもしれない。刺身の項での和食店名が「オシリ」というのが笑わせる(泣かせる)が、とにかく味の表現は通り一遍ではなく、かなり良い。素晴らしい。

ただ、結末、つまり彼にとってなにが一番の味なのか、は、わりと想像の範囲内であった。
たぶんこういう結末だろうなー、と想像できてしまう。また、エスプリを効かせているのだろうが、ネコや石像(!)の一人称語りの章などがあったりするのは、なんとなく流れを止めてしまった気がする。面白い趣向なのだがちょっと白けてしまうんだよね。全体になかなか良い本なんだけど、もうひとつ印象に残らない一冊。惜しい。

2001年09月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(海外)

LV2「図解でわかるインターネットテクノロジー」

田口美帆著/日本実業出版社/2500円

図解でわかるインターネットテクノロジー―ブロードバンドから次世代携帯電話まで
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このごろほとんどウェブプロデューサー的仕事になってきているので、仕事柄コンピューターアプリノウハウ本みたいなものはよく読む。「超できる」的なヤツとかね。が、世のテクニカルライター達はやっぱりまだまだ想像力が欠如している人が多くて、ちょーどいいバランスで書いてくれる人が実に少なかったりする。ちょっと難しすぎたりちょっとやさしすぎたり、いらぬ説明が多かったり欲しい説明がなかったり…。本屋に何時間も粘って探していても結局満足するものに出会えなかったりするのだ。

この本もノウハウ本ではあるが、そういう意味で実にバランスが良く秀逸な本だったのでこの欄では珍しいが取り上げる。
ネット系テクノロジーについて部分部分の技術動向は掴んでいても全体像がなんかボンヤリしてるなぁ補強したいなぁと感じていたボクにはまさにうってつけのコンセプトな本だったのだが、説明が懇切丁寧かつ専門的なうえに、ちょうどいい塩梅で読者の身になってくれ、難易のバランスも実にいい。ええとところでアレはどうだったっけ?と思っていると絶妙のタイミングでコラムが現れたりする。うー、こういう本欲しかったのよね。ややこしいテクノロジーをこういうバランスでちゃんと書くって実に難しい技だと思う。著者の技量だろう。
ちなみに著者はその昔「テクニカルライター日記」という人気日記をウェブで書いていてボクも愛読していた。買ってから「お、あのミホさんか」と気づいたんだけど。

2001年09月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:実用・ホビー

LV1「白い犬とワルツを」

テリー・ケイ著/兼武進訳/新潮文庫/552円

白い犬とワルツを
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書店では店長手書き風POPが「鳥肌ものです!」とか揺れていて、現在30万部も売れていて、しかも仲代達也主演で映画化までされるらしい。話題の本である。

が、ボクにはこの本の良さがイマイチわからない。静かな気持ちにもなるし印象的な場面もあるのだが、なんだかまったく感動も涙もなく、すらっと読み終わってしまった。ねぇねぇ、この本、どこが面白いの? …なんてこと書くとこの本ファン(きっといるのだろう)から「感性がまるでないヤツ」と決めつけられてしまうのだろうけど、でも、ホントにわからないの。ねぇ、どこが面白いの? なんで売れるの? どうして映画になんかなるの?(外国ではとっくにテレビ映画になっており、NHKで放映もされたらしい)

長年連れ添った妻に先立たれた老人が主人公。妻の死後、どこからともなく現れた白い犬。でも彼の子どもたちにもその姿は見えない……なんだかなぁ。愛する妻、病気の頑固老人、彼を愛する家族たち、先立たれる悲しみ、あくまでも真っ白な犬、ひとり暮らし、お墓、犬との旅、回顧、息子の心配、信念、死、、、揃いすぎているのよ、お涙舞台の演出装置が。少なくともボクはちょっと白けた。あなたは?

2001年09月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(海外)

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