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2001年08月

LV5「エンデュアランス号漂流」

アルフレッド・ランシング著/山本光伸訳/新潮文庫/781円

エンデュアランス号漂流
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1914年に南極大陸横断に挑戦した英国人冒険家シャクルトン一行28名。その遭難から劇的なる全員生還までを乗組員の日記や詳細な取材などに基づき忠実に再現したノンフィクション。
故星野道夫の座右の書ということもあり98年に邦訳された、幻の名著の文庫化である(原著は1959年に書かれている)。どうやら来年ウォルフガング・ペーターゼン監督によって映画化公開されるらしい。あっちでも見直されているノンフィクションなのかな。

帯のコピー「これ以上危機的な遭難はない!これ以上奇跡的な生還はない!」は決してオーバーではない。
淡々とした進行だが、その切羽詰まった状況は十分衝撃的かつ迫真のものだ。ラストの生還場面など、文章的にはちっとも歌い上げていないのにやたら感動的で、しばらく動けないほどだ。暑いだの寒いだのつらいだの眠いだの、日々文句を言っている自分が恥ずかしくなる。想像するだにすさまじい。

文章的には淡々としすぎている部分もあるが(現代作家ならもっと書き込んでしまうだろう)、結果的には上手にはまっていると思う。導入部は取っつきにくいかもしれないが、どんどん引き込まれるので、ノンフィクション系が不得意な方もぜひ。
ちなみに、エンデュアランス号の乗組員募集の新聞広告コピーは広告界ではちょっと有名だ。「求む男子。至難の旅。僅かな報酬。極寒。暗黒の長い日々。絶えざる危険。生還の保証なし。成功の暁には名誉と賞賛を得る。」……かっこいい! 5000人もの男が殺到したらしい。で、この壮絶な遭難である。うーむ。

2001年08月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション

LV5「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」

J・K・ローリング著/松岡佑子訳/静山社/1900円

ハリー・ポッターとアズカバンの囚人 (3)
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シリーズ3作目。
2001年5月現在で全世界1億部突破というからものすごい(印税を考えると卒倒しそうである。定価の10%としても…ひぇ~)。テレビやゲームから子供たちを取り返した、という世評そのままに、本のチカラを再認識させてくれる名シリーズとなった。全8巻。まだまだ継続していくハリー・ポッターの物語をリアルタイムで読める我々は後生うらやましがられるかもしれない(シャーロック・ホームズものをリアルタイムで読んだロンドン市民みたいにね)。

危機、試練、興奮、友情、そして意外な結末、を毎巻きっちり用意し、展開し、きちんと収束させる著者の力量はたいしたもので、この成功はもうフロックとは言えまい。今回はシリーズ3巻の中で一番面白いと評判であるが、ボクもそう思う。後半、厳しく言えばちょっとだけ不満があるのだが、十分面白い。ストーリー展開が子供には難しすぎるかもしれないと思えるところも気に入っている。著者は子供を子供扱いしてはいないのだ。

さて、第4巻は、これまでの3倍の長さだと言う。我が娘は小一。第4巻発売までに、ハリー・ポッターの世界に導引させてみようっと。

2001年08月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ファンタジー , 児童・ティーンズ

LV5「夜のフロスト」

R・D・ウィングフィールド著/芹澤恵訳/創元推理文庫/1300円

夜のフロスト
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フロスト・シリーズ第三作。
前二作ともにいろんなランキングでベスト1とか取っている名作。本作も当然どこかでベストに入るであろう出来映えだ。相変わらず750ページ超という大作なのだが、飽きさせず、かといってハリウッド的ジェットコースターというわけでもなく、ダラダラ~とした不思議な牽引力で読者を最後まで引っ張っている。お見事。

今回も著者は主人公に試練を与える。流感大流行でデントン警察署が壊滅状態なのだ。で、嫌みのように次々起こるおぞましい事件…。流感からも見放された名物警部フロストのゴマカシやいかに!(活躍やいかに!とならないところがこのシリーズの秀逸なところ)というところだが、なんと今回のフロスト、アクション場面までこなすのだ。まぁアクション場面に関してはさすがにサービス過剰と思われるけど。

読者は、フロストの昼も夜もない激務と大きなポカを一緒に経験し、時に一緒に自殺したくなるほど情けない気分にさらされる。でもこれはこれで勇気を与える書だな。劣悪なる労働環境、かんばしくない才能と成績、その異様なまでの仕事中毒……そんなフロストの毎日は、我が身を顧みさせるに十分なのだ。サラリーマン的価値観がはびこる現代人の共感を得る現代的ニューヒーロー(?)である。

2001年08月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV5「華胥の幽夢 ~十二国記」

小野不由美著/講談社文庫/648円

華胥の幽夢(ゆめ)―十二国記
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「かしょのゆめ」と読む。現代日本が誇る名作、とそろそろ断言してもいいであろう十二国記シリーズの最新作にして、十二国記初(だったと思う)の短編集である。

十二国記ファンにとって、周辺エピソード満載の短編集はうれしすぎ、ワクワクして読んだ。ただ、シリーズが長大なのでもう忘れてしまっているところも多く、幾多の個性的登場人物たちのつながりがわからなくなっていたりして、楽しみも半減。全巻再読したいよ~。嗚呼どこかのんびりできる温泉でも行って十二国記全巻を再読したい、というのがボクのささやかな夢なのだ。

長編と短編では使う筋肉が違う、と言ったのは村上春樹だったか。十二国記の長編執筆の合間にこうした短編を書き上げるのは著者にとってなかなかたいへんな頭脳労働だったと思う。が、基本的に著者は長編作家なのだな、とこの本を読んで思う。短編なのだが、長編的構成のものが多く、展開の仕方も長編っぽい。特に表題の「華胥」などは長編的ストーリーで、助走やエピローグがない分、逆に冗長感やお説教くささが出てしまった。こういう展開の仕方は長編の方が向いている。

それにしても著者は泰麒が好きなのだなぁ。長編、外伝などを含めて、泰麒のエピソードがパズルをはめるように次々出来上がっていく。次の長編も泰麒編の続編のはずだから、この短編はその予告編にもなった感じだ。

2001年08月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ファンタジー , 児童・ティーンズ

LV5「紙婚式」

山本文緒著/角川文庫/533円

紙婚式
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うまいねどうも。こういうのを書かせたらこの作者はやっぱりハマるなぁ。
ボクは「あなたには帰る家がある」を読んで山本文緒を好きになり他のも読み始めたのだが、「恋愛中毒」などのこのごろの山本文緒の著作はイマイチ好きではない。なんか狙っている感じがイヤだし、著者の細やかさが悪い方に出ていると思うのだ(直木賞作家をつかまえて偉そうだけど)。でも、この短編はいい。98年に出た単行本の文庫化だが、あのころの山本文緒は好きなんですね。キャッチーなものを狙わずに地味な題材をじっくり書いている。

この本は結婚のいろいろなカタチを創作した短編集なのだけど、結婚生活の空洞加減を上手に浮き彫りにしていてやるせない。結婚現体験者として「そうか~?」ももちろんあるが、著者はかなり結婚を理解していると思う。こういった山本文緒をもっと読みたいと思うボクなのでした。

2001年08月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV3「永遠に去りぬ」

ロバート・ゴダード著/伏見威蕃訳/創元推理文庫/1120円

永遠(とわ)に去りぬ
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ゴダードの第8作目。2001年2月に出た邦訳である。
誰でも認める稀代の語り部は今回も健在。600ページ超の長さを読者を飽きさせず二転三転させ、破綻なく結末まで織り上げ導く手腕は相変わらずである。
ただ、詩的趣味というか言葉を華麗にしすぎる趣味はデビュー当時より強まっており、訳者はその感じを出そうとしているのだろう、小難しい漢字や言い回しを多用している。効果は発揮しているが多用しすぎかもしれない。ボクはちょっとうんざりした(ゴダードの訳者たちはどうしてこう凝るんだろう。原文の雰囲気を出そうとしているのはわかるが…)。

今回の作品もまた、主人公がある偶然の出会いによって事件に巻き込まれていくものなのだが、他の作品に比べてちょっと主人公が巻き込まれる感じが無理矢理。最後まで主人公にカタルシスを感じなかったのも難。
また、前半がまだるっこしいし(静かな伏線としてはゴダード調ではあるのだが、ちょっと長すぎる)、ラスト近くの登場人物たちの行動も疑問。長編の収束点が人間の詩的な一言に集約されていたりするあたり、ひとつ間違えると自己満足でしかないギリギリの線を行っている。二転三転するストーリー自体はさすがなものだったが、結果的にはまぁゴダードにしてはもうひとつかな。

2001年08月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV2「八重山列島釣り日記」

高橋敬一著/随想舎/1400円

八重山列島釣り日記
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副題は「石垣島に暮らした1500日」。
石垣あたりを八重山諸島とか八重山列島とか言うが、そこらへんを根城にした気楽で気ままな釣り日記である(一部小笠原やフィリピンの日記もある)。肩に力の入らない随筆で、これはこれでダラダラと楽しめるので良いのだが、世界の名著たちと比べてしまうとまぁもうひとつかなぁ。比べにくいんだけどね、こういうのって。

この本は石垣島の本屋で購入した。だからボクは石垣島で読んだわけ。あの極楽とも言うべき空気の中で読むと、こののんびり進行具合がとても気持ちがいい。なかにはシンミリさせる話しも入っているのだが、それすらも八重山の空気が昇華してしまう。あー、八重山に行きたいなぁ。八重山で逝きたいなぁ。

2001年08月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル: , スポーツ

LV2「南島ぶちくん騒動」

椎名誠著/幻冬舎文庫/457円

南島ぶちくん騒動
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石垣島で買い、石垣島で読んだ。
著者の監督により、石垣の白保海岸で撮った映画「うみ・そら・さんごのいいつたえ」のロケ日記的趣きの本である。120ページ程度の薄さにモノクロ写真ふんだん、という体裁なので、あっっっという間に読める。でも椎名節は八重山ののんびり空気に合っていて、薄くてもあっという間でも不満はあまりないのであった。

文中、「南の島の魅力はなにか?ひとつだけあげよ」という命題で、著者は「沖縄の子供たち!」としている。卓見、そして共感。あの目の輝き、あの身体中から発散される楽しいぞオーラは尋常ではない。たぶん著者も自分の子供時代に重ね合わせて見ているのだろう。つか、重ね合わせて見られる子供が東京にはもういない、ということか。著者撮影の写真はそんな子供たちをよく捉えている。目線が近いせいだろうか。

2001年08月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ , , 写真集・イラスト集

LV1「パリのトイレでシルブプレ~」

中村うさぎ著/角川文庫/400円

パリのトイレでシルブプレー!
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おもしろくないわけではない。
94年~96年にかけて「電撃王」という雑誌に書かれたエッセイを集めたものだというから、雑誌のターゲット的にはこういった文体で正解だろう(書き下ろしも半分くらいあるのだが)。そして各エッセイの末尾に現在の感想を追記しているのもそれなりの効果を上げていると思う。でも、なんちゅうか、全体に「Too Much」なのだ。酷暑の中で読むと暑い!

中村うさぎの魅力は、タカビーな部分と大ボケの部分のギャップの激しさである。うまくハマるとそのギャップがめちゃおもしろくなる。
が、この本では、過去のエッセイに自らツッコミをかけちゃっている。そこが敗因かなぁ。この頃の他の連載(週刊文春とか)が低調なのも、自分ではかなり完成された技だと思っているであろう自分ツッコミのせいだとボクは思うな。中村うさぎは、自分にツッコまず「ひたすらタカビーにボケていく」べきだと思う。それは自分ツッコミよりずっと高度な技。これが出来る数少ない作家のひとりゆえ、期待している。

2001年08月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

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