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2001年07月

LV5「スター・ガール」

ジェリー・スピネッリ著/千葉茂樹訳/理論社/1380円

スターガール
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全米書店員が選ぶ「2000年いちばん好きだった小説」の第一位だったそうな。映画化も決定したらしい。うーむ。映画にしてほしいようなしてほしくないような。ちょっとヒトに内緒にしておきたくなるような素敵な本である。せつなくて、キュートで、強い心の物語、ってところ。基本的にラブストーリーだけど、根本はそこにとどまらない。

ま、甘ったるくファンシーな物語と言うこともできる。せちがらい世の中から見たら「は?」な感想を持つ方もいらっしゃろう。
でも、ボクはこの本が好きだ。なんか赤毛のアンとハイジと長くつ下のピッピとさとうさとるを足して4で割って、ちょっと村上春樹を足したような小説で、照れくさかったり痒かったりするところもあるんだけど、でも、好き。これからこの本を読むなら、先を急がず、ゆっっっくりページをくくってほしい。どうしようもない日常から離れ、じっくりスター・ガールの世界に浸ってください。

しかし、こういう小説、アメリカっぽいなぁ。日本ではとうてい書かれないタイプの小説だ。おすすめ。LOVE!

2001年07月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(海外)

LV4「ピカレスク 太宰治伝」

猪瀬直樹著/小学館/1600円

ピカレスク - 太宰治伝
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三島由紀夫伝「ペルソナ」、川端康成&大宅壮一伝「マガジン青春譜」に続く、著者三部作らしい。
著者の本は初めて。評判が高いのは知っていたが、なんとなく粘着質っぽいのが苦手で避けて通っていた。けど本作は、中学時代にあそこまで凝ったダザイの評伝なので、期待して読んだ。

かなりな労作。太宰の本質を外堀からじわじわ埋め込んでいくその粘着質さはさすがなもの。というか評伝ってこのくらい粘着質じゃないと無理だよねー。
「井伏さんは悪人です」という太宰の遺書の謎を解くことが一応の終着点なので、井伏鱒二の本質にもかなり斬りこんでいて、個人的にはそちらの方が興味深かった。肝心の太宰については、期待した以上に詳細かつ突っ込んだ描き方になっていて(特に前半生)満足はしているが、後半生の彼の心の動き、特に自殺間際の心の動きがいまいち見えてこないのが残念(わざとそうしたのだとは思うが)。

全体に、客観と主観が入りまじり、ちょっと不思議な空気感になっている。膨大な事実の積み重ねに基づく客観と、著者の太宰に対する主観が同程度に混ざっているので、どこまでが事実でどこまでが著者による演出なのかが見えにくい。評伝だからそれはそれでいいのだが、事実の多さに惑わされて、読者は著者の太宰観を絶対的に受け入れざるを得ない感じ。
いや、それはそれでいい。そういう本だから。でも、なんというか、テレビで見る著者の論法そのままだよなーと思って。ちょいと高圧的な「これでもお前は反論するのか!」を感じさせる感じ。ま、面白かったからいいのだけど。

2001年07月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:自伝・評伝

LV3「それがぼくには楽しかったから」

リーナス・トーバルズ+デイビッド・ダイヤモンド著/風見潤訳/中島洋監修/小学館プロダクション/1800円

それがぼくには楽しかったから
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LINUX(リナックス)の生みの親、リーナス・トーバルズの自伝。
共著のデイビッド・ダイヤモンドと章ごとに交代して主観と客観を上手に使って織り上げた構成。まだ31才の男の自伝、しかも(皮肉な意味ではなくて)得意の絶頂にいる男の自伝なわけで、なんというか嫌味な部分もあるんだけど、この著者、やっぱり根が「オープンソース」なのだろう、自分を「たいしたことがない単なる素材」と扱って「どうとでもこの素材にパッチを当ててよ」って感じが(そのままでないにしろ)随所に感じられる。最初の1/3はちょっと嫌味な部分もあったが、だんだんその感じが読者側にじわじわ伝わってきて、最後にはなんとなくファンになってしまう。そんな感じだ。

オープンソースの演説な場面は(個人的には勉強になったが)ちょいと冗長。ま、世界11ヵ国語に翻訳されるらしいし、話題のスーパースターだから大ベストセラーは間違いないだろう。注目されるスターの自伝としては、うまく凌いだ、という印象。Mac派には辛い言葉も出てくるが、読後思わず「LINUXを導入してみたい」気持ちになったことも白状しておきます。

2001年07月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:自伝・評伝 , 実用・ホビー , IT・ネット

LV3「蕭々館日録」

久世光彦著/中央公論新社/2200円

蕭々館日録
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無人島に一冊持っていくとしたら漱石の「吾輩は猫である」を持っていく、という著者が書いた久世版「吾輩は…」である。

語り部は猫から5歳の早熟少女に変えてあり、登場人物も(名前は変えてあるが)芥川龍之介、菊池寛、小島政二郎らであり、時代も大正から昭和に変わる頃、と、もちろん著者なりにアレンジはしてあるのだが、元本は明らかに「吾輩は…」。あそこに漂う高等遊民的空気と語り部による観察・批判の鋭さを再現しようとしたものなのである。

「猫」に比べて語り部の「麗子」が同族である人間な分、視点が「猫」よりだいぶん人間に近く、それが中途半端な感じになっていて--麗子のヒトとしての心情が描けすぎている--ちょっとウェットに傾きすぎている。そこが強みでも弱みでもある本。向田邦子が書いた方がもっとドライになって面白かっただろう。

「重箱の隅っこに文化がある」という一文があった。今時重箱の隅など、だれも覗かない。その淋しさをバネにしてしっかり書き込んだ労作だとは思う。相当な知性と緻密な下調べ、そしてこういった筋がない物語を破綻なくまとめあげる筆力、感服する。
が、この馴染めない感じはなんだろう? もうボクがこういうものを楽しめなくなっているのであろうか。駆け足で過ぎていく時代へのアンチテーゼとして示された本でもあるとは思うが、まさに駆けている状態のボクは何度か途中で挫折しそうになった。心の余裕がある時にゆっくりスルメのように味わう本であるかもしれない。

2001年07月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV2「ビビンバ家族」

日高博著/海拓舎/1400円

ビビンバ家族―それでも妻は韓国人
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副題「それでも妻は韓国人」。
著者が韓国人の妻を持つまでそして持ったあと、のノンフィクションである。

題名が良い。購入動機はそれ。かなりの期待を持って読み始めたが、題名の勢いが本文にはなく、そういう意味では少し残念。
わりとボソボソ語る文章でそれなりに味はあるし、語っている内容も肌で感じた等身大の韓国という感じで好ましいし、赤裸々に綴られた妻の姿や姑との確執もよく伝わるし、なかなかいい本なのだが、題名の勢いを潜在的に求めてしまう分、全体に弱く感じるのが難。
内容的に「妻が韓国人」というところに留まっていて、もっとビビンバ的に「混ぜた方が美味しくなる感じ」のところまで突っ込まれていないのも惜しい。混ぜた結果どうなったのか、のところまで書かれていないのだ。やっぱりビビンバみたいに混ぜてこんなに美味しくなりましたー!という結論が欲しい気がする。

2001年07月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション , 自伝・評伝 ,

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