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2001年05月

LV5「黄昏の岸 曉の天」

小野不由美著/講談社文庫/714円

黄昏の岸 暁の天―十二国記
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十二国記シリーズ5年ぶりの新刊である。
リアルタイムでこの名シリーズが継続していく幸せよ! 読み始めればそこはもう小野不由美ワールド。美しい漢字と想像力の羽ばたき、オーバーすぎない会話、キャラ設定の絶妙、すべてがバランス良く連関し合って、見事な世界を築いているのである。

とはいいつつ、この巻ではちょっと散漫な部分も見える。人民の苦しみや謀反者の心の動きや汕子らの変容など、書き込んだら物語により深みが出そうな部分がいろいろ抜けているのだ。でもまぁもしかしたらこれは次巻への伏線かもしれないな。どう考えてもこの巻の続編は出るだろうから。

いままでの既刊をすべて読みなおしてから読みたくなる気持ちを抑え読み始めたから(だって時間ないんだもの)、最初は泰麒や陽子のキャラを細かく思い出せなくて苦労した。なんとかはなったが、もう一度アタマからシリーズを再読したい気持ちは変わらない。

あぁ、いまからこのシリーズを初めて読み出す人が本当にうらやましい。
人生にまだ十二国記を初読する喜びが残されているなんて!(初めての人はこの巻からではなく、最初の「月の影 影の海」から続けて読んでね)

そういえば、この巻ではシリーズで始めて、「天」という神についての言及をしている。これがどんな展開を示すのか、今後も興味は尽きない。

2001年05月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ファンタジー , 児童・ティーンズ

LV4「だれが『本』を殺すのか」

佐野眞一著/プレジデント社/1800円

だれが「本」を殺すのか
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未曾有の出版危機、ということをテーマにノンフィクションで450ページ強も書いてしまうこの筆力! まずそこに驚く。
読み始めるとどうして分厚くなってしまったのかの理由はわかってくるのだが、でもやっぱり200ページくらいにまとまるんじゃないか、という思いもある。こういうテーマの本こそ、1000円くらい、かつ、程よい薄さで出版することが本を殺さない一助になったりするのでは、という気もしたり。

内容的には、「本を殺そうとしているのは、出版社なのか編集者なのか取次なのか書店なのかデジタルなのか著者たちなのか、それとも読者なのか…」ということを数多くのインタビューを交え、ルポタージュしていくもの。
取次や再販制度など、著者にとっては常識の言葉を読者に説明せずに使っている不親切さは多々あるが、ぐいぐい本質に迫っていく力はさすがなもの。面白い。また、本好きな身として、いままで知らなかった配本の仕組みや客注の謎がいろいろわかったのもうれしい。暗澹たる気持ちになったり、展望が開けたり、忙しい本であるが、本を殺したくないという著者の気持ちは切実に伝わってくる。

個人的には「ネットが常時接続ブロードバンドになり広く接続料が意識されなくなった時点で、本、CD、ビデオなどの旧来媒体はすべて再編を余儀なくされる」と思っている。取次問題もこの「外圧」で変わらざるを得ないだろう。でもこれは「殺し」ではないだろう。きっと「活かし」になるはずだ、と、本好きのボクは楽観視しているのであるが…。

2001年05月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション , 評論

LV4「残る本 残る人」

向井敏著/新潮社/1900円

残る本 残る人
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書評の第一人者である著者による、ここ10年の選り抜き書評99編。
うまく書けた書評を選り抜いたわけではなく、「歳月による淘汰をしのいで生き残るだけの器量をもった本」を選んだとのこと。そういう本は「多少の難点や短所はどうでもよくなって、その擁する力をこそ広く知ってもらいたいという気持ちが頭をもたげてくる」らしいのだ。
うん、わかる。ボクのようなヘナチョコ書評子でも、年間ベストなどで振り返る時、「細かく見るとイマイチだけどやっぱり印象に残っている」という本が必ず2~3冊あったりする。多少の難点より全体の力、とでもいうのか、残さざるを得ない本ってあるよね。そういう本を稀代の読み手が選んだ、というだけで、ほら、なんとなく読んでみたいでしょ。

既読本は半分くらいあったろうか。その書評を読むに、まず引用がうまい。的確な場所を的確な長さで引用し、その本の空気を伝えてくれる。
そして各著者の過去の本の部分引用や比較が徹底している。この本一冊書評するために過去のを全部読み返したの?と疑いすらする。まさにプロのワザだ。ちなみにボクは、著者の作品歴をかえりみて書評する手法はあまり好きではないのだけど、でも、完成されたワザとしては認める。認めざるをえない。

書評欄の充実ではダントツトップを走る毎日新聞(一編2000字!)での健筆、これからも期待したい。

2001年05月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:評論

LV4「ツキの法則」

谷岡一郎著/PHP新書/657円

ツキの法則―「賭け方」と「勝敗」の科学
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先月読んだ「『社会調査』のウソ」が面白かったので、同じ著者の本を購入。
クレバーで的確な切り口、そして分析は相変わらず面白い。ボクが賭事好きであれば読み方も変わり、当然三ツ星ってことになったかもしれない。でもいかんせんボクは現在ほとんど賭事に手を出していないので、中盤の各ゲーム別具体的分析あたりがちょっと退屈であった。仕方ないけど。

科学的、統計学的に巷で言われているいわゆる「ツキ」というものを次々切り捨てていく展開は見事。ツキの正体が豊富な実例と考察でしっかりあばかれている。そして「確実に勝つ方法はないが確実に負ける方法」はある、と断定し、ギャンブル本来のスリルや楽しさを損なわずに「大負けしない方法」は存在すると導く。

著者が統計バカでないのもうれしい。筋金入りのゲーマーなのだ。コントラクトブリッジ全日本学生リーグ委員長だった経歴すら持っているのである。そういうゲームの流れの機微を知ったうえでのツキの科学。興味ある向きにはオススメである。

2001年05月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:科学 , 雑学・その他 , 実用・ホビー

LV4「アウェーで戦うために」

村上龍著/光文社/1500円

アウェーで戦うために―フィジカル・インテンシティ III
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週刊宝石に連載したサッカー・エッセイを編んだもの(三巻目)。
単なるサッカー観戦エッセイとも言えるのだが、これがどうして非常によく出来た「日本というシステム」批判になっている。

素材は主にアウェーで戦う中田ヒデ。
彼や海外のサッカーゲームを題材に、著者の思いは日本への嫌悪に近い感情吐露、そして日本という「チーム」を変えるためにどうすべきかという考察へとつながっていく。

帯に「アウェーで戦えない人材は、ホームでも使えない」とある。
このコピーは素晴らしい。本当のアウェーを体感し文章にしてくれたこと、アウェーで戦うということはどういうことかを教えてくれたこと、そしてアウェーで力を発揮するのはホームで力を発揮するのとは次元が違うということを示してくれたこと、それらだけでもこの本は価値がある。振り返って、この国の要人はアウェーで戦えるか、いやそれよりもまず「自分はアウェーで戦えるか」を考え直すいいキッカケになるだろう。
「アウェーで戦えるか?」はボクの中でいま大きな物差しになりつつある。

2001年05月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:スポーツ , 評論

LV3「シーズンチケット」

ジョナサン・タロック著/近藤隆文訳/BOOK PLUS/1000円

シーズンチケット
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ペーパーバック的風合いが好ましいBOOK PLUSシリーズの一巻。
この本はイギリスの物語。サッカーのシーズンチケットを買うことが唯一の夢である少年ふたりの悪戦苦闘の日々を描いた中編。「映画化!2001年GWに公開」と帯に書いてあるから、ちょうどこの5月に日本で公開されているらしい。

イングランド北部の貧困街で、閉塞感バリバリで暮らす少年ふたりの夢、それはニューカッスル・ユナイテッドの年間指定席を手に入れること。
スタジアムで好きなだけ試合を見れたらなんて素敵だろう、という閉塞感の象徴のような密やかな夢の設定がまず泣かせる。そしてそれを買うためにお金を貯めるのだが、その考えついた方法がすべてあまりに貧困で泣けてくる。そう、一見明るい筆致でコミカルに書かれた本のようだが、内実は暗く閉じられた悪循環の話なのだ。そしてラストもハッピーエンドではない。夢を諦めないところが救いといえば救いだが、でもきっと彼らはこの悪循環から抜け出せない。

明るく性格もいいふたりがどうしようもなく堕ちていく様が、社会派的押しつけを使用せずよく書けている。読者を自然に応援させつつ、一緒に閉塞感を味わわせる手法もなかなか。金稼ぎエピソード群がもっと面白ければかなりいい本になった気がする。あそこらへんがもうひとつなのがこの本の弱いところ。映画はここらへんを笑えるように描いていることであろう。

2001年05月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(海外)

LV3「REMARK」

池田晶子著/双葉社/1600円

REMARK―01OCT.1997~28JAN.2000
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不思議な本である。
いや、本というよりノート、か。単行本の体裁はとっているが、ここに読者とのコミュニケーションは計られていない。徹底的に一方通行。徹底的に読者に不親切。脈絡がありそうでない、なさそうである、言葉の羅列。ノートそのまま横組みで、日付だけが著者の思考の流れの前後を示す。そう、これは著者の日々の哲学メモをそのまま本にしたものなのだ。

いや、徹底的に不親切、というのは違うかな。ちゃんと読者に思考の流れを示している。逆にわかりやすいくらいではある。図解もあったりして、おっ!と真理に触れた気がすることも多々。
でも、それでも、この哲学メモを毎晩ひもとき、著者の思考の流れに忠実に頭を働かせるのはわりと大変だった。普段から考え続けている人には説明の言葉がない分より直接心に届くのだろうが、夜中に会社から帰ってきて、さてとばかり「削ぎ落とされたイケダアキコする」のは、切り替え的に無理があった。

これは3ヶ月くらい海か山に籠もる環境があるときに持って行くべき本かもしれない。ま、上級者向けのハイブロウ本ってことですね。ボクはまだ中級者以下なので、この本の快感に触れることが出来なかった。そういうこと。会社辞めて隠居したころ、じっくり再取り組みするとしよう。

2001年05月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:哲学・精神世界

LV2「旨いメシには理由がある」

都甲潔著/角川oneテーマ21/571円

旨いメシには理由(わけ)がある―味覚に関する科学的検証
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副題は「味覚に関する科学的検証」。
著者は九大のシステム情報科学研究員教授で「味覚センサー」を開発(びっくりするほど原始的な機械だが、非常によく出来ている)。それにより、人間がおいしいと思う感情は食品のどこで起こるのか、がしっかり分析されていて面白い。うん、面白いのだ。かなり面白い。特に要所要所で出てくる具体例は目から鱗がたくさん。豚骨とかビールとか牛乳とかの分析や「プリンに醤油でウニ味」とかの例示も興味深いものがある。なるほどー、味ってこういうことなのか、がよくわかる。

でも、でもでも、ちょいと専門用語多すぎ! 
専門用語(化学用語)が多いからこそ価値がある、とも言えるが(同じ主題で専門用語なしだったらなんともいい加減チックなものになるだろうし)、読んでいて苦痛になるほど多いとちょっと考えもの。内容的にはとっても面白いのに、再読したくないのはこういうところ。専門用語が苦痛じゃない人には三ツ星な本であろう。きっと。

2001年05月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒 , 科学

LV1「ここまできてそれなりにわかったこと」

五味太郎著/講談社/1200円

ここまできてそれなりにわかったこと
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人間を2000年やってきてそれなりにわかったことを150項目、五味太郎本人の絵と共に独自の観点であげた大人の絵本。
五味太郎の絵本はシンプルかつハズレが少なくて好きだが、この本は妙に複雑で(シンプルでない)、かつ、風刺とシャレが中途半端で、絵もいまいち可愛くなくて、うーん、ハズレかなぁ。

もちろんちゃんと納得も散りばめられているし、最後まで読み進むと「わかってないことの多さ、わかったことの意味のなさ」もわかってきて、結局わかってもわからなくても大差はないということがわかってくる、という秀逸な構成になっていたりするのだが、その構成自体がすでにわかりにくい。わかりにくいと言えば、特に文章がわかりにくい。一読でわかりにくいレトリックや漢字を多用していて、絵本作家らしくない。そうやって読者を煙に巻いているのかもしれないが(煙に巻くこと自体は嫌いではないが)、その手法は成功していない気がする。

2001年05月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:絵本

LV1「さんずいづくし」

別役実著/白水社/1600円

さんずいづくし
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本屋で立ち読みしたときは「これは面白そう!」と思ったのだが、購入していざじっくり向き合うとちょいとううむ…。

さんずいがついた漢字を48文字取り上げて、それについてひとつ数頁ずつ考察(エッセイ)する構成だが、そこは別役実、たんなる漢字ウンチクにとどめない。なんというか「フィクション」が入るのだ。つまりウソが入る。デタラメも入る。真実も入る。その辺の微妙なバランスを著者は「どうよ?」とばかり楽しんでいるのだが、読者であるボクは「別に?」という感じでいまいち面白くなかったのでした。

なんだか頭のいい人が自分の頭の良さ具合をひけらかしているような印象が残ったのが特に残念。そんな人でもないと思うのだけど・・・。あまりあざとくしない「さんずいエッセイ」を勝手に期待したボクも悪い。うん。

2001年05月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ , 雑学・その他

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