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2001年04月

LV5「アルケミスト」

パウロ・コエーリョ著/山川紘矢+山川亜希子訳/角川文庫/520円

アルケミスト―夢を旅した少年
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「星の王子さま」と「かもめのジョナサン」と「リトル・トリー」を一緒にしてゆっくり煮込んで濾したような本。
途中から砂漠が舞台になるので特に「星の王子さま」チックだな。先月読んだ「ベロニカは死ぬことにした」が(イヤラシイながらも)わりと印象的だったので取り寄せて読んでみた。コエーリョでは一番売れた代表作らしいし。

簡単に言うと、ある羊飼いの少年がピラミッドに向けて夢を求めて旅をする、という物語。
その中で様々な人生の知恵を得ていくということ。ありがちではある。でも文章は清冽で目線も温かい(かつ、甘すぎない)。様々な警句が手を替え品を替え登場する。一見「珠玉の言葉」と表現したくなる言葉群だが、中にはウソクサイ言葉もある。批判精神を持たずに読むと(ジョナサンとかがそうなりがちだったように)ちょっと新興宗教的一途な気持ちになってしまうかもしれない。そのくらいは(中途半端でなく)よく出来た言葉の洪水だ。

ファンタジーとは「子どもが大人になる物語」だと思う。そういう意味ではまさしくこれはファンタジー。何かを学ぶ気なら学べるし、時間つぶしに読み飛ばすならそれもいい。薄いし、南の海に持って行くには最適かも。
ボク自身は、実はこの手の本にちょっと食傷気味ではある。こういうのばかり読んでいた時期が長かったからかな。ちなみにある雑誌の特集によると、著者は「世界で一番読まれている作家50人」のうちのひとりだそうだ。なるほどー。

2001年04月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(海外) , ファンタジー

LV5「『社会調査』のウソ」

谷岡一郎著/文春文庫/690円

「社会調査」のウソ―リサーチ・リテラシーのすすめ
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新聞や雑誌、テレビはもとより学会誌に至るまで、「○○の調べによると△△が□%にものぼることがわかった」みたいなデータが横行しているが、それの過半数はゴミである、と断言している本。ゴミというか「ウソ」だな。

例を実名を上げて豊富に紹介し、そのいちいちをどこがどうウソなのか分析し、巻末には「じゃーこのデータはどこがウソだかわかりますか?」みたいな例題までついている。
データを解釈者の都合のいいように解釈している例が世の中にここまで多く存在し、それをわれわれはいかに疑いもせず信じ込んでいるか、がよくわかる本である。つうか、大新聞やテレビが堂々と発表しているんだから、まぁ端から疑わない人が多いよなぁ。でもよく考えたら確かにデータなんて作為を持たせればいくらでも作為を作れるもんなぁ。いままで疑わなかった自分の方が悪いのだ(たまにトンデモ的なデータもあるから疑うことは疑うが、ここまでしっかり考えたことはあまりなかった)。

とある掲示板で勧められて読んだが、面白かった。
この著者の他の作品も読んでみようと思う。副題は「リサーチ・リテラシーのすすめ」。リテラシーという言葉はこの頃よく使うね。直訳すれば「読み書き能力」。基礎能力、みたいなことかな。

2001年04月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:評論 , 科学 , 経済・ビジネス , 雑学・その他

LV4「シェイクスピアを盗め!」

ゲアリー・ブラックウッド著/安達まみ訳/白水社/1700円

シェイクスピアを盗め!
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全米図書館協会最優秀賞受賞の本らしい。
時はシェイクスピアが生きた400年前のロンドン。速記術を仕込まれた丁稚の主人公がロンドンで上演中の「ハムレット」を速記してまるまる盗むことを言いつかい・・・というストーリーでなかなかよく出来ている。当時のイギリス、そして当時の舞台のあり方が活写され、そこにスリルも加わって、ちゃんと面白い。
ただ主人公一人称文体なので、当時の時代考証的説明がどうしてもしにくくなっているのが残念ではある。ちょっと史実的視点からも読みたかった本なので(もちろん一人称だからこそ伝わってくる臨場感はあるから、どっちもどっち)。

そういう意味では、映画「恋に落ちたシェイクスピア」あたりを観てから読んだ方が、より臨場感が味わえると思う。スレてしまったオッサンとしては食い足りない部分も多い本だったけど、じっくり判断するとやっぱりいい本かも。題材も視点もいいしテンポも上々。たまにはこういう善意の本(というか、害のない良書というか)もいいものだ。難を言えば、シェイクスピア自身の登場がもう少し欲しかったかも。

2001年04月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(海外)

LV4「オン!」

池田晶子著/講談社/1800円

オン!―埴谷雄高との形而上対話
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1995年発売。
埴谷雄高と池田晶子の対話を中心に、著者の処女作である「埴谷論」やもっとエッセイっぽい埴谷論などが混ざり、埴谷を知る者も知らない者も知っててわからない者(ボク)も、それなりのレベルで楽しめる本。

哲学書だけど、わりと楽しかった。普段舌鋒鋭いあのイケダアキコが妙に初々しかったり、あのハニヤユタカが理解者を得てウキウキ話すのも面白いし(埴谷はある種の恋を著者にしている)、読者に理解させることを前提としていないその対話はめちゃめちゃ難しい部分も多くてこれまたある種自虐的楽しさがあったりして・・・多忙すぎた春の夜を締めるにはわりと最適な本ではあったのでした(つまり知的興奮と睡眠誘導がバランスよく行われた)。

「死霊」は未読、積ん読、飾っ読。わからないなりにも「死霊」をある程度囓ってから読んだ方がこの本の凄さはより体感できるのだろうが、このたった250ページ弱のオムニバス本を読むだけで2週間かかってしまったのだ、「死霊」に至ると一生仕事であろう。でも、結局「存在」について考えることに至るなら、それでもいいということか。

「オン」とはギリシャ語で「存在」のことらしい。この勢いをかって久しぶりに著者の「メタフィジカ!」も読み直してみようかな。あ、新刊「リマーク」も未読だった。と思ったら他にも新刊が出るらしい。うーむ、池田晶子漬け。なんか読むのに時間かかるからしょっちゅう池田晶子ばかり読んでいる気になってしまうよ。主題はひとつなのにね。

2001年04月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:哲学・精神世界 , 対談

LV3「金持ち父さん 貧乏父さん」

ロバート・キヨサキ+シャロン・レクター著/白根美保子訳/筑摩書房/1600円

金持ち父さん貧乏父さん
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この手の「経済ベストセラー本」を読むのは非常に久しぶりだが、この本はそれなりに面白かった。
というか面白かったのは「資産」と「負債」の考え方、のみなんだけど。この考え方を知れただけでこの本は価値がある(ボクにとって)。そしてその考え方を知るためだけだったら、全体の1/3もあれば知れる。あとの2/3はその考え方を知っていれば自然に導き出せる方法論。
後半は実践編なんでそういうのを有り難がる方もいらっしゃると思うけど、ま、後半はカッパブックス的かも。そういう意味ですごく水増しして書いてある本でもある。でも、なんつうか、著者から見ると、その1/3を元手に展開して3倍のページ数にし、定価を高くしてより印税を増やす、という風に自著をまさに自説通り「資産」として活用したわけで、なんつうか、してやられたわけです。

他には彼の説く「すべての元凶としての恐怖」も参考になった。
うん、そう、ボクはどこかで恐怖と闘いながら、「武士は食わねど高楊枝」みたいな意識にそれを変換してお金を「卑しいもの」として見るようにして逃げてきた。でも、資本主義国に暮らしている限りそれは単に「現実を見てないバカ」である、ということに今さらながらに気づき、反省。もうちょっとマネー・リテラシーを磨いておくべきであった。あー、でももう遅いかも。「負債」増えすぎ!

2001年04月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:経済・ビジネス , 実用・ホビー

LV2「サーフィン型学校が子どもを救う!」

永山彦三郎著/平凡社新書/660円

サーフィン型学校が子どもを救う!―「やり直し可能」な教育システムへ
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サーフィン型学校ってなにかっていうと、要はいままでの学校を「野球型」と捉えて、集団主義的かつ管理的かつ監督が権力をもっている的組織と考える。それに対し「サーフィン型」というのは、サーフィンというスポーツに代表されるような、at your own risk的かつ競争がない感じ的かつ身の程を知らないと痛い目にあう的かつ失敗は何度してもいい個人競技的なもの的に、学校を考えなおしてみよう、ということ。

目新しい言葉ではあるが、それなりに言い得ている。ただ惜しいのはサーフィンというスポーツに対する共通体験が国民にないので、まずサーフィンについてよーく説明しないとなかなか通じにくいのだ。

また、そこに至る論の展開がちょっと散漫で「単なるエッセイ」になっているのも惜しい。
まず野球型学校に噴出している問題点と将来性のなさを整然とわかりやすく並べて読者を絶望させ、そこからサーフィン型に変わることでいかに物事が変わっていくかをなるべく具体的に説き、そのうえで今の子どもたちに対する著者の想いを述べる、みたいな構造的わかりやすさが欲しい気がした。著者の想いは溢れるばかりに伝わってくるが、読み終わって散漫な印象に終わっているのが惜しいのである。残念。

2001年04月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:教育・環境・福祉

LV1「脳男」

首藤瓜於著/講談社/1600円

脳男
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ちょっと厳しすぎるかもしれないけど、でも「週刊文春2000年度ミステリーベスト10第1位」とか「第46回江戸川乱歩賞受賞」とか聞かされると「マジー?」って思って気持ちがネガティブな方に働いてしまう。うーん、マジ?

主人公を特殊に設定すること自体は(主人公が青年期の教育であそこまで学習するとはとても思えないけど、それに目をつぶりつつ)成功しているとは思うのだけど、でもそれってよくある手だと思う。その後の彼の活躍もかなり非現実的で(特に網くぐり)、なんだか主人公が著者の頭の中を出ていない印象。主人公がすべてな本であるだけに、そこがつらい。

また、脇役もステロタイプだし、どんでんも予想がつくし、ラストも思わせぶりだし、題名も「ハサミ男」に似ているし……佳作ではあるけど、2000年度ナンバー1とはちょっと思えない。ここまで他の評価が高くなかったら違う感想を持ったかもしれないけど、ちょっと期待しすぎてしまい申し訳なかった。残念。

2001年04月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV1「『教育の崩壊』という嘘」

村上龍著/NHK出版/1300円

「教育の崩壊」という嘘
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「希望の国のエクソダス」以来、教育についての発言が目立つ(というか、せざるを得なくなった)著者の対談集。
刺激的な題名ではあるが、内容的にはちょっと迎合的。特に活発な論戦があるわけではない。特に「学校崩壊」という著書を持つ河上亮一との対談は題名からして熾烈なものを予想したが、少し肩すかしであった。

著者の主張は(彼の教育関係本には一応目を通すことにしている)ボクにとっては目新しくないものであった。
が、次々パワフルに対談したり調査したりを続けることによって、彼の主張はより深くなっていることは実感する。もしくはより村上龍的になっている。さてこうなってくると行き着く先は「著者自身がこの国の希望をアナウンスすること」であろう。すべての主張はそこにたどり着いてしまう気がする。そして彼はそれを考え始めているような気がこの本を読んで、した。

なお、巻末の「中学生1600人アンケート」はかなり面白いが、谷岡一郎著「『社会調査』のウソ」を読んでリサーチ・リテラシーを少し鍛えてからこれを読むと、これもどうかなぁと思う。
まずアンケートを取った普通校に進学校やフリースクールをまぜる比率を全国的比率に合わせるべきである(数的に)。次に「アンケートを返してくる生徒は、その時点で問題意識がある生徒」であること。アンケートすら返す気力、積極性がない生徒こそ「崩壊の原点」なのではないのか。三つ目に、ピックアップしている回答が「村上龍の主張に都合のいいものに偏っている」はずであること。せめて回答例の全体分布を載せた上でピックアップするべき。

このままこれが「中学生全体の意見」とされてしまうと害悪このうえない。「このアンケートを読んでこの題名を考えついた」と著者は言うが…その程度で教育の崩壊を「嘘」と断言するのはいかがなものだろう。

2001年04月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:対談 , 教育・環境・福祉

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