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2001年03月

LV5「誰も教えてくれない聖書の読み方」

ケン・スミス著/山形浩生訳/晶文社/1800円

誰も教えてくれない聖書の読み方
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実に面白い。
聖書がいままでいかに都合の良い部分だけ取り出されて脚色ふんだんな読み方をされてきたか、がまったくよくわかる。いろんな脚色をゼロにして「聖書原典を書かれているとおりに読んでみるとどうなるか」がこの本で明らかになるのだ。こ、こんなトンデモ本を西洋は長きにわたり繰り返し読み信じてきたのか! 神様ってこんなに残虐非道で心根の狭い自意識過剰オヤジだったのか! イエスやパウロってこんなイカサマっぽい奴らだったのか! き、教会の神父って本当に最初から最後まで聖書を読んだことあるのか? き、キリスト教って…ダイジョブなのか? など、ちょっと愕然とする思いだ。

当然キリスト教徒たちから轟々たる非難がまきおこってるらしいが、著者はシラッと「だって聖書にそのとおりに書いてあるんだもん」と自信たっぷりに言うだけらしい。
そう、著者はただ現代風視点から読み進めただけなのだ。なるほどー。ボクは「マンガ聖書」は読み通したことがあり筋はだいたいわかっているつもりであったが、いま思うとキリスト教に都合のいい部分だけ抜き出したまとめ方だったのね、あれ。

この本をよりユニークにしているのは「アイコン」の存在。
例えば出エジプト記のこんな場面。「神さまはモーゼに、神の祭壇には絶対に階段をつくるなと命令。階段をのぼってる人の性器が見えちゃうかもしれないから」てなところには「なんじゃそりゃ?」アイコンがついてたりするのだ。他に「残念でした」とか「おいおい」とか「おせっくす」とか(旧約はセックス描写だらけ)、いろいろついていて面白い。

ちなみに訳もよい。著者の言い逃げ感がよく出ていて良い。あ、ちなみに聖書を最初から最後まで読まされちゃう本ではないです。聖書のトンデモナイ部分を抜き出してあるからとっても読みやすい。その点は大丈夫。オススメ。

2001年03月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:哲学・精神世界 , 雑学・その他 , ノンフィクション

LV5「ベロニカは死ぬことにした」

パウロ・コエーリョ著/江口研一訳/角川書店/1600円

ベロニカは死ぬことにした
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生きる意欲をなくして自殺しようとした若い女性が、助けられた病院で「薬の飲み過ぎで心臓が弱っているからあと1週間しか生きられない」と宣告される。そしていろいろあって「生への意欲」「生きる喜び」を理解しだす…

みたいな、なんつうかありがちな物語なんだけど、中後半に見逃せない美しさが漂っていてとても印象が強かった。
その病院は精神病院なのだけど、そこに出てくる患者たち数人の人生模様描写が、主人公の描写を上回る勢いでよく描けていたりする。オチは「ああ、やっぱりね」的すぎるのだが、オチとか筋に関係ないところに主題があるのであまり気にならない。つうか小説というよりは研究書的記述もいろいろあったりして、なんだかそこらへんの境界があまりない感じの本でもある。

パウロ・コエーリョは初読だが、なかなか味がある。ちょっと「精神世界の本」的あやしさがありすぎる気もするが、他の本も読んでみたくなる感じ。

2001年03月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(海外) , 哲学・精神世界

LV5「Sydney !」

村上春樹/文藝春秋/1619円

シドニー!
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村上春樹によるシドニーオリンピック観戦記である。
いや、観戦記というよりシドニー街紀行の趣の方が強い。ちゅうかシドニー滞在日記、かな。その滞在期間中にたまたまオリンピックがあった、みたいな距離感で書かれている。その距離感がボクには心地よかった。オリンピック賛歌にしてないし、熱くもなっていないし、無理矢理感動もしていない。
著者自身告白しているが「オリンピックは退屈である」という認識が原点になっているので(共感するなぁ)、作家の好奇心は当然別のところへ広がる。コアラや食べ物や潜水艦やオーストラリアの歴史へ。その辺の広がりをそのまま書いていることが実にいい効果を上げている。そして、ある感動的な出来事によりシドニーの街(オーストラリア人の意識)が変質化していく様の捉え方は、「アンダーグラウンド」以来醸成され続けてきた彼の主題に近いせいなのか、ちゃんと深く掘り下げてあって面白かった。

導入部と〆の部分もとっても良い。これらがあったからこの本は「作品」になったのだと思う。オリンピック選手という「オリンピックを最大の非日常」と置いている人たちの描写で、「オリンピックは退屈な日常」と思っている著者の日記を挟み込む、というその構成。それによって、この本は単なる日記と違う緊張感を得ている。
全体に軽妙でいいテンポ。習作的比喩の多用が作家の日常の努力をかいま見るようで興味深い。それにしてもあれからたった半年なのに、もうすでにずいぶん遠い昔みたいだね、シドニー五輪。

2001年03月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル: , スポーツ , エッセイ

LV5「ロシアは今日も荒れ模様」

米原万里著/講談社文庫/495円

ロシアは今日も荒れ模様
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前に読んだ「不実な美女か貞淑な醜女か」も相当面白かったけど、デビュー作のそれにくらべてこれは慣れてきたのかもっとこなれていて、なんか安心して楽しめた感じ。
相変わらずどのエピソードも選り抜きで、ロシア人とロシアという国の素顔をよく伝えてくれていると思う。著者自身の感性に「ロシア的小話」が深く入り込んでいるようで、小話的「我を笑う」視点がそこここに出ているのが特によい。そういう感性もなく、文章も下手な人がこういう題材を書いたら(ありがちだよね)、自慢めいてめちゃめちゃつまらないものに仕上がっただろう。ボクたちは「ロシアという文化の翻訳者」に米原万里を得て、実に幸せなのである。

それにしてもこのなかにたくさん描かれているロシア人の酒量についてのエピソードには愕然とした。
その中のひとつ、実話らしいが、ソ連宇宙総局の幹部3人(というとわりとお年寄りだろう)が六本木のあるバーの飲み物を最後の一滴まで飲み干したというエピソードには特に。だって「ウィスキー15本、ウォトカ5本、ブランデー5本、ワインとビール数知れず」だって言うんだから……。3人で、だぜ。うーむ、ボクは若い頃「ウィスキーのボトル1本なら軽いです」って自慢してたけど、井の中の蛙とはまさにこのことだなぁ。

2001年03月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ , 時事・政治・国際 ,

LV4「板前修業」

下田徹著/集英社新書/680円

板前修業
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数々の名店で修行したあと「銀座しも田」という店(ボクはまだ行ったことない)を開いた板前が書いた「板前修業紙上体験」である。
そう、読者はいうなれば「板前修業」というカルチャースクールの講座を受けている生徒、というような設定。著者は軽妙洒脱な話し口調で、板前の様々な技を披露し、教えてくれる。語りかけがやさしいから専門的な部分も抵抗なく読み進められ、隅々まで退屈せず読めるからこそ見えてくる全体像みたいなものが、板前の本当の姿をより浮き彫りにしてくれている。専門的な部分と全体像のバランスを取る、というとっても難しいことがスラリと出来ているのがこの本の出色なところであろう。
個々の料理法や魚の見分け方さばき方なども参考になるから、そういう興味がある方にもいいかもしれない。

2001年03月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒

LV3「それはまた別の話」

和田誠・三谷幸喜著/文春文庫/638円

それはまた別の話
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映画ファンの中では、和田誠の対談相手といえば山田宏一と決まっていた。ベストカップル。それが今度は三谷幸喜だと言う。ま、彼も大好きだし、いい企画なので素直に喜ぶが、ボクは山田氏とのカップリングの方がやっぱり好きだな。三谷幸喜もいい味出しているけど、対等には渡り合えてなくて、わざと自分の小さなこだわりにツッコムことでなんとか自尊心を満たしている感じ。それを和田誠は微笑んで見ている感じ。

いや、三谷氏も健闘している。でももうひとつ話が膨らまないのが弱い。世代が少し違うからかな。それともこの手の「和田誠対談企画」にボクがちょっと飽きてきているのか。まぁ映画をビデオで詳細に見直せるようになってからは、和田誠の驚異の記憶力も神通力失ってきたしなぁ。
ちなみに題名はボクの口癖でもある。「あなただけ今晩は」や「ネバーエンディングストーリー」で効果的に使われていたセリフ、だよね。

2001年03月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:映画・映像 , 対談

LV2「サン・ジャンの葬儀屋」

ジョエル・エグロフ著/松本百合子訳/ブック・プラス/1000円

サン・ジャンの葬儀屋
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「フランスで大ベストセラー! 2000年シネレクト賞受賞」という帯(シール)につられて買ってしまった。
著者のデビュー作らしい。軽妙かつヨタヨタな空気感がまず良い。著者のクレバーさが伺える文体だ。筋もなんだか滑稽で最後はロードムービーのようになりとても映像的。斬新を気取らず、わざと田舎っぽい描き方に徹しながら、しっかり「新しさ」を演出するあたり、なかなかである。

全体にいかにもフランスっぽいウィット感があるので、好む人には心地よいだろう。オチも小洒落ていてちょうどよい。
ただなにか刺激があるかとか面白いかとか言われるとノーである。なんちゅうか南の島の海岸に寝ころんで読み捨てするには最適だけど、都会であくせくしている日常で読むと(肩の力を抜けさせてはくれるが)ちょっと物足りない部分もある。読む状況でどうにでも変わる本、かな。

2001年03月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(海外)

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