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2001年02月

LV5「東京アンダーワールド」

ロバート・ホワイティング著/松井みどり訳/角川書店/1900円

東京アンダーワールド
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導入部はもうひとつ。あぁこういう風に事実を羅列して「東京の裏側にこんな奴らがいたぜ」みたいなルポルタージュとして終わるのかなぁ、とちょっとうんざりしつつ読み進めていたら、1/4あたり、そう、力道山やニック・ザペッティが出てくるあたりから、物語は一気に活気を帯びだし、あとはもう最後のページまで息も尽かせぬ勢いで駆け抜ける。ふぅ、面白かった。

主人公はそのニック(六本木のニコラの店主)で、戦後すぐから20世紀最後あたりまでの東京の裏の世界を「東京のマフィア・ボス」と呼ばれた彼の行動を中心に活写しているのだが、これがなんというかやけにイキイキと面白いのである。
生々しく蠢く周辺人物もいいし、著者が海外からの視点で書いていることで、妙に客観的な匂いもついて、読者を浮遊状態にさせてくれるのもうれしい。当時の日本の流れも著者特有の断定的見方がユニークでいろいろ感心もさせられた。いろんな史実が絡み合ってくるのでちょいとゴチャゴチャしているし、たまに時系列もわからなくなるのだが、そのゴチャゴチャ感も東京ぽくてよろしい。うん。とっても面白かった。

2001年02月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション

LV5「ハリー・ポッターと秘密の部屋」

J・K・ローリング著/松岡佑子訳/静山社/1900円

ハリー・ポッターと秘密の部屋 (2)
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ハリー・ポッター・シリーズの第二巻。
面白い。世界観を思い出すために、前回の「賢者の石」を再読した上で一気になだれこんでみたが、二冊いっぺんに読んだせいもあるのだろう、その世界観構築の見事さと、事件やエピソードの巧みさに(前回の印象より)かなり感心させられた。大ヒット作の二作目というのは難しいだろうと思うが、非常に成功した例ではないだろうか。

前作も初読時より面白く感じた。つまり再読に耐えるシリーズということか。今作「秘密の部屋」に限ると、前作よりもずっと恐怖感の演出がうまく、想像力豊かな子供なら読むのをやめてしまうかもしれないレベルの怖さまで行っている。子供用に書くという手加減をしていないあたりの気骨さが、全編に渡って感じられ、それがこの物語をより深いものにしているのだろう。

それにしても・・・全世界で3600万部とは! 今年は映画化もされるらしい。謎解きがあって、困難や障害物があって、仲間がいて、魅力的な救助者がいて・・・と、ヒットすべき文法を忠実に守っているだけという感じもするのだが、それぞれが半端でなく完成されているだけに、これからの作品もまず期待を裏切らないであろう。第三巻「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」は今年夏に発売らしい。楽しみである。

2001年02月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ファンタジー , 児童・ティーンズ

LV5「体は全部知っている」

吉本ばなな著/文藝春秋/1143円

体は全部知っている
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吉本ばななの本は初期作はすべて読んだけど「アムリタ」あたりからどうにもイマイチで読まなくなっていた。でもなんとなく久しぶりに手に取ったら見事に復活しているではないか。

この短編集は著者の感性と技術がバランスよく一致した傑作かと思う(一時期「感性」的なものに偏っていてバランス悪かった気がする)。人生をスライスするナイフの鋭利さ。それに空気感を与えるポンプの精巧さ。そしてなによりそれらを貫く背骨の太さ…。読み始めはちょっと物足りなく「あぁまた感性主導型ばななワールドか」と思わせたが、途中から背骨の太さ・一貫さに気付かされ、最小限に絞った言葉の的確さにも驚かされ、やっぱり希有な作家であると再認識させられたのである。

題名は一見各短編に関係ないようであるが、実は大きなテーマをそこに主張している。
この言葉が各短編を結ぶベルトであり鍵であり鍵穴でもある。頭でっかちな「理解」とは別次元にある生理的な「実感」。それを物語周辺の空気感で表現し、読者に体感させてくれる手腕の見事さ。遺物に触れぬよう注意深く周りから掘っていく遺跡発掘のような手並みである。もちろん味付けは現代風なんだけど。
お茶でも飲みながらゆっくり味わって欲しい短編集。おすすめ。

2001年02月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV5「考える日々 III」

池田晶子著/毎日新聞社/1600円

考える日々〈3〉
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本当は、池田晶子の本を読んでいること自体、恥ずかしいことなのだ。
自分でとことん考えることもせず、著者に「考えるキッカケ」をもらおうと読んでしまう根本的な矛盾(なぜって著者がイイタイコトは「考えよ!」ということだから)。どこかでそれに羞恥心を感じつつ、今回もたいへん考えさせてもらった。ありがとう。

サンデー毎日に連載しているコラムを集めた第三集。副題が英語でこっそり書いてある。「One Size Fits All」。うーん、なるほど…。テーマは多岐に渡っていてそれぞれ通り過ぎる足を止めてくれる力を持つが、今回は「心で感じる仮想と現実」「死の向こうの存在と宇宙」の項が個人的に特に印象深かった。

本当のところ、「善く生きる」ためにはこういった本から浸みだしてくるテーマに真っ向から闘いを挑まないといけないのである。他のことをしているヒマはないのである。それこそ生きている意味なのである。なのになのに・・・。ま、そういうことを忙しく走る日々の中で思い出すために、これからも定期的に池田晶子を読み続けることであろう。それって本当に恥ずかしいことなのだ。わかってはいるのだ。うぅ。

2001年02月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:哲学・精神世界

LV4「癌 --患者になった5人の医師たち」

黒木登志夫他著/角川oneテーマ21/571円

癌-患者になった5人の医師たち
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癌にかかった医師たち5人の文章を寄せ合って作った新書本。
一人の患者として、人間として、どう癌を受け止めたのか、どう闘っていったのか、そして医者としてどう変わっていったのか。生の言葉でしっかり書いてある。かりそめの健常者としてそれを読むことは、一種のグラウンディング(地に足をつけること、自分を知ること)の作業になり、とても有効であった。良い企画に感謝する。

死に至る病は人間を、いや自分を、どう変えるだろうか。
いやもちろんボク自身、死に至る病にかかっている。1分1秒死に向かって時は進んでいく。そういう意味では著者たちとボクになんの立場上の違いはない。深く沈降し、自分を捜し出さなければいけない。癌にかかっていようとかからないでいようと。個人的には「ゲルソン療法」が興味深かった。もしボクが癌にかかったら「必ず」告知して、療法そして生き方(死に方)を選ばせてくださいね ←近親者へ私信。

2001年02月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:健康 , ノンフィクション

LV4「余は如何にしてナショナリストとなりし乎」

福田和也著/光文社/1200円

余は如何にしてナショナリストとなりし乎
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ナショナリズムというのは誤解を受けやすい言葉である。本書はまずそこらへんから易しく説きはじめ、ナショナリズムとはなにか、それは「良識」なのだ「治者たること」なのだ「強者の徳」なのだというところまで丁寧に論を進めていく。そしてエセ右翼、エセ左翼、エセナショナリストに対して(名指しを含め)厳しい言葉を発していく。

国家主義や民族主義と別の次元にナショナリズムを置き、自己肯定と自己愛に満ちたいままでのエセ活動家たちをなじり、自らを(恥じ入りながらも)強者と設定し、ナショナリズムを滔々と語っていく気概は読んでいて気持ちがいい。迷いのない発信は人になにかを伝えるものだ。結果的に中学生の道徳の時間みたいな青臭さが匂い立っているし、後半の半生記は照れくさくて読めたものではないが、全体的主張にはしっかり共感できた。いや共感というより、自分の寄って立つ場所を確認できた、と言うべきか。難しく危険な論題ではあるが、論説にちょっと酔っている気がするのを除けば、一度読んでご自分の旗色を明確にする作業のきっかけにすることをオススメしたい。

2001年02月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際 , 評論

LV3「新宿鮫」

大沢在昌著/光文社カッパ・ノベルス/800円

新宿鮫
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いまごろ何読んでんの?って思う方も多いかもしれないが、これがボクの大沢在昌初体験である。
つうか、カッパ・ノベルスを読んだのって高校以来かも。なんとなく手を伸ばしかねていたが、新宿鮫シリーズの評判の高さに思わず買った一冊。

素直な感想としては、あまりボクには合わなかった。評判が高すぎてちょっとあら探し的に読んでしまったかもしれない。いや、まじ面白いんだけど、週刊文春だったかの「20世紀ベストミステリー」の「国内編ベスト10」に入る出来、とまでは思わないなぁ。つまり、その評判並みの面白さを期待しちゃうと少しがっかりするかも、ということ。
キャラ造形が非常にいい。ストーリーもこじんまりしてはいるがよく練られている。晶と桃井のキャラがもう少し掘り下げてあるとより魅力的になったと思うがそれは贅沢というものか(もしくはそれは続編で解決されているのか)。1990年初版。

2001年02月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV1「キミは他人に鼻毛が出てますよと言えるか」

北尾トロ著/鉄人社/1238円

キミは他人に鼻毛が出てますよと言えるか
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要は表題の如く、勇気を持って誰かに何かを言うときにヒトはどういう行動をとるか、を著者自身が実験台になってやってみてルポしたもの、である。
「死ぬほどまずい蕎麦屋に『マズイ』と伝えてみる」とか「友達に貸した2000円を『返せ』と言ってみる」とか「電車で知らないオヤジに『飲もう』と誘ってみる」とか、まぁかなりの勇気がいる題材を14編、自己実験してみている(中にはつまらない題材もあるが)。

企画、題材、文章のとほほ味、それぞれ良い。でも著者自身が妙に小心者かつ普通のヒトを演じてしまっていて、そっちの方面から読者の共感を引き出そうとしすぎているのが残念だ。こういう本は著者が破天荒な演出をした方が面白いのだ、きっと。例えば西原理恵子にこの手の本を書かしたら、きっと5倍は面白いものにしていただろう。読者におもねず、著者の勢いで読者を引きずりまわしていたら、きっともっと面白くなったと思う。企画がいいだけに、ちょっと残念。

2001年02月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:雑学・その他 , ノンフィクション

LV0「『希望の国のエクソダス』取材ノート」

村上龍著/文藝春秋/1143円

『希望の国のエクソダス』取材ノート
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わりと酷評してしまった「希望の国のエクソダス」だが、あれは小説としては酷いと思うが近未来シミュレーションとしてはよく出来ていたと思う(中学生が独立する、というシナリオを除いて)。この本は、その近未来シミュレーションのもととなった取材ノート。つまり「村上龍の勉強帳」である。シミュレーションの元ネタをしっかり読んでボクなりに近未来を展望してみたかったから、買った。

経済学者からディーラー、現役中学生、経歴未詳の不良まで、13のインタビューを収めている。
が、まぁ当然といえば当然なのだが、著者は小説のストーリーに沿った答えを引き出すべくインタビューしているので、インタビューされた側が必ずしも彼らの本音を吐露しているわけではない。というか、村上龍が喜びそうな方向で答えを出している。そういう意味ではちょっと拍子抜け。彼らのせいでも著者のせいでもなく、企画のせいか。つうか、そんなこと最初からわかってたんだから、買うなよ、オレ。もちろん中にはとても有意義なインタビューもあった。不良へのインタビューが一番面白かった。

2001年02月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション

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