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2000年12月

LV5「馬鹿でよかった」

久住昌之著/演劇ぶっく社/1500円

馬鹿でよかった
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いいなぁ、この本。
なんじゃろう、単に「この本、好き」で書評を終わりたい気分。不便を不便と感じることがアイデアの元である、みたいな言葉があるけど、なんというか著者は誰もが普段そう感じながらも見逃しているそういう小さな小さな感情を逃さず表現していく。その観察力、バカ正直さ、想像力が素晴らしい。そして読者を共感の渦に巻き込んでいくその技術も(さりげなく)素晴らしい。

この本を「ぼくは静かに揺れ動く」の後に読んだのだが、「ぼくは静かに揺れ動く」がどうにもうざったいのは「馬鹿でよかった」と違って読者を信用しないで説明しすぎるところなんだろうな。そう。つまり「馬鹿でよかった」は読者を信用してのびのびと意識の流れを書いているのだ。その信用の仕方と著者自身の自信が素晴らしい。その自信の持ちようこそ「馬鹿」じゃないと出来ないこと。うーん、著者が馬鹿でよかった。はは。いいなぁ、この本。

2000年12月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

LV5「美味しい方程式の原点」

野崎洋光著/文化出版局/1600円

「分とく山」野崎洋光が求める美味しい方程式の原点
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「美味しい方程式」シリーズ三冊目。
シリーズ最終なのかな。人気シリーズなのでまだ続く可能性もあるけど、続くとしても薄く引き延ばしたものになる気がするので個人的にはこれを最終にした方がいい気がする。

ボクはこれをベッドで寝転がりながら読んだ。まさに「読ませる料理本」として成功している。読んでいるだけで料理の本質が見えてくる。そういう意味でこの本はいまから料理を覚える方が手を動かす前に読むべき本かもしれない。
また、「考えさせる料理本」としても成功している。このレシピはこうすべき、というレシピ紹介本とはまるで違う。特に三章などは方程式の応用問題で読んでいて楽しい。ただ惜しむらくは応用問題にもっと贅沢にページを割いてほしかった。「かつお」を使って何作ろう、と考える余裕を読者にもっと与えて欲しい。すぐに答えを与えずいろいろ考えさせて欲しい。いろいろ考える過程に著者もついてきて欲しい。そこが惜しい。

難点はデザインが中途半端になってしまったこと。レシピ紹介と読ませる部分が両立していない気がする。シリーズ的にデザインは一貫して斬新だが、今回は読ませる部分が多かったせいか、横組み縦組みの入り交じり具合や写真の入れ方、大きなフォントの使い方が多少心地悪くなってしまっていた。惜しい。

2000年12月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒 , 実用・ホビー

LV4「ぼくは静かに揺れ動く」

ハニフ・クレイシ著/中川五郎訳/アーティストハウス/1000円

ぼくは静かに揺れ動く
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イギリスで記録的ロングセラーになっている本らしい。
結婚して6年になる妻と子供を置いて出ていこうとする男のたった一日の出来事・回想を書いた本だが、その意識の流れに忠実な構成、ビビッドな文章、共感を呼ぶ正直さが素晴らしい。特に前半。こりゃ名作にぶち当たったのかも、と襟を正し座り直して読み始めたくらいである。

ただ中盤が、その意識の流れを追うという構成上仕方ないことでもあるのだが、かなり冗長。
一行一行繊細な感情が詰まりすぎていて息も出来ない。繊細さの大安売り!という感じがしてくるくらいである。でも結局それを貫いた分、この本は成功しているのだろう。大人版「ライ麦畑でつかまえて」的に。

「馬鹿でよかった」の書評でも書いたが、説明しすぎているのがちょっとうざいかも。何度も何度も気持ちを説明しにかかる。もっと読者を信用してほしいぞ。ちゃんと伝わっているのだから。

原題は「Intimacy」。親密とか情交とかそんな意味。邦題は内容を受けた労訳だと思うが(こういう一文が中にもあるし)、これも説明しすぎの感がちょっとある。

2000年12月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(海外)

LV3「夜、空をとぶ」

ランダル・ジャレル著/モーリス・センダック絵/長田弘訳/みすず書房/1600円

夜、空をとぶ
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「長田弘が選んだ7冊」の第3回配本の1冊目。
これは子供にはわからないだろうな。大人の散文だ。絵本とか童話と呼ぶにはちょとつらいかもしれない。

ボク自身はとってもこの本を楽しんだ。行間が濃く言葉は深い。白と黒、昼と夜、生と死、そういったものを上手に対比させながらイメージの断片が次々舞い降りてくる。
ゆっくりゆっくり何度も読み返すとこの本の真価が見えてくる。子供が世界の秘密に気付く一瞬を美しく切り取った佳作。ちなみに5歳の娘にはチンプンカンプンだったようである。無理もないか。

2000年12月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:絵本

LV3「裏バージョン」

松浦理英子著/筑摩書房/1300円

裏ヴァージョン
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期待高まる松浦理英子7年ぶりの新作。

「親指Pの修業時代」以来待ちこがれていたが、結果は、うーむ、期待しすぎたかしら、であった。
いや、構成的には斬新・新鮮・血も踊るである。でも斬新な仕掛けには斬新な結末を期待してしまうのが読者の常。導入の第一章の一番最後の行を読んで「おや?」となり、章を追うに従ってどんどん「おお?」が広がり、構成の妙が理解できてきた途端に爆発する結末への知的期待…。

うーむ。結果的に、構成の新しさのみ印象に残ってしまったのがこの本の弱いところ。感心はするが感動はしない感じ。望みすぎなのはわかっている。感心するだけで充分かもしれない。でもなぁ…。惜しいところ。

2000年12月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV3「豆炭とパソコン」

糸井重里著/世界文化社/1470円

豆炭とパソコン―80代からのインターネット入門
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「ほぼ日刊イトイ新聞」での人気コンテンツの単行本化。副題が「80代からのインターネット入門」。

著者の80歳の実母が初めてパソコンに触りネットにつながるまでの顛末である。
インターネットについての著者の平明かつ鋭い分析はもちろん面白いが、なによりもイキイキ生きているミーチャン(実母)とその先生役の南波あっこさんの息づかいがたまらなく良い。そういう良さを前面に出すために題名も「豆炭とパソコン」にしたのだろう(「ほぼ日」連載時はいまの副題が題名だった)。豆炭もパソコンも、それ自体が大切なのではない。大切なのは豆炭やパソコンがある生活を楽しんでいるミーチャンなのだ。その主客転倒がいまのIT革命の最大の問題。そういうことが声高でなく生活レベルで伝わってくるところがこの本のいいところなのである(そういう意味では著者による前書き後書きは蛇足かも)。

残念なのは「つながった」ところで終わってしまう点。つながった先の生活をもうちょっとでいいから読みたい。消化不良。とはいえまぁそれは現在の「ほぼ日」で読めるからいいか。むぅ。先を読みたい方はミーチャンみたいにネットにつなぐトライをしてみてね、という深謀遠慮なのかもしれない。

2000年12月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:IT・ネット , 教育・環境・福祉

LV3「似顔絵」

山藤章二著/岩波新書/940円

カラー版 似顔絵
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なるほどねー。『似顔絵は「そっくり絵」ではありません。盛り場でよく見かける、商売としての似顔絵はそれでいいのですが、自己表現としての似顔絵は別の方向を向いています。相手の方に近寄るのではなく、逆に、自分の手元に全部引き寄せてしまう。「オレにはこう見える」という「人物論」--それがぼくの考える似顔絵です。』(本文より) これにすべてが言い尽くされているなー。「似顔絵=自己表現」。うーん。とっても共感する。そう、どんな発信も自己表現なのだ。結局自分がどう見たかなのだ。

この本を読んでそこらへんの感じが一気にクリアになり氷解した。
ありがとう、わかりやすく解いてくれて。そんな気持ち。
時代を意識したテクニックやジャーナリズムじゃなくて「オレにはこう見える」・・・。そういう目で改めて彼の作品群、似顔絵塾塾生の作品群を見ていくとまた違ったものが見えてくる。「似てるねぇ」と単純な感想ではないものが見えてくる。テレビの物まね選手権がつまらない理由も一気にわかったボクなのであった。

2000年12月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:写真集・イラスト集 , エッセイ , アート・舞台

LV2「山下清のすべて」

サンマーク出版/1700円

山下清のすべて―放浪画家からの贈りもの
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本屋でこの本を見つけ、急に山下清のことが知りたくなった。
山下清・・・裸の大将と言った方が有名か。日本のゴッホと言われ、素晴らしい貼り絵で知られる天才画家。有名である。ドラマでもシリーズになり、いまだに再放送している。でもボクはほとんど彼の実際を知らなかった。立ち読みしてその作品に触れているうちにとにかく知りたくなって買ってしまったと、そういうわけ。

よーく行間を読んでいくと、彼の存在にはちゃんと演出がある。外にも彼自身の中にも。
だが、彼の絵はそういうのを抜きにしても人を惹きつけるパワーを持っている。卓越した観察力と緻密な構成力。印象派の光の捉え方とブリューゲル的世界構築。妹尾河童に通じる細部描写。後期の素描や水彩も素晴らしい。いつまでも見飽きない。そういったものをしっかり紹介しつつエピソードを重ねて構成した本書は、山下清入門としてはとっても良かった気がするのである。
関係ないが、彼の本質は「含羞」なのだろうな、と、ちょっと思った。

2000年12月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:アート・舞台 , 写真集・イラスト集

LV1「アイスクリームの国」

アントニー・バージェス著/ファルビオ・テスター絵/長田弘訳/みすず書房/1800円

アイスクリームの国
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「長田弘が選んだ7冊」の第3回配本の2冊目。
うーん。イマイチだったなぁ。絵はとっても良い。けど文章があまり好きではない。展開も。あまりボクの琴線には触れなかった。

なんだろう? アイスクリームの国というモチーフはいいのだけど、そこから先がないのだ。
ボクだけのアイスクリームの国に旅をする想像力を刺激してくれない。子供と一緒にいろんなアイスクリームの国を想像してみようとしたのだが、どうやっても行き詰まる。「昔、あるところにアイスクリームで出来た国がありました」・・・例えばこういう一行で終わっていた方がワクワクしない? そういうワクワク感がこの本にはないのだ。

2000年12月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:絵本

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