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2000年11月

LV5「46億年の100大ニュース」

渡辺健一著/フジテレビ出版/2000円

46億年の100大ニュース
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あまりに「読めない」状態が続いていたので、昔読んで超絶に面白かったこの本を本棚から引っぱり出して再読。結果、やはり名著であることを確認。いやいや、やっぱり面白かった!

これって1993年初版だからもう古本屋でしか手に入らないかなぁ。
著者は放送作家であり、このネタ自体フジテレビ(当時全盛)で5時間スペシャルとして流されたものを全面的に書き下ろしたもの。放送自体は見ていないがたぶん本の方が出来はいいだろう。なにしろ「驚きと発見」の連続なのだ。ヘタに映像がない方がイメージが広がって面白いし、テレビと違って何度も反芻できるではないか。

内容は「地球史上100大ニュース」である。
ただ、視点として面白いのは「今のボクたちから見た大事なニュース」であり、歴史上大事なニュースとは一線を画していること。しかしまぁ、過去のあの事件が現在のボクたちの生活にこういう風に影響を及ぼしているのねーと驚くことしきり。今現在の生活がすべて歴史的裏打ちのもとに総括できる快感。歴史的考証がちゃんとなされていないものもあるかもしれないが、ざっくりと断言した蛮勇はとても評価できる。文章も実に軽く平明。ちょっとホイチョイが入っていて、ボクたちにはちょうどよいのだ。こういう風に歴史を教わったら、どんな子供でもついてくるだろうなぁ。

いろんな意味で大変な労作である。なぜもっと評価されないのだろう。持ってない人、読んでない人、すぐ古本屋へ走れ!!

2000年11月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション , 雑学・その他

LV5「渋澤龍彦綺譚集1(全2巻)」

渋澤龍彦著/日本文芸社/3900円

渋澤龍彦綺譚集〈1〉
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先月香山滋の幻想小説集を読んで、無性に渋澤龍彦が読みたくなった。
この希有な物語作家の全集(全2巻)は前から買ってあったもので、いままでも拾い読みはしていたが、じっくり腰を落ち着けて読んだのは初めて。今月はまずその第1巻。いや、実はここに収められた26編の8割くらいしか読めなかった。こうして書いている今もまだ読書継続中である。だって、著者の文章は流し読みが出来ないんだもの。ゆっくり物語世界に沈み込む快感こそ、彼に求めたいものだからである。

渋澤龍彦の作風をひと言で表現するなら「妖しい目眩」とでも言えようか。
この頃ではもう知らない人の方が多くなりつつある作家だが、読み返してみてそのオリジナリティと尋常でない妖しさに慄然とすることしばし。緻密かつアバウトな構成力と行間の深い表現力。細部に川端康成の文学的おどろおどろと三島由紀夫の絢爛が、ちょっとずつ宿っている。なんちゅうか、気持ちよく彼が作り出した闇に落ちていけるあの加速度感が得難いのです。初期の作品はちょっとイマイチなのも多いけど、全体の物語よりもなんというか漢字ひとつから匂ってくるようなイメージを楽しみたかったので満足。文字色、書体、装丁、挿し絵もそれぞれとてもよい。しかしこの著者、導入がうまいなぁ。このまま第2巻に突入予定。

2000年11月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本) , ファンタジー , ホラー

LV5「翻訳夜話」

村上春樹・柴田元幸著/文春新書/740円

翻訳夜話
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素晴らしい企画。本屋でこれを見つけたときは目をむいたぜ。
なにせ村上春樹と柴田元幸が翻訳について語るのである。そのうえ村上がオースターを、柴田がカーヴァーを訳して対比させて、そしてそれをテキストにしてまた語り合うのである。うーむ。なんちゅう気の効いた企画なんだ!!

彼らの翻訳手法の対談は、同時に優れた文章談義になっており、また小説表現の秘密にまで踏み込まれている。このところ翻訳論みたいな本がいろいろ出ていたが(今月もそういう本を一冊読んだが)、納得したという面でこの本を越えるものはなかなかないだろう。つうか、たぶん「名手による経験談」かつ「平明シンプルな語り口」が効いているんだろうな。青山南も加えて三人で話したらまた違った展開だったろうなぁ。そういう対談も読んでみたい。

翻訳で本の内容が変わってくることにボクが気がついたのはディネーセンの「アフリカ農場」を違う翻訳で読み比べた経験から。
それ以来特に翻訳には注意を払っているが、村上と柴田の対訳を読んでみて「これほどまでに違ってくるんだな」と驚愕。だって同じ小説がまるで違う趣になるんだよ。比較的文体が近いふたりなのに。参ったな。そういう驚きを得るだけでも価値ある本。

2000年11月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:対談 , 評論

LV4「分身」

東野圭吾著/集英社文庫/695円

分身
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1993年発行の著者初期小説。1年前にヒトからもらってそのまま本棚に置いていたが、ちょっと思いだして読んでみた。というか、わりと気になってはいたのであるが。

実は期待していなかった。著者特有の(「秘密」に通じる)甘ったるさが色濃く出ていそうな小説だったから。なんとなく北村薫の「スキップ」とかに通じる甘ったるさ。しかし、期待はいい方に裏切られた。章分けを細かくしたのも勝因。テンポよく筋が進み、リズムよく謎が氷解していく。読み出すと止まらず、一気に読んだ。

ただ、こういうミステリーに出てきがちの「政府黒幕」だの「それを指揮する黒ずくめの謎の男」だの「顔色の悪い研究者」だののステロタイプ・キャラの出現が物語を多少つまらなくしている。初期作品だから仕方ないが、ちょっと居心地が悪くなる。それと題名自体がネタばれなのが気になるかも。いい題名なのだが、読者は最初から展開が読めてしまう。そこらへんが惜しい本。

2000年11月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV4「おやすみ、おやすみ」

シルヴィア・プラス著/クウェンティン・ブレイク絵/長田弘訳/みすず書房/1600円

おやすみ、おやすみ
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「長田弘が選んだ7冊」の第二回配本の2冊目。

これはとても良かった。娘と共に非常に楽しんだし、いまも「読んで」とせがまれる。
絵もいいし、文もよい。まぁなんてことない内容だと言えばそれまでだが、ここから広がる会話と空想がこの本を楽しくしている。そう、娘との会話と空想の入り口として、この絵本は優れているのである。来月の配本が楽しみだ。

2000年11月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:絵本

LV3「十月はハロウィーンの月」

ジョン・アップダイク著/ナンシー・エクホーム・バーカート絵/長田弘訳/みすず書房/1600円

十月はハロウィーンの月
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「長田弘が選んだ7冊」の第二回配本の一冊。
「絵本」というより「詩集」である。アップダイクの冷たいまでに計算された名文による12ヶ月の風物詩である。

実に名文、と言わざるを得ない。ゆっくりゆっくり味わって読ませてもらった。
ただこうなると絵は文章の脇役でしかない。もっともっと「強い絵」があったなら、と思う。また、長田弘による訳は、原文に忠実なのだろうが、ちょっと読み聞かせるにはイマイチなリズム。ちなみに5歳の娘は絵も文も楽しまなかった。仕方ないかな、ちょっと高度過ぎたかなと思いつつ、実は訳によってもう少しなんとかなったんではないか、とも思うのである。

2000年11月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:絵本

LV1「翻訳はいかにすべきか」

柳瀬尚紀著/岩波新書/660円

翻訳はいかにすべきか
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「翻訳夜話」とは趣が違う翻訳論だが、内容的にはかなり味があるものだし、翻訳者の苦労話が舞台裏を見ているようで面白い。
ただ、訳例が二葉亭四迷から始まったりするあたり、とっつきにくい。翻訳という作業を個人的体験として平易に解いていった村上・柴田の著作に比べると、ちょっと大上段に振りかぶりすぎているのである。

翻訳はいかにすべきか、という題名にもそれは表れる。上からものを言ってくる感じで、なんというか翻訳は苦行か、とすら思えてくる(まぁヒトによっては苦行なのだろうが、村上・柴田のスタンスとずいぶん違うので)。そこらへんがこの本を固くしている。文春と岩波の違い、ということかな。内容的には部分部分面白いところがあったけど、本としてはイマイチ楽しめなかった、そんな感じ。

2000年11月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:評論

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