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2000年09月

LV5「女王の百年密室」

森博嗣著/幻冬舎/1900円

女王の百年密室
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「すべてがFになる」で好印象の著者の新作。
その頭の良さと斬新さには注目していたので、ちょっとウキウキ読み始めたのだ。結果としてはとても面白かった。でも、なんつうか、現代のゲイツやジャガーと結びつかれると(う、ネタばれか?)ちょっと白けてしまう。そこがボクにとっては惜しい部分。そういう「お遊び」はいらなかったと思うなぁ。でも妙に印象に残る一編だ。変なところもありつつ、ゆっくり再読してみたい気持ちにもなる感じ。

近い未来のリアリティをここまで表現しきったのは賞賛に値する。
なんというか、技術に対するニックネームの付け方や主人公にとっての「未来の常識」の読者への説明のし加減がとっても上手。どのポイントを表現すれば未来が妙にリアルになってくるか、というあたりのセンスが素晴らしいのである。SF作家も見習ってもらいたい鮮やかさ。この世界観だけでも読む価値はある。

2000年09月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV4「朗読者」

ベルンハルト・シュリンク著/松永美穂訳/新潮クレストブックス/1800円

朗読者
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各媒体、各批評家、ベタ誉め。20以上の言語に訳されアメリカでは200万部突破のヒット作らしい。
満を持して読んだ。なんか題名も良いし、装丁も良い。「悪童日記」っぽい衝撃がありそうな予感…。だが。

神は細部に宿る。そういう意味では傑作である。この行間のみずみずしさは尋常ではない。こういう風に書きたい、と読んでいて嫉妬すら覚えた(嫉妬を覚える資格もないが)。久しぶりにブンガクの強いオーラをまとった文章を読んだ感じ。
だけど、小説の構築、という意味では少々物足りないのも確か。切ない恋の結末と強制収容所の過去、そして歳をとったふたり・・・。淡々と語られるそのストーリーは十分衝撃的だしこれ以上事件を増やす必要もない。主人公にも共感する。なのになんでこう物足りないのだろう。

それはたぶん、文章のリリシズムとストーリーの問題の深さが馴染んでないからではないか。もっとハードボイルドにした方がストーリーは立つ気がする。でも、著者はこれでもかと詩的な部分を放り込んでしまった。このリリシズムなら、例えば後半部がなくて裁判のちょっと後で終わった方がもっと締まったのかもしれない。後半部に前半部みたいな心の動きが頻繁に描かれていないのも逆効果。回想で始まっている物語なのに、そして前半はかなり多弁かつリリカルに回想するのに、後半では主人公は妙に読者によそよそしい。そこら辺も馴染んでない印象を際だたせる。

それにしても、リアルでこういろいろ事件が起きると、強制収容所ですらあまり残酷に感じなくなってくるね。そういう点からして「事件慣れした現代の日本人(つうかボク)には物足りない」だけなのかもしれない。

2000年09月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(海外)

LV3「そうだ、村上さんに聞いてみよう」

村上春樹著・安西水丸絵/朝日新聞社/940円

「そうだ、村上さんに聞いてみよう」と世間の人々が村上春樹にとりあえずぶっつける282の大疑問に果たして村上さんはちゃんと答えられるのか?
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副題が「と世間の人々が村上春樹にとりあえずぶっつける282の大疑問に果たして村上さんはちゃんと答えられるのか?」という長いもの。まぁ内容はそういうことです、はい。

村上朝日堂のホームページに寄せられた読者からの質問に著者が丁寧に答えていったもので、その質問は多岐に渡る。じゃー村上ファンしか面白くないかと言われれば、それはそうなのだが、答えが丁寧なのでファンじゃない人も「なるほどねー」的納得は随所にあるだろう。まぁ端的に言って、ボクにはとても面白かった。創作に秘密にもずいぶん答えているしね。「なるほどねー」的納得感がボクにはとてもあったのである。

ちなみに村上朝日堂のホームページは以前愛読していたが(いまは著者による更新は終了している)、さぬきうどんの話題もいっぱいあって、その中で読者のひとりが「さとなおのページのさぬきうどん紀行が面白い」と村上さんに推薦してくれていて、ボクはドキドキと村上さんのそれに対する返事を待ったのだけど(数%の確率で公開返事として掲載されるのです)、それには無反応だったな。ま、当たり前か。そんなことを唐突に思いだした(笑)

2000年09月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

LV3「趣味は佃煮」

小町文雄著/光文社知恵の森文庫/514円

趣味は佃煮―ある大学教授の「無趣味」からの脱出
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副題は「ある大学教授の『無趣味』からの脱出」。
無趣味だった大学教授が佃煮をはじめとする乾物系珍味製作にはまっていく様子を飄々と書いている。この飄々さ加減が、予想外に面白く、わりと楽しめた。

こういった本はありがちで、だいたいが自慢に終始するのだが、この著者の自慢は嫌味にならないし、自慢自体もそうはしていない。だから楽しめたのだろう。林望や玉村豊男など、自慢上手はいろいろいるが、自慢すること自体を著者自身が笑っている感じがどの著者にも共通して言えるうまさなのだろう。この著者も結局自分を笑う技術に長けている。
佃煮をはじめこの本に出てくるもろもろのレシピは、ちょっと作ってみたくなるものばかり。ただ、干物にするには空気が悪すぎる環境にいまボクは住んでいるので、そういう系統は出来ない。残念だ。

2000年09月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒 , 実用・ホビー

LV3「パソコンが奪った漢字を取り戻せ!」

守誠著/サンリオ/1000円

パソコンが奪った漢字を取り戻せ!―漢字練習ノート
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企画の勝利。つうか、待ってたな、こういう本。副題は「漢字練習ノート」。そのまんま。つまりパソコンユーザーが忘れてしまいがちな漢字をセレクトして、書きこんで練習もできる形態にしあげている。うん。いいいい。他にもあるのかもしれないけど、ボクは初めて出会った。

とにかく、会社でも家でもキーボード中心になってしまったボク。だって文字書くのの数倍早いんだもの。だからたまに文字を書くと、その「漢字を忘れている度合いの激しさ」に愕然とするのである。漢字は得意中の得意だったのに、いまや読めるけど書けない漢字がいかに多いことか! パソコンは確実に漢字力を奪うのである。

この本の優れているところは、ただの漢字練習帳ではなくて、「パソコンの画面から正しいものを選びだす漢字力」とか「ちょっと考えてしまう小学生漢字」とか「よく間違えるオフィスの中で使う漢字」とかいう、その切り口の素晴らしさと、選んである漢字の程の良さ、だろう。ほんの数時間、この本に向かうだけで、急に自信が取り戻せる。いざという時恥を書かないためにあなたもこの本を漢字練習で汚してみない?

2000年09月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:教育・環境・福祉 , 雑学・その他

LV3「クモの糸のミステリー」

大崎茂芳著/中公新書/680円

クモの糸のミステリー―ハイテク機能に学ぶ
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クモ。不思議な生物だ。興味はわりと前からあった。なので書店で見つけて即購入。
副題は「ハイテク機能に学ぶ」であって、クモの糸の科学的分析などのサイエンス系新書ではあるのだが、実際には小難しいことは何もなく、クモをめぐる体験エッセイみたいな趣になっている。わかりやすく、おもしろく、好奇心をいろいろ満たしてくれる。佳品だ。

ただ、読んでいくに従ってクモへの好奇心がどんどん高まっていくのだが、そうなればなるほど「クモの写真が見たくなる」のである。白黒でもちろんいいから、クモ自体の写真をもっといろいろ載せてくれていないのが不満である。つうか、クモを好きにさせておいてそれはないだろう、みたいな憤慨すらある。上手に興味を湧かせているのだから、読者の身になって、興味の収まりどころまでケアしてくれていたらもっと良かった。贅沢かな?

2000年09月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:科学

LV1「回転スシ世界一周」

玉村豊男著/世界文化社/1575円

回転スシ世界一周
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この頃の回転スシの世界制覇のイキオイはすごいものがある。
この本は著者がパリ、ロンドン、アムス、NYC、ロスと16日間に渡って海外の回転スシを食べまくった記録である。果たして回転スシを海外の人はどう捉えているのか。回転スシ文化はどう根付いていくのか。どうしてこんなにスシが流行っているのか…。そういう問題を考察しつつ、著者はとにかく食べまくっているのである。

現地のスシ事情やインタビューなどは興味深いし、世界がどうスシを捉えているのか、読むに従って理解できてくる。
ただ、それ以上のものはここにはない。ちょっと気のきいたライターでも、現地コーディネーターに恵まれれば同じようなものが書けるだろう。ボクは「玉村豊男がそれをどう感じどう消化しどう発信するか」がもっと読みたかった。そういう意味での突っ込みが足りない気がする。著者独特の匂いがない本に仕上がってしまった。そこが残念でならない。企画も題材も著者もいいのに惜しい一冊。

2000年09月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒 ,

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