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2000年08月

LV5「南へ」

野田知佑著/文春文庫/600円

南へ
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1992年から1995年まで「本の雑誌」に連載した文章の文庫版。
「新・放浪記2」と副題にある。最初の「放浪記」は単行本で読んだ記憶があるが、「新」は読んでなかったと思うので、「新・放浪記1」は読み損なっている気がする。まぁいいや。特に筋がある本ではないし。

野田知佑はやっぱり半年に一回は読まないといけない作家のひとりであるなぁ、というのが読後感。
こういう暮らしの記録を継続的に読まないと、東京というシステムがいかに異常なものか、都会というものがいかに狂乱なものか、生きていく目的とはなんなのか、自分のためだけに気持ちいいことをなにかしているか、などという根本的なものを忘れてしまう情けなさなのだ。
あ、日本の河川問題についても。河川問題についてはボクはなにもしていないに等しい。読んで理解しているだけならバカでもできる。激しく共感しているのだからなにかすればいいのだ。現地に出かけて活動するのはとても無理だから、なにかボクの立場で協力できることを探していきたい。
・・・などと、ちょっと精神が思わぬ方向に開かれる。そんな効き目が彼の本にはあるのである。

2000年08月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル: , エッセイ , 教育・環境・福祉

LV3「人間の行方」

多田富雄・山折哲雄著/文春ネスコ/1600円

人間の行方―二十世紀の一生、二十一世紀の一生
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副題が「二十世紀の一生、二十一世紀の一生」。
なんかPHP出版が出しそうな本である。著名な科学者と著名な宗教学者がそれぞれの立場に固執しないで腹を割って話し合った、ある種の人生論。実際含蓄に富んでいる。科学と宗教という思いっきり反対の立場にたつ識者同士だから物事の見方が多角的になり、読者にあらぬ方向の思考を強いてくれる。人生や人間や生き方を考えるいいきっかけにはなるだろう。

ただ、老練な識者同士だからこその曖昧さはある。いろいろ問題が複雑に絡み合っているとわかっている同士だからこそ、ちょっと言葉を濁しがちになってしまうのだろう。命題が無難な方向に収束してしまったり、答えを明確に出さなかったりするのは少し残念。ま、答えが出ようがない命題が多いから仕方ないのだけど。
でも、読者は彼らの「偏見」を読みたいし、彼らの「敵対論争」も読みたいのだ。いたずらにスキャンダラスにしろ、というのではなく、ある強い偏見こそ刺激的な「考えるヒント」になると思うからである。

ある書評でベタ誉めしてあったからかなり期待をして読んだが、ちょっぴり期待はずれかな。こういう議論をとっくの昔にふまえている秀逸SFとかが多いせいもあるかも。

2000年08月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:哲学・精神世界 , 対談

LV3「私の部屋に水がある理由」

内田春菊著/文春文庫/552円

私の部屋に水がある理由(わけ)
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1993年に出た単行本の文庫化。
まぁずいぶん前の本ですね。題名が素敵なのと、久しぶりに著者のエッセイが読みたくなって買った。いくつか記憶があるエッセイがあるのはたぶん週刊文春に連載時のものだろう。本音で書く人は多いが、その本音の出し方が当時はわりと「目うろこ」的だったので印象深いのだ。そう、あれからこういう春菊タッチで書く人は増えた。ある意味、室田滋とかもそうかもしれない。

個人的には、常識に縛られている人生のつまらなさをよくわからせてくれるところが好きである。
常識って何なのさ。それにがんじがらめにされているボクって何なのさ。いや、著者に常識がない、という意味ではなく、彼女は実に平明に人生を見ている、ということ。あー、滑稽だろうな、そういう目で見ていたら。環境の違いもあるが、心底うらやましいのである。つうか、オレも見習おう。
あ、それと、文体も視点も違うが、その「人生を平明に照射する感じ」が菜摘ひかるに通じるものがあるとちょっと感じた。

2000年08月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

LV3「温泉ロマンス」

荒木経惟著/光文社知恵の森文庫/648円

温泉ロマンス―アラキグラフ〈第2号〉
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副題は「アラキグラフ第弐号」。
ま、率直に言って「エロ本」である。「エロ写真集」である。
ただ、文庫でこういうエロ本を出したのが新しい。しかも「知恵の森文庫」である。知恵、なのだ。いや、皮肉ではなくとてもいいことだと思う。アラーキーは芸術書でなく文庫がよく似合う。篠山紀信の文庫写真集(いわゆる激写シリーズね)はなんかキレイゴトの匂いがするが、アラーキーは文庫本来の「読み捨てでなにか悪いか」的セメノシセイがあって、とてもしっくり来る。

アラーキーの写真にあって紀信の写真にないもの、それは「ワタクシ」だ。彼は徹底的に個人的関係を被写体と結ぼうとする。そしてそれを写真にする。だから常にハメ撮りなのだ。むーん。あらゆる意味で、文庫が似合う写真集である。

2000年08月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:写真集・イラスト集

LV3「沖縄、基地なき島への道標」

大田昌秀著/集英社新書/660円

沖縄、基地なき島への道標
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サミットもあっけなく終わり沖縄は祭りの後の空しさに包まれている頃であろうか。結局、沖縄でサミットを開いた、という意味を活かせなかったのは、首相の責任でもなんでもなく、日本国民すべての意識の足りなさなのである(もちろんボクを含めて)。

99年の選挙で沖縄県知事から降りてしまった著者であるが、主義主張の一貫度合いは実に気持ちいい。
主張が一貫している政治家は好きである。意見を変えてはいけないという意味ではなく、なんというか背骨のしっかり具合、みたいなこと。そういう意味では著者の背骨の太さは好きである。前著作とあまり変わらない主張に、もっとやれ、もっとしつこく続けろ、と応援したくなってくる。

基地問題は複雑だ。県民も基地に(経済的に)頼っている部分はある。だから一概に著者の主張がすべて正しいとは言わない。
でも、基地を存続させるのであれば、日本はしょせん「独立国家ごっこ」なのであることを我々は認識しなければならない。日本は独立していないのだ。どこぞの属国なのである。経済はそのどこぞの国のために発展しないと困るのである。株主様のために働く社員なのだよ、我々は。
じゃぁ、独立するとしたらなにが必要なのか。それをいい加減真剣に考えたらどうだろう? もしくは属国で居続けるか? だったら早く英語を公用語にしないと。通信費も関税も大幅に下げなくちゃ。基地も全国に置かないと。

いや、皮肉ではなく、やっぱり中途半端なのだ、日本という国は。背骨が太くなりようがない。

2000年08月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際

LV2「ウルティマオンライン ザ・セカンドエイジ公式ガイド」

ソフトバンク/1800円

ウルティマオンライン ザ・セカンドエイジ 公式ガイド
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ここで取り上げるのもどうかと思うが、でも今月一番時間を費やし一番熟読したのはこの本だ。だから取り上げる。笑うな。
でもね、このゲーム(ウルティマオンラインというゲームの解説本なのです)ほど、ガイドを熟読するゲームはないぞ。他のゲームにも攻略本とかあるけど、あれって謎が解けていくとどんどん先に進んで、しまいには全部解けてしまうからお払い箱になるよね。でもこのゲームは終わりがないのだ。ブリタニアという世界でいろんな生き方ができるのだ。だから「攻略本」ではなくて「ガイド」なのだね。「攻略できない」んだから。

それにしても受験時代の英和辞典以来だな、ページが手垢で黒くなったのは。再読の嵐。熟達するにつれ熟読具合も深まる。細部のほんのちょっとした工夫が必要になってくるからなのだ。そうまでして読みながらも、まだ中級者に手が届かない状態。深いゲームなのである。うーん、まだしばらくはこの本を座右に置かなければいけないようである。

2000年08月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:実用・ホビー

LV1「グルメ探偵」

ピーター・キング著/井上健監訳/井出野浩貴・野中香方子・松谷世津子・矢部真理訳/バベル・プレス/2500円

グルメ探偵
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推理小説。主人公は、珍しい食材やレストランのメニューについてアドバイスしたりある年代物のワインを探し出したり、といったグルメ関係の私立探偵。そして、彼があるレストランのレシピを解明するという依頼に携わるうちに殺人事件に巻き込まれて…。

グルメの探偵という素材は新しく、それなりに魅力的。アメリカでもそこそこ売れたらしい。随所に出てくる旨い物系のウンチクも(多少うるさいが)まぁ楽しい部類。
だけど。だけどだけど。推理小説としては「カス」であった。構成力、筆力、キャラクター造形力、すべてに渡っていまひとつ。面白くない。あまりに面白くないものだから、読了に2週間ちかくかかってしまった。旨い物系の話に人並み以上に興味津々なボクですら、である。グルメ探偵という素材はいいのだから、もうちょっとなんとかしてほしかったな。

2000年08月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV1「コンピュータはそんなにエライのか」

柳沢賢一郎著/洋泉社y文庫/680円

コンピュータはそんなにエライのか
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帯には「インターネットがもたらす変化は本当に産業革命につぐ大革命なのか、IT革命なんて本当に起こっているのか、それらは人々を幸せにするのか」と書かれている。
ま、ありがちな本なのだけど、インターネット系の職場に移って四六時中ネットにどっぷりつかっていると、こういうアンチテーゼ的本を読まないとなんかバランスが取れなくて怖いのだ。

細かいところに「なるほどね」という部分はあったが、あまり目新しい論は出てこなかった。
どんなものでも明と暗の部分はある。個人的にはコンピューターに初めて触って6年、「明」の部分が「暗」の部分を大きく凌駕していると感じている。便利な道具なのだ。使い方次第である。いまや電気やガス、車や冷蔵庫、テレビがない生活なんて考えられないでしょ。それと一緒。それらは人間を幸せにしたであろうか。一概には言えないのである。それと同じ。

2000年08月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:評論

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