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2000年04月

LV5「エンディミオンの覚醒」

ダン・シモンズ著/酒井昭伸訳/早川書房/3800円

エンディミオンの覚醒
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二段組800ページのSF大作にして、大傑作「ハイペリオン」シリーズ全4作の完結編。

この本を読むために2カ月かけて前3作を読み直したボクは、めちゃくちゃな期待と共に「エンディミオンの覚醒」に取りかかったのである。世界観を復習し、結末を予想し、残された膨大な量の謎を推理しつつ読み始めたのだが、結果はいい方に裏切られた。なるほど!こうなるのか!の連続。推理もハズレまくり。ラストにかけてそれこそゴマンとある謎がドンドコ解かれまくるのである。めちゃめちゃ快感であった。

だが、それでもまだ謎はいくつも残されたままである。
読後すぐに、4日ほどかけて駆け足で再読してみて「あ、こんなところに伏線が!」「あ、この思わせぶりな記述はこういう意味だったのか!」みたいな発見をいくつもした。「あー、この一行はこういう意味なんだ」「注意深く前作を読み返していないとわからない読者もいるだろうな」みたいな優越感にもいろいろ浸れる。が、いまだにわからない謎がいくつも残されている。タイムパラドクスも解決されているのかいないのかわからん。うーん。なんちゅう物語なのだ。

でも、著者は本当にこの結末を最初から念頭に置いて第一作の「ハイペリオン」を書き始めたのかなぁ。だとしたら驚異の構築力 & 忍耐力 & 粘り、だ。 だって、4作で二段組2500ページあるんだよ。参ったなぁ。
ただ、正直言うと少し冗長なものも感じた。この4作目に限っては、いろんな説明や描写が多すぎて途中つらかったのも事実。宗教に踏み込んだ部分も、説明しつつ筋を進める分かなりまだるっこしかった(一茶や良寛の短歌がいっぱい出てくるのは面白かったけど)。それと、どう考えても矛盾する部分がいくつもあるのも気になるな。大著にじっくりつきあった読者としてはすべてが細部まですっきり解けてほしかったのだ。

とはいえ、圧倒的筆力とは何か、が肌で感じられる名作だ。長くSFの傑作として語り継がれることでしょう。想像力とはこういうことを言うのだね。マジで脱帽します。

2000年04月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:SF

LV5「建築を語る」

安藤忠雄著/東京大学出版会/2800円

建築を語る
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建築家安藤忠雄の東大大学院での講義を一冊にしたもの。第一講から第五講まで。

彼の建築に対する考え方が、その半生と共に語られていて、実に面白く含蓄に富んでいる。いまだ「大センセイ」になるのを拒否しているその精神で語られた言葉は、全体の構築がしっかりしている上にケレンもあり、細部はシンプルにまとまっていて、著者自身が作る建築物を彷彿とさせるようである。

まぁ建築についてはド素人なので、わからない専門用語・専門家名なども出てきたが、そういう部分はすべて飛ばし読みしてもとても面白かった。個人的に特に面白かったのが、若い頃に考えた都市建築計画の案をぶっつけで役所に持っていったり、歳をとったいまでも当時の案にこだわっていたりといった「精神的若さ」みたいなもの。ボクなんか良い案だなと思っても、否定されると妙にオトナになってバランスを取り直して作り直したりしてしまう。それではなにも残せないのだ。そんなこと今頃わかったりした。まぁここでは多くを語れないけど。

まぁそういうような心の部分を刺激してくれる内容を持った名講義。一読をオススメします。
それにしても素朴な疑問なのだけど、なぜ建築家の書く文章はみな句読点が「,」と「.」なの? 建築雑誌とかでもほとんど「,」と「.」だ。あまり好きではないのだけど。

2000年04月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:アート・舞台 , 科学

LV4「女たちのジハード」

篠田節子著/集英社文庫/740円

女たちのジハード
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何年前だかの直木賞受賞作。浅田次郎の「鉄道員」と一緒に受賞したものである。

実はまるで期待せず読み始めたのだが、予想に反してとても面白かった。全体に女性たちの行き場のないやるせなさがよく伝わってきてとても共感できたのだ。でも、ジハード(聖戦)したものの結果が結局こういうことなの?と鼻白む部分はあったかも。特にラスト。なんだか安いテレビドラマの結末の付け方みたいで、ちょっと不満なのである。

そう、ある意味とてもテレビドラマ的なつくりだ。性格も境遇もまるで違う5人のOLたちが主人公で、キャラはとてもわかりやすい設定だし、描写も非常にテレビ的。ストーリー的にもいかにもテレビ、である。というか、テレビ脚本が直木賞に近づいたのかも。でも、こういう文学が賞をとったのは悪いことではないと思う。時代に即した大衆文学。それが直木賞であるならば、まさに直木賞的作品なのであるとボクは思う。
深さはあまり感じないが「スライス・オブ・時代」としてはよく出来ている。そんな感じ。

2000年04月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV3「書斎の造りかた」

林望著/光文社カッパブックス/838円

書斎の造りかた―知のための空間・時間・道具
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パソコンという超便利道具が出来て以降、書斎のあり方は確実に変わった。とはいえ、ハイテク城を書斎にするような極論ばかりが跋扈してもいまいちときめかない。そういう意味で、一番バランスが取れていて、かつ、実用的合理的な書斎論がやっと現れたと言える。しかもこういうことをウンチク込みで嫌味にならない程度の自慢を混ぜつつ語らせたら著者は日本一である。

書斎の造り方は、もちろん、生き方にも関係してくる。だから、この本ではさりげなく人生論が散りばめられていて、それがとてもクリアで面白い。人生論は文章論、教育論までも波及していき(もとが書斎論だからこそ)熱くならずにドライに語られている分だけ逆に説得力が増してもいる。

書斎の造り方に限って言えば、だいたい考え方は似ていた。まぁ掘り炬燵にすることとオフィス用コピー機を置くスペースを考えなかったのが、この本を読む前に家の設計が終わってしまった悔しさかな。

2000年04月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ , 実用・ホビー

LV3「被差別部落の青春」

角岡伸彦著/講談社/1700円

被差別部落の青春
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ある仕事のきっかけがあって同和問題についてかなり考える時間を持ったのだが、その流れで読んだ本。
仕事の中でたくさんの被差別部落出身者と出会ったが、みな陽気でいい人ばかりである。彼らと話しているとまるで暗くはない。でもいざ世の中に向けて発信されるとなぜか暗いものとなる。その理由もいきさつもすべてわかった上で言うが、この本のような身の丈レベルの話がもっともっと前面に出てくればなにかが確実に変わるとは思う。そういうきっかけにはなる本だ。

ただ、少し残念なのは行間にまだ重苦しさが感じられること。無闇に明るく書けと言っているのではないが、事例取材などの語り口が淡々としていて、著者(被差別部落出身者)の思考の健康さが活かされ切っていないところがある。なにか重いものに引きずられていく感じが中半から後半にかけて漂った。惜しい。

被差別部落、という単語がまず重いよなぁ。なんというか、「誇り高き陽気なマイノリティ」的括り方はないものだろうか。過去の歴史から言っても無責任なことは言えないのだけど…。これからもいろいろ考え続けていきたい課題である。

2000年04月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション

LV3「歴史 if 物語」

井沢元彦著/廣済堂文庫/552円

歴史if物語
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新幹線出張の時間つぶしに買ったのだが、わりと面白かった。
二部構成で、「手紙で綴る日本史」と、表題の「歴史 if 物語」。「歴史 if 物語」は例えば「もし黒船がやってこなかったら」とかそういうifをいろいろ書いているもので、それが面白そうだから買ったのだが、結果的には第一部の「手紙で綴る日本史」の方が面白かった。日本史に残る名手紙文をひとつずつ抜き出し、そこから歴史を説いていったものだが、著者は歴史の捉え方がクリアであり、それがとても刺激になったのだ。ごちゃごちゃ言わずにクリアに断言する感じはとっても共感した。井沢元彦、なかなか面白し。

それに反して第二部は知的興奮が少なく、なんだか安い予想屋みたいな感じの連続で、だからどうした、が多かったな。
誰が書いても面白くないのかもね、ifって。よっぽど荒唐無稽な未来にならないと、なんだかがっかりしてしまうのがガンなのだ。クリアに歴史が見通せるヒトほど、ifの答えを書かせるとつまらないものを書くのかもしれない。トンデモ本系作者の方が、実は面白いのかもしれない。

2000年04月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:雑学・その他

LV1「ただの私に戻る旅」

横井久美子著/労働旬報社/1800円

ただの私に戻る旅―自転車でゆくアイルランド私の愛した街
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副題が「自転車でゆくアイルランド・私の愛した街」。
1995年に出た本だからもうずいぶん前という感じ。アイルランド好きなもので、なんとなく買ってあった本。やっと読んだ。

歌手である著者が20周年記念コンサートを終えて抜け殻になったココロをアイルランドのひとり旅で癒していく過程を書いたもの。
著者が感じたこと、気付いたこと、悟ったこと・・・そういったものになるべく寄り添って静かに読んでいったのだが、結局「自分に対してだけ書かれた自分本位の独白」の域を出ていないから、なんというか読者が入り込む余地がないのが残念。自費出版の本などによくあるような自己完結型文学に近い感じ。それの良し悪しは一概には言えない。ただ著者は読者になにを伝えたいのだろう? アナタは確かに苦しんだ。ひとりでよくがんばった。なにかを掴んだ。それはよくわかった。でも、それでどうしたの? で、だから何なの? 皮肉でなく、真剣にそう問いかけたい。
歌手なら心に届かせる術を知っているはず。それが文章に活かされていないのが残念。

2000年04月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル: , エッセイ

LV1「睡眠の技術」

井上昌次郎著/KKベストセラーズ/648円

睡眠の技術―今日からぐっすり眠れる本
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副題が「今日からぐっすり眠れる本」。
東京医科歯科大学の教授が書いた睡眠についての本だが、前書きで書いてあるとおり、いろんなところに書いた文章を再録してまとめたものである。その分、ちょっと散漫なところもあるが、それなりにわかりやすくまとまっている。

総花的に睡眠についての知識は増えるが、テレビ番組の「あるある大辞典」の域を出ていない。なんだか内容が薄く感じられた。新書であり論文ではないのだからこの程度でいいとも言える。でも、読み終わった後の満足感がちょっと薄い本であった。

「あるある大辞典」にあってこの本にないのは「知的エンターテイメント」である。どうやって視聴者(読者)を飽きさせずに楽しませるか。楽しませた上で知識をつけさせることが出来るか。そのへんのプロ意識みたいなものがこの本には乏しい。まぁ教授系が書いたものはほとんどそうなのだけど、もうちょっとなんとかしてほしい。エンターテイメントの努力をしないで「読書離れ」を嘆いていたら、早晩「本」という文化は崩れ去るであろう。

2000年04月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:健康

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