1999年10月
「バトル・ロワイヤル」

amazon面白い。圧倒的に。
舞台設定も物語展開も荒唐無稽なのだがそれが異様なリアリティをもって眼前に浮き上がってくる。やるなぁ高見広春。こういカタチで「異化」する手もあったんだなぁとちょっと驚き。冗長な部分や浮ついた部分もあるのだが、それらも嫌味ではなく味になっている。金八先生のパロディっぽい記述もそんなに気にならなかった。
太平洋戦争で勝利した大東亜共和国の理不尽なプログラム、それは中学三年生のクラス全員のバトルロワイヤル。生き残れるのはただひとり…。無作為のもとで選ばれたあるクラスの、孤島での殺し合いの一部始終がここで描かれているのであるが、クラス42人のキャラ造形がそれぞれ見事で、こんなに多い登場人物なのにそのすべてを愛している自分に読後あなたは気がつくであろう。最初はその登場人物の多さに怖じ気づくんだけどね。
ある小説新人賞選考会ではそのあまりに過激な内容ゆえ全員から拒絶され落選させられたらしいが、ボクにはそんなには過激に見えなかったのはなぜ? 新人賞選考会委員って何歳なの? 世代的ズレを感じるなぁ。それにしてもぜひ映画化をのぞむぞ。
1999年10月01日(金) 12:00:00・リンク用URL
「ムツゴロウの動物交際術」

amazon以前畑さんの家で「そのマジックみたいな動物の手なづけ方をそのうち公開してください」とお願いしたら「いま書いているんですよー」とおっしゃった。あれから3年。そんな本が出たらすごいものだ、と思っていたらついに出た。
「この本では僕の企業秘密をすべて公開している」と書いているだけあってまさに秘伝の技がそこかしこ。動物とつき合うのと人間とつき合うのとはそう違いはないのだなという不思議な実感も最後にはあってなかなかに深いのであった。最後の方が少しダレルが、全体に動物とのつきあいのノウハウは世界一盛り込まれていると思う。
いま著者はテレビとかからちょっとキワモノ的に扱われているところがあるが、動物関係学においては世界でもトップクラスの知識&現場のノウハウを持っている天才。もうちょっと評価されてしかるべきである。
1999年10月01日(金) 12:00:00・リンク用URL
「むずかしい愛」

amazon副題は「現代英米愛の小説集」。
スティーブン・ミルハウザーやレベッカ・ブラウンをはじめとしてウィリアム・トレヴァー、ヘレン・シンプソン、グレアム・スウィフト、ウォルターモズリイ、V.S.プリチェット、ジョン・クロウリーと、日本ではマイナーな作家たちの短編を集めたもの。
テーマは題名通り「むずかしい愛」。つまりは普通でない愛の物語だ。
冒頭のレベッカ・ブラウン「私たちがやったこと」が特にいい。いつも一緒にいるために片方は耳を焼き、片方は目をつぶした恋人達の物語。そう、そんな「変な愛の物語」がいっぱいつまった本なのだ。いや、愛はいつもどこか欠けている方が強くなる。そういう意味では「強い愛の物語」とも言えるかもしれない。
編者は信頼する柴田元幸。彼が訳したものはハズレがない。ただ、今回はテーマ先行って感じで、ちょっとレベル的につらい短編もあったのも確か。秋の夜の就寝前にじっくりつき合うにはとてもいい本だけど。(p.s. 嶋津ふみさんありがとう!)
1999年10月01日(金) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:小説(海外)
「ボーダーライン」

amazon真保裕一待望の新作。
カリフォルニアを舞台にめちゃめちゃハードボイルドな探偵小説を書き上げた。
日本在住の作家とは思えないその筆致、リアリティ、会話、展開、それぞれ見事であるが、名作「ホワイトアウト」に見られたような「迫力&圧倒的ストーリーテリング」みたいなものが感じられないのは何故だろう。彼の地の気候にも似た乾いた筆致にこだわりすぎたか。細部とストーリーテリングとのバランスが悪いのか・・・。いや、たぶん、後半に出てくる「犯罪者は先天的に出来上がっているのか、それとも教育か、または環境ホルモンか、キレる若者の精神構造はどうなのか」的な長い議論が全体のストーリーを邪魔しているのだ。説明不要な部分に思えたが…?
見事な重層構造でしっかり読ませるのだが、ちょっとだけ理屈っぽすぎるのが弱い。彼自身がいまボーダーラインにいるのかもしれない。
1999年10月01日(金) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:ミステリー
「漂流物」

amazon死後に地獄というものがあるとしたら、こういう生前の醜い想いが漂っている場所のことかもしれない。
この本を読んでそう思った。
短編集だが、著者が吐き出す地獄模様は1ページが10ページ分くらいの密度で読者におそいかかり、読み通すのになかなか力がいる。ある種、私小説であると思うのだが、私小説も行き着くとこういった「心の中の地獄」を描くしかないのだろう。ボクはこの人が書く嫉妬地獄みたいなものを読んでみたい。
1999年10月01日(金) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:小説(日本)
「バスにのって」

amazonコミマサがいろんなところに発表した日記風エッセイを一冊にまとめたもの。
別にバスを主題の紀行エッセイではない。
その脱力した文体は実にさばさばしていて読みやすく、読者を気持ちよく弛緩させてくれる。
なにせ内容的に何もなく(そこがいいのだが)、ヒトに薦められるかと言われればノーなのだが、ボクはこのコミマサ・ワールドを至極楽しんだ。あとがきで「これでおしまいかもしれない」などと弱気を書いているがまた書いて欲しいな。ダラダラと。こっちもダラダラと読むからさ。
1999年10月01日(金) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:エッセイ
「錆びる心」

amazon1997年の冬に出た短編集。
初出が94年から97年夏な短編たち。
名作「OUT」が97年7月発売だから、ちょうど「OUT」を書いている頃に書いていたわけですね。
うーん。「虫卵の配列」とか「羊歯の庭」とか面白いものもある。が、面白くないのも半分くらいある。まだレベルが確立されてない頃なんだろう。この著者がこのあと「OUT」だの「柔らかな頬」だのを書き上げるとはちょっと想像つかない部分もある。
たぶん「さすがにうまいな」と構成でうならせるような短編作家ではないのだ。それよりもディーテイルの積み重ねで語り尽くす長編作家なのだろう。切りつめるよりも膨らませる方がうまいタイプの人。とりあえず現在はそうであるようである。
1999年10月01日(金) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:小説(日本)
「ぼくの哲学日記」

amazonボクにとって森本哲郎は青春である。って、変な青春ではあるが、著者の「ことばへの旅」「ゆたかさへの旅」「生きがいへの旅」などの一連の著作は中学生だったボクの生きる指針だったりしたのだった。これぞ熟読!って感じでしたね。再読もしつこく重ねたし。特に「ことばへの旅」シリーズで出てくることば達はボクの中で熟成発酵して、いまのボクを形作っていると言っても過言ではない。
その著者の最新作。
相変わらずの森本哲郎節は衰えず、たいへん懐かしく読んだ。でもさ「相変わらずすぎる」感はある。70歳を越えて著者はどう変わっていったのか、が読みたい。万年哲学青年っぽい感じは嫌いではないが(はっきり言って好ましいが)、昔熟読した人間にとっては「えー、またそれー!」って感じなのだ。仕方ないし、それも「芸風」ではあるのだけれど。
1999年10月01日(金) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:哲学・精神世界
「恋」

amazon直木賞受賞作。
前から読もうと思っていた本だが…、ボクには合わなかったようだ。つまらなかった。そうか、これが巷で言う「小池文学最高峰」なんだ、とか思ってしまった。
明治時代の小説を読んでいるような古くささがあったのは何故だろう。
浅間山荘事件前後の時代をシチュエーションとしてわりと描きこんでいるわりには、その頃の昭和の気分が浮かび上がってこない。恋自体の内容もどこかシンパシーを感じにくいもの。結末の付け方もいまひとつのらない。エピローグはわりと好きだが、でもなー、なんだか全体にもうひとつだったのだった。著者をこれだけで判断するのはなんなのでもうちょっと読んでみたいが、でもやっぱりボクには合わないままな気がする。
1999年10月01日(金) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:小説(日本)




