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1999年09月

LV5「白夜行」

東野圭吾著/集英社/1900円

白夜行
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ボディブローのように効いてくる作品だ。
ミステリーとしてもよく出来ているし登場人物の造形は見事だし土地の体臭みたいなものまでしっかり描かれていて感心させられるが、なにより主人公の二人の本当の関係をわざと描かず外堀から浮かび上がらせたその筆力が素晴らしい。

読後しばらくしてから彼らの苦しみみたいなものがじわじわ心の中に溢れ出す。読み終わった瞬間はちょっと物足りなさを感じるが、読者の読後の想像までへも著者はしっかり伏線を張っているのに後で気がつく。わざと答えを書いていない伏線などが読後に効きだすのだ。こういう頭の良さにボク弱いです。

前作「秘密」は映画化されたりして相変わらず評判だが、ボクはそんなに好きではない。でもこの「白夜行」はいいなぁ。辛気くさい題名だがこれも読後に納得が行く。手を取り合って白夜を行くふたりの姿が瞼の裏から離れない。削ぎきった文体も見事。そのうえすごいのは筋自体も削ぎきっているところ。うーん。こりゃ大化けする作家かも。直木賞も行けるのでは?

1999年09月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV5「路地裏」

梁石日・黒田征太郎著/アートン/1500円

路地裏
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あまり語られることのなかった黒征の一生がきっちり本人の口から語られている。
それだけでも個人的には買い。梁石日(ヤン・ソギル)についてはまだ著書を読んでないから思い入れがないのだが、著者ふたりの体臭みたいなものがしっかり匂ってくる対談・エッセイ集で、ボクはとても興味深く読んだ。いや、興味深いなんてもんじゃない。かなり刺激を受けた。

文章の端々に彼らの根っこが見えてくる。彼らの行き方の骨みたいなものが浮かび上がってくる。「ろくでもない人生」を精一杯「おもしろがって生きている」彼らの背筋の伸び方にうらやみを感じない人はいないだろう。ボクは嫉妬した。でも「まだ間に合う、まだやれる、まだ追いつける」とも思った。黒田征太郎は60歳。20歳以上年上である。20年あったらなんでも出来る。20年後を見ていろよ。久しぶりにめちゃめちゃ前向きにさせてくれた一冊。

1999年09月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:対談 , 自伝・評伝

LV3「T.R.Y.」

井上尚登著/角川書店/1500円

T.R.Y.(トライ)
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「横溝正史賞史上最高傑作!」と帯にある。
うん、確かに面白かった。でもこれが圧倒的に最高傑作とされてしまう横溝賞って……?って感じは残るなぁ。

革命に翻弄される詐欺師の物語なのだが、その詐欺のプロットは見事だしキャラ造形も上手。なのになぜかあまり印象に残らない。文体かなぁ。主人公にいまいちカタルシスを感じられない部分かなぁ。ストーリーの面白さと細部の存在感がどこかで乖離している気がするのだ。それと、革命につきものの「恋」の部分がないのが物足りない。ここにも主人公にのめり込めない要因があるのかも。

それともうひとつ。題名はもともと横溝賞に応募した題名「化して荒波」の方がまだいいかも、と思った。「T.R.Y.」では何もわからない。何も伝わらない。ちょっと残念。

1999年09月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV3「東京恋人」

おちまさと他/フジテレビ出版/1980円

東京恋人
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TX系深夜番組[東京恋人]の写真集。
テレビはほとんど見ないのでこの番組も知らないが単純に写真集として立ち読みして、衝動買いしてしまった。一昔前に「東京スタイル」というリアルな写真集が流行ったが、その恋人版、みたいな感じかな。

トレンディドラマみたいな格好良さはまるでないけど、その分リアリティがあるいまどきのカップル数組。
少ないページ数に凝縮されたその刹那的生活は、なんというか少しの羨ましさも手伝ってかわりとじっと見せてしまう力がある。ジジイみたいな言い方になるが、はっきり言って世代の違いを感じてしまうし彼らの行く末を心配もしてしまう。が、逆に一方でこういう刹那感みたいなものこそ貴重ではないか、これはとても正しい人生なのではないか、と感じるボクもいる。

なんだか日本も大丈夫だという気になって来ちゃったよ。全然そういう写真集じゃないんだけど。ボクにとってはとても不思議な存在感がある写真集なのだ。

1999年09月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:写真集・イラスト集

LV2「カープ島サカナ作戦」

椎名誠著/文春文庫/448円

カープ島サカナ作戦
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週刊文春に連載しているエッセイ「新宿赤マント」をまとめたシリーズの最新刊。

わりと文春は読んでいるからここに収録されたものもほとんど読んでいたが、海外出張の友としては軽く読めるので助かるのだ。
そう、椎名は海外出張にとてもいい。読み捨てられる上にテンションが上がるのだ。話題も縦横無尽に広がるし、文体も気分も安定しているし、なによりも面白いから。マンネリという声もこのごろある。が、著者はマンネリを一番畏れているみたい。文体の節々にそれを感じる。で、椎名誠はそれに成功しているとボクは思うぞ。こんなに多作なのに、たいしたものなのだ。

1999年09月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ ,

LV1「いつでも会える」

菊田まりこ著/Gakken/950円

いつでも会える
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「1999年度ボローニャ児童賞・特別賞受賞」な絵本。

飼い主が死んじゃった犬のお話で、要は死んじゃっても「いつでも会える」ということですね。
子供に死を教えるにはいいのかもしれない。絵もいいし途中の展開はなかなか泣かせる。でも(これは好みによるのだが)ファンシーすぎてちょっと…。ボクには合わなかったようだ。「葉っぱのフレディ」みたいな教訓的さはもっと嫌いだが、これはこれで甘ったるすぎ、かな。それとも、ちゃんとあたたかくこういう本を読めないくらい心が荒廃しているのか。
というか、こういうオッサンは読者ターゲットじゃない、ということだと思う。残念っ。

1999年09月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:絵本

LV1「ウナギの科学」

小澤貴和・林征一著/恒星社厚生閣/2500円

ウナギの科学―解明された謎と驚異のバイタリティ
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副題に「解明された謎と驚異のバイタリティー」とある。

まぁウナギ学の最先端がここで読めるわけだ。
こんなにポピュラーな魚なのにほとんどその実体が解明されていないことで有名だったウナギだが、なるほどなるほど、こういう魚だったのね。でも・・・かなり興味がある人でないと読めない。ほとんど学術論文。かく言うボクも興味のある項を拾い読みしただけ、かも。寝る前の睡眠薬にはなったのだけど。

それにしても、魚の中で最も硬い、というウナギの生身、一度囓ってみたいなぁ。ゴムと同じ硬さだというから噛みきれないのだろうけど。

1999年09月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:科学 , 食・酒

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