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1999年03月

LV5「ライン」

村上龍著/幻冬舎/1500円

ライン
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99年1月に読んだ「ワイン 一杯だけの真実」で散文が到達しうるある境地まで達してしまったと思われる村上龍。
この「ライン」も、同じようにとんでもないレベルに達した技術をもって現代日本というこの「特殊に寂しい社会」をさらりと浮き彫りにする。くどいほど濃い文体で書いていた頃に比べれば関西ダシのような薄さなのだが、それがある一線を越えてしまった表現レベルの証である。

TVケーブルや電話線などの「ライン」を通る情報が見えてしまうユウコという女性を象徴に、ラインは見えるけど中には入り込んでいかない寂しい人間関係を次々とつなげて書いている。表現手法は「パルプフィクション」的ですごく新しいというわけではないが、主題を描くのにこれ以上の構成はないだろう。

著者のあとがきが秀逸。
「文学は言葉を持たない人々の上に君臨するものではないが、彼らの空洞をただなぞるものでもない。文学は想像力を駆使し、物語の構造を借りて、彼らの言葉を翻訳する」。

そういう意味で、翻訳は見事に成功していると言えよう。少なくともボクには彼らの言葉が聞こえてきている。そして胸が悪くなるような感慨を著者からいつも得ている。空洞をなぞっているだけの文学が多い中、著者の一歩つっこんだ表現レベルには文字通り恐れ入っている。

1999年03月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV5「日本フォーク私的大全」

なぎら健壱著/ちくま文庫/760円

日本フォーク私的大全
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60年代~70年代に若者達が持っていた唯一の言語「フォークソング」。
その創世記からずっとフォーク界にいる著者がエピソード満載で書いた「内部から見たフォーク史」である。

高石ともや、高田渡、遠藤賢司など、そのころを少しでも知っている人には懐かしすぎる名前がどっさり出てきて、いつしか読者は中津川フォークジャンボリーの会場にいたりするのである。フォーク大全としながらも著者の半生記になっているところもなぎら健壱っぽくて好ましい。
とにかく知ってる人ほど楽しめる名作だ。コレクターでもある著者のジャケット・コレクションも見事。

1999年03月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:音楽 , 自伝・評伝

LV5「死ぬの大好き」

山本夏彦著/新潮社/1400円

死ぬの大好き
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山口瞳の「男性自身」亡き後、週刊新潮の良心と言ってもいい長寿コラム「山本夏彦の写真コラム」の何回目かの単行本化。

まぁ長いこと愛読しているコラムで(週刊新潮はコレを読むために買うことが多い)、わざわざ単行本を買わなくても大体内容は知っているのだが、こうしてまとめて読むとまたいろいろ目をこするところがあって、精神を平明・公平・明鏡に保つだめにはやっぱりたまには山本夏彦をまとめ読みする必要がある、と実感するのである。

山本夏彦とか曾野綾子とかは、ボクのような定見のないものにとっては薬である。定期的に服用したほうがいい。もちろんすべて効くとばかりは言えないのだが、自分の視点を持つきっかけを作ってくれるのだ。

1999年03月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

LV4「満天の星 〜勇気凛凛ルリの色」

浅田次郎著/講談社/1600円

満天の星―勇気凛凛ルリの色
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週刊現代に連載していたエッセイ「勇気凛凛ルリの色」の四巻目にして完結版。
「鉄道員」以来どうにも作風・方向に納得行かない浅田次郎だが、エッセイは三巻目の後半から復活していて、とても充実したものだったから終了はちょっと残念。

このエッセイ集の中に「ひとりでも多くの人に、小説を読んでほしい。むろん私の小説を、という意味ではなく、テレビも映画もいいが小説という娯楽を持ってほしいと思う」「『読む人だけが読めばよい』という作家の姿勢は小説をいずれマニアックな、特殊な文化に変形せしめる」「すぐれた芸術は常に大衆とともにあり、そうした普遍性のない芸術はまがいにちがいないからである」といった展開がある。
彼が一部古参浅田ファンや評論家に誹られながらもお涙頂戴的極甘小説を書き続ける理由がやっとわかった。彼は直木賞作家として小説を復権させるため、わざと「大衆に求められるもの」を書き続けているのだ。

そしてそれは成功しつつある。うちの母まで読んでいる。すごいことだ。
彼の感涙小説を酷評ばかりしたボクだが(そしてこれからも急に評価をあげることはないかもしれないが)、そのことについてはめちゃくちゃ認めます。偉い、浅田次郎!

1999年03月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

LV4「Me キャサリン・ヘプバーン自伝」

キャサリン・ヘプバーン著/芝山幹郎訳/文春文庫/上733円下667円

Me―キャサリン・ヘプバーン自伝〈上〉
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名実共にハリウッドの女王、大女優キャサリン・ヘップバーンが書いたある女の一生。

努力家なのだな、上巻から下巻に移るあたりからきっちり自伝のコツを掴みだして、非常に文章がうまくなってくる。下巻なんか自伝の文章としては出色なる出来だと思う。
ただ、自分の人生を辿る、という意味よりはよりエッセイに近くなってきていて、この大女優の人生を正確に辿りたい人には不満が残るかもしれない。記録という意味ではね。まぁそれは彼女の死後にでも伝記作家が書くだろうからそれまで待ちましょう。

これだけの大女優なのに、日本ではいまいち人気がなかったんだよなぁ。公開作もすぐに消え、ビデオもそんなに手に入らない。でも、若干の演出やウソはあるにしても、いい人生を送ったよ、キャサリン・ヘプバーン。あの頃の映画のエピソードはもちろん山ほど出てくるので、映画好きな人は読んで損しないと思う。久しぶりに「旅情」とか「アフリカの女王」とか観たくなった。

1999年03月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:自伝・評伝 , 映画・映像

LV3「歌謡界一発屋伝説」

宝泉薫編著/彩流社/1200円

歌謡界「一発屋」伝説
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いつか誰かにやって欲しいなぁ…誰もやらなかったら自分でやろうかなぁ、と思っていた企画。やっと出たか、という感慨だ。

70年代・80年代の一発屋たちをテーマ別に取り上げ詳しく検証している物で、題材によっては突っ込み不足と思われるが(ボクみたいなオタクに言わせると、だけど)全体的にはとてもよく出来たバランスいい仕上がりだ。
詳しすぎる人には不満だろうけど、上手に一般向けになっているのだ。ただ、じゃぁ詳しい人より一般人の方が買うのか、と言うとそれは違う気もするので、もっともっとマニアックに走ってみても良かったかもしれない。

とにかく、懐かしくなってしまってカセットを家捜しして聴きまくってしまった。

1999年03月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:音楽 , 雑学・その他 , ノンフィクション

LV3「入浴の女王」

杉浦日向子著/講談社文庫/467円

入浴の女王
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簡単に言うと「全国銭湯巡りエッセイ」である。
銀座金沢新潟大阪…とにかく街に密着した銭湯を味わいその街のエッセンスをしっかり栄養としていく道中。文章は独特のリズム感。ここまで著者に蕩々と遊ばれちゃうとなかなか読んでいて気持ちがいい。特に酔って浸かって騒いだあげく、ふやけきった文章を書いている部分がところどころにあるのだが、これがまたいい。行間に湯気・色気まで漂ってとってもぬくもるのである。
別に「銭湯を無くすな」と声高に叫ぶことはしていないしそういうつもりもないのであろうが、読み終わったあとの「銭湯衝動」は結果的に銭湯保存に役立つだろう。

ちなみに銭湯は小学生以来行っていない。子供を共同風呂に慣らすためにもちょっと行ってみようかな、と思って調べてみたのだが…、歩いていけるところにはないようだった。減っているよねぇ。

1999年03月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ ,

LV2「アジア菜食紀行」

森枝卓士著/講談社現代新書/640円

アジア菜食紀行
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インド、中国、ベトナム、タイ、そして日本…。文字通りアジアを菜食という切り口で旅して調べた労作。

紹介ば多くちょっと総花的なところはあるが全体としてわかりやすい。世界でも異色の菜食文化が育ったアジアがゆっくり立ち上がってくる。ただ、ちょっと文章が生真面目すぎるのが難かな。著者の驚きが伝わってこないのだ。

ジャイナ教の厳格なる菜食主義はタマネギなど、根の植物も「食べることによって植物を殺すから」食べない、というのは知らなかった。この、殺さずに「分けてもらう」という思想から見た菜食と自身の健康目的だけの菜食との隔たりは大きい。

1999年03月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒 ,

LV1「またたび回覧板」

群ようこ著/新潮文庫/476円

またたび回覧板
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群ようこって、相性悪いのかな。
一作くらい(題名忘れた)すっげー面白いのを読んだ気がして、それ以来たまに読むんだけど、なんだか当たらない。でもこんなに人気がある。男にはつまらないタイプのエッセイなのか? 
日常密着型エッセイとしてはまとまりもいいし親密感もあるんだけど、どうも気持ちがはじけない。まぁ新幹線とかで読み飛ばすには最適ではあるんだけど…、電車を降りた途端に内容を忘れてしまうなぁ…。

1999年03月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

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