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1998年11月

LV5「悪意と憂鬱の英国式週末テニス」

マデリーン・ウィッカム著/岡田葉子訳/早川書房/2200円

悪意と憂鬱の英国式週末テニス
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なんとなく表紙と題名に惹かれて買ってしまったボクはご多分に漏れず英国好きなんだけど、これは大当たり本でした。

ただ、惹かれたくせに言うのはなんだけど、邦題はどうなんだろう?(原題はThe Tennis Party)
内容を表していないし妙にシニカルにしすぎる。実際の内容はもっともっと奥深いし、「善意と爽快」も随所にある。

昔ロンドンの同じ通りに住んでいていまでは境遇がいろいろに変わってしまった数組の夫婦が久々に週末のテニスパーティに集まって愛憎を繰り広げる…という感じのストーリーなんだけど、何より面白いのは彼らの内面描写。ある意味人間の本質である「イジワルな本音」がこれでもかと出てきて、キレイゴトに満ち溢れた小説が多い中、実にすっとする。おすすめ。

1998年11月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(海外)

LV5「クリスマスのフロスト」

R.D.ウィングフィールド著/芹澤恵訳/創元推理文庫/880円

クリスマスのフロスト
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94年の文春ミステリー第1位作品だから、何を今更って思う方もいらっしゃるでしょう。

でもこれミステリーで1位を取るってイメージではないなぁ。警察小説ではあるけれど特に推理に目を見張るわけではないし、複雑ではあるけどミステリアスな部分はそんなにないし。
ただ、面白さは抜群。主人公のフロストをはじめとする魅力的な登場人物たち、ぐんぐんひっぱるストーリー、ある意味でとってもイギリス的な筆致など、楽しめる要素に満ちている。ちょっと散漫な部分が随所にあることはあるんだけど、全体の勢いが読者を引っ張るタイプ。今年出た第二作をすぐに読もうと思わせる。

あ、そうそう、この物語、なんと「結末」から始まるんだけど、それが逆に複雑な全体をシンプルに見せていて成功している。緊迫感と期待を持って最後まで突っ走れるのだ。作者はなかなかの才人だ。

1998年11月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV5「イエスの遺伝子」

マイクル・コーディ著/内田昌之訳/徳間書店/1800円

イエスの遺伝子
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確かに新人作家とは思えない構成力とドラマタイズ。
読者は著者の思うがままに引っ張り回される。分野的には遺伝子ミステリーみたいな感じだろうか、遺伝子という切り口から見た救世主の姿がとっても新鮮だ。たぶん発想のもともとはそこだと思うが、そこからここまで楽しめるミステリーに仕立て上げるとは並々ならぬ力量だと思う。

物語半ばまではその新鮮さと筋立ての巧みさに惑わされてめちゃめちゃ楽しめる。
が、後半はちょっと疑問。まず主人公が都合よく助かりすぎるし、結末の砂糖菓子みたいな甘さも気にくわない。この甘さがあるからこそ「ディズニーで映画化決定!」となるのだろうが、なんだかJ.P.ホーガンがときおり見せるような底なしの性善説で終わっているところがいかにもアメリカ的でちょっと白けてしまう。ま、とはいえ、抜群に面白かったのですけどね。

1998年11月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV5「表現者」

星野道夫著/SWITCH LIBRARY/3200円

表現者
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星野道夫の死に捧げるオマージュ本。
400ページにも及ぶ長大な弔辞のようなもの。まぁ写真がたくさん掲載されているからすぐ読めてはしまうけど。

星野道夫を好きだった人なら時間を忘れて楽しめるだろう。
「ひとりの人間が亡くなることは、ひとつの図書館が焼け落ちること」 文中に彼の言葉としてこんな言葉が紹介されているが、まさにそう言わざるを得ないような彼の死であった。

彼の死を悼む人達と、しばし一緒に語らいたい。そんな読者にはうってつけの本。まぁ難を言えば題名がどうだろう。彼なら、こういう含羞がない言葉を、使わなかったと思う。

いい言葉に出会った。著者の好きな言葉だったらしい。「人生とは、何かを計画している時起きてしまう別の出来事のこと」~Life is what happens to you while you are making other plans.

1998年11月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル: , エッセイ , 写真集・イラスト集

LV5「不夜城」

馳星周著/角川書店/1500円

不夜城
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初版が96年。ずっと評判であり続け、映画化もされ、いまだに売れている新宿を舞台にしたハードボイルド。

いまさらだなぁ、と思いながら、やっと読んだ。一読面白い。特にラストなど甘さのヒトカケラもなくショッキングだが、こうでなくっちゃという想いも強い。まぁ全体に好きだな。でもなぁ、なぜか続編を読む気にならない。もうお腹一杯だ。
なぜなんだろうと考えるんだけどよくわからん。「生き残る」という強い欲望を物語の縦軸に感じるのだが、その動機付けが全く見えてこないからかな。本能だよ、と言われればそれまでなんだけど、もう少しそこにカタルシスがあったら(たとえば主人公の過去設定とかで)もっと感動があったかもしれない。

1998年11月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV5「メニューは僕の誇りです」

斉須政雄著/新潮社/1600円

メニューは僕の誇りです
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東京は三田のフレンチの名店「コートドール」料理長である著者が書いた第二作目。

前作「十皿の料理」はシェフが書いたエッセイとしてはベストと呼べるものだが、今回も味わい深く楽しめた。文体が素っ気なく素朴で稀薄なのだが、コートドールの料理の演出と似ていてなんだか微笑ましい。シェフの人柄が出ていてあの店に行ったことがある人ならとても楽しめると思う。

あとがきで「前作と多少のダブりがある」と書いてあるが、ボクとしてはもっともっとダブってほしかったところだ。
前作が出てずいぶんになるし読者も同じとは限らない(既読の読者だって前作の内容を覚えているとは限らない)から前の本と合体させるくらい繰り返しが多くても読者は喜ぶと思うのだ。というかはしょっている部分がわりと興味深いところだったりするので(フランスでの体験など)、前作で言及しているのかもしれないがもっともっとそこを読みたくなるのである。そういう意味でちょっと消化不良が残るのが残念。

それにしても、同じように自分のメニューのことを語っているのに、数カ月前に読んだあるシェフの本とはどうしてこうも読後感が違ってくるのだろう。料理への姿勢の違いなのであろうか。

1998年11月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒

LV4「野崎洋光の和食でおもてなし」

野崎洋光著/光文社/1500円

野崎洋光の和食でおもてなし―こうすれば上手にできる16のコツ
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名作「美味しい方程式」を出した「分とく山」の野崎氏による丁寧で温かい料理本。

この著者のいいところは前作と変わらない。わかりやすく丁寧にすべてのコツを開陳するところだ。
多くの料理本は、料理数を競うことに汲々としているせいか、「なぜそうするのか」の視点が決定的に欠如している。彼の本は料理数を最低限に絞ってでもその部分の解説にページ数を割き、出てくる料理も応用が利くものを選んでいる。だから読んでいて目からウロコが一杯。彼が丁寧に書くコツをゆっくり読んでいるだけで、「料理とはいったいなんなのか」みたいな大きな地平までもが見えてくる。

1998年11月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒 , 実用・ホビー

LV2「さぬきうどん全店制覇攻略本」

TJ KAGAWA/1200円

さぬきうどん全店制覇攻略本名作「恐るべきさぬきうどん」シリーズの第4作にして別巻という位置づけか。宝探しにも近い「製麺所・セルフの店・一般店」を香川県全域にわたりほとんどすべて地図に落したという労作。その苦労と情熱にはぜひとも三ツ星を差し上げたいが、なんというか、ちょっとこの企画はやめてほしかったかも。こうして詳細地図になってしまうとさぬきうどん巡りの魅力のひとつである「迷う」という部分が消えてしまうのだ。え、読まなければいいって? んー、まぁそうなんだけどねぇ…。
まぁTJ KAGAWAがやらなければどこかがいずれやっていたかもしれないから、しょうがないかな。超便利だし。ただし、お店の一覧で麺通団としてのひと言コメントをもっとしっかり載せてほしかった。

1998年11月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒 ,

LV2「ミネラルウォーターで生まれ変わる」

早川光著/マガジンハウス/1300円

ミネラルウォーターで生まれ変わる
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ボクが水に凝る原因となった本。
おかげで家ではヴィッテル、外ではエビアンが必需品になってしまいました。「単なる水」としか思っていなかったミネラルウォーターだけど、成分を見ていくとこんなに効果の違いがあり、カルシウムを取るにしてもマグネシウムとのバランスだと牛乳よりも優れた飲料なんだねぇ(もちろん商品による)。しかも煮沸殺菌やフィルター濾過をしていないヨーロッパのものがこれだけ優れているとは。

実はミネラルウォーターを効果的に飲んで8キロやせたという人を知っていて、それもあって買ったんだけど、かなり佐藤家の生活に影響を及ぼしましたね、この本。コントラックスにしようかなぁ…。でもアレちょっと飲みにくいんだよなぁ。カルシウム多すぎて。

1998年11月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒

LV2「アポトーシスとは何か」

田沼靖一著/講談社現代新書/650円

アポトーシスとは何か―死からはじまる生の科学
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副題は「死からはじまる生の科学」。
アポトーシスという言葉はなんとなく聞いていたけど、友人の薦めでこうして読むまで意識して感じたことはなかった。生の中に死は含まれる、という命題で本を書く作家は多いが、実際に細胞レベルで生と死が共存しているとは驚きだ。

アポトーシスとは「細胞が積極的に死んで行くこと」。
自らの意思で死を選ぶ細胞がいるのだ。この本はその発見とそれによる癌・AIDS・アルツハイマー治療最前線の話とともに、生(性)と死の哲学が語られている。難しいが興味深い本だ。特に興味深いのは第8章「死から生をとらえなおす」。死をちょっと違う観点から捉え直し、それによって生を考えるきっかけを与えてくれる。

1998年11月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:哲学・精神世界 , 健康 , 科学

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