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1998年09月

LV5「定年ゴジラ」

重松清著/講談社/1800円

定年ゴジラ
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定年者の気持ちが良く描けている小説である。
うんうん定年したらこう思うだろうなぁというリアリティが非常に感じられる。が、あまりに共感したので「ボクって定年者の気持ちが何でこんなにわかるんだろう」とちょっと不思議になり思わず奥付を見たら、この作者、なんとボクの同年代ではないか。想像力・筆力のすごさに脱帽すると共に「やっぱりボクの年代から見て書いた定年者なんだな」とちょっと納得もした。本物の定年者が読んだらどう思うか、興味があるところである。

もうひとつ面白かったのは「ニュータウン」について非常によく書けているところ。定年者という素材を借りながら実はニュータウン論を書きたかったのではないかと邪推したくなるくらいだ。
全体にとてもよく構成されていて楽しく読める。日本の社会の仕組みそのものが「定年」していく姿が浮き彫りになり、ちょっとせつなくなる。あと、主人公も「さん」づけで呼んでしまうのがなんだか新鮮でした、関係ないけど。

1998年09月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV5「夫婦茶碗」

町田康著/新潮社/1300円

夫婦茶碗
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短編がふたつ入っている。
両作ともに前作を引き継いだタッチで軽快独歩、おもしろい。特にふたつ目「人間の屑」が作者らしくないストレートな表題のわりに快作。過ぎていく時間にメリハリがなく、どの時間も同じように過ぎていく様が著者の文体から見事に紡ぎ出されている。メシもセックスもアソビも、そして「自分」も「他者」も「それぞれの人生」もすべてフラットに描かれ、奇妙なまでにリアルに若者達の生態が切り取られていくのだ。面白い。

村上龍に感じたような「文体自体が何かを語る」という筆力をこの著者には感じる。さすがである。妙に漢字などの取捨選択が古めかしいところも好き。

1998年09月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV5「新ゴーマニズム宣言『戦争論』」

小林よしのり著/幻冬社/1500円

新・ゴーマニズム宣言SPECIAL 戦争論
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終戦の日に読んだ。
彼の「ゴーマニズム宣言」は週刊「SPA!」連載中から愛読していたが、今回ここまでつっこんで戦争を語ったことにまず賞賛を贈りたい。

4月に沖縄を訪れて以来わりと戦争実体験者の本をパラパラ読むことが多かったが、それらを読む前に比べてどんどん「子孫としての誇り」をボクは感じるようになった。戦争が悪いことだとかどうだとか言う前に、国を想って戦った彼らをきちんと敬うべきだし、彼らが死を賭して守ろうとしたものをボクたちはもっと大事にしなければならない。著者はその想いを平明に語ってくれたと思う。

後半部はかなり自分に酔ってしまった部分があって破綻している気がするが、前半部は(その内容については反対意見を持つ人の本を読んでからボクなりに判断したいと思うが)目からウロコの部分もあった。
著者の感情のエスカレート具合が読んでいる人をちょっとひかせるのが残念だし信頼性を落しているところなのだが、「想い」は充分伝わった。それをボクがどう消化するか、である。

1998年09月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際 , 漫画

LV3「居酒屋野郎ナニワブシ」

秋山鉄著/新潮社/1500円

居酒屋野郎ナニワブシ
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つぶれる予定の居酒屋へ仲間がひとりふたりと集まってきて再起をかける、みたいなストーリー。
筋はまぁ結末が最初から見えているとはいえ、なかなかおもしろい。が、全体にもうひとつ乗れなかった。こういうストーリーなら一気に読ませるような勢いがあってもいい。というかそれが大事であろう。それがない。徹夜をしてでも読みたくなってしまうようなチカラを感じない。なんでだろうなぁ。イマイチ笑えないギャグがあったり、妙に説明的な描写があったり、中途半端にリアリティがあったりするところだろうか。
うーん。ボクが思うに「主人公に魅力がないんじゃないか」ということだ。出演者の中で一番魅力ないかも。なんだか惜しいのだけど。

1998年09月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV3「ほくそ笑む人々」

曽野綾子著/小学館/1365円

ほくそ笑む人々―昼寝するお化け 第3集
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週刊ポストに連載されている著者の「昼寝するお化け」というエッセイをまとめたものである。第3集だそうだ。週刊ポストは読まないから全然知らなかった。第1、第2集は読んでいない。

おなじみの曽野綾子節である。平明に冷静に、凝り固まっている精神をほぐしてくれる。
ただ、日本財団の理事長になってからどうしてもその「節」に嫌味が出てしまう。著者はこの「読者との乖離」に気がついていないようだ。いや、それを責めているのではない。第三者的にものを見て書く側から「実際に手を使える立場」に回ったんだから、口調・文体に変化が出るのは当然。どんどん動いてほしい、と思う。書き物すると守りに入っちゃって動きにくくなるところがあるから、たとえばエッセイとかしばらくやめたらどうだろう。

1998年09月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:

LV2「最終講義」

実業之日本社/4300円

最終講義
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「実業之日本社 創業百周年記念出版」だそうで、箱入りの立派な本である。
しかも545ページと分厚い。題名通りいろんな分野の有名な教授たち17人の「最終講義」を収録している。ほとんどが録音したものを書き起こしていると思われる。

最終講義はその教授のすべてが表出するもの、と期待し、ゆっくり紐解こうと思っていたが、読み始めたらあっという間だった。
いや、面白くて、というより、専門用語が多すぎて飛ばし読みばかりだったのだ。そう、最終講義とはいえ「講義」だから、例えば沖中教授の講義は内科臨床について詳しく言及したものだし、渡辺一夫教授はラブレーについて滔々と講義する。それを読んで授業を受けてきたわけでもないボクが面白いわけがない。ただ、矢内原教授の講義のように非常に感動的なものもあるから侮れないのだが、なんというか企画としては少々肩透かしを食った、という感じである。

1998年09月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:教育・環境・福祉

LV2「フランス美味の職人たち」

宇田川悟著/新潮社/1400円

フランス 美味の職人たち
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雑誌「danchu」に連載されていた「フランス食ものがたり」を一冊にまとめたものである。

どうもフランスものは気取った題名・文体になってしまうようで、それがボクはいつも気になる。書いている内容はとてもいいのだが、全体に「高級でスノッブな香り」がだだもれしてくるのだ。もちろんそれを望む読者もいっぱいいるのだろう。でも十年一日のごとくそれなので、少なくともボクは飽き気味。な

あ、ここまでは一般論含む。わりと著者の本は読む機会が多いが、この本は嫌いではない。著者も嫌いではない。よく取材して書いてある。が、まぁ、上記のような文句がやっぱりあるのである。どうにかこのへんの「常套内容」を打破してほしい。

1998年09月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒

LV1「タレント文化人100人斬り」

佐高信著/現代教養文庫/640円

タレント文化人100人斬り
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実名を出してとにかく一刀両断、斬りまくっている。
少し品のない斬り方なのだが、特に人気がある人については容赦がないようだ。じゃぁそれが爽快かというとちょっと湿度が高い斬り方なので読んでいて辛くなるのも事実。ウェットで蒸し蒸しするのだ、読んでて。

こういう本をどう評価すればいいのだろう。ただ、物事や人を裏から表からいろんな切り口で眺め回す訓練にはなると思う。
ボクがなんとなく一方的に認めていた人々の「気付かなかった一面」に平明に言及しているところもあり、あー、そりゃそうだ、気がつかなかったよなー、ちょっと洗脳されてたよなー、みたいに感じることがあったのも事実だし。

ただのその人批判に終わらずに(背が低いみたいなところまで言及して責めたりしている)建設的な論議に発展していると読んでてもうちょっと楽しかったと思う。あ、こういうゴシップ系評論自体を楽しいと思う人もいっぱいいるか。ならまぁいいけど、書き方にもう少し品があればうれしい。

1998年09月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:評論

LV1「カラ」

J・F・ガーゾーン著/沢木耕太郎訳/小島武画/新潮社/1359円

カラ―孤独なハヤブサの物語
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「かもめのジョナサン」を彷彿とさせる、あるハヤブサの意識革命の本である。副題は「孤独なハヤブサの物語」。
雑誌「シンラ」の創刊号で全訳が載ったもの。沢木耕太郎が訳しているという理由で購入。読んでみて…、「失敗」でした。寓話として出来がいいとは思わない。よくあるオモワセブリな作品である、とボクは思う。

しかし沢木耕太郎、あとがきでも書いているが、原作者の冒頭の一節を「こうした文章はこの作品の純一さと透明感とを損なうだけ」と判断して削除している。訳者がそんなことしていいのだろうか? 確かに訳者の判断で文意を変えることは可能だろう。だが、一節まるごと削除していいのだろうか?  「・・・を損なう」なんていうのは読者が読んで判断することだ。訳者は与えられた権限範囲で美しく個性を出せばいいと思う。

1998年09月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(海外)

LV0「ゴミと化学物質」

酒井伸一著/岩波新書/660円

ゴミと化学物質
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1カ月もの間、睡眠薬代わりに重宝した。
ダイオキシンやら環境ホルモンやらシュレッダーダストやら、こちらとしては「知る気マンマン」な内容なのだが(だから買ったのだが)、まったくアタマに入ってこない。こういう学術書をコンパクトにまとめたようなものを「普及版としての新書」に入れる意味がどこにあるのであろうか。もっとイイタイコトを整理してわかりやすく語れる著者に同じテーマで書かせるべきである。ボクがおバカなせいもあろうが、あまりに総花的、あまりに専門用語の羅列すぎ。な~んにもしらない読者にわかりやすく伝えるのが著者の役目だと思う。というか、著者は悪くなくて編集者が悪いのかもしれない。
やっと読み終えた今でもアタマの中はまったく整理されていない。結局、環境ホルモンってどういう風に残留するんだっけ?

1998年09月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:教育・環境・福祉

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