1998年07月
「ユーコン漂流」

amazonアラスカのユーコン川をカヌーで下った著者のエッセイ。
on my own、つまり自分の幸福も不幸もすべて自分のせい、という著者の姿勢がすべての行間に滲み出ており、読者は彼とともに長い孤独の川を行くことになる。
安心できるのは、著者自身、孤独についてストイックではないこと。淋しくなったら淋しいと言い、長く何週間もアラスカの村にとどまる。孤独に縛られる修行のようなカヌー行でないところがいいではないか。自然である。そこらへんが著者の真骨頂であろう。
彼の本を読むと「人間の実力とはなにか」というような想いにいつも駆られる。サバイバルという意味の実力ではない。性別、国籍、実績、肩書きなどをすべて取り払ったときに残る裸の人間としての実力…。そして自分を見返して見たとき呆然唖然…。これを思い知るために、またボクは野田知佑を読み返すのだ。
1998年07月01日(水) 12:00:00・リンク用URL
「沖縄いろいろ事典」

amazon「とんぼの本」シリーズの一冊。大変良く出来た沖縄事典。
ナイチャーズとは「ナイチャー」(内地のヒト)から来ている。そう、沖縄に住んでいない人々が書いた沖縄である点がこの本の特徴であり成功点であろう。内地から見た沖縄を縦軸に、沖縄に対する遠い憧れを横軸に、とても豊かな沖縄紹介がなされている。
寄稿している人もなかなかバラエティに富んでおり、各項目の紹介の仕方も自由闊達。これは事典というより沖縄についての読んで楽しいエッセイ集だ。アタマから最後まで楽しく読み通せる。こういう百科事典、できないだろうか。
1998年07月01日(水) 12:00:00・リンク用URL
「絶対音感」

amazon素敵な出だしを持つノンフィクション。
絶対音感について様々な角度から調べてあり労作である。
が、評判ほどには面白く感じなかった。いや、面白くはあったのである。絶対音感というものに対する認識も新たに出来たしそれについて何日も夫婦間で話題になったりした。いろんな意味で良く出来たルポタージュであると思う。
ただ、絶対音感がある人の哀しみだったり、絶対音感がない人の苦労だったりを、人間ドラマとしてもう少し読みたいと思うのはボクだけだろうか。全体に優れた報告書ではあるがいまひとつ血が通っている感じがしない気がする。人間のヒダヒダに触れる部分の突っ込みがもう少し欲しいと思った。
1998年07月01日(水) 12:00:00・リンク用URL
「オードリー・ヘップバーン」

amazon副題に「永遠の妖精。その真実の人生を知る伝記決定版!」とある。
ヘップバーン・ファンなら誰しも知りたがる彼女のプライベートが書いてあり、各出演映画でのエピソードも満載。それなりに労作であろうが、残念ながら上下巻を通して読んでも彼女の生身の姿は浮かび上がってこなかった。
エピソードを充実させようとするあまりか、出てくる名前が膨大な数に上り、読んでいる方としてはかなり混乱がある。
ファーストネームとラストネームが混在していたりするのもつらいところだ。また、これは「オフィシャルな(遺族が認める)伝記ではない」らしいが、それならもう少し自由に突っ込めるのではないか、と思われる箇所が多々ある。なんかちょっと中途半端な印象だ。
ボクは周辺情報をかなり掴んでいる方なのでわりと楽しめたが、そうでない人にはちょっとつらいかもしれない。
1998年07月01日(水) 12:00:00・リンク用URL
「にんげんのおへそ」

amazonエッセイの名手高峰秀子の新作である。
まだ彼女が生きていて同じ時代の空気をすっていることにとりあえず感謝したい。
行動範囲が狭くなりつつあるのであろう、ちょっと題材に繰り返しが多く新たな視点が少なかったりするのだが、そこはそこ、向田邦子と幸田文と群ようこを足して3で割ったようなその文体の艶でなんなく読者を彼女の膝元へ誘き寄せてしまう。
内容的にはちょっとキレがなくなってきているが、読んでいて心底安心できるエッセイは貴重。また安野光雅の装丁も大変いい。
1998年07月01日(水) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:エッセイ
「過ぎる十七の春」

amazonファンタジー・ホラーとでも呼ぶのだろうか。人里離れた山奥での幽霊もの。十二国記シリーズではまりまくった小野不由美はこういうホラー系もいろいろ書いている。というか、そっちがドメインなのかも。
なにしろホラー嫌いなものでこうしてよっぽど気が進まないと読まない。ということで、今回は気が向いたので手にとった。面白かった。怖さはほどほどでボクにはちょうど良かった。
ただ、人物造形が少々甘ったるい部分がある。でもこれは「講談社X文庫ホワイトハート」という少女向け文庫のためもあろう、仕方がないんだろうな。また気が向いたら他のも読む気になるくらいは楽しめた。
1998年07月01日(水) 12:00:00・リンク用URL
「がんの常識」

amazon先月、腫瘍の疑いを受けた。
結局検査結果はセーフだったのだが、その時のことを日記に書いたら稲岡旦那さんにこの本を勧められたのだ。
初版は97年5月なのでがん最前線というわけにはいかないが、とてもわかりやすくがんの今を伝えている本だ。
著者自身がんを患った医者である。そのため医者の視点に偏らず患者の視点からもがんを眺めており、そこらへんが我々にとってとてもわかりやすい。事例も多く、がんを患った場合の手引き書にもなっておりコンパクトだがなかなか充実している。がんが気になる方は一度読んでみてもいいのではないだろうか。
1998年07月01日(水) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:健康
「日本の居酒屋をゆく~疾風篇」

amazon「ニッポン居酒屋放浪記」の続編みたいな感じである。
もう居酒屋紀行として定着した感があるが、相変わらず臨場感豊かで一緒に旅をしているような感じだ。
ただ、単に居酒屋に飲みに行くだけの旅であるだけに、こう巻が多くなってくるとそれぞれの土地の違い、店の違いが読んでいる側からは眺めにくくなってくる。居酒屋という一幕ものの積み重ねなので、飽きが来ないと言えば嘘になるのだ。このままこの手で行くかどうかを再考するべき時期なのか。いや、まだもうちょっと読みたいかな。微妙に迷う。そんな感じ。
1998年07月01日(水) 12:00:00・リンク用URL
「辺境・近境」

amazon辺境がなくなってしまった時代の辺境旅行記。
重い筆致と軽い筆致を取り混ぜながら、メキシコやらノモンハンやらさぬきうどん(!)やらアメリカやら神戸やらを著者が旅した記録である。時間をかけてじっくり書く小説群については超絶なる比喩や展開を軽々とやってのける著者であるが、このようにわりと軽く書いている本が思いのほか面白くないと感じるのはボクだけであろうか。例えば椎名誠や嵐山光三郎の紀行文を読むとその本を片手に同じところを旅してみたくなる。が、村上春樹のそれはどうもそういう気が起こらない。そこがこの本の問題点かもしれない。
最後の辺境は自分自身の内部だとしたら、村上春樹というヒトにはそこを旅してもらいたいものである。やはり小説が読みたい。紀行文にはあまり魅力を感じない。ちょっと厳しいか。
1998年07月01日(水) 12:00:00・リンク用URL
「メニューの設計図」

amazon著者は東京の有名高級フレンチレストラン「アピシウス」の総料理長。出版社は柴田書店。題名が「メニューの設計図」。こう3つ揃えば、メニューの構築についてのかなり専門的で経験に即した興味深い内容であることが察せられる。少なくとも買う側はそれを期待して1300円払う。
が、残念なことにそれは裏切られるであろう。どういう気持ちでメニューを設定しお客に対してどうアピールしていくのか、という著者ならではの視点があまりになく、一般的なフレンチの話、物価への愚痴、素材への愛などに終始している。もちろん多少深い突っ込みはあるが、それもそんなに目新しい話ではない。メニュー(題名)に偽りあり。そんな感じである。
1998年07月01日(水) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒




