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1998年04月

LV5「闇に浮かぶ絵」

R・ゴダード著/文春文庫/上下各619円

闇に浮かぶ絵〈上〉
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期待のゴダード。いまやトップクラスにフェバリットになりつつある。

上巻はわりと退屈。騙りに騙りを重ねるいつものゴダード節で気が抜けない上に「またかぁ」的ゴダード世界でちょっと読み進むのに根気がいった。

が、さすがゴダード。下巻に入ると一気にジェットコースターである。
息もつかせぬ筆運びに翻弄される。ただ、主人公の存在自体がミステリーのキーであるだけに、主人公の人生的背景を描き込めない構造的欠陥がこの物語にはあり、他の著作に比べて深みが出せなかったのが非常に残念だ。そこらへんの深みが他のミステリー作家とゴダードの差であっただけにちょっと苦しい。
他のゴダード作品に比べると星ひとつくらい劣るかもしれないが、それでも十分三ツ星。上巻で投げ出さないように。

1998年04月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV4「スイングジャーナル青春録~大阪編~」

中山康樹著/径書房/2400円

スイングジャーナル青春録 大阪編
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ジャズ専門誌「スイングジャーナル」の元編集長がその音楽遍歴を中心に書きつづった青春記。
などと聞くと、音楽遍歴のすごさとか自分のセンスの良さとかをひけらかす内容が想像されるが、さにあらず。平明な文章で実に等身大なる快作に仕上がっている。この等身大というのは実はとても難しい技だと思うのだが、著者は嫌味にもならず冗漫にもならず実に素直にそれに成功している。敢えて言えば、ちょっと笑いをとるのが下手みたいだけど。

ただ、「大阪編」とあるように下巻として「東京編」が秋に発売されるらしいのだけど、「このまま等身大だけで終わるんではないだろうな?」とちょっと心配にもなる。雑誌「スイングジャーナル」の編集長としてのボクたちにない視点も(読者とは勝手なもので)求めてしまうからである。「東京編」が待たれる。

1998年04月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:音楽 , 自伝・評伝

LV4「福音について」

浅田次郎著/講談社/1600円

福音について―勇気凛凛ルリの色
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週刊現代連載中のエッセイ「勇気凛凛ルリの色」の第3巻である。

既刊に比べて身近な話題が多く、浅田次郎の世の中への目線を知りたいボクなんかにとってはちょっと食い足りない部分もあった。でもちょうど直木賞をとったあたりの連載が載っているのでなかなかに臨場感はある。新しくひとりの文豪が出来上がっていく瞬間瞬間のシズル感がとてもいい。まぁこれは作者の狙いではないだろうが…。
贅沢を言えば、既刊にあったような例えば沖縄に対する独自の見方みたいなエッセイをもっと読みたい。オーバーワークで大変だろうけど.。

1998年04月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

LV3「腸は考える」

藤田恒夫著/岩波新書/550円

腸は考える
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今月「人間ドック」に行って直腸の検査などを受け、にわかに腸に対する興味がわいて読んだ本。
91年初版だからわりと古い。単なる管のように思われている腸だが、その能力たるや脳に匹敵する自主運営器官だったとは…知らなかったのである。
そのような内容をこれまた非常に平易に書いている。比喩もわかりやすく研究過程も臨場感ある紀行文的な趣で好感が持てる。そして研究者たちのいわば青春記にもなっていてなかなか楽しく読み終えた。こういう平明さは岩波新書をはじめとする新書の真骨頂であろう。とにかく気楽に楽しめる腸能力本である。

1998年04月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:健康 , 科学

LV3「日輪の遺産」

浅田次郎著/講談社文庫/733円

日輪の遺産
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浅田次郎がまだ無名だった頃の旧作である。極道小説以外では初の長編で、いわば浅田次郎の原点的な作品だ。

いまの浅田次郎の技を知っている読者たちにとってはずいぶん稚拙に思える展開と書きっぷりで、同じ原点としても極道小説の原点「きんぴか」には遠く及ばない。それでもまぁ十分面白いあたりがサスガですね。独特のウェットさは見事なものだ。
しかしこれと同じ題材をいまの浅田次郎に与えたら、かなり泣けるものを書くだろうなぁ…。今度は沖縄系の話を書き起こしてくれはしないだろうか。

1998年04月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV3「弔辞」

新藤兼人著/岩波新書/640円

弔辞
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映画監督である著者が、杉村春子、勝新太郎、田村孟、松本清張、岡本太郎、甲斐庄楠音、絲屋寿雄、横井庄一ら8人の思い出をつづる覚え書き的「弔辞」。

しめやかにはならず、かといって大上段に人物論をうつわけでもなく、とにかく静かに淡々と故人を偲んでいる。
そのひそやかなる風情がこの本のイイトコロだ。ひと事で言えば「枯れている」。8人目の横井庄一だけはシナリオの再録という形を取り異質な扱い。でもこれは一番の「弔辞」かもしれない。

1998年04月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:自伝・評伝

LV3「イギリス人はおかしい」

高尾慶子著/文藝春秋/1429円

イギリス人はおかしい―日本人ハウスキーパーが見た階級社会の素顔
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イギリス礼賛の本ばかり出ているし、またそういうのを好んで読んでいるので、たまにはイギリス非難本も読みたいと思い、探して読んだエッセイ。
副題に「日本人ハウスキーパーが見た階級社会の素顔」とあり、帯に「英国ベタ誉めはもう沢山!」とある。なかなか面白そうではないか。

内容は、著者がリドリー・スコット監督の家でハウスキーパーをした数年を中心に長年イギリスで暮らした経験を書いたリアルな英国生活体験記なのだが、スタンスが思ったよりも中立でもう少しエキセントリックなものを期待したボクにはちょっと大人しかった。
が、イギリスのいろんな問題点が一般人の目からきれいに浮き彫りにされており、日本という社会の良さをそれなりに見直す契機ともなる。サッチャー政権に対する批判もかなりしつこく展開されていて、ちょっとサッチャーの政策を調べ直してみたいなぁと向学心をくすぐられたりもした。

1998年04月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ , 時事・政治・国際 ,

LV3「リンボウ先生遠めがね」

林望著/小学館/1600円

リンボウ先生遠めがね
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高尾慶子著の「イギリス人はおかしい」という「本当はイギリス好きだけど今のイギリスやっぱり嫌いよ」という内容の本(ちょっと違うか…)を読んだらなんとなくイギリス好きの大家の本を読みたくなり、続けてリンボウ先生の新刊を読んだ。

ここにはイギリスの話題はほんの少ししか出てこないが、彼が愛するイギリスは「古いイギリス」なのである。そういう意味では上記著者も同じなんだな。
この新刊は著者のいろんな好奇心を気軽な文体で表明しているもの。特に旅における食べ歩きの様が非常にボクの気分に近く面白かった。ただ、全体的にちょっと新鮮味が薄れているのも確かで、好奇心が細かいところ・わかりやすいところに入っていきすぎている気がする。もうちょっと大きな題材、独自の題材に取り組んで欲しいし、それを読みたい。贅沢だろうか。

1998年04月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル: , エッセイ

LV0「サリンジャー」

森川展男著/中公新書/700円

サリンジャー―伝説の半生、謎の隠遁生活
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副題「伝説の半生、謎の隠遁生活」。

高校時代にあれほどのサリンジャー中毒にかかっていなければきっといまのような本好きにはなっていなかったと思うくらいボクはサリンジャーに影響を受けていて、研究書もかなりの数を読んでいるんだけど、そういうボクからしたらこれは「既成評論の単なる焼き直し」であり「新しい発見もなにもない推測本」であり、そのうえ各作品に対する解釈も納得できないものが多いという、なんとも困ったなの一冊だった。ちょっと厳しいけど。
隠遁生活の謎についてはこの本の最後のほうにちらっと著者の所見が述べられているのだが、その「ちらっ」のためにここまで内容を水増しすることはないだろうと思う。全体にちょっと困った。

1998年04月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:自伝・評伝 , 評論

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