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1997年11月

LV5「ホーソンの樹の下で」

林望著/文藝春秋/1524円

ホーソンの樹の下で
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久しぶりに抑えた筆致で書き込んでくれた林望の本格随筆。
著者はこのところわりと軽くエッセイすることが多かったのだが、これをボクはとても残念に思っていた。背筋ののびたしっかりした随筆を書ける数少ない作家だと思っていたからである。
が、今回は題材も文体も切り口も著者ならではのもので、随所で読者をうならせ刺激を与えてくれる。これでエッチでお笑いな題材についても抑えた筆致のまま書いてくれていたらかなりの名作だったのになぁ。そういう題材のときだけ、照れてしまうのか、なんだか急に筆が軽くなるのだ。惜しい! 

1997年11月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

LV5「ひ弱な男とフワフワした女の国日本」

マークス寿子著/草思社/1600円

ひ弱な男とフワフワした女の国日本
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イタタタタ!まったく耳が痛い本である。
優れた日本文明批評であり(日本にいま、文明があると仮定してのことだが)、地に足のついた人生論でもある。これを読んでいると日本というオコチャマな共同体に属しているのが本当に嫌になってしまう……

と、素直に感じてしまったら著者の思うつぼだ。それこそ精神的にひ弱な証拠となってしまう。こういう本こそ無批判に読んではいけない。が、しかし、現代日本を縦横無尽になじってみせる著者の目は平明でモグラの目すら開かせてしまう力を持っている。一読し、納得&論破してみてほしい。問題意識を刺激する秀作である。

1997年11月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際 , 評論

LV4「時間旅行者は緑の海に漂う」

パトリック・オリアリー著/中原尚哉訳/ハヤカワ文庫/820円

時間旅行者は緑の海に漂う
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カート・ボネガット・ジュニアばりの展開と文体で不思議な世界に誘導してくれるSF異色作。

前半が特に見事。純文学といっても通用するような無駄のない文章、そして荒唐無稽な語り口。が、後半その緊張が途切れてしまい凡作になってしまったのが非常に残念。でもまぁ楽しませてもらったけど。
通読してみて思うのだけど、こういうタイムトラベルものは変にリアリティがないほうが面白かったりする。その点このSFはリアリティがぶっ飛んでしまっているので印象は強い。破綻がいっぱいあるのだが、妙に印象に残る一作だ。

原題は「Door Number Three」。
この邦題は、内容からするとわかるんだけど、あんまりだ。著者は「第3のドア」という言葉に他の意味をちゃんと含ませている。なぜ素直に邦題にしないのだろう。こういう邦題にしたからといって売り上げが増えるとは思わないしなぁ…。

1997年11月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:SF

LV4「私の梅原龍三郎」

高峰秀子著/文春文庫/667円

私の梅原龍三郎
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隠れた名文家・高峰秀子の昭和62年出版本の文庫化。
彼女の良さは客観化がしっかり出来ている平明な視点と含羞の程よさである。そして筋が一本通っている生き方。そう、生き方自体が文章によく表れているのである。

この作品でもそれはしっかり出ている。感動するのは梅原龍三郎との近くなりすぎない距離感。それは彼の死まで変わらない。小説(随筆)的視点と実生活的視点がこれほど近い人も珍しいのではないか。新作が待たれる。

1997年11月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:アート・舞台 , エッセイ

LV3「温泉旅行記」

嵐山光三郎著/JTB/1500円

温泉旅行記 単行本
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残念な本だ。前半、特に第1話など「こ、これは紀行文学の新たなる傑作誕生か!?」と色めき立つほどの衝撃を持って読んだ。でもこの緊張は2話目あたりから崩れていき最後の方は「普通に面白い旅行記」になってしまった。

これはたぶんネタ(文人はなぜ温泉に泊まるか、とか、山口瞳の思い出とか)を適度に入れ込みながら書いているからだろう。著者のサービス精神のたまものであろうが、ネタなど入れずに淡々と書いたほうが結果的には良かったと思う。第1話はそれで成功している。あれは傑作である。あの調子で通してくれたら……まことに残念な本なのである。

1997年11月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:

LV3「天才になる!」

荒木経惟著/講談社現代新書/660円

天才になる!
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天才アラーキーの初の自伝だそうだ。インタビューでまとめたアラーキーの半生である。

ボクが初めてアラーキーの写真集を買ったのは6年前の「センチメンタルな旅・冬の旅」である。
以来ちょこちょこ買い続けているくらいはファンなのだが、実はその半生など知りたいと思っていなかった。写真で十分だったのである。
しかし読んで良かったな、これは。彼がなぜ極私的生活を写真で追いまくっているのか、ちゃんと秘密が書いてある。要は「時代の奴隷にはならない」ということだったんだな(こんなこといわれても読んでいない人にはなにがなんだかわからないでしょうね。すいません)。ふーん、とかなり共感することの多かった一冊である。
この本に刺激されて、佐藤家では何度目かのアラーキー・ブームである。全集にいま取り組んでいる。これも、面白い。

1997年11月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:自伝・評伝 , 映画・映像

LV3「おいしい水の探求」

小島貞男著/NHKブックス/825円

おいしい水の探求
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この前牛乳についての本(「日本の牛乳はなぜまずいか」)を読んだから、今度は順序としてやっぱり水だろう、って感じで気軽に読み始めたのだが、これはなかなか味のある本で思わず熟読してしまった。
まぁおいしい水道水をつくるための技術論に終始するのだが、わりと趣があって堅苦しくなくスルスル読める。
「おいしい水(おいしく感じる水)」そして「水道水の仕組み」について知りたい方は必読ですね。なんだか不思議な雰囲気の本。著者の器かな。

1997年11月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒

LV2「ロッシーニと料理」

水谷彰良著/透土社/2800円

ロッシーニと料理―オペラを作曲した美食家の生涯・逸話・音楽・書簡・料理
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副題は「オペラを作曲した美食家の生涯・逸話・音楽・書簡・料理」。

かなりの有名作曲家ながらボクにはあんまり馴染みのないロッシーニ。彼は実は異様な美食家であったのでした。
その美食家ぶりを数多いエピソード、実際に残っている彼のメニューや楽譜などから浮き彫りにし構成したのがこの本。と書いてしまうと堅苦しく思われるかもしれないがさにあらず。軽い筆致で気楽に読ませてくれる。なんとも人間的なロッシーニだ。
それにしても書いてあることが本当ならロッシーニは異様な大食家でもある。すごいなぁ。獣みたい。

1997年11月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒 , 音楽

LV2「マンタの天ぷら」

松任谷正隆著/二玄社/1300円

マンタの天ぷら
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ユーミンの夫にしてアレンジャーにしてCGTVのキャスターでもある著者のはじめてのエッセイ集(ちなみに愛称がマンタ)。

期待しないで読んだ。で、前半は「ハ? やっぱりね、こんな程度かな」って感じだったけど、後半、実にきっちり取り戻したのである。筆圧の弱い文章でなんだかふわふわしているのだが、結果的に気持良く読了した。この人の持ち味なんだろうなぁ。慣れてくるとどんどん自分が出てくるタイプ。慣れるまではどうにも自分が出せない感じ。
だから最後の方はちゃんと体臭まで匂ってくる感じで楽しめた。ほとんど私生活が聞えてこないユーミンについての描写もボクには面白かった。

1997年11月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

LV1「行きそで行かないところへ行こう」

大槻ケンヂ著/新潮文庫/438円

行きそで行かないとこへ行こう
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3年前に出た単行本の文庫化である。題名通り行きそうで行かない場所に行ってみる旅行記である。

でも思ったよりその場所に意外性がなくてがっかり。この企画の面白さはそこにかかっているというのに! でも「行きそうで行かない場所」ではないエピソード(つまり本筋から離れたエピソード)がわりとおもしろいので許す(例えば元マネージャーに会いに行くところとか)。文体も椎名誠と東海林さだおを足して2で割ったような語り口で、視点はとても宮沢章夫ぽい。そしたら解説を宮沢章夫本人が書いていたのでびっくり。やっぱり編集者もそう思ったのね。

面白いことは面白いがよくありがちなエッセイかも。まぁオリジナリティが出る前の面白くなりかけのオーケン、という感じかな。

1997年11月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル: , エッセイ

LV1「オールナイトニッポン大百科」

ニッポン放送監修/オールナイトニッポン友の会編/主婦の友社/1500円

オールナイトニッポン大百科
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「オールナイトニッポン」という深夜放送のことを知らない人はいないだろう。
ボクもご多分にもれずかなりはまった方である。鶴光、タモリ、みゆき、千春にこうせつに糸居五郎……この本は放送開始30周年記念本ということで歴代の人気DJのインタビューや写真、そしてすべてのDJの紹介、などで構成されている。マニアックなファンにはうれしい作りだ。
が、ただずらずら思い出話を並べているだけの狭い価値観の本になってしまっているのが残念。どうせ資料的な扱いにするのなら「オールナイトニッポン大全」みたいな3巻本くらいの大特集にしてほしい。ちょっと中途半端だ。単なる番宣本なんだな、きっと。でも「まだ放送を続けている」こと自体が驚きではある。

1997年11月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:雑学・その他

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