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1997年10月

LV5「蒼穹のかなたへ」

ロバート・ゴダード著/加地美知子訳/文春文庫/上下各571円

蒼穹のかなたへ〈上〉
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この頃ゴダードばっかり読んでいるような気がする。
その中でもこれは出色だ。相変わらずちょっとドジな男主人公のシーク&ファインドな物語だが、今回はより読後の余韻が長い。そして衝撃的なラストシーン……これぞゴダードだよなぁ、と嘆息させられる内容だ。名作「千尋の闇」に迫っている。

いつもに比べて歴史的要素も少ないし、陰謀の首謀者も途中で読めてくる作りなのだが、ラストのインパクトが強くとても印象的な小説となった。オススメ。ちなみにこの主人公は最新作でまた活躍するとか。ゴダードお気に入りの主人公らしい。楽しみ。

1997年10月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV5「きんぴか」

浅田次郎著/光文社/1942円

きんぴか
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著者の初期の傑作。
浅田次郎のすべてがあると言ってもいい。まだ明日をも知らぬ作家であった彼は惜しげもなく様々なネタをこの中にぶち込んでいる。ここから上手に抽出すれば長編が5篇は出来るのでは、というくらいな物だ。

かつては光文社ノベルズ3巻で出ていたらしい。
そう、内容的にはまさにノベルズがお似合いなのだ。ハードカバーになってもその下世話な魅力は少しも衰えず(まぁ内容は一緒なんだから当たり前だけど)一気に読ませる。主人公達は超魅力的。この物語が終わって、彼らと別れるのが非常に辛くなるほどであった。
展開は荒唐無稽ながらも読者を惹きつけて離さない。著者は「センセイ」にならずにこういうエンターテイメントをもっと量産して欲しいと思うのである。

1997年10月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV5「奇跡の人」

真保裕一著/角川書店/1700円

奇跡の人
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不思議な小説である。「ストーリーテリングの真保」にしては大人しいなぁ、なんか偽善的だなぁと読み進む。
でも大丈夫。ラストの方でいろいろひっくり返して著者の真骨頂を示してくれるから。なんだか「野性の証明」を思い出させる展開。「野性の証明」の一人称版か。

ただ帯にこう書かれてはたまらない。「圧倒的な人間愛にあふれた生命の鼓動」だって。おい!ちょっと違うだろう。皆さん、違うんです。そういうお涙物ではありませんよ。ちなみに著者は長年不得意だった「女性描写」をやっと掴んだらしく今回はとても自然に描けている。次作も楽しみ。

1997年10月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV5「4U」

山田詠美著/幻冬舎/1400円

4U(ヨンユー)
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「ヨンユー」と読ませるらしい。「フォーユー」かと思ったよ。

ま、それはともかく、著者会心の短編集。
人間の衝動としての「ラブ」を実に丁寧にそして軽やかに描いている。設定も展開も見事。ふっと読み飛ばせる軽い短編から丹念に字を拾いたくなる 重い短編まで取り揃えてたいへん楽しいときを過ごさせてくれる。
かといってブティックのように「ラブ」をおしゃれに並べているだけではない。その底に「人生に尻軽でありたい」著者のストレートな主張が貫いているから、読む方も気が抜けない。それにしても山田詠美は現代の気分を切り取るのがうまいなぁと感心するのである。狙いが見えてしまう村上龍なんかより自然で的をついている。いや、村上龍もすごいんですけど。

1997年10月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV5「骨の髄までうまい話」

古波蔵保好著/新潮社/1300円

骨の髄までうまい話
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いろんな「うまい話」のオンパレードである。
ボクもささやかながら「うまい話」をホームページに載せていたりするから、その描写の難しさはわかっているつもりである。うまい、というのは結局とても個人的な体験だから、共感を得るというのは意外と大変なのである。
だからこそ言うが、まったくこのコバクラという著者は上手だ。うまい話がうまい。舌を巻く。小心でワンパターンの食評論家たちの文章とは一線も二線もかくす格調の高さ。そして適度の下品さ。まずい飯を食うなら一食抜いてでもこの本を味わうべし。

1997年10月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒

LV5「ステーシー」

大槻ケンヂ著/角川書店/1200円

ステーシー
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オーケンのSF小説。というかホラーかな。

ボクはこの本、好き。
ひとつ間違えば単なる悪趣味ホラーに終わっちゃうような題材をしっかり愛が包んでいる。ちゃんと芯がある小説である。

15歳から17歳の少女達が突然死し人間を襲う屍体ステーシーとなって再生する…というストーリー。
時代におもねっているという印象がなくもないのだが、よくありがちな「設定負けSF」とはかなりレベルが違うのである。音楽という「飛躍を大切にする表現手段」の場にいる著者ならではの飛躍が随所に生きていて感心する。これからの「作家・大槻ケンヂ」にかなり期待するボクである。

1997年10月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:SF , ホラー

LV4「ベートーベンの耳」

江時久著/ビジネス社/2000円

ベートーヴェンの耳
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ベートーベンの耳は聞こえていた!

二重構造を持った本で、基本的には著者の難聴者としての半生記。
聴覚障害者の生活を迫真の記述で読ませる。そしてそれと並行して、ベートーベンの耳についての推理が進行していく。

楽聖ベートーベンは実は耳硬化症(著者の病気)であって人の声は聞こえにくくともピアノやオーケストラの音は聞こえていたのだ、ということを自らの経験を元に読みといているのである。たいへん興味深かった。「ベートーベンは耳が聞こえなかった」という史実に何の疑問も挟まなかった自分が情けない。全く聞こえなかったはずがないのだ。

まぁベートーベンに興味がなくても聴覚障害者の実感部分を理解するために読んで欲しい本ではあります。

1997年10月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:音楽 , 自伝・評伝 , 健康

LV2「わが夫、大山倍達」

大山智弥子著/ベースボール・マガジン社/1300円

わが夫、大山倍達
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別に極真空手のファンでもなんでもないのであるが、何となく「空手バカ一代」大山倍達の奥さんは彼をどう見ていたのかが知りたくて買ってしまった。なにせ伝説の大山倍達であるからその私生活の実際も知りたかったし。

著者のインタビューをまとめたものだが、本の性格上、ある程度大山倍達ファンが読むであろうことを前提として書いてある。
だからボクみたいな素人にはちょっとわかりにくい箇所があった。でも、大山智弥子というキャラクターがそんなことを全く気にさせないくらい魅力的なのである。そういう意味では全く突っ込みが足りないインタビューで歯がゆいばかり。題材はいいのに構成が悪い典型かもしれない。

1997年10月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:自伝・評伝 , スポーツ

LV2「虫の味」

篠永哲・林晃史著/八坂書房/1800円

虫の味
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怖い本である。
著者(医学博士・昆虫専門家である)が自らを実験台に、そこらへんの昆虫をすべて料理して食べてみよう、という本なのである。

ハエやゴキブリやムカデやトンボやオケラやカブトムシやミノムシや……それぞれバター炒めしたりジュースにしてみたりふりかけにしてみたり串焼きにしてみたりお粥にしてみたり、とにかくバラエティに富んだ料理法で食べている。

まぁレシピ本とも言えるものだが、これを読んで感じるのは「日常の異化」であり「既成概念の破壊」である。食べられるはずがないと思っているものを食べてみる。それを読むだけでまた違った日常が見えてくる。本の効用のひとつだろう。

1997年10月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒 , 雑学・その他

LV1「住宅道楽」

石山修武著/講談社選書メチエ/1456円

住宅道楽―自分の家は自分で建てる
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副題「自分の家は自分で建てる」。

異端の建築家である著者の住宅論であり経験談であり日本の住宅事情への提言でもある。
おもしろいエピソードが続き、なかなかインパクトがある内容なのだが、いかんせん建築業界ドシロウトの僕が読むとわからない専門用語や固有名詞が中盤から出てくるのが残念。せっかくなら「シロウトにも開かれた文章」を書いて欲しかったのである。著者の言葉ぽく言うなら「建築業界の不自由さから文章が自由になっていないんだよう」というところか。惜しい。

1997年10月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:教育・環境・福祉 , アート・舞台

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