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1997年09月

LV5「リオノーラの肖像」

ロバート・ゴダード著/加地美知子訳/文春文庫/686円

リオノーラの肖像
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イギリスのメージャー元首相の「一番好きな小説」らしい。
多分に反戦記述の部分を意識しての発言だと思うが、やっぱり、やっぱりそれでもゴダードはデビュー作「千尋の闇」に尽きる、と思う。ただこれも間違いなく三ツ星級なのである。二転三転するストーリー、ラストにかけての畳み込みの見事さは彼ならではだし、キャラクターの独特の存在感にも感服する。本作で惜しいのは読後の余韻が少々足りないところで、人生に対する自己憐憫的快感をもっと味合わせて欲しいと個人的には思うのである。まぁこれも傑作「千尋の闇」と比べてであるが。

それにしても全作に共通するのは主人公(男。女はなぜか利口に書いてある)の間抜けさ。わざと間抜けに描いて展開を二重三重にしようとしているのだが、こう間抜けだとちょっと唖然とするところがある。

1997年09月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV5「活動寫眞の女」

浅田次郎著/双葉社/1700円

活動写真の女
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直木賞作家受賞第一作というふれ込みだが、実際には受賞する前の96年に連載していた長編である。
霊をモチーフに「哀しき人間の業」「現実という虚構」を描く手法はますます磨きがかかっており、安心して著者の世界にどっぷり浸かっていられる。こういう安心感は得難いものだ。

今回は題材である映画がまず非現実のものである上に、途中に著者自身の口上まで入り、いよいよ現実と非現実の境目を曖昧にしている。新鮮。読んでいてその浮遊感にめまいがするほどだった。ただ物語の鍵を握る女性霊への共感が薄いのが残念。もっとあれば著者の注文通り泣かされてしまっただろう。

1997年09月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV5「取引」

真保裕一著/講談社文庫/880円

取引
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このところの日本ミステリー界をぶっちぎりでリードしている著者のずいぶん前の作品。92年、デビュー2作目のものである。

実録物ぽい作りでちょっと安っぽいところがあるのだが、ストーリーテリングの才はやはり図抜けている。
映画的効果を狙った場面展開といい、女性キャラの描き方のヘタクソさといい、今の著者の面影はかなりある。そういうのを見つけて喜んでいるのはもうボクがファンだからなのだろう。まぁでも良く出来たミステリーだ。今読み返しても時代の古さを感じないところがすごい。

1997年09月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV5「夢を食った男たち」

阿久悠著/小池書院/920円

夢を食った男たち―「スター誕生」と黄金の70年代
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天才・阿久悠が70年代の歌謡曲界を振り返った快作である。
副題に「スター誕生と黄金の70年代」とあるように、お化け番組「スタ誕」を軸に、花の中三トリオ、伊藤咲子や黒木真由美、岩崎宏美、ピンクレディ、そして都倉俊一をはじめとする仲間たちを描いたもので、歌謡曲という素晴らしい虚構の世界をその鋭い視点で熱く語り尽くしている。

ボクはもともとこの世界が好きだしかなり詳しい。そういう意味で特に楽しめたということもあろう。
が、ちょっと大げさに言えば、これは日本が熱かった時代を音楽で切った貴重な証言集でもあるのだ。まだ戦後という言葉が生きていた時代を、歌謡曲というジャンルがあった時代を、この本で再体験して欲しい。でもあの当時の事情をほとんど知らないヒトにはつまらないかもしれないなぁ。

1997年09月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:音楽 , 自伝・評伝

LV4「椅子がこわい」

夏樹静子著/文藝春秋/1238円

椅子がこわい―私の腰痛放浪記
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面白かったのである。
副題「私の腰痛放浪記」。3年間も腰痛に苦しみ抜いて一時は筆を折る寸前まで行った作家の闘病記だ。

効かなかった治療の数々、そしてその先生や病院名を実名で出しているところがまず良い。
が、決して告発しているわけではなく淡々としたノンフィクションになっているのが秀逸。最後は心因性と診断され、心の奥深くまで赤裸々に描いていくことになるのだが、ちょっとひと壁抜けたような冷めた筆致で心地よく読めた。どうやら腰痛体験は著者の筆にかなり良い影響を与えたようだ。

1997年09月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション , 健康

LV4「父・丹羽文雄 介護の日々」

本田桂子著/中央公論社/1200円

父・丹羽文雄 介護の日々
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作家・丹羽文雄の実の娘が、アルツハイマーに冒された父親と「まだらボケ」の母親を介護する様を、驚嘆するほど冷静かつ平明に描いたノンフィクション。

その客観的な筆致は淀みなく、見事に両親を浮き彫りにしている。ここまで肉親を赤裸々に書けるものか、と感心してしまうほどだ。こういう題材を暗く悲しく書くのは誰でも出来る。さすが文豪の娘、というべきか、どうだ、この明るく平明な描写は!

実はボクの祖父母もかなり痴呆が進んでいたので(去年死亡)、他人事でなく熟読した。ボクが当事者だったらここまで書けるかどうか…。

1997年09月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション , 健康 , 教育・環境・福祉

LV3「コールド・ファイア」

D・R・クーンツ著/大久保寛訳/文春文庫/上下各520円

コールド・ファイア〈上〉
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クーンツは「ウォッチャーズ」以来久しぶりに読んだ。
結論からいうとイマイチだった(クーンツにしては、だけど)。ものすごく素敵な前半と期待させる中盤と興ざめの後半を持つ。前半の素晴らしさを受けて、後半を書き直してあげたいなどと生意気にも思ったりするくらい。もうちょっと期待したのだけどなぁ。でも個々に印象的な場面はいっぱいあって楽しめたと言えば楽しめた。
ちなみに編集者による帯のコピー(「クーンツが変わった。さらに良くなった。ベストと言ってもいい!」)はオーバーすぎると思う。宮部みゆきのながーい解説はなかなか面白かった。

1997年09月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV3「父の威厳 数学者の意地」

藤原正彦著/新潮文庫/476円

父の威厳 数学者の意地
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新田次郎の息子であり有名な数学者の著者のエッセイはほとんど読んでいる。これで6冊目。どれも非常に面白い。ウィットに富み、切り口もなかなかに新鮮。年を追うごとに達意の文章になってきて快適だ。
頭の整理が出来ている人の本は時間の密度があがったような感覚があっていいねぇ。旧作を読み返したくなる。まだ藤原正彦を読んだことない人はこの本でもいいが「数学者の休憩時間」あたりから入ったらどうだろうか。

1997年09月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

LV3「書き下ろし歌謡曲」

阿久悠著/岩波新書/520円

書き下ろし歌謡曲
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歌謡曲をこの本のために書き下ろしているのである(もちろん作曲ではなく作詞で)。

あの天才・阿久悠が、である。しかも100曲も、である。実に新しい企画ではないか! こういう野心的な企画は大好きである。
狂喜して購入した。が、改めて「時代と共に歩けなくなってしまった歌謡曲というジャンルはいかにつらくなってしまったか」ということを確認したにとどまってしまった。すごい詞はいくつもあった。でもそれは「良く出来た詞」であってもはや「時代を先導する詞」ではない。ひょっとしたらもう言葉が時代を踊らせる時代ではないのかもしれない。そんなことを思った。
労作ではある。が、なんだかせつない一冊だった。

1997年09月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:音楽

LV1「納豆大全!」

町田忍著/小学館/1575円

納豆大全!
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もっともっともっと期待した。
納豆がどれだけ偉いか、という記述については知らなかった新事実も知ることができて(個人的には)面白かったが、この程度なら「おもいっきりテレビ」でみのもんたが偉そうにしゃべってくれるかも。本にするからには、そして「納豆大全!」なんていう題名をつけるからにはもう少し多角的に突っ込んだ新しい切り口が欲しいのである。
なお、著者によるコレクションは面白かった。

1997年09月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒

LV1「気まずい二人」

三谷幸喜著/角川書店/1200円

気まずい二人
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対談が苦手だと公言する著者の対談集。
美女達との全然話が盛り上がらない対談をそのまま本にしている。その「狙い」があざとくてなんだか居心地が悪かった。「狙い」が読めちゃうのはいいんだけど、最終的に読み物として定着させるためにはその「狙い」をもう少し隠して上手に演出してから売って欲しいのだ。

つまりは、スタッフの笑い声を入れるような「バラエティ番組的内輪ウケ演出」の域を出ていないのがボクにはつらかった。読み物にするとその演出は辛いのだということがいまひとつわかられていなかった気がする。

1997年09月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:対談

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