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1997年08月

LV5「牛への道」

宮沢章夫著/新潮文庫/438円

牛への道
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論評が難しい本である。
元「ラジカル・ガジベリビンバ・システム」の作・演出者が書いた、ものすごく新鮮な視点を持ったエッセイなのだが、ひとつ間違えれば単なるうだうだ話になってしまうギリギリのラインを狙っているので、人によって好みが別れるだろう。

ただ、この本は笑える。
クスッとかウハハとかウヒヒとかいう笑いではない。敢えて言えば「グググッ」って笑いである。こんなことに笑ってたまるかと我慢した末に出る笑い。シュールでIQの高い笑いだ。心配なのはこの手の作風はうけを狙った途端に(頭でオチを作り出そうとした途端に)面白さをなくすという点だ。次作がそうならなければいいのだが。

1997年08月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

LV5「さよならは言わないで」

ロバート・ゴダード著/奥村章子訳/扶桑社ミステリー/上下各583円

さよならは言わないで
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デビュー作にして偉大な名作「千尋の闇」には到底かなわないのであるが、これはこれでやっぱり三ツ星級なのである。
騙りの連続で読者をどんどん煙に巻く手法はこの本ではちょっとうすいが、相変わらずの人間絵巻。充分楽しませてくれるのだ。ただ、主人公を始めとする登場人物たちが腑に落ちない行動をたびたびするのが残念。思い入れを邪魔されるところがある。

最後に注意!
裏表紙に書かれた粗筋を読んではいけない。絶対に。ほとんど筋が書いてある。扶桑社にクレームを付けたいくらい。どういうつもりなのだろう。必ずブックカバーを書店で付けてもらうこと。

1997年08月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV5「地下鉄に乗って」

浅田次郎著/徳間文庫/514円

地下鉄(メトロ)に乗って
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94年に出た長編の文庫化。
「地下鉄」に「メトロ」とルビがふってある。物語の筋からするとあんまりピンと来ない題名である。

一種のタイムスリップものなのだが、同じタイムスリップものでも例えば「蒲生邸事件」なんかより深みを感じるのはこの著者はそこに必ず浪花節を入れるからである。それが鼻に付くと感じる読者もいるであろう。ボクはわりと成功していると思うし好きでもある。ただこの作品では浪花節度がちょっと中途半端であるのが残念。「天切り松闇がたり」のような浪花節を要所要所でべったり入れた方が良かったのではないか。浪花節のメリハリとでも言うのかな、それが足りない気がする。

1997年08月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV4「星にとどく樹」

舘野泉著/求龍堂/1545円

星にとどく樹―世界を旅するピアニスト
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恥ずかしながら舘野泉を知らなかった。
フィンランド在住の世界的ピアニストらしくピアノ教師をしている嫁などは「エ!?知らないの?」てな反応を示した。う~ん。でももう知ったもんね。副題は「世界を旅するピアニスト」。この副題に惹かれて買ったわけでそんな有名人とは知らなかった。

内容は、フィンランドのこと、演奏旅行のこと、作曲家たちのこと、などのエッセイなのだが、静かな文体でなかなか心地よい。彼のCDでも聴きながら(早速買いました)寝る前にゆっくりこの本の世界に浸るなんて、なかなか贅沢だ。

1997年08月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:音楽 , エッセイ

LV3「日本の牛乳はなぜまずいのか」

平澤正夫著/草思社/1600円

日本の牛乳はなぜまずいのか
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知らなかったぜ、日本がこんなに牛乳後進国だったとは!

ここに書いてあることが本当ならば(本当っぽい)大手牛乳メーカーはものすごい罪を犯しているなぁ。
厚生省や大手メーカーと単身闘った藤江才介という技術者のエピソードを中心に綴られていてなかなか面白いのだが、構成が悪く何度も同じ話に行き着いてしまうのが難。しかも要点がよくわからなかったりする。
が、全体には新しい発見に満ちた本だ。そうか、あの独特の粘っこい香りは「こげ臭」だったのか……あなたもこれを読んで日々飲んでいる牛乳に対する認識を新たにしてください。

1997年08月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒 , ノンフィクション

LV3「ぼくのマンガ人生」

手塚治虫著/岩波新書/660円

ぼくのマンガ人生
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天才手塚治虫の講演を編集したもの。
著者の半生を振り返った前半部も大変面白いが、それよりも子供というものの本質や今の教育への疑問、家庭のあり方に言及した後半がなかなか説得力があって目を開かされる。
特にテレビの子供たちに対する影響を述べた箇所など、参考になったなぁ。彼の漫画と同様、平易な文章でとても読みやすいし、お説教な内容もお説教臭くないところが著者の真骨頂だ。

1997年08月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:自伝・評伝

LV2「本の運命」

井上ひさし著/文藝春秋/952円

本の運命
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実に蔵書13万冊。知る人ぞ知る本の虫、井上ひさしによる本を巡る物語である。

幼い頃の読書体験からついに図書館を作ってしまうまで、本と共に生きたその半生をわかりやすく綴っている。
彼の本は「生きている」のが素晴らしい。単なる収集家ではないのだ。こんな人の手に渡った本達はホントに幸せ者だ。でも本にまつわるエピソードだけの本ではない。人間が好きなことを追って生きていくこととは何なのか、が、ぎっちり詰まった本でもあるのだ。

1997年08月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

LV1「死んでいるかしら」

柴田元幸著/新書館/1600円

死んでいるかしら
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ポール・オースターの訳者として初めて著者に出会って以来、彼が訳した本を見つけたらかなりの確率で読んできた。この著者の訳本はハズレが少ないからだ。そのうえ訳文のセンスも素晴らしい。エッセイも出していて「生半可な学者」はたいへん楽しんだ。

が、しかし、このエッセイはイマイチだ。
中にはなかなか面白いのもある。特に表題作などはいい味だしている。でも玉石混淆すぎる、というのが正直な感想。全く面白くないのも多い。ファンとしてはちょっと残念。

1997年08月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

LV1「天皇家の食卓」

秋場龍一著/DHC/1600円

天皇家の食卓―和食が育てた日本人の心
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「エリゼ宮の食卓」という名作に対抗したような題名だったので期待して読んだ。天皇家の食事を通してニホンとニホン人を燻り出してみせるものと思ったのだ(帯にもそれらしきことが書いてある)。

だが……まぁ天皇家の食事体系は究極の健康食で和食は世界的に優れていて、みたいな展開どまりでどうにも食い足りない。古代の食事の形態や宮廷言葉など興味深いところもあったが、だからなに?って感じがちょっと。題材はいいのだが著者の視点がちょっとぼやけぎみだからそうなるのかも。

1997年08月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒

LV1「パンとワインとおしゃべりと」

玉村豊男著/ブロンズ新社/1600円

パンとワインとおしゃべりと
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玉村豊男による食エッセイ。

パンについてのエッセイはわりと面白かった。パンの蘊蓄について書かれた本って意外と少ないから新鮮なものもあった。
でもそれは前半1/3くらいで終わってしまって、あとは普通の玉村節である。それはそれで面白いし、著者ファンのボクとしては楽しいのだが、彼の著作はほとんど読んでいる身としてはちょっと飽き気味でもある。新機軸を打ち出してくれないと、そろそろ買わなくなりそうだ。読みとばすにはなかなか気持ちいい本なんだけど。ちょっと厳しく一つ星級。

1997年08月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒

LV0「あなたがいなくなった後の東京物語」

村上龍著/角川書店/1200円

あなたがいなくなった後の東京物語
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「あなた」とは読者ではない。ロンドンにいってしまった「あなた」である。その「あなた」にあてた手紙形式のエッセイ。

「週刊東京ウォーカー」に連載していたものをまとめたもので(だからあんまり東京に関係ないことばかり書いているのに「東京物語」なのね)、一応、映画「KYOKO」を監督する過程を追いながら書いているのだが、はっきり言って内容はスカスカである。この著者に限りこういう肩のちからが抜け切ったエッセイでも読みたいという読者はいると思うからそれをどうのは言わない。ただ単に面白くなかった。それだけ。ウェッブ上にこれよりおもしろい日記エッセイはゴマンとある。

1997年08月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

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