1997年06月
「ウォルト・ディズニー」

amazon娘を持って以来、急に観る機会がふえたディズニー映画。
ところでいったいどういう人なのだろう、有名だけど本人について何も知らんな、と気になっていたらやっと伝記を見つけた(95年12月初版)。
期待せず読み始めたらこれが面白いの何の。
著者はたんたんと書いているのだが要を得て無駄がない。伝記としてはピカイチの出来だろう。素晴らしい。各映画のエピソードやディズニーランドのエピソードなどファンにはたまらない本ではあろうが、ボクみたいにファンではない人間(どちらかというと嫌い)でも最高に楽しめる一人の精力的な男の人生。まさに今世紀を代表するクリエーターの人生を、あなたも読みたくない?
1997年06月01日(日) 12:00:00・リンク用URL
「ええ音やないか」

amazon副題が「橋本文雄・録音技師一代」。帯に「“耳”で映画を観る」とある。
戦後すぐの大映(溝口健二!)から日活黄金期、角川映画、最近の森田芳光、阪本順司監督作品に至るまでの長きにわたり録音技師として第一線で働き続けている橋本氏のインタビュー集である。
橋本文雄の一代記であるのみならず、貴重な戦後日本映画史の資料であり、技術録・録音ノウハウ集であり、撮影現場のエピソード集でもある。分厚い。645ページ。が、それだけのことはある。
読了するのに3ヵ月かかってしまったが、その濃い内容に圧倒された。
はっきり言って映画の見方が変わる。そして邦画をいろいろ見たくなる。川島雄三、斎藤耕一、中平康、澤井信一郎…それらでの橋本文雄の仕事を目の当たりにしてみたくなる。ハリウッドのカラフルな録音に比べてどうしてもモノクロチックな邦画の録音がいままで嫌いだったが、それが偏見なのではないかと根本から考え直される思いである。
よくぞ現役バリバリのうちにインタビューしてくれたと感謝したくなるような本だ。
敢えて言えば巻末に索引を作って欲しかった。なにしろ資料としても第一級であるのだから。
1997年06月01日(日) 12:00:00・リンク用URL
「ホワイトアウト」

amazon著者の本は「奪取」に続き2冊目。
他のも全部読もう、と読み終わって思った。実に良く出来ている。
一応サスペンス/ミステリーものだが、のっけから見事に小説世界に引きずり込み、最後まで巻置くあたわず。キャラの描写も素晴らしく読了後の充実度が違う。このままハリウッド大作映画になる出来栄え。映画化されれば「ダイハード」を越えるだろう。
ストーリーテリング、ディーテイルの書き込み、リアリティ、すべて高レベルだ。
ただ、ストーリーに厚みをつけるはずだった爆破事件のエピソードがそんなに効かなかったのが惜しい。
1997年06月01日(日) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:ミステリー
「龍の契り」

amazon確かにすごい力作である。日本人が書いたとはとても思えない国際謀略サスペンスで、大部を飽きさせずに読ませる筆力は並のものではない。しかもデビュー作。これを褒めずして…と言いたいところだが、スゴクいいところまで来ているだけに惜しくてたまらない。
まず描写にムラがある。オーバーに書きすぎるときがあってしらける。キャラの立ち方にメリハリがない。だから読み終わってからの印象が薄い。設定も都合が良すぎる。こんなにうまく行くかよ、とぼやいてしまう。全体に「薄い」のである(本自体は厚い)。上記「ホワイトアウト」と比べるとよくわかる。細部の書き込みが「薄い」分ストーリーだけの本に終わっているのだ。
でも三ツ星だろうなぁ。これを褒めずして…だ。さっそく次作「鷲の驕り」を読もう。龍(中国)の次は鷲。アメリカですね。ってことは3作目は熊(ロシア)か?
1997年06月01日(日) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:ミステリー
「室内40年」

amazon大変面白い。
著者が「室内」というインテリア雑誌を主宰していることを知らない人がいるかもしれない。その雑誌の40年を語ったインタビュー構成の本だが、著者の「確信犯的脱線」により戦後40年の日本が見事に浮かび上がってくる。昭和時代の語り部として著者は最高の役者なのである。
豊富なボキャブラリーと正確な記憶、平明な視点、批評の立脚点の確かさ。良く出来た芝居を読んでいるような気になってくる。聞き手の女性の素直なつっこみも面白く、ニコニコ読めて勉強にもなる。だいたいが説教口調の著者だが今回はすっとぼけた味が勝っている。
1997年06月01日(日) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:エッセイ
「勇気凛凛ルリの色」

amazon週刊現代連載の浅田次郎のエッセイ集である。
ただいま絶好調の著者らしくこれもたいへん良いエッセイばかり。並々ならぬ実力をここでも発揮している。視点の明解さ。ボキャブラリーの豊富さ。そしてなにより「少なくとも読者を勇気づけることは、いやしくも言葉で飯を食う者の使命であろう」という言葉に象徴されるような著述姿勢。
もともと連載エッセイ向きな波乱万丈な生活をしている著者だ。面白くないはずがないのである。ちなみに、小説では泣かしは名人だが笑わしは下手であったが、エッセイでは笑わしもなかなか。
1997年06月01日(日) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:エッセイ
「時のかなたの恋人」

amazonタイムスリップ・ラブ・ロマンス。
SFであり歴史小説でありハーレクイン・ロマンスであり一人の女性の成長記でもある。
なかなかに荒唐無稽な筋で破綻もいっぱいあるのだが、この小説はとてもキュートで印象が強い。この小説自体を愛してしまう。なぜだろう。ひとつには主人公のキャラの魅力的なこと。そして時代考証がしっかりしていること。そしてなによりタイムスリップした登場人物たちのとまどいの描写の的確さ。著者の想像力のたまものである。そのとまどい加減のリアリティはH.F.セイントの「透明人間の告白」を思わせるものがある。不思議な魅力だ。
実はこの小説、初読時より再読時の方がずっと印象が強かった。なんかスルメのような「何度も読み返してみたくなる」感。なんだか面白い読後感なのだ。
1997年06月01日(日) 12:00:00・リンク用URL
「吉本隆明×吉本ばなな」

amazonまず褒めるべきは聞き手役の渋谷陽一。
この文壇の新旧アイドル対談(もちろん親子対談でもあるが)は両者の常識的ではないキャラクターを統率し、適度にミーハーで適度に物知りで適度に文学的である必要がある。この役をかの渋谷陽一がここまで見事に演じきるとは思わなかった。この親子と対談するなんて僕ならびびり上ってしまうところだ。すごいね。
内容的には、濃く面白すぎる部分と、薄くしなびた部分の差が激しいのが気になる。そのうえ何故か読みにくい。読み辛い対談集は、辛いよなぁ……編集の問題だろうか。各人の語りに行替えがないのが原因かな。
1997年06月01日(日) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:対談
「消えたマンガ家」

amazon漫画界のタブーらしいのである。あのマンガ家は何故消えたのか。どうして消えなければならなかったのか。大手出版社のあまりにも非人間的なそのシステム。タブーらしいのである。タブーなら太田出版。なるほど面白かった。
「キャプテン」のちばあきお、「幽☆遊☆白書」の富樫義博、「マカロニほうれん荘」の鴨川つばめ、あの山田花子に伝説の徳南晴一郎……なぜ才能も人気もあった彼らは忽然と消えたのか。それをきっちり検証している。
題材よし。視点新鮮。取材ご苦労。ただここまで来たらもう少しスキャンダラスさを前面に押し出しても良かったのではないか。なんとなく読後感が物足りない。
1997年06月01日(日) 12:00:00・リンク用URL





