1997年04月
「睥睨するヘーゲル」

amazon哲学の本というより「考える」本である。
この本を読んでボク自身つねづねいろんなことを「考えていたつもり」だったけど、それは単に「思っていたに過ぎない」ことに気付かされた。そういう意味でこれはモグラの目すら開かせる名著であるとボクは思う。
ただ、読んで気が付いて目が開くこと自体もうあなたは「考える人」の資格すらない、と著者は切り捨てている。
池田晶子のそこらへんが好きなんですよ、ボクは。エッセイ集なのでまとまりに欠けるのはしょうがないが、「メタフィジカ」「悪妻に訊け」などの著作より著者の素直な切り口が出てきていて、池田ファンは必読。まだ池田晶子を知らない人はこの本からどうぞ。
1997年04月01日(火) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:哲学・精神世界
「天切り松闇がたり」

amazon不覚にも泣かされてしまった。全く名人技。「蒼穹の昴」のスケール感はないにしても語り口はあれを上回るほどうまい。
全編「どさ回りの講談風」人情劇なのだが、鼻に付くどころかもっと読みたい読ませてくれろ、とすがりたくなる浪花節。
日本人の奥底をつつくのが上手だなぁ、この著者。
「このもっていき方イヤだな、お洒落じゃないな、臭すぎるな、え、ヤダよ、誰が感動するもんか、見え見えじゃないか、うわ、うわ〜、ぐじゅぐじゅぐじゅ……」と、必死に抵抗するも空しく撃沈されてしまう。参ったな。とっても参った。さてお次は「プリズンホテル」シリーズを読もう。
1997年04月01日(火) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:小説(日本)
「AV女優」

amazon一読呆然。再読唖然。
570ページという厚さの中にニッポンノイマがすべて入っているような気がして……自分の生活圏・価値観の狭さを思い知った。
なんか、「アメリカの小さな町」(トニー・パーカー/晶文社)という名作を思い出した。
この本は典型的なアメリカの田舎町のすべての住民をインタビューしただけの本なのだが、そこから見事にアメリカという国が浮き彫りされてきて読者を圧倒する。このAV女優42人のインタビュー集もそれに近い圧倒感があった。AVがどうの、好きだ嫌いだという前にただ読んで感じるべきである。批判もせず、ただ感じる。それがこの本にふさわしい読み方だと思う。
※ビレッジセンター版が絶版のようなので文春文庫にリンクしました。
1997年04月01日(火) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:ノンフィクション
「脳天観光」

amazon真の意味で聡明な知性に難解なことを語らせてみたら、こんなに平明なものになりました、の見本。
地球最後の秘境「脳」がこんなに面白く優しく深くわかっていいのか、とつぶやきながら読んだ。
「頭がいい人」というのはこの著者たち(特に学者・加藤総夫)のような人を指すのだと思う。こんな学者がいるならまだニホンも大丈夫。知的エンターティメントとしても科学啓蒙の書としても満点なる名著。
1997年04月01日(火) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:科学
「オークションこそわが人生」

amazon本を読む楽しみに「違う世界を垣間見ることが出来る」があるとするとこの本などその典型。
オークションという今まで知らなかった世界をぐっとボクの人生に近づけてくれた。
TVの「なんでも鑑定団」「ハンマープライス」などの元はすべてこの人にあるといってもいい著者の半生記である。描写にタルイところがあるのは愛敬としてもなかなか読ませる。多分内輪うけ楽屋落ちなどいろいろ罠が仕掛けられているのだろうが、悲しいかな、日本人にはもちろんわからない。
1997年04月01日(火) 12:00:00・リンク用URL
「クダラン」

amazonボクが団長を務める「ジバラン」と語感が似ているなぁ。関係ないけど。
その体温、考え方が似ていることもあってかなり無条件に信頼している数少ない人である中野翠の最新コラム集。
主にサンデー毎日・クレアに連載のものを集めたもの。題名通り、くだらないもの、嘆かわしいものに対する怒りの集積だが、そこに平明な知性というフィルターがかかっているだけでこうも痛快になるのか、と実感させる。相変わらずの切れ味で素晴らしい。
1997年04月01日(火) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:エッセイ
「北大路魯山人」

amazon「食べることが好きな人」なら避けては通れない伝説の巨人魯山人の一生を著者独特の切り返し手法(?)で綴っていく労作。
文庫になった機会に読んでみた。著者は悪意によって書き始めているが最後には尊敬愛慕の情で書き終わっている。魯山人に対する複雑な愛憎が伺えて誠に興味深い。
年代を追っていくという構成ではないので読みにくい部分もあるが迫真の彫り出しでインパクトの強い伝記になった。ただ魯山人のコンプレックスの部分をしっかり捉えて「小説化」したらもっともっと面白くなったのに、と悔やまれる。しかし納得だなぁ。なるほどこういうコンプレックスがこの人を突き動かしたのか…。
1997年04月01日(火) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:自伝・評伝
「一人の男が飛行機から飛び降りる」

amazon寝る前のお楽しみに毎日2~3編ずつ読むこと約2ヵ月。311ページの中に149編の短編が入っている超短編集だ。
その内容を一言で表現するなら、夢(悪夢)をそのまま文章にした、という感じか。寝る前に現実と非現実の境をなくすには最適。アメリカの出版社の宣伝文句に曰く「フランツ・カフカとモーリス・センダックとモンティ・パイソンが一緒になって夢を見ているような」と。
ちなみに柴田元幸訳の本はなるべく読むようにしている。ハズレがないから。
1997年04月01日(火) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:小説(海外)
「ニッポン居酒屋放浪記」

amazon著者による「居酒屋大全」「精選・東京の居酒屋」に続く三部作完結編。完結編と言っても別に完結しているわけではないが。
ウェットで格調ある文体を持つ居酒屋探訪記の巨匠は健在である。
今回は地方での飛び込み取材を敢行しているがその「鼻」は相変わらず絶好調。一緒にぴたっと来る居酒屋を探している気分になり、なかなかスリリングだ。いい居酒屋を探しいい時間を過ごす旅。これが人生と重なって見えてくるところがこの著者と「グルメ評論家」の違い。文体と姿勢と人生観の違いである。
1997年04月01日(火) 12:00:00・リンク用URL
「チョコレートを1.2トン食べました」

amazon今年度題名大賞ノミネート作品だな。題名に惹かれて思わず買ってしまった。でもボクなら「チョコレート1.2トン食べました」と「を」を抜くな、どうでもいいけど。
チョコをいままでに1.2トンは食べた69歳のチョコ好きおじさんの半生記なのだが、この人チョコ以外にもいろいろやっていてなかなか興味深い。が、文章が作文レベルなのでちょっと辛い。きっちりした編集者がついてじっくり書いて行ったら倍は面白くなっただろうに。惜しいなぁ。ま、でもなかなか楽しみました。
1997年04月01日(火) 12:00:00・リンク用URL
「ホテル・ジャンキー」

amazon副題が「ホテルが大好きでやめられない」。
利用者サイドから見たホテル辛口エッセイではあるのだが、批評とエッセイと紀行文と半生記が混じりあってどうにも中途半端な感をいだかせる。世界の高級ホテル61軒について言及されているのでお好きな向き(ボクも嫌いではない)には楽しいかもしれないが、もう少し焦点を絞って書いて欲しかったかも。ホテル批評を目指して頓挫した女性誌的エッセイ、という感想。惜しいのだけど。
1997年04月01日(火) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:旅
「食べる」

amazon副題は「店の流儀、客の心得」。食の両巨頭といってもいいふたりによる食談義である。
たとえば太田和彦の「ニッポン居酒屋放浪記」などに比べると、食べることから透けて見える人生みたいなものが描かれていない浅さがどうしても気になってしまう。本の構成がそうなっているので一概に比べられはしないし、そういう狙いでもないだろうから仕方ないのだが、こういう食の体験談の切り売りってそんなに読者の共感を呼ばないのだなぁとあらためて思った。ふたりの味に対するこだわりとセンスはわかるのだが、その後ろにある深みが見えてこない。食の本ブームでもあるが、もう少しじっくり書き物をしてほしいおふたりではある。
1997年04月01日(火) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒




