トップ > おもしろ本 > 月別一覧 >

1997年03月

LV5「結局わかりませんでした」

ビートたけし著/集英社/1400円

ザ・知的漫才 ビートたけしの結局わかりませんでした
amazon
副題が「ザ・知的漫才」。
ビートたけしが日本の知性(?)9人(松井孝典、養老孟司、本川達雄、荒川秀樹、ピーター・フランクル、荒俣宏、中原英臣、森幹彦、上野正彦)と対談したもの。知らない人もいるけど(だってただの歯医者もいる)、とにかく勉強したくてうずうずしてくることだけは確かな本だ。

これを読むとビートたけしの本質は「物事の本質をついている人」ではなくて「地にしっかり足がついている人」なのがよくわかる。地に足がついていない人がこういうことをすると対談ではなく単なる「インタビュー」に終わってしまうだろう。自分の視点と土俵からしっかり意見をいうことの大事さを思い知らされました。(ただあとがきは説教臭くてイヤ)

題名が秀逸。もともと論理的でない世界を論理的に論じようとする無意味さを端的に言い表している。教養好きの人は必読。向学心という化石を取り戻してみたい人も是非。

1997年03月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:対談 , 評論 , 科学

LV5「そば打ちの哲学」

石川文康著/ちくま新書/680円

そば打ちの哲学
amazon
趣味で蕎麦を打ち初めて半年になるけど、どんな本を読んでも越えられなかった「畳んだら折り目で切れちゃう」問題をこの本は明解に解決してくれた。

そういう意味では実用書でもあるが、あくまでもこの本は哲学書。
哲学読みには中途半端かもしれないが、ボクにはちょうど良かった。大学の教授である著者も趣味で蕎麦を打っているわけだが、哲学者というスタンスを見事に蕎麦打ちに取り入れており、まさに「哲学とは‘哲学すること’である」を実践している。
蕎麦を入り口に古今の哲学に言及し蕎麦を出口として人間の欲望に迫る。その筆、平明にして深遠。蕎麦を打つ人も打たない人もぜひ触れてみて欲しい個性的名著。

1997年03月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:哲学・精神世界 , 食・酒 , 実用・ホビー

LV5「定本作家の仕事場」

篠山紀信著/新潮社/12000円

定本 作家の仕事場―昭和から平成へ読み継がれる日本の作家一三五人の肖像
amazon
副題は「昭和から平成へ読み継がれる日本の作家一三五人の肖像」。12000円もする高価な本である。

篠山紀信が撮り続けた135人の作家にそれぞれいろんな人が短文を寄せて構成してある。つまりは135人の仕事場での写真と135本の短文。短文はキャスティングが絶妙で飽きさせないし、紀信の写真も作家の内面に貪欲に迫っていて素晴らしい出来。特に中上健次や色川武大、開高健なんかの写真は良かったなぁ。
こうしてみると日本にも作家が多いねぇ。読書人口は続々減っているのにどうするんだろう。でも抜けている作家達もいろいろいるぞ。選ばれなかった人はそれなりにショックだろうなぁ。

高い本なので、作家好きとか文学好き以外にはオススメしないけど、ボクは満足した。

1997年03月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:写真集・イラスト集

LV5「文体練習」

レーモン・クノー著/朝比奈弘治訳/朝日出版社/3500円

文体練習
amazon
文学は文体がすべてだと思う。
でもたかが「1人の男がバスに乗っているのを見た。二時間後その男をまた見かけた」という10行ほどの内容を99通り(正確には102通り)の文体に書き分けられるとただ呆然とするしかない。つまり同じ内容でも無限に書き方があるわけで、これは作家にある種の安心と極度の反省を促すのではないだろうか。味覚視覚などの五感シリーズや罵倒体、下手糞体や語中音消失体、付録の反動老人なんか面白かったなぁ。

著者は「地下鉄のザジ」の作者だが、なによりも訳者が偉い。偉すぎる!また、いろんなフォント、カラー、デザインに対応した出版社(編集者)も偉い。偉すぎる!

1997年03月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(海外)

LV4「にんげん蚤の市」

高峰秀子著/文藝春秋/1300円

にんげん蚤の市
amazon
知る人ぞ知るエッセイの名人、高峰秀子による最新エッセイ集。
やさしい目線で鋭く切りつけるその手腕には毎回感心させられるが今回もとてもいいエッセイがいくつか。土門拳や木村伊兵衛のエピソード。中島誠之助という人間鑑定。司馬遼太郎とのついえぬ思い出。歯切れのいい(伝法調)文体で過去、人、想いを削り出す様は、並みの作家真っ青の出来だ。
ただ今回はちょっと散漫なエッセイも見受けられ残念。特にご主人との掛け合いはそんなに効果をあげていなかった。

1997年03月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

LV3「ホスピス通信」

山崎章郎監修・桜町病院聖ヨハネホスピス編/講談社/1700円

ホスピス通信―生の終わりに小さな「もてなし」
amazon
ホスピスってご存じですか? この3~4カ月で3人も祖父母を亡くしてしまったボクにとってホスピスは急に身近な存在になった。ホスピスとはなんなのか、終末(ターミナル)ケアとはどういうことなのか…。

「病院で死ぬこと」というベストセラーを持つ山崎章郎が勤めるこのホスピスが定期的に出しているミニコミ誌「ホスピス通信」。これをまとめた本書を読んでいろいろ考えるきっかけになった。
ケアする側だけでなくケアされる側、そしてボランティアで手伝っている側、それぞれの意見・コメントを載せているところが秀逸。ターミナルケアやホスピスについて少しでも興味ある人は是非。ただ、まとめて載せているだけなので全体に散漫なのが欠点。

1997年03月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:健康 , 教育・環境・福祉

LV3「お父さんには言えないこと」

清水ちなみ著/文藝春秋/1200円

お父さんには言えないこと
amazon
週刊文春の人気連載「おじさん改造講座」の番外編。

一見軽く見える本だが内容はとても重い。おじさん達を情け容赦なく切り捨てているように思える「おじさん改造講座」だが、実は近くて一番遠い存在である「父親」を理解するためのシミュレーションだったとは……気付かなかったぜ。で、会社のおじさん達を観察しているうちにわかったことが、つまり「父親も単なる未熟な1人の人間である」ということ。そこまでたどり着くのに娘たちはいかに苦労を重ねるか…。

著者は全国のOLを実際に訪ねて丹念に取材して書いている。労作。三ツ星級。でも、後半著者自身混乱してまとめ切らなかったようでものすごく散漫になってしまった。惜しいし残念。是非とももう一度腰を据えて取り組んでもらいたい。単純な感想としては、娘に暴力をふるう父親がこんなに多いことにビックリした。

1997年03月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション , 時事・政治・国際

LV1「ぼくが地球で会った愉快な人たち」

ピーター・フランクル著/講談社/1500円

ぼくが地球で会った愉快な人たち
amazon
「極値集合論」という数学の最先端を研究していて、その問題について世界に5人くらいしか話を出来る人がいなくて孤独を感じ、大道芸にのめり込んでいったという破天荒な著者の半生記、そしてエッセイ。

なにしろ11か国語を話し、数学オリンピックでは金メダル。大道芸人であり数学者。そんな彼の書くものだけに登場人物は多士多才でエピソードもそこそこ面白い。
が、これだけ数奇な人生を送ってきた人の書くものにしては「もうひとつ」という印象。読者が期待しすぎるのかもしれないけど、もう少し切れ味がほしかった。

1997年03月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:自伝・評伝 , 科学

LV1「孫ニモ負ケズ」

北杜夫著/新潮社/1030円

孫ニモ負ケズ
amazon
どくとるマンボウによる老年エッセイ。
んー……、北杜夫もただのおじいちゃんになっちゃったな、というのが正直な感想だ。
どくとるマンボウにはずいぶんお世話になったので甘い評価にしたいが、この本は「北杜夫著」でなければなんの魅力もないただのジジイのろけエッセイかも。30分ほどで読み飛ばせる量で1000円もするし、挿絵もやけに軽く(ちょっとファンシー系)、馴染まない。文体も構成も往年の切れ味がない。なんだか辛かった。無理にこういうものを書かないで、ゆっくりゆっくりイイモノを書いてほしい大作家なのだが。

1997年03月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

LV1「親子三人」

山口正介著/新潮社/1442円

親子三人
amazon
山口瞳ファンとしては彼の親子関係とか普段の生活は覗きみたい。息子である著者がそれを息子の視点で書いてくれるのであれば是非読みたい。絶対読みたい。ということで購入。

言いたいことはよくわかる。でも、「山口瞳の子供でいることがどれだけ辛いかわかってよ、生まれながらに小説の登場人物なんだよ、だから僕はこうなっちゃったんだ」とかきくどく‘言い訳’と‘甘え’がずいぶんつらい。山口瞳を題材にするということは、山口瞳ファンを相手にするということだ。その辺を自覚して‘言い訳’と‘甘え’を出さずにきちんと書いてほしかった。ちょっとみっともない印象を持った。

「喫茶『風琴亭』のころ」という私小説も載せているが、随所に山口瞳の世界を意識して継承しすぎている部分が見られ、これもちょっとつらかった。ちょっと古臭い構成と題材。というか、こういう風に山口瞳と比べられてしまうこと自体のつらさを書いたわけで、うん、よくわかるよ。でもその辺は読者も承知している。大変だろうなと思っている。だからちゃんと書いてほしいと願うのだ。

1997年03月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ , 小説(日本)

LV1「みんないってしまう」

山本文緒著/角川書店/1442円

みんないってしまう
amazon
著者には「あなたには帰る家がある」という素晴らしい小説があり、それもあってすごい期待して読んだのだが、期待が上回ってしまってちょっと残念だった短編集。
短編によっては、同じ人が書いたとは思えない印象もあった。思わせ振りなエピソードが続き、いまひとつ盛り上がりにも欠ける。筆力がある人なのだからもっとじっくり書き込んで欲しいなぁ。あまり流した仕事をしてほしくない作家のひとりである。

1997年03月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

ページの先頭に戻る

メニュー

Follow satonao310 on Twitter @satonao310

satonao [at] satonao.com
スパム対策を強化しているので、メールが戻ってきちゃう場合があります。その場合は、satonao310 [at] gmail.com へ。

ページの先頭に戻る

Google Sitemaps用XML自動生成ツール