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1997年01月

LV5「うるさい日本の私」

中島義道著/洋泉社/1700円

うるさい日本の私―「音漬け社会」との果てしなき戦い
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副題は「音漬け社会との果てしなき戦い」。
電気通信大の教授が無意味で無神経な「騒音」に戦いを挑んだ戦記であり、幼稚国家日本についての社会学的分析でもある。

ここでいう「騒音」とはあの電車やバスや横断歩道や商店街に氾濫するアナウンスの嵐のこと。著者はこれら自立精神を阻害する「騒音」に唖然とするほど決然と抗議していく。そういう行動の結果浮かび上がるのは日本という国の幼稚さ、独り立ちしていなさ、管理されたさであり、そしてまた驚異的なる甘えの構造なのである。

少々コワイオジサンではあるが、言っていることはまったく膝を打つ論理展開で納得のいくことばかり。‘平明に見る目’と‘決然と語る口’をしっかり持って生きていこうと思わせる、これは人生論の書なのです。ちなみに「自分がされて嫌なことを他人にはするな」というごく一般的しつけすら甘えの構造なのだとこの本は気付かせてくれた。子供を持つ親としてはたいへん感謝している。

1997年01月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:哲学・精神世界

LV5「蒲生邸事件」

宮部みゆき著/毎日新聞社/1700円

蒲生邸事件
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いいなぁ、宮部みゆき。抜群のストーリーテリングで今回も楽しませてくれた。
簡単に言えば、現代の浪人生が2.26事件当日の東京にタイムスリップしてそこで殺人事件に巻き込まれる、というお話なのだけど、戒厳令下、密室化した帝都でタイムスリップのパラドクスを絡めながら殺人ミステリーを構築するなんざ、並の人にはできない技だ。

ただ人物描写がティピカルなのは相変わらず。
特に主人公。感情の動きも行動もかなりわざとらしく、描写も凡庸。途中でちょっとしらけてしまった。でもラストあたりで一気に盛り返すので許す。時を越えることで愛の悲しみが深くなるラストなど恋愛物としても秀逸。

1997年01月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV5「和菓子屋の息子」

小林信彦著/新潮社/1400円

和菓子屋の息子―ある自伝的試み
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副題に「ある自伝的試み」とあるように、著者自身の半生記でもあるが、戦前戦中の東京下町の姿を実家の和菓子屋の生活を通して具体的に活写した大変ユニークな下町文化記録本でもある。「記録目的エッセイ風半生記」とでもいうのかな。人称もどんどん変わっていくし、記録文と私小説の境が全くないのにとても自然で読みやすく、最後の方など大変叙情的でホロリとくる。

前半はその構成上カタルシスを感じにくく、著者の物としては珍しく取っつきにくいのだが、後半は実に良い。
ボクが東京育ちということも多分にあるのだろうが、読んでいてなんか愛する人が死んでしまうような感情を戦争で壊れていく東京(下町)に感じました。そうか、これは著者の東京に対する「片思い小説」でもあるのだな。

1997年01月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション , 自伝・評伝

LV5「神さま、それをお望みですか」

曾野綾子著/文藝春秋/1700円

神さま、それをお望みですか―或る民間援助組織の二十五年間
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嫌な題名ではある。
著者もそれを認めている。題名に拒否感持つ人は読まなくてもいい、と開き直っている。でもボクは曾野綾子を無条件に信頼していたりするので読んだ。そうじゃなかったら読まなかったかも。

副題は「或る民間援助組織の二十五年間」。
そう、著者が主催する民間ボランティア活動の記録本。決して嫌味にならないように細心の注意を払って書いても嫌味になりがちな題材ゆえ、著者はぼやかすのを諦め、逆にそれを利用して書いているようなところがある。平明な記録に撤しつつ上手に主張を滲ませていく。その含羞が著者の真骨頂かも。ボクは嫌ではなかった。それどころか感動までしてしまった。活動にではない。なんというか人間の「ささやかさ」みたいなものに。抽象的だけど、こうとしか言い様がない。

1997年01月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:教育・環境・福祉 , 時事・政治・国際 , 経済・ビジネス

LV4「証言・臨死体験」

立花隆著/文藝春秋/1700円

証言・臨死体験
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前著である力作「臨死体験」で世界中の文献を元に臨死体験を検証(臨死体験とは何かを分析)した著者が、今度は前著で中途半端になった具体的体験事例の紹介をこの本で思う存分やっている。日本人の例ばかり、それも有名人が多いのでわりと感情移入でき大変心を動かされるインタビュー集だ。前著では結局著者は来世というものに否定的な態度をとったが、この本では少々それも揺らいでいるように見える。なぜなら木内鶴彦(天文学者)のような強烈な例があるからだ。いや、マジであのタイムスリップ体験談はインパクトある。体験は強い。検証を越える。興味がある人は必読。

1997年01月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:哲学・精神世界 , ノンフィクション

LV3「ワイン道」

葉山考太郎著/日経BP社/1200円

ワイン道
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薄くちっちゃな本。
このごろ雨後の竹の子のようにワイン本が出版されていて、ボクはその大抵を買って読んでいるのだけど(笑)、まぁほとんどは紹介に値しない。ワイン本って単に事実の羅列だけで終わっている本ばかりだから。
でもこの本はわりといい。ワイン版見栄講座って感じの作りだけど説明のわかりやすさ、比喩の的確さなどただものではない。ブルゴーニュやローヌをネゴシアンを選んで買うようになったくらいのレベルの人が読むと特におもしろいと思う。目から鱗がわりとあってコストパフォーマンスがいい。イラストが軽いのがまたいい。妙にお高くとまったようなイラストつけてる本多いし。たかが酒なのに。

1997年01月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒

LV3「ライオンは寝ている」

大貫妙子著/新潮社/1700円

ライオンは寝ている
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独自の世界を持つシンガーソングライターである著者が、ガラパゴス、南極、アフリカと旅をして書いた紀行文。というかエッセイ。

彼女の歌はなんか人を無口にさせる作用があるけど、この本もそんな感じ。
静かで自然体。ちっともはしゃがない(前半は少しミーハーなところもある)その文章は彼女の静謐な歌のように心地よい。こういう時、ヒトは環境がどうの、と大声で語りがちだが、著者はもっと含羞があって素敵だ。でもひとつ、前書きだけはちょっと説教くさかった。残念。3つの話の中ではアフリカでのエピソードが一番気に入った。

1997年01月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル: , エッセイ

LV1「闇に消えた怪人」

一橋文哉著/新潮社/1680円

闇に消えた怪人―グリコ・森永事件の真相
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副題が「グリコ・森永事件の真相」で、帯が「犯人は分かっていた!」。こりゃ買ってしまうわ。

かなり期待して読んだんだけど内容はもうひとつだった。
一応労作と呼ぶのだろうけど、とりあえず内容の整理が出来ていない気がする。緻密さが足りないから読んでいて不満が残る。細部で問題を提起しておいてそのまま終わっちゃうのが多く、欲求不満が溜まるのだ。あまりに総花的にしすぎたのかも。巻末の資料、「かいじん21面相」の挑戦状集が一番面白かった、というと失礼かな。

1997年01月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション

LV1「亜星流」

小林亜星著/朝日ソノラマ/1600円

亜星流!―ちんどん商売ハンセイ記
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副題「ちんどん商売ハンセイ記」。
ここでいう「ちんどん商売」とはCM商売のことで、彼が関わったCMソングの仕事を中心に明るすぎるほど明るく軽く、半生を振り返っている。

著者のポジティブな生き方そのものが面白いのだが、この本は少々表層的になりすぎていて正直食い足りない印象。軽く書き飛ばさないで、じっくり腰を据えて書いてほしかったなぁと思う。CM界の貴重な記録になっただろうに。

1997年01月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:自伝・評伝 , 音楽 , 映画・映像

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