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1996年11月

LV5「蒼穹の昴」

浅田次郎著/講談社/上下各1800円

蒼穹の昴〈上〉
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アポロン的大傑作。
「この物語を書くために私は作家になった」と帯にあるように著者入魂の大長編である。

時は中国清朝末期。
時代の大きな変わり目に蠢く人々を実に魅力的に描きあげている。すべての登場人物のキャラが立ち上がってくる描写力と上下巻息もつかせぬストーリーテリング力。歴史小説なのだが、ノンフィクションの趣きまで入ってきて、しまいにはその境目がわからなくなる。全部事実に思えてくるこの筆力。すさまじいものがある。一度読み出せば止まらないこと請け合いだ。

「え~中国の歴史物〜? 興味ないなぁ」と言うあなたも大丈夫。絶対すらすら読めるから。そして中国に今まで以上の興味と敬意を持つようになるから。んー、それにしてもシアワセな時間だった。これに直木賞を上げなかったら審査員コロスとまで惚れた(笑)。続編が待たれる。

1996年11月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:歴史小説

LV5「奪取」

真保裕一著/講談社/2000円

奪取
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サイコーに面白い。真保サイコー。
偽札犯罪のお話と言ってしまえばそれまでなのだが、筋に技巧を凝らしてあって読み始めたら止まらない。ハリウッド映画の原作として売ってもいけるんじゃないかな? そんなストーリーテリングの妙を見せてくれる。最後には読者をも煙にまくあたりが好ましい。

でも他のキャラに比べて女性キャラが弱いところがこの小説の難点。サチオの性格付けがステロタイプすぎる。これで女性キャラがもう少しひねって描き込んであれば本当にハリウッドに出してみたいくらい。お勧め。

1996年11月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV5「恐るべきさぬきうどん 1~3」

田尾和俊(麺通団)著/ホットカプセル/各1100円

恐るべきさぬきうどん
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副題に「誰も書かなかったさぬきうどん 針の穴場探訪記」とある。
つまり香川県にあるさぬきうどんの穴場的名店を巡ったガイドブックなのだが、ガイドブックなのに読んでて異様に面白いのである。大笑いなのである。大変良く出来た「さぬきうどんエッセイ」でもあるのだ。

「月刊タウン情報かがわ」に連載していたコラムの単行本化。
香川でしか手に入らないと思うが取り寄せてでも読んでほしい傑作。かくいうボクは1ヵ月ほど前に香川を旅行したときに香川の本屋で手に入れたのだが、これを読んではじめて今まで食べていたのは「うどん」ではなかったのだと知らされた。この本を読まずして「うどん」を語るべからず。
なお、この本を読んだら香川に行かずにはいられなくなるので、本自体は安いけど交通費など考えると結構高いものにつきますので要注意。

1996年11月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒 ,

LV4「私の小さな美術館」

新井満著/文藝春秋/2400円

私の小さな美術館
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著者が長年かけて蒐集した美術品たちを優れたエッセイと共に紹介している、文藝春秋に連載したコラムの単行本化。

美術品と言っても「著者の心を動かした品、思い出に残る品」をそう位置づけているだけなので決して値段的に高いものばかりではない。
でも著者にとっては何者にも代え難いもの達なのだ。これを読んでボク自身の「小さな美術館」に思いを馳せた。誰でも「小さな美術館」をもっている。なんかその回廊を歩きつつお酒でもあおりたくなってくる、そんな本。
なお、著者とは実は会社が一緒なので、共通する体験、共通する知人が出てきたりして、ボクにはそこも楽しめた。

1996年11月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:アート・舞台 , エッセイ

LV4「膝小僧の神様」

群ようこ著/新潮文庫/460円

膝小僧の神様
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小学校時代を文学した短編集。
自然体でありながら読者の目を離さない筆力を持った著者ならではの会心作。状況設定をだれもが経験したことのあるふつうの小学生生活に置いているので一見よくありがちな素人っぽい小説に見えるが、なかなかどうして、実はこういうのが一番書くの難しかったりすると思う。ディーテイルが驚くほどしっかりしているので(創作とは言えすごい記憶力を基盤にしているんだろうなぁ)、ふと当時の空気の匂いまで思い出しちゃったりして、なかなかせつない本である。

1996年11月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV3「ワイン通が嫌われる理由」

レナード・S・バーンスタイン著/渡辺照夫訳/時事通信社/1800円

ワイン通が嫌われる理由(わけ)
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簡単に言うと「ワイン見栄講座」。

ワイン・スノッブ特有の嫌味をウイットに変えて、楽しく展開している。
でもそこここに重要で耳寄りな情報が出てくるのでワイン好きは必読。かなり高等な論議も出てくるのである程度ワインを知ってから読んだ方がより楽しめるかもしれない。でもまぁ「ワイン見栄講座」なので、初心者がワイン通になるための近道もふんだんに書いてあるし、頭でっかちになるには最適の本だろう。
ちなみに著者はあのマエストロとは同姓同名なだけで別人なので注意。なお、1982年刊の本の邦訳(邦訳は1996年刊)なのだがそのことが脚注などで明らかにしていないためヴィンテージや価格の点で混乱が生じる。これは訳者(編集者?)の怠慢かも。

1996年11月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒

LV2「あのころ」

さくらももこ著/集英社/1000円

あのころ
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漫画「ちびまるこちゃん」の、漫画にならなかったこぼれ話を集めたもの。エッセイ。

すごい記憶力をもとにかかれていて感心する。相変わらずほんわかするどい視点でいろんな懐かしい話題を切っていて楽しい。そんな風に作者の感性については毎度感心しきりなのだが、この本に限って言えば「もものかんづめ」をはじめとする3部作に比べると切れ味にかけるかもしれない。ネタを少しずつ薄くのばして書いているような印象を少しだけ持った。ファンならどうぞ。(ファンなら勧められずとも買うか)

1996年11月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

LV0「うまいもの・まずいもの」

東海林さだお・尾辻克彦・奥本大三郎著/リテール・ブックス

うまいもの・まずいもの
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題名に惹かれて買った。
3人の「うまいもの・まずいもの」というお題の対談をそのまま本にしてある。

目新しい情報提供というよりは、雑談に近い感じ。でもこういった雑談本の存在価値は実はもう終わっているのかもしれない。雑談対談であればテレビの方が面白いのである。こういったものを安易に出版するから活字ばなれがおきるのではとすらボクは思っている。面白くない対談でもテレビなら間が持つが、本だとちょっと腹が立つかも。テーマを新しくするとか工夫をしなくてはたまらない。もしくは、椎名誠他が「本の雑誌」で繰り広げる対談を見習うべきである。読み物としてしっかり面白くして発表している。そういう意味でこの本は努力が足りない気がする。毒舌慧眼評論家安原顕の編とも思えない中途半端さである。ちょっと残念。

※リテール・ブックスの本が絶版ぽいので、中央公論新社の本にリンクしました。

1996年11月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒 , 対談

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