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1996年10月

LV5「この人生に乾杯!」

山口瞳と三十人著/TBSブリタニカ/2000円

この人生に乾杯!
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山口瞳好きの人には大オススメ。
奥さんをはじめ山口瞳ゆかりのそうそうたるメンバーがしっとり、そしてしっかり書き込んだ追悼文集である。

人間は死んだあとの「語られ方」でその人の本質みたいなものがはかれる。山口瞳を語るとき、筆者たちはみなとても静かにそして含羞と品をもって彼を語っている。下品な文章などひとつもない。追悼文に名を借りた自慢話などどこにもない。山口瞳とはそういう人なのだ。
なお、高原西蔵のペンネームで書いていた初期の文章やサントリー広告コピー集なども巻末についている。

1996年10月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:自伝・評伝

LV5「イギリス人の患者」

M・オンダーチェ著/土屋政雄訳/新潮社

イギリス人の患者
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見事な小説である。
いや、誤解を恐れずに言えば、小説というよりも、これは小説の形を取った「詩」かも。ものすごく面白いストーリーをもった詩。その詩的世界構築の見事さといったら、日本人では絶対こういう構築は出来ないと断言できるほどの雄大さと深さ、そしてワイヤーのように絡みつく複雑さをもっている。この本は凄い。読み終わり、この本の世界から立ち去るのが嫌で嫌でしょうがなかった。This is the Book!

ただ、原爆に喚起されるラストの展開の仕方だけはちょっと納得できない。その一点だけが残念。
ちなみにこの本、英国ブッカー賞を受賞している。

1996年10月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(海外)

LV5「ハルビン回帰行」

渡辺一枝著/朝日新聞社/1700円

ハルビン回帰行
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著者が生まれた地、ハルビン。そこを訪ねる旅を静かに綴った小品。

地味な内容。盛り上がりもないし中国残留婦人に対する記述など内省的で、読んでて肩身が狭くなる。が、この本は読者を引きつけて離さないのだ。この本を読んで以来ボクの心の中にもハルビンが常にある。読者をそんな気持ちにさせる本はそうはない。

いったい著者は何者? その筆力からしてベテランだろうが他の著作など聞いたことないし…。と思っていたら新人みたいなものだった。というか、椎名誠の奥さんだった(笑)。だからって著作経験は新人なのだから関係ないが、うまい人ははじめからうまいんだなぁと唸った。オススメ。

1996年10月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション ,

LV5「チベットを馬で行く」

渡辺一枝著/文藝春秋/2200円

チベットを馬で行く
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「ハルビン回帰行」があまりに良かったので、他の作品もと思って読んだ。

この本もとてもいい。チベットを馬で旅をした毎日を日記のように綴って555ページ書き切り、しかも読者を全然飽きさせない。たいした筆力なのだ。チベットの旅が事件だらけならまだ書ける。宗教だの自然だのテーマがあればまだ書ける。でも著者は単にチベットが好きというだけでその単調な旅行の日々を555ページ読ませちゃうんだから。凄いでしょ。しかも教訓だの蘊蓄だのを少しも語らない。偉い!

著者は椎名誠の奥さん。その尋常でない行動力は夫の影響もあるのだろう。でもこうなるともう「だれそれの妻」と呼ぶこと自体失礼に当たるな。下手すると夫を超えたかもしれない、とっても魅力的な紀行文だから。

1996年10月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション ,

LV5「熊谷突撃商店」

ねじめ正一著/文藝春秋/1700円

熊谷突撃商店
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女優熊谷真実・美由紀の母であり、松田優作の闘病を見守った市井の超魅力人、熊谷清子さんの半生を直木賞作家が綴った……などと書くとワイドショー的でイヤだけど、そういう本。

まぁそんなこと知らなくても十分楽しめる痛快実録小説。というか、女優たちや松田優作が出てくると途端につまらなくなるくらい、普通の生活がよく描けている。逆に芸能人関係が出てくると、著者の筆が焦点をなくしてそっちの記述ばかりになり、主人公がどっかに行ってしまうのだ。おいおい。
まぁでも、そういうのを差し引いてもとても魅力的な本だ。あっと言う間に読めちゃう。描写が足りない部分も多々見受けられるが、全体の勢いの方を重視した感じ。なにしろ「突撃商店」なので。

1996年10月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本) , 自伝・評伝

LV5「エリゼ宮の食卓」

西川恵著/新潮社/1700円

エリゼ宮の食卓―その饗宴と美食外交
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副題に「その饗宴と美食外交」とある。
フランス大統領官邸であるエリゼ宮はどんなメニューで米ロ大統領、英女王、天皇、そして日本の歴代首相をもてなしたか、というドキュメンタリーである。つまりフランス食卓外交のすべてを裸にした興味深い本なのだ。誰にどんな料理・ワインを出したか、でフランスがその人をどのくらい重要に考えていたかがよくわかるところが面白い。羽田首相の冷遇のされ方など悲惨だ。

各所に料理、ワインの話があり、エリゼ宮の仕入れや厨房のルポもある。フランス料理やワイン好きにはたまらない本。文章もいたずらに煽情的にならず抑えた筆致でよく書けている。

1996年10月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒 , 時事・政治・国際

LV3「ブラッドベリはどこへゆく」

レイ・ブラッドベリ著/小川高義訳/晶文社/1900円

ブラッドベリはどこへゆく―未来の回廊
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「ブラッドベリがやってくる」と2冊同時刊行された。ちなみに「やってくる」の方は先月書いた。
「やってくる」が小説の書き方指南、好奇心の羽ばたかせ方指南であるのに比べて、「どこへゆく」はいろんな事柄に対するブラッドベリによるエッセイ。「やってくる」よりより饒舌で自慢ぽく、ファンでなかったら辟易ものかもしれない。でもボクはとんでもなく大ファンだし、相変わらず眼からウロコの発想をいろいろ読ませてくれるから、何の文句もない。でもまぁ「やってくる」の方が好きかな。

1996年10月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

LV3「普通の食事」

山本益博著/マガジンハウス/1200円

普通の食事
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グルメ評論家を名乗るマスヒロ氏が普段家でどんな食事をしているのか、どうこだわっているのか、などを覗ける仕組みになっている。

評論家としては(個人的には)いろいろ疑問を持ってしまう人なのだけど、彼のこの手の食エッセイはなかなか上質で面白い物が多い。この本もわりと面白く読んだ。この手の内容に興味津々なのだからしょうがない。嫌味も旨味。上手である。

1996年10月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒

LV1「本棚が見たい!」

川本武著/ダイヤモンド社/1600円

本棚が見たい!
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題名がいい。他人の本棚って凄く興味があるから「そう、本棚が見たい!」と思ってすぐ買ってしまった。

筒井康隆、畑正憲、高村薫、和田勉、荒俣宏、秋元康、内藤陳、紀田順一郎……などなど24人もの本棚がカラーで紹介され、インタビューが載っている。素晴らしい。いい着眼点である。
…でもね。買って帰ってじっくり読んだら意外とつまらなかったの。表面的な記述に終始してせっかくの企画をつぶしてしまっている。本棚だってその一部を写しているだけだし。がっかりだった。人数を半分にしてでももっと一人一人に充分に突っ込んでほしい、といいたい。一人一人の本棚をもっとしっかり見せてくれ〜!

1996年10月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:雑学・その他

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