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1996年09月

LV5「幸田文の箪笥の引き出し」

青木玉著/新潮社

幸田文の箪笥の引き出し
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静かに「日本」を想いやれる小品。
幸田文の愛娘が書いた母親の着物を通した懐古の情であり、古き良き日本の美意識への賛歌でもある。母親への思いは痛いくらい伝わってくるが、この本が普遍性を持つのはその母親の存在が失われつつある日本そのものである点。この美しい世界に日本は二度と帰らないだろう。意識して捨てたとしか思えない。

文体も語彙も誠に美しい。ああ、こんな美しい言葉が日本にはあったんだなぁ、と過去形で思ってしまう自分に愕然とする。
「最後の日本人」……この母娘にそんな言葉を思い浮かべてしまう。幸田文の本を無性に読み返したくなる。

1996年09月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

LV5「ブラッドベリがやってくる」

レイ・ブラッドベリ著/小川高義訳/晶文社/1600円

ブラッドベリがやってくる―小説の愉快
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副題は「小説の愉快」。創作の秘密をブラッドベリ自らが語るエッセイ集である。

ブラッドベリについて今さら語らなくてもいいとは思うが、ボクは「とうに夜半を過ぎて」や「10月の旅人」などの短編集が大好きで、何度も何度も再読しているくらいである。長編「火星年代記」「華氏451度」などよりも短編の方が好きかも。素晴らしいSF作家である。

その小説の発想の仕方からまとめ方、いかにして作家になったかまでいろいろ解き明かしたのが本書で、ブラッドベリ・ファンならずとも読みごたえがある。目からウロコが一杯つまった快エッセイ。なお「プラッドベリはどこへゆく」と2冊同時刊行。「どこへゆく」はいま読んでいるところ。

1996年09月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

LV5「街を離れて森のなかへ」

駒沢敏器著/新潮社

街を離れて森のなかへ
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知らない世界で知らない仕事をしている人々に会うことで、価値基準の再構築をしていく著者の「フィールドワーク」。

営林署職員、ギター職人、海亀を守っている人、農村を追うカメラマン、気功の先生、本当の京野菜を作り続ける人、電子水の売る哲学者……いろんな職業があっていろんな価値観があって、いったい今ボクらが信じている価値観ってなんなんだろうと思わせる静かな力作。賑やかなだけのTV や雑誌に疲れたらこんな本を持って森に行きたい。そんな本である。

1996年09月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

LV4「魔の島漂流記―ガラパゴス諸島を行く」

畑正憲&ジェルミ・エンジェル著/フジテレビ出版

ムツさん ジェルミ 魔の島漂流記―ガラパゴス諸島を行く
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御存知ムツゴロウさんの新作。
TVでの姿しか知らない人がほとんどなのであろうが、ボクは彼の著作とともに青春を過ごした。ムツゴロウをバカにする人は彼の「青春記」「結婚記」などを読んでからいって欲しい。と、力みつつ、今回は去年の10月にこの欄で取り上げたこともあるジェルミとの共作である。短編が交互に出てくる体裁でガラパゴスをレポートしている。

文体が全く違うだけに最初は読みにくいが途中から文章が心を通わせ合いだすのが醍醐味。テンションが双方同時に上っていく感じ。共著的な甘さもあるが、ボクは好き。

1996年09月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル: , エッセイ

LV4「ダンシング・オールライフ―中川三郎物語」

乗越たかお著/集英社

ダンシング・オールライフ―中川三郎物語
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駅のそばに「中川三郎ダンス教室」の看板を見たことがある人は多いだろう。この本は、その、中川三郎の半生を綴った本である。

いやぁ、中川三郎がここまですごかったとは知らなかった。中川三郎は日本のヒーローだったのだなぁ。
読み出したら止まらないエンターテイメントとして良く出来ている。おもしろい。でも、これだけの素材を活かし切ってはいない。中川三郎の自著などとダブルところは略したりしているのも残念。彼の本など読んだことない人の方が多いのだから、略さずにしっかり書き込んで欲しかった。力作なのだけど、本当に惜しい。

1996年09月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:自伝・評伝

LV4「悪妻に訊け」

池田晶子著/新潮社

悪妻に訊け―帰ってきたソクラテス
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同年代の美人哲学者・池田晶子の新作。
ソクラテスとその名高い悪妻クサンチッペの対談の形を取っており「帰ってきたソクラテス」の続編となっている。オームから大震災、マディソン郡など身近な話題から見事に「哲学」していて分かりやすく楽しい。「ソフィーの世界」の数倍哲学がわかること請け合い。

著者のものは「事象そのものへ!」しか読んでいないが、哲学をきちんとエンターテイメントしている点が素晴らしい。平明なその視点は信頼に値する。

1996年09月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:哲学・精神世界

LV2「林檎の樹の下で―アップル日本上陸の軌跡」

斎藤由多加著/アスキー出版局

林檎の樹の下で―アップル日本上陸の軌跡
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副題に「アップル日本上陸の軌跡」とあるように、マッキントッシュ・ファンにはうれしいノンフィクション。
きちんと軌跡を追い直してあって良く出来ているのだがもうひとつ突っ込みが足りないのが残念。人物(特に外人)の性格描写などもう少し描き込んでいれば普遍性が出たと思う。いまのままだとマッキントッシュ・ファンしか読んで楽しくない。ボクはファンであるし、ずっとマッキントッシュを使っているクチなので、楽しかったし感慨深かった。現在のマックの迷走もさもありなんって感じである。

1996年09月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション

LV0「手鞠唄」

益田洋介著/潮出版社

手毬唄
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はっきり言って、益田洋介の前作「オペラ座の快人たち」は傑作であった。この必読エッセイに魅了されたボクが彼の著作を買わないわけがない。で、買った。ううむ。期待が大きすぎた分、わりとがっかりしたかも。

「オペラ座の快人たち」の頃からその自慢癖がちょっと鼻についてはいたのだが、小説になるとまた格別で、嫌味を通り越して逆に読者を納得させてしまうところはある。出てくる小道具から登場人物からすべて、そこまでしなくていいだろうにという程ブルジョア趣味。あまりにそこにこだわったせいか主題も拡散して見える。主人公の経歴からして作者の写しとわかるのだから究極の自慢ではあるなぁ。さぞ気持ちよかっただろうが、読者としてはやっぱりついていけない。含羞という言葉を贈りたい、とちょっと思ってしまった。

1996年09月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

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