トップ > おもしろ本 > 月別一覧 >

1996年08月

LV5「港湾ニュース」

E・アニー・プルー著/上岡伸雄訳/集英社/2200円

港湾(シッピング)ニュース
amazon
地味な本である。
でも何故か強烈な印象を残す。丹念に丹念にディーテイルを書き込んでいくあたり先月紹介したアン・タイラーにも似ているが、アン・タイラーが筋に沿ったディーテイルで構築するのに対して、この作者は寄り道的ディーテイルで全体を浮かび上がらせるというより難易度の高い方法を用いている。そういう意味ではアービングにも似ているかも。

途中まで主人公に愛情が持てなくてイライラしたが、そのイライラが物語後半から快感に変わっていくのが面白かった。
多分その客観的な主人公描写が、この物語の舞台であるニューファンドランドの人を拒否する厳しい自然描写とあいまって、特別な効果を生んでいるからだと思う。ここまで計算し尽くして物語を構築したとしたらこの作者並大抵の筆力ではない。長編2作目とはとてもじゃないが思えない。

なお、この本は全米図書賞とピューリッツァー賞をW受賞した上に各賞総ナメ、ベストセラーにもなったらしい。うなずける。

1996年08月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(海外)

LV5「新解さんの謎」

赤瀬川原平著/文藝春秋/1600円

新解さんの謎
amazon
ボクも長い間「新解さん」とつきあっていたにも関わらず「新解さん」がそんな人とはつゆ知らなかった…。

「新解さん」とは攻めの辞書「三省堂新明解国語辞典」のこと。もしくはそこに「明解に」存在するひとつの人格のこと。
それを愛を持って分析したこの本はなにしろ面白い。抱腹絶倒といってもいい。辞書を一緒に読んでいくだけでここまで面白く出来るとは。赤瀬川文豪久々のスマッシュヒットである。もちろん「新解さん」自身が面白すぎるからなんだけど。

ただこの本の後半は全く別主題のエッセイになっており、そちらは申し訳ないけどつまらない。でも前半だけで三ツ星クラス。ちなみに我が家の「新解さん」は第3版だった。

1996年08月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ , 雑学・その他

LV4「フルハウス」

柳美里著/文藝春秋/1200円

フルハウス
amazon
作者の「暗い」エッセイは読みなれていた。だから作者初の小説も暗いのだろうな、暗く書くのって楽だし…と思っていたらそうでもない。感情を抑えた筆致でしっかり書かれており熟練を感じさせる。

表題作は読み進むほどに文章から不協和音が立ち上ってくる様が見事。全然見えてこない父親のキャラクター描写など「失敗作」とぎりぎりの危ない線をあえて渡っていくあたり流石だ。でもストーリーにちょっと無理があるかも。もっと普通のストーリーの中で「不協和音」を響かせてほしかった。あまりに無理やり過ぎる展開だと思った。

1996年08月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV2「この人の閾(いき)」

保坂和志著/新潮社/1300円

この人の閾(いき)
amazon
第113回芥川賞の受賞作。
柳美里の「フルハウス」と争って結果的には勝ったのだが、ボクなら「フルハウス」にあげるかもと思った。

ちなみに「閾(いき)」を「新解さん」でひいてみると【心理学で、ある事が意識されるか否かの境目】とある。そんな小難しい題名にせずとも主題は語れるはず。題名的に損しているなぁと思う。文体もわりとダラダラ説明系で新鮮味がなく、主題への収束力も弱い。何も起こらない中でのドラマを描いているのはわかるし、その中でのいろんなドラマも読み取れるのだが、どうにもノリきれない。趣味の違いもあるとは思うけど、ボクには合わなかった本。ボクの読み方が浅いのかもしれないが。

1996年08月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV2「TVアニメ青春記」

辻真先著/実業之日本社/1800円

TVアニメ青春記
amazon
TVアニメ創世期から現代に至るまでを、アニメのライターとして知らない人はいない作者が書いた自伝兼年代記。

特に創世期の熱い雰囲気に触れたいかたは読んで損なし。
「ジャングル大帝」の脚本や「アタックNO.1」のシノプシスなども収録されており、好きな人にはたまらない本。ストーリーが行ったり来たりして冗漫になったのとアニメへの情熱が空回りして読みにくかったのが残念。希望をいえば、アニメにあんまり詳しくない人が読んでも面白い本に仕上げてほしかった。そういう本が日本には少なすぎる。
中学の頃からずっとペンネームだと思っていたけど「辻真先」って本名なんだって。知らなかったなぁ~。

1996年08月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:自伝・評伝 , 漫画 , 映画・映像

LV1「鳥を描き続けた男」

国松俊英著/晶文社/2200円

鳥を描き続けた男―鳥類画家 小林重三
amazon
鳥類画家小林重三の伝記。
おもに辞典に鳥の絵を書き続けてきた画家の一生を他の鳥類画家と共に丹念に書いたもの。

扱われる題材が珍しいこともあって飽きはしないが、もっとエンターテイメントに徹すれば映画の原作にも出来る題材だけに、作者の「単に真面目なだけ」の文体が残念。本作りも定価が高くなることを覚悟でもっと図版・写真をカラーで入れてほしかった。なにせ今でも日本一と言われている鳥類画家の伝記なんだから。
こういう知られていない人生を読むのって好きなので、どうせなら徹して欲しかった一冊。

1996年08月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:自伝・評伝 , 写真集・イラスト集

ページの先頭に戻る

メニュー

Follow satonao310 on Twitter @satonao310

satonao [at] satonao.com
スパム対策を強化しているので、メールが戻ってきちゃう場合があります。その場合は、satonao310 [at] gmail.com へ。

ページの先頭に戻る

Google Sitemaps用XML自動生成ツール