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1996年01月

LV5「怖ろしい味」

勝見洋一著/文藝春秋/1529円

怖ろしい味
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食だけでなく、映画やオーディオ、美術に至るまで、生半可じゃない経験と知識に裏打ちされた凄味のあるエッセイである。

食体験というものがその「時代」や「場所」を食べることに他ならないとするならば、この作者こそ数少ない本当の食通と言えると思う。食のエッセイも見ものだが(特にニューヨークの中華料理を描いたところなど、極上の短編小説の趣きすらある)、真価は「物彩」と称された後半でより発揮される。どこか益田洋介の名エッセイ「オペラ座の怪人たち」を彷彿とさせる上等なキザさがそこかしこに振ってあって、なかなか香ばしく楽しめる。お勧め。

1996年01月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒

LV5「キジ撃ち日記」

遠藤ケイ著/山と渓谷社/2345円

遠藤ケイのキジ撃ち日記
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「キジ撃ち」とは平たく言って野糞のこと。
この酔狂なる日記は、都会を離れ房総の山中に移り住んだ作者・遠藤ケイが毎朝キジ撃ちをしつつ(作者の家にトイレはない)、その生きざまを素直につづったもの。野糞するためにしゃがむと目線がぐんと低くなる。その低さを保ったまま、地に足の着いた生活を書いている。

目線が低いので、変な環境提言みたいにはなっていない。著者自身アウトドアの専門家やナチュラリストを忌み嫌っていることもあるだろう。普通なら下痢するような木の芽なんぞを食べて、気が向くままにドラム缶風呂に入り…と、もうその生活自体がエッセイしているので行動を読むだけでおもろいおもろい。1993年刊だからちょっと古いけどお勧め。

1996年01月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

LV5「檀」

沢木耕太郎著/新潮社/1680円

檀
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この本を読んだ人は必ず「火宅の人」が読みたくなると思うのだが、読むとまた必ずがっかりすると思う。もうこの本自体が「火宅の人」の面白さを越えているからだ。

檀一雄の一代記をその二人目の妻ヨソ子を通して語った本書は、フィクションでもありノンフィクションでもあるような不思議な文体で書かれており、読み終わると結局だれにもカタルシスを感じられないもどかしさがある。遠近感がつかみにくいのだ。だがその文体自体がヨソ子の性格を表しており、読者は自然に「ヨソ子による世界」に導かれていくわけで、これはもう達人技と言ってもおかしくないうまさなのだ。

1996年01月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:自伝・評伝

LV3「パリの調理場は戦場だった」

宇田川悟著/朝日新聞社/1937円

パリの調理場は戦場だった
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まだグルメという言葉もなく、ミシュランを日本で誰も知らなかった70年代に、単身フランスに渡って料理修行に明け暮れた3人の若者の物語である。
当時の料理界の状況、フランスでの修行の厳しさ、キッチンでの仕事の内容などが目の前に広がるように見えてくる好著で、なかなかのめり込める。フレンチファンならずともお勧めしたい。ただ、全体にストーリーを急ぎすぎているのが気になる。三つのストーリーが一つになっていくところもちょっとギクシャクしているし、う~ん、惜しいなぁ。

1996年01月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒

LV3「エッセイスト」

玉村豊男著/朝日新聞社/1575円

エッセイスト
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まだどちらかというと新進エッセイストとしてはなかなか勇気ある題名である。

エッセイストとはどういう商売か、いかにしてそれになるのか、収入はどうなのか、作者はどういう経緯でエッセイストになったのか…この本は作者の半生記でもあり、フリーライターの内部告発(?)の書にもなっている。エッセイストの内側の企業秘密をいろいろ暴露している本なのだ。作者独特のあの「自慢の一歩手前」という距離感も健在でラクに楽しめる好エッセイ。

1996年01月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ , 自伝・評伝

LV2「山際淳司スポーツ・ノンフィクション傑作集成」

山際淳司著/文藝春秋/4893円

山際淳司―スポーツ・ノンフィクション傑作集成
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先日夭折した山際淳司の傑作選。約80編入っている。高価だがコストパフォーマンスは良い。

「江夏の21球」という超弩級スポーツ・ノンフィクションで実質的デビューを飾って以来、第一線で活躍してきた著者ではあるが、改めてすべてを読み返してみると、誤解を恐れずに言えば「この人は決してうまくない」と言わざるを得ない。もちろん、これは、と言う短編もある。でも「こんなにいい素材だったら他もっと面白くなるはずだ」と思わせるストーリーが意外と多いのだ。

そう、彼は素材採集の天才ではあったがライターとしては素朴なタイプだった。というか、変な「小説的技巧」や「バラエティ的盛り上げ」を排除した文体なのだな。その辺は逆に評価すべきなのかもしれないが、題材がスポーツであるだけに、スポーツ自体の派手さに文章が負けている部分が多いと感じた。そういう意味では、この本は文章より素材を読んで欲しい。「目からウロコ」がいっぱい詰まっている。

1996年01月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:スポーツ , ノンフィクション

LV1「木をみて森をみない」

青山南著/同文書院/1325円

木をみて森をみない
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名訳者のエッセイ集。
ストーリー的にも文学史的にも作家論的にも上手に紹介できないが、おもしろそうなアメリカ小説や映画やコラムなんかを紹介はできるよ、でもこれって「木をみて森をみない」ってことだよね?…みたいな感じの、含羞に満ちたエッセイ集だ。
達意の文はここでも顕在だが、内容的にはもう少し突っ込んで書いて欲しかった。このほんわかした感じはとても好ましいのだけど、やはりちょっと食い足りないかも。

1996年01月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ , 評論

LV1「これを食べなきゃ」

渡辺淳一著/集英社/1325円

これを食べなきゃ―わたしの食物史
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副題は「わたしの食物史」。
これはね、相当自慢に満ちた本である。まぁ渡辺淳一だからなぁ…。もちろんなかなかの蘊蓄と共に読ませるのだが、そのわりに普通の話が多く、自慢の仕方も玉村豊男や林望の方が数段うまい気がする。
24の食材について、一例を挙げるなら「竹林を見ながら筍を食う粋」みたいなことを書いているものなのだが、全体的に共感しにくいのが難である。というか、たぶん先生は「女性にもてるための素材」として書いているので、男性であるボクはターゲットではないのだと思われる。でもそれも著者独特の芸風とも言えるので仕方ないか。

1996年01月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒

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