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坪内祐三
「一九七二」

amazon著者に指摘されるまで意識もしなかったが、確かに1972年というのは時代の変わり目だ。前書きにも書いてあるが「はじまりのおわり、であり、おわりのはじまり」なのだ。ここまで顕著に時代の境目ってあるのね、とまずそれにビックリした本である。
1972年に何があったか、例をいくつか上げよう。
札幌オリンピック。連合赤軍浅間山荘事件。横井庄一グアム島で発見。沖縄返還。佐藤栄作引退。田中角栄「日本列島改造論」発表。「四畳半襖の下張」発表。日本プロレス中継終了。「ぴあ」創刊。日中国交回復。カンカン・ランラン到着。ローリングストーンズ幻の初来日。森昌子新人賞……まぁ詳しくは本書をお読みいただくとして、これらひとつひとつの事件がすべていろんな事象の境目になっているのである、という分析を細かく緻密に著者は書いていく。
それらがこじつけに感じられないのは著者の筆力のおかげでもあるのだが、実際そうなのだろうと納得が行くもの。1972年あたりに中学高校大学を過ごした人たちには実感をもって「あぁ、あそこが曲がり角だったのか」と肌感覚でわかることだろう。個人的には浅間山荘前後の記述の掘り下げ方が少々くどいもののいろいろ発見があって面白かった。
ちなみに坪内祐三の本は読後感がいつも尻切れトンボである。
彼自身三部作と言っている「靖国」「慶応三年生まれ七人の旋毛曲り」そしてこの「一九七二」もその感があり、厚さを倍にしてもいいからキレイに満足させてほしいと読後に思った(この本も400ページ超でいい加減長いのだが)。きっと著者としても収拾つかなくなっちゃうのだろう。テーマも素材も膨大ゆえに。
2003年08月01日(金) 12:00:00・リンク用URL
「慶応三年生まれ 七人の旋毛曲り」

amazon約550ページの労作。
「大」労作になるはずだったのに、途中で著者自身飽きてしまい、尻切れトンボで終わっている。それでも労作ではあるのだが、置いて行かれた読者はどないすればいいねん、って感は残る。
慶応三年に7人の偉人が生まれている。
夏目漱石、正岡子規、尾崎紅葉、幸田露伴、斉藤緑雨、宮武外骨、南方熊楠。
彼らの人生をそれぞれ並列に追うことで、近代日本の歩みを解き明かしていこうという野心作で、目の付け所は素晴らしいのだが、どうにもこうにも構造上散漫になっていくし、膨大な原文資料を読み解いていくのが難解であるし、7人という多人数を並列に追う無理が途中からモロに出て来ちゃっているし、緑雨や熊楠はあまり登場しないし、盛り上がりなく時系列的に平坦に読んでいくのが(読者的に)だんだん苦痛になってくるし、で、まぁなんというか、労作なのだが、辛い本になっちゃっているのが残念。
個人的には尾崎紅葉の実際みたいなものが知れたのが収穫。面白いエピソードも多数あり、文学史的にはいい本かもしれない。
でもなー、破綻しちゃっているよなー。著者の筆力ははなはだ評価しているが、ここまでの本を書くのには、少しタイミングが早すぎたのかもしれない。もっと筆力がついてから書いてほしい題材であった。とても期待しただけに、残念。
2001年10月01日(月) 12:00:00・リンク用URL
「靖国」

amazonあなたは靖国神社についてどのくらい知っているだろうか? 靖国神社公式参拝の是非について騒ぐ大新聞の記事についてどういう意見を持っているだろうか? そもそも靖国神社ってなんなのだ?・・・そういう質問に「そういえばちょっと知ってみたい」と思った方は是非ともどうぞ。
読み物的な面白さは思ったよりなかったが、知的好奇心は十二分に満足させてくれる好著。
「え?靖国神社って超モダンでハイカラな祝祭空間だったの?」と次々目から鱗が剥がれていくこと請け合いだ。例えば神社でありながら神主がいなかったことなんて知っていた?
総花的評論になりがちな題材を一貫した視点から書いているのがうまい。「靖国的なものの消滅」についての著者の姿勢が一貫しているのもいい。上手だしなんだか古くさい名前なのでかなりのお年かと思ったら、この著者ボクと3つ上なだけの41歳。うーん。まいった。
1999年06月01日(火) 12:00:00・リンク用URL




